物の怪瞑想 その1

羽田稲荷

 

 どこで出逢ったのか思い出せない。

 

店先に並べられたガラクタの中で一対のお稲荷さんが目に留まった。

 

 

 「狐は祟る。まして古いものは危ない・・・。」

古いものには慎重な私が、そのときは何も考えなかった。

お稲荷さんの台座には「羽田」と刻印がしてある。

実家の近くの地名である。

 

 「一緒に帰ろうか?

古新聞に包んでもらった一対の稲荷像を慎重にポケットに入れた。

 

家に返って机の上に並べたお稲荷さんはなんだか満足そう・・・。

「今度は清流庵鎮守だね。」

 

夢で観音さまから「清流」の名前をもらった。

以来吉祥は自分の部屋を清流庵と呼んでいる。

 

 その晩、夢を見た。

 

行ったことがないのによく知っている場所。

駅を降りると目の前に大きな赤い鳥居。

境内は洞窟の中。

無数の祠にはお稲荷さん。

 

 夜中に目が覚めて机の上に飾ったお稲荷さんを見る。

「あなたが夢をみせてくれたの?」

 

再び眠りについた。

 

 よく歩く場所。

道の奥は山に続いている。

山頂には大きな石の鳥居。

大きな石のお稲荷さん。

ここから見る富士の美しいこと。

 

お稲荷さんの記憶だろうか?

それとも・・・。

 

 夢の中の世界も現実感を伴うなら実在しているのも同じ。

「実在の場所」だって帰ってきてしまえば夢の中の景色と同じ。

境界線はどこにあるのか・・・。

 

一対のお稲荷さんは今も私の机を守護してくれている。

 

 

「羽田稲荷」という名前のお稲荷さんは現存しません。

おそらくは穴守稲荷(羽田鎮守)のものではないでしょうか?

羽田空港は滑走路のど真ん中に大鳥居があることで有名でした。

GHQが取り壊そうとしてところ死者が出て中止になったとか・・・。

その後何回か取り壊しが試みられましたが、その都度事故で死者が出て中止になっていました。

その大鳥居が数年前取り壊されたと聞いて寂しく思いました。

お稲荷さんも諦めたのでしょうか?

それよりもあの鳥居は江戸の町の海側の結界だった気がしてならないのです。

お稲荷さんは人間の身勝手さに加護することをやめたのかも・・・?

いづれにしても古き物が失われてゆくのは悲しいことです。