さっき渡された紙袋を抱え、バスに乗りこむ。
平日の昼間だからか乗客のほとんどが年寄りだ。朝の通勤ラッシュ時のような殺気だった気配はどこにもなく、運転手までもが少しけだるそうに見えてくる。
イマイチはスピードをあげるよう頼もうかと思ったがやはりそれはやめた。普通、バスに急いでもらうよう頼むことなんてしない。急いでいるならタクシーに乗るべきだ。イマイチは、こんな状況になっているというのにタクシーに乗れない自分の金の無さを嘆いた。
バスなので停留所に人がいると止まる。プシューと音がしてドアが開く。女性とその子供らしき女の子が乗ってきた。他には誰もいない。ドアが閉まる。発車。
バスが動きだすと今乗ってきたその子供は、楽しげにあっちこっちへと動く。活発な子だな、とイマイチは思った。髪が短いため一瞬男の子と間違いそうになるが、そんな頭を結び付けてるリボンが少女であることを主張する。
突然その女の子が歌いだした。午後の気だるい雰囲気のせいか、誰もそれを注意しようとしない。
いや、注意しなくてもいい雰囲気なのだ。イマイチも今自分が置かれている立場を忘れてその拙い歌を聴いいっていた。
歌はどうやら「きらきら星」のようだ。時々、歌詞を確認するのか、母親のほうを見る。途切れ途切れの歌が車内に広がる。
と、イマイチは違和感に気付いて現実に戻った。さっきまで少女は日本語で「きらきら星」を歌ってたはずなのに今聴こえている「きらきら星」は明らかに英語なのだ。