FM放送をラジカセやコンポのチューナーから高音質で受信する


友人にFM放送の番組を勧める事は多いが、「うちはきれいに受信できないから録音してもねぇ…」という言葉を良く聞く。
テレビアンテナを接続してる?と尋ねると、実は知らなかったという人が多い。
検索するとヒントとなる記事は少しあるようだが、もう少しまとめて紹介できるのではないかと思ったのでこのページを作ることにした。
専用のFMアンテナを立てるのが一番効果的。調べてみると数千円程度で手に入ると言うことが分かった。しかしアンテナを設置するのに屋根に登るなどの苦労が必要だし、 マンションでは共同アンテナを動かすのは難しい。ベランダに設置するやり方もあるが、強風の際に飛ばされないだけの十分な強度は確保できるのか、といった問題がある。
しかしそれ以前に、テレビのVHFアンテナでもFMを良質な感度で受信することは可能である。(注:必ずしもできるとは限らないが。) またCATVでも、テレビと一緒にFMの信号も同軸ケーブルに流れている場合も多い。
そこでこのページでは屋外のアンテナ新設には触れず、テレビのアンテナケーブルをFMチューナーにつなぐという方法を前提に解説する。これだけで音質がぐんと良くなる。

以下の説明は、既にテレビにアンテナケーブルがつながっていて、その近くにコンポやラジカセがあり、そのチューナーにアンテナケーブルを繋ぎたいという場面を想定して書くことにする。
まずコンポの場合を、次いでラジカセの場合を説明する。


まずはテレビのアンテナケーブルの説明から入る。正確には同軸ケーブル(75Ω)という。
太さは主に3Cと5Cの2種類ある。ここではやや細い3Cを扱う。その方がコンポのクリッププラグに挟んだり、ラジカセの項で説明する金属クリップの加工がしやすいからである。
(なお300Ωのフィーダー線を使っている家庭の場合は、300/75Ω変換器を使えば同軸ケーブルに変換できる。)
同軸ケーブルは部屋の壁にあるアンテナプラグから延びてテレビやビデオ、そしてFMチューナーに繋がる。 だからまず先に壁のアンテナに繋ぐ必要がある。部屋にテレビがある場合はおそらくこの壁へは繋がっているということになる。
同軸ケーブルはどこを切っても金太郎飴のように同じ中身である。
一番内側に芯線がある。ここにテレビやFM放送の電波が流れている。
その芯線は白い半透明なプラスチック状の被服に覆われている。その被服の外に網線がある。ここではアースの役割と説明する。その網線を被う一番外側が黒いビニール状の外膜である。

テレビにはすでにこの同軸ケーブルのアンテナ線がつながっているわけだから、その同軸ケーブルを分岐させなければいけない。それには分岐器(分配器)が必要である。
分岐器はプラグ式で簡単に接続できるものと、アンテナ線を一旦切断して中の芯線を通して接続するものがある。ここでは扱いの簡単なプラグ式を紹介する。
また分岐器には全方向通電型と、1方向のみ通電型がある。全方向型はやや高価。これはBSアンテナを屋外に設置している場合にそれへの電源供給が必要なためである。 複数のBSチューナー、BSチューナー付きテレビあるいはBSチューナー付きビデオデッキに同軸ケーブルを分岐させる場合には、BSを視聴・録画するために全方向型が必要だが、 ここではFMを受信する目的に限定して説明しているため、1方向型でもよい。その場合、テレビ側が通電するように配線する。

なお、より高音質の受信を望むのであれば、この場合の分岐器は分配器でなく分波器を使えばよい。これはFMとTV(VHF)の信号を分けるもの。

写真の分岐器は入力側のプラグがオスなので、一緒にメス・メス型の延長用プラグも必要である。(画面左上の銀色のネジ型のもの)


コンポの場合

さていよいよこの同軸ケーブルをコンポのFMチューナーに接続する。FMチューナーが直接同軸ケーブルをプラグで接続できる機種であれば、そのまま接続すればよい。
しかしアンテナとして細い銅線を挟み込む機種の場合は少し加工が必要である。以下その説明。

まず同軸ケーブルをハサミやニッパー、ペンチなどで適当な長さに切る。ニッパーがお勧め。
続いて外膜をカッターナイフで5cm程度切る。網線をほぐして手で捻って撚る。中の芯線を白い皮膜ごともう2cmほど切る。残った3cmのうち、2cm程度の部分を皮膜だけ切る。 この微妙な加減を間違えると中の芯線まで一緒に切ってしまうので注意!
なぜ最初に5cm切ったのかというと、網線の部分は芯線より長く必要だからである。

まずFMチューナーのアンテナ接続の部分には、銅線を差し込むためのクリップ型プラグとアース(グラウンドGNDとも言う)のプラグがあるはずである。 2つのプラグがある場合は通常「遠」を使う。テレビ局の送信所などにごく近い場所では「近」を使う。
プラグの下についているクリップを開けながら同軸ケーブルの芯線を差し込む。そしてアースには先ほど撚った網線を巻きつける。

これですべて完了。(写真の同軸ケーブルに巻きついている物体はノイズ除去器。)
試しにFMを聴いてみよう。今までアンテナが無かった状態、あるいは銅線や簡易アンテナだけだった状態よりも、ぐんと受信状態が良くなったはずである。


ラジカセの場合

次にラジカセの場合の説明に入る。
ラジカセにはロッドアンテナがついているが、これによるFM受信には感度に限界がある。そこでまたテレビアンテナ用同軸ケーブルを繋ぐことにする。

ラジカセの背面に、コンポと同じようにFMアンテナ用のプラグ(同軸型あるいはクリップ型)があれば、先ほどの説明と同じようにすれば良い。
しかし大抵のラジカセにはそのようなプラグはついていないと思われる。ではどうするかと言うと、同軸ケーブルの芯線をロッドアンテナに接触させる方法を取る。
試しにロッドアンテナに同軸ケーブルの芯線を接触させてみよう。触れた途端、あるいは数センチの距離まで近づけた途端に、ぐんとFMの感度が良くなる。
この芯線をずっと接触させておくには、例えば巻きつけたりテープや洗濯バサミで止めておくという方法もあるが(実際検索で出てくるいくつかのページはそのように説明していた!)、 実際はそれだと見た目も良くないし、芯線を直接巻きつけたらラジカセを持ち運べなくなる。持ち運ばず一箇所に据え置いて使うとしても、部屋の模様替えなどで移動する時が大変。 それに芯線を何度も巻きつけたり洗濯バサミで止めたりはずしたりすると、あっという間に芯線は金属疲労で折れてしまう。

そこでお勧めなのが、金属クリップ(ワニ口クリップ)を使う方法である。金属クリップは学校の理科室などで電気関係の実験をする際に見たことがあると思う。 電気パーツ屋、工具店、東急ハンズなどに一個数十円で売っている。
金属クリップには写真のようにゴムが付属しており、これがかぶさった状態で売っているが、当然ながら電流が流れるわけだからそのまま手で触ってはまずいので、感電を防ぐためである。この場合は微量な電流だが、もし大きな電流が流れていたら感電してしまう。

まず金属クリップを被うゴムを一時的に取り外しておく。
同軸ケーブルの外膜を5cm切り取る。今回はアースを繋ぐ場所がないため網線も切り取ってしまって良い。念のため外膜の切り口にはビニールテープを巻いておく。内側の皮膜を2cmほど切って芯線を出す。
この時金属クリップから取りはずしておいたゴム皮膜を同軸ケーブルの芯線に被せ、たくし上げておく。(靴下を履くときにあらかじめたくし上げる要領)

芯線を金属クリップの根元の穴に通し、ハンダで接続する。
ハンダ付けが難しくてできない場合は、ビニールテープで貼り付けても良い。

先ほどたくし上げておいた金属クリップ用のゴム皮膜を、ゆっくりと金属クリップに被せる。この際せっかくハンダ付けした芯線が折れないよう十分注意!

これで同軸ケーブルの先に金属クリップがついて完成した。これをロッドアンテナに挟む。ロッドアンテナの先端の細い部分を少し伸ばし、そこにクリップを挟む。

完成した状態。これでラジカセでも高音質でFMを受信できるようになったはずである。
クリップだから着脱も容易に可能であり、ラジカセ本体の移動や持ち運びもできる。

なお、ロッドアンテナなど金属部分にほこりが付着したまま放って置くと錆びてくるので、まめに掃除すると良い。
錆びてきた場合は初期ならコンパウンドまたは歯磨きクリームを布につけて軽く拭けば、取れる場合もある。


これで受信状態もよくなったことだし、エアチェックもはかどるだろう。 実際に私はこの方法で受信状態の良好なコンポでFMを聴き、さらにタイマー録音が付いたラジカセを使いMDで毎週のようにFM番組を録音しているが、 十分鑑賞に適する音質であり満足している。

なお、この方法でテレビのVHFアンテナからの信号をFMにつないでも、うまく受信できない場合がある。その場合はやはり専用のFMアンテナを立てたほうが良い。