Talisker


日本の焼酎のことを昔の人々は「火酒」と呼んだ。そしてスコットランドの北西に浮かぶ島にも「火酒」と呼ぶに最もふさわしいモルトが眠っている。島の名前はIsle of Skye・・・。「翼を広げた」という意味を持つこの島で、のどを焼くような強烈な酒が生まれる。蒸留所の前に広がる海藻だれけの海岸を眺めていても、体をいつまでも火酒が温めてくれていた。


この風景が個性の原点
Talisker
     
〜「火山のように激しいモルトの故郷」〜

ついに念願のIslandsモルトの土地に足を踏み入れた。まず最初は全てのモルトの中でも最も強烈で、モルトの原点を思い起こさせる「Talisker」を訪れた。この蒸留所のあるスカイ島の中心的な町となるのがPortreeという港町だ。そこから地元のローカルバスに飛び乗った。途中郵便配達も兼ねるそのバスで寄り道をしながら揺られること30分。憧れの白壁を持つ蒸留所が海岸沿いに佇んでいた。この日はあいにくの雨。そして6月中旬だというのに震えるような冷たい風が海から吹きつけていた。その天気すらここを訪れるための演出かと思ってしまうほど、寒空と雨が似合う風景だった。バスを降りてあまりの寒さにまずはビジターセンターに駆け込み、見学の申し込みをすると、すぐにグラスにタリスカーを注いでくれた。その一杯が冷えきった体にあたかも溶岩が流れ込むように押し寄せてくる。そして体はすぐに温かくなってきた。ビジターセンターはつい最近新築されたのか非常に綺麗でゆっくりと寛げ、ツアー開始までの30分の時間もまったく苦にならなかった。こんな最果ての地とは思えないほど、次から次へと人が来て結局ツアーは20人の大所帯となった。

貯蔵庫を海岸から眺める。まさに海岸に佇む
案内をしてくれたのはBeckyという笑顔の優しいおばさん。最初に微笑みながら「早い英語が駄目な人は?」と聞いてくれた。手を挙げるとにっこり笑って「Tryしてみるけど、早くなってきたら教えてね」とのこと。でもとても聞きやすい。彼女曰くこれだけシングルモルトとして名前の知られている蒸留所でも90%はブレンデット用の原酒として蒸留されているとのこと。蒸留所の中は清潔で、かなりの部分が機械化されている。あの強烈な個性を考えると意外な感じもしたが、きっとモルトに大切なのは周りの環境なんだろうなと、さっき見た外の風景を思い浮かべる。仕込に使われる水は蒸留所の横にあるHawkhillと呼ばれる丘に涌き出る水を使う。そして何よりこの蒸留所で印象に残るのは、その貯蔵庫。真白な壁に「Talsiker」と書かれた建物は、まさに道路一本隔てて海岸に通じている。海から押し寄せるすべての成分がきっとここで眠る樽の中に沁み込んでいくのだろう。モルトは土地が造っていく・・・。いや土地が酒を造っていくんだ、ということを感じつつ、ずっと海を眺めていた・・・・。

言葉はいらない・・・
Tasting Note
      〜「Talsiker 10年」〜
今回試飲できたのはオフィシャルの10年。このモルトについて語ることは一つ。「強烈な」すべての表現がこの形容詞で補われる。体の、そして心の寒さまでもすべて暖めてくれる激しさ・・・。まさに人生の叱咤激励をしてくれる酒だ。
色:赤みががったGold。
香:ツンとする。その後甘いスモーキーな香りが広がる。
味:口の中で爆発した後、ほのかな麦芽の甘味が広がる。そして喉を通るときにもう一度爆発する。胡椒という人もいるが。
総評:ある人は火山と言い、ある人は胡椒と言う。でもそんな表現ではこの酒は言い尽くせない。ふと不安に襲われる夜に、あの風景を思い浮かべながらこの酒を喉に流し込めば、また明日に向かっていける・・・。

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