ディベートの方法


英語を勉強している方々は、どこかでディベートという言葉を聞いたことがあると思います。
ディベートというのは、

「ある論題について肯定側と否定側に分かれ、一定のルールの下に議論をするゲーム」

です。ディベートは、論理的な思考力やコミュニケーション能力を身につけていくための有効な
トレーニングになります。また英語力の向上にも非常に有効で、私自身もいわゆる英会話の
様々な練習法を試みるなかで、ディベートが最も有効だと考えるようになりました。

  ディベートというと何やら難しそうなものに感じるかもしれませんが、日本語でなら小学生も
やっており難しいものではありません。話があっちこっちに飛んだり、一部の人だけが独占状
態で話したりということが無いので、方法がわかってしまえばむしろディスカッションより参加も
進行も簡単です。中上級者向けの英語サークル等ではディベートを実施することも多いので、
その基本的な方法をまとめました。


T 議論の基本

1.議論の構造
 ディベートは「議論をするゲーム」ですから、まず議論の構造を知ってください。議論の基本的
な構造は単純です。議論は「主張」とそれを支える「根拠」からできています。そして、それに
「証拠」が伴えば根拠は強くなります。これだけです。  



2.議論の方法

(1)主張する時
 意見がわかれる問題を議論している時に「ダメだからダメ!」と言ってもだれも納得してくれま
せん。上の図に示したように、主張をする時には根拠が必要なのです。
したがって、自分がなにか主張したい時には以下のように言うのが基本です。

@主張…「私たちは日本の裁判制度に陪審員制を導入することを主張します。」

A根拠…「その根拠は○○○です。」

B証拠…「そして、このような証拠資料があります。」

(2)反論する時
 根拠が無くなれば、もはやその主張はできません。したがって、相手の主張に反論したい時
はその根拠を攻撃すればいいのです。
同様に、こちらの根拠を守ればその主張は成立することになります。       
   

 

U ディベート

1.構成要素
 皆さんが会議で議論をするときには「自分の考えを主張」したり、聞いていてわからないこと
を「質問」したり、相手が言ったことに「反論」したりしますよね。ディベートは議論ゲームですか
ら同様に「主張(=立論)」、「質問」、「反論」という三つの部分から成り立っています。そし
て、最後に審判が判定をくだします。


(1)立 論
  自分たちの主張が正しいということを根拠を示して述べます。新しい政策や試みが論題とな
った場合には、

・肯定側の根拠は、その新しい政策や試みを実施することによって生じるメリット
・否定側の根拠は、その新しい政策や試みを実施することによって生じるデメリット

となります。

例えば「学校の制服は廃止すべきである」という論題なら、次のような立論が考えられます。

《肯定側》 @主張…「学校の制服は廃止すべきです。」
       A根拠…「なぜなら制服によって生徒の個性が失われているので、制服を廃止す
             れば生徒の個性を伸ばすというメリットを得られるからです。」

《否定側》 @主張…「学校の制服は廃止すべきではありません。」
       A根拠…「なぜなら、制服によって規律が守られているので、制服を廃止すれば学
             校の規律が乱れるというデメリットが生じるからです。」

※英語ディベートでは通常"Merit", "Demerit"ではなく、"Advantage", "Disadvantage"が用い
 られます。

※数ヶ月前に論題が発表されるディベートでは証拠資料が重要ですが、英語サークルなどで 
 はその場で論題が出され、証拠資料無しでおこなう即興型が多いので、ここでは証拠資料の
 部分は省略します。


(2)質問(尋問とも言います)
 相手の立論を聞いて、わからなかったところを確認するために質問します。相手の主張の矛
盾点を突いたりもします。


(3)反論(反駁・はんばく)
 相手の主張に対して反論します。また、相手の反論に対して自分の主張を守ります。例えば
以下のようになります。     

《肯定側》「否定側は、制服を廃止すれば規律が乱れると言いましたが、着ているもので授業 
      態度等が変わってくるものではありません。したがって制服廃止で規律が乱れるとい
      うデメリットは生じません。」

《否定側》「肯定側は、制服廃止によって個性が伸ばせると言いましたが、実際には着ているも
      のが同じでも考え方は様々で、個性的な人も大勢います。したがって制服廃止で個
      性が伸ばせるというメリットは得られません。」


【判定】
 最後に中立の立場の審判が最後に肯定側、否定側どちらが勝ったか判定を下します。ディ
ベートでは相手をやりこめることではなく、審判を説得することが目標となります。


2.ディベートの形式 
 議論がフェアであるためには、肯定側・否定側の双方に平等に主張と反論の機会が保証さ
れなければなりません。したがって、ディベートにはいくつかの形式がありますが、いずれもそ
の順番と時間が決められています。書くとややこしく見えますが、ようするに

「主張する機会と反論する機会が同じ回数ある。」

ということです。

 また、議論では後から発言する方が有利になるため、立論(主張)では肯定側が先に主張し
ますが、反論では否定側が先になります。
 

(1)1回主張、1回反論・・・最も簡単な形式で、初心者向けです。

@肯定側立論、Affirmative Constructive Speech

<否定側からの質問、Cross Examination>

A否定側立論、Negative Constructive Speech

<肯定側からの質問、Cross Examination>


B否定側反論、Negative Rebuttal Speech

C肯定側反論、Affirmative Rebuttal Speech


(2)1回主張、2回反論・・・「全国中学高校ディベート選手権(日本語)」はこの形式で、2回目
                の反論はお互いの主張を比較する「まとめ」の役割を持っていま  
                す。

@肯定側立論、Affirmative Constructive Speech

<否定側からの質問、Cross Examination>

A否定側立論、Negative Constructive Speech

<肯定側からの質問、Cross Examination>


B否定側第1反論、Negative 1st Rebuttal Speech

C肯定側第1反論、Affirmative 1st Rebuttal Speech

D否定側第2反論、Negative 2nd Rebuttal Speech

E肯定側第2反論、Affirmative 2nd Rebuttal Speech


(3)2回主張、1回反論・・・即興型でよく用いられます。

@肯定側第1立論、Affirmative 1st Constructive Speech

<否定側からの質問、Cross Examination>

A否定側第1立論、Negative 1st Constructive Speech

<肯定側からの質問、Cross Examination>

B肯定側第2立論、Affirmative 2nd Constructive Speech

<否定側からの質問、Cross Examination>

C否定側第2立論、Negative 2nd Constructive Speech

<肯定側から質問、Cross Examination>


D否定側反論、Negative Rebuttal Speech

E肯定側反論、Affirmative Rebuttal Speech


(4)2回主張、2回反論・・・大学生以上の英語や日本語ディベートでよく用いられる形式で 
                  す。毎週英語ディベートを実施している名古屋英語道場もこの型
                  でおこなっています。

@肯定側第1立論、Affirmative 1st Constructive Speech

<否定側からの質問、Cross Examination>

A否定側第1立論、Negative 1st Constructive Speech

<肯定側からの質問、Cross Examination>

B肯定側第2立論、Affirmative 2nd Constructive Speech

<否定側からの質問、Cross Examination>

C否定側第2立論、Negative 2nd Constructive Speech

<肯定側から質問、Cross Examination>


D否定側第1反論、Negative 1st Rebuttal Speech

E肯定側第1反論、Affirmative 1st Rebuttal Speech

F否定側第2反論、Negative 2nd Rebuttal Speech

G肯定側第2反論、Affirmative 2nd Rebuttal Speech


(5)1回主張、1回攻撃、1回防御、1回まとめ
 2006年12月に始まった、「全国高校生英語ディベート大会」で用いられている形式です。   
   従来は反論で相手の主張を攻撃することと、自分の主張を守ることを一度にやっていまし
たが、これを「攻撃」、「防御」と明確に分けており、各スピーチの役割がとてもわかりやすくなっ
ています。また「立論」の後だけではなく、「攻撃」の後に「質問」が設定されています。
詳しくはhttp://www.takanishi.ed.jp/selhi/documents/01alljapan_youkou.pdf をご参照ください。

          
  Affirmative Constructive Speech 肯定側立論    (4分)

  ――――― Preparation Time ―――― 準備時間 (1分)

  Questions from the Negative 否定側質疑       (3分)

  Negative Constructive Speech 否定側立論      (4分)

  ――――― Preparation Time ―――― 準備時間 (1分)

  Questions from the Affirmative 肯定側質疑      (3分)

  ――――― Preparation Time ―――― 準備時間 (2分)

  Negative Attack 否定側アタック             (2分)

  Questions from the Affirmative 肯定側質疑 (2分)

  ――――― Preparation Time ―――― 準備時間 (2分)

  Affirmative Attack 肯定側アタック (2分)

  Questions from the Negative 否定側質疑 (2分)

  ――――― Preparation Time ―――― 準備時間 (2分)

  Affirmative Defense 肯定側ディフェンス (2分)

  ――――― Preparation Time ―――― 準備時間 (2分)

  Negative Defense 否定側ディフェンス (2分)

  ――――― Preparation Time ―――― 準備時間 (2分)

  Affirmative Summary 肯定側総括 (3分)

  Negative Summary 否定側総括 (3分)
 
                               
                                                        
                          
3.基本的な技術とルール
  ディベートには、議論をフェアで噛み合ったものにするための技術やルールがあります。最も
重要なものをいくつか挙げておきます。

(1)ナンバリング
 立論で自分たちの主張をするとき、まず
「自分たちがこのように主張する根拠はいくつある。」
とまず述べておいて、

「最初に・・・、二番目に・・・という根拠がある。」

という言い方をするとお互いの議論がかみ合いやすくなります。
根拠は二つか多くても三つくらいにします。


(2)ニュー・アーギュメント
 議論がフェアであるためには、自分の主張に対して「相手に反論の機会を与えること」が重
要です。相手に反論の機会を与えない、例えば大勢で一人を囲んで一方的に言いたいことだ
けをいうのは議論ではなくリンチでありとても卑怯なことです。裁判でも相手がいないところで一
方的に主張するのは欠席裁判と言って許されません。
 そのためディベートでは「ニュー・アーギュメント」、つまり

「立論で言わなかった根拠を、反論で述べる。」

と言うのは相手に反論の機会を与えずに一方的に攻撃することになりますから、最も重大な反
則になります。自分たちの主張する理由は全て立論で述べる必要があります。


(3)形式的立場
 ディベートはあくまでゲームです。したがって、原則的にはその論題に対する個人的意見には
関係なく、くじなどで肯定・否定どちらかの立場に立ちます。




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