ワイヤーレコーダー  鋼線式録音機  wire recorder
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ワイヤーレコーダー、 又は、鋼線式録音機と呼ばれる録音機械です                                  

テープレコーダーは皆様、よくご存知ですが、 それ以前の録音機で
魚釣りの、釣糸位の極細の針金、と言うか、ステンレスワイヤーに
音声を磁気録音しようと言う機械です。

この録音機の原理はかなり昔から知られていて、その原型は
1898年、デンマークの電話技術者、ポールセンによって
電話の会話を録音する目的で作られました。
エジソンが蓄音機を発明してからおよそ20年後のことでした

しかし、針金に録音すると言う、この機械は原理的に音質は、ひどく悪く
この欠点は、なかなか克服出来ませんでした、

しかし、ワイヤーを長くすれば、いくらでも、長時間録音できるという利点から
米国で改良が重ねられ、第二次大戦では、米軍が、無線通信の録音用に
採用します


一方、ドイツでは、第二次大戦中にテープレコーダーが実用化され
ドイツ軍は高性能なテープレコーダーを、無線通信の録音、ラジオ放送に使用します


ドイツ敗戦と共に、テープレコーダーの技術は世界に広まり、1940〜1950年代にかけて
ワイヤーレコーダーと共に改良されていくのですが、音質、扱いやすさ、等で
テープレコーダーが優位に立ち、ワイヤーレコーダーは消えていきます、

日本では、ワイヤーレコーダーは普及せず、放送等、特殊な用途で使われただけで
一般には馴染み薄い物であったので、現在では、この録音機の事を知る人も
少なくなってきました。

現在、手元にある、4機種のワイヤーレコーダーを、ご紹介いたします。
米海軍 IC/VRW7
1940〜1970年代にかけて米海軍の航空機に
搭載されていたワイヤーレコーダーで
搭乗員の会話、無線交信を記録するために
使われていました、
今で言う、ボイスレコーダーですね、

写真の機械は30年くらい前に、米軍の払い下げ品
を扱っている店で売られていて、ヘーエこんな物が
あるのか、と思い、購入して、保管していた物です

リールに巻かれたワイヤーが真ん中の、黒色の録音ヘッド
の上を擦りながら、もう一方のリールに巻きとられ
録音していきます

この機械はボイスレコーダーと言う性格から
録音専用で、再生はもちろん、巻き戻しもできません
地上に降りてから、再生専用機で再生する物です

電源は飛行機の機内電源に合わせて、直流28ボルト
で動作します
モーターも28ボルト、真空管も28ボルトの低電圧で
動作する、特殊な物を使っています。
録音ヘッドと録音ワイヤーの様子

わかりやすいよう、ワイヤーを少し緩めました
実際はもっとピンと張っています。


IC/VRW7の搭載例 
グラマンの雷撃機 英語(PDF)
カナダ空軍、対潜哨戒機 英語
米陸軍 航空隊 RD-11B/GNQ-1
第二次大戦後期、米陸軍航空隊で使用されたワイヤーレコーダー

この機種は地上用で、欧州戦線、太平洋戦線で、日独に対し
爆撃を行った、爆撃機との無線交信の録音用に使用された物のようです

マイク、無線機からの録音、巻き戻し、再生、消去ができ
使い勝手の良い、すぐれた機械です、  ただし音質は悪く
音声はともかく、音楽などは録音しても、とても聞けたものではありません
(専門的になりますが、交流バイアスではありません、ですからひどく歪があります)

もっとも、当時の飛行機の無線交信は、音質の悪いカーボンマイクを
唇に押し当てるようにして会話をしてたので、録音機の音質は
問題無かったのかも知れません。

この機械は軍用と言うこともあり、機構的にはとても凝った作りで
金と手間がかかっています、
一般的にワイヤーレコーダーは、操作中にワイヤーが切れやすく
取扱いにとても神経を使う物なのですが、 この機種はワイヤー部分を
カセット式にして交換を容易にしています、

さらに巻き過ぎを防ぐ安全装置、カセットが確実にセットされたか、確認
する機構、 さらに
再生から巻き戻しに移行する時は、リールを逆転させるわけですが
この時、いきなり逆転するとワイヤーに、ストレスが掛るので
真空管を使った、タイマー機構で一定時間静止させた後
逆転させる仕組み等、細部にわたって、至れり尽くせりの作りです。
ワイヤーのカセット

60分の録音時間が表示されています、
陸軍、海軍共、同一規格のカセットを使った録音機が
何機種か有り、カセットは、互いに交換性があります。
カセットの裏側

巻き過ぎ防止のリミットスイッチの接点
確実に本体にセットされたか、チェックする接点などが
配置されている。
カセット内部

アルミダイキャストのフレーム、 リミットスイッチ、
ボールベアリングの軸受け、ワイヤー巻き取りに
テンションを与えるための、黒鉛を使ったブレーキ機構
等、しっかりした作りです。
録音再生ヘッドは茶色のベークライトに埋め込まれています

カセットテープと違うのは、録音ヘッドが、カセットの内部にあることで
これは、機構的に、本体にヘッドを置くのは、難しいのと、
ヘッドは常に、スチールワイヤーとの摩擦で、摩耗が激しいので
カセットに内蔵してしまえば、ヘッド交換の手間も省けると言う理由。
米国 ウェブスター社製 ワイヤーレコーダー
民生用 MODEL 180-L
戦後発売された一般向けのワイヤーレコーダーで、
最もよく目にする機種です、
NHKでも、使っていたらしく、類似機種が、NHK放送博物館で紹介されています

この時代になると、交流バイアス方式と言って、
磁気録音特有の歪を防ぐ技術が採用され、音質も、良好です

もちろん、真空管式で、電源はAC 115V です
録音、再生ヘッドの様子
運搬状態
ドイツ製ワイヤーレコーダー  Drahtmagnetofon TONMEISTER Type ST 701/8 LFR
ドイツで戦後発売された民生用ワイヤーレコーダーです

ドイツと言えば、戦時中に高性能なテープレコーダーを完成させた国
それでも、テープレコーダーが商品として優位を確立するまでは
ワイヤーレコーダーとの併存時代がありました、

米国製の機種と内部構造はほとんど同じで、音質も良好です。
ベッド附近の様子
録音用ワイヤー

名門、シーメンス ハルスケ製

の機種は、レコードプレーヤーとしても使えるようになっています
米国製の機械でも、このような兼用機は多く作られています


トーンアームを付け加えるだけなので、コスト的にも大したことなく
2倍おいしいと言うことでしょう。
蓋を被せた運搬状態
   
 
ワイヤーレコーダーの交換用ヘッド   
   ワイヤレコーダーのヘッドは、スチールワイヤとの摩擦で
使用とともに、すり減ってしまいます、
その為、業務用などでは、頻繁な交換が必要で、
交換用ヘッドが用意されていました、
交換も簡単で、機械に差し込むだけです。


マイクロホンで有名なSHUREの製品
   交換用ヘッドの説明書