宇宙、NASA、スペースシャトル、速度、名前、費用、打ち上げ、構造

スペースシャトルの世界を楽しむ

 

   2018年9月更新 楠本慶二 著

リンクフリー、作者に連絡不要

 

 

Yahooジオシティーズ・ホームページサービスが来年3月末に終了するので、本サイトのURLを変更します。

以下のコンテンツは、新しいサイトで展開しますので、今後共よろしくお願いします。

新しいサイト>スペースシャトルの世界を楽しむサイト

 

はじめに>ここでは、個人の趣味として、スペース・シャトルの世界( 宇宙、NASA、構造、費用、速度、打ち上げ、技術等 )の情報を集約しています。(宇宙関係本 現在 約62冊から選び出した知識の集合体)。 

 図 大きさ比較、左からH-2Aロケット、サターンV、人間、スペース・シャトル


アポロ計画(人間が他の星に行った)の世界を楽しむサイト

スペースシャトルの世界を楽しむサイト

Kusumotoエンタメ版

宇宙開発関係の豆知識集のサイト

宇宙関係のリンク(動画、文献等) 


目次>------------------------

0 スペース・シャトル・システム

1 スペース・シャトル・オービターの名前、建造の経緯

2 スペース・シャトル・システムにかかる お金関係

    2.1 宇宙服のあれこれ

3 シャトルの打ち上げ

 3.0 打ち上げ前の準備

 3.1 打ち上げに使用する燃料

 3.2 打ち上げ時のエンジンの点火順序とタイミング

 3.3 シャトル・システムの爆破システム

 3.4 シャトルの緊急時脱出システム

4 スペース・シャトル・オービターの宇宙空間での状況

5 オービターの着陸

6 スペース・シャトルの構造

    6.1 オービターの構造(クルー・モジュール、トイレ、コンピュータ、タイヤ、エンジン等)

    6.2 オービター以外の構造、付属施設(固体ロケット・ブースター、燃料タンク等)

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本ページの画像、及びNASAへのリンクについて>JAXAのサイトによると、「NASAの画像、動画、及び音声素材は、教育、情報提供を目的とする、写真集、教科書、展示物、およびインターネットのウェブサイトに使用することが可能であり、この包括的な許諾は個人のウェブページにも適用されます。また、個人のウェブサイトからNASAの許諾なしにリンクをはることができる」と記述されています。


0 スペース・シャトル・システム

 一般にスペース・シャトルと呼ばれている飛行機型のオービター(軌道船)だけでは、宇宙 (正確には地球の周回軌道)には行けず、外部燃料タンク、固体ロケット・ブースター、発射台、管制塔、運搬用クローラー、着陸用滑走路、整備棟、部品メーカー、輸送用改造ジャンボジェット機2機、予備のロケットエンジン、世界各地にある緊急着陸用滑走路、ロケット・ブースター回収用船、等々を含めて「スペース・シャトル・システム」と呼ぶ。

 もともとは宇宙ステーションへ物資を何度も運ぶトラックとして設計されており、標準仕様では月などに行く機器は装備していない。スペースシャトル計画は、アメリカの最優先事項として進められたアポロ計画、及びアポロミッションの中止で余ったサターンロケットを使用した簡易宇宙ステーション(スカイラブ計画)、旧ソ連との宇宙分野での友好を示したアポローソユーズ計画に続くもので、月 探査に続く宇宙利用で「安価に地球の周回軌道に物を運ぶトラック」として少ない開発コストで開発が進められた。

 システムの開発費5兆円+建造費1兆円+運行経費12兆円=18兆円で、システムの開発費が30年前の金額であることを考慮すると、累計24兆円以上は使用していると考えられ 、シャトル運用終了までに合計135回飛行したので、結果的には1フライトに1800億円かかった計算になる。

スペース・シャトル(オービター、軌道船)>大きさは小型旅客機(ボーイング737程度)なみ。重量73トンで15トンの荷物を運ぶ事が出来る。 荷物を重量・容積でいうと「最大定員81人を詰め込んだ大型路線バス(15トン)」を何度も地球外に運ぶ能力を有しており、100回の打ち上げに耐えるように設計された。

 シャトルには、メイン・エンジン3基、軌道操作用エンジン2基、姿勢制御用エンジン44基、初期のシャトルでは形状の異なる約3万4千種類の断熱タイル、約370kmの配線と1060個のバルブ、50個近くの各種タンクがあり、部品の総数は約250万点 (すべての部品には番号がついていて管理された。)で、「打ち上げ時の衝撃3G以上、マッハ25に100回以上耐える乗り物」として設計され、結果として世界で最も複雑で精密かつ高価な乗り物になった。

 初期のシャトルでは、形状の異なる約3万4千種類のタイル( 当然、タイル個々に設計図を作成し、コンピュータ制御工作機で切り出す。)で覆われており、すべてのタイルに部品番号がある。

○スペース・シャトルが飛行機ではなく、宇宙船であるという証明>シャトル内部の水循環式冷却パイプの配管図

 シャトルのコックピットは断熱性向上のために魔法瓶のような二重構造になっており(この構造のせいで、コックピットは狭い)、この配管は、コックピット部分と外部殻の間に設置されている。

 図では見にくいが、冷却システムの故障を考えて独立して機能する2系統の冷却パイプが並列で設置されており、高温になるであろう窓付近にも配管が設置されている。シャトルの金属製胴体部品は、軽量化のために金属の一枚板ではなく、ハニカム構造のアルミニウム合金板を薄いアルミ合金板でサンドイッチした構造となっている。

1 スペース・シャトル・オービターの名前、建造の経緯

 米国ではスペース・シャトルは飛行機ではなく、”宇宙を航海する船=宇宙船”という感覚で捉えており、歴史上の有名な船から名前を採用しており、英語圏では船は女性名詞なので、シャトルを擬人化して呼ぶ時は「彼女」と表現し、第1号機のコロンビア号も、冒険家コロンブスを女性風に”コロンビア”としている。

●エンタープライズ号(Enterprise, 1976年建造、飛行試験機 NASAの型式 OV-101、Orbiter Vehicle-101)>

 宇宙から帰還時の滑空飛行試験用に建造。 滑空用として設計されたので、エンジンはダミーで熱シールドも装備されていない。

 最初は1976年のアメリカ合衆国憲法発布200年を記念してConstitution( コンスティテューション、意味>憲法 )という名前になる予定だったが、人気テレビ番組「スタートレック」の宇宙船の名前をつけてほしいという手紙が多数届いたために、当時のフォード大統領によってエンタープライズ( 冒険という意味 )と命名。スミソニアン航空宇宙博物館に展示中だったが、シャトルの現役引退にともなって、ディスカバリー号がスミソニアンに展示される予定で2012年にニューヨークのイントレピッド海洋航空宇宙博物館に移管された。

 外観上の特徴としては、機首前部に大きなピトー管(長い棒)が設置されており、コックピットの窓周辺が黒くない。コロンビア号の事故後、事故原因を追究するためにエンタープライズの翼前部部分が一部外されて、外部燃料タンクの断熱材を高速で衝突させる試験が行われた。映画「トランスフォーマー2」で出てくるスペースシャトルがスミソニアン博物館に展示されていたエンタープライズ号。

●パスファインダー号(Pathfinder, 1977年建造、写真は初代パスファインダー)>

 シャトルの取扱いに慣れるために作られた実物大の大きさと重さの模型。最初(初代パスファインダー)は、木枠だけのハリボテでだったが、その後、下記の写真のように紙スペースシャトル風にされた。その後、日本で大スペース・シャトル展を開催するために、日本企業が100万ドル(当時で約2.5億円)かけて、スペース・シャトルそっくりに作製した金属製模型も「パスファインダー(先駆者)」と名づけられ、この二代目パスファインダーは現在、アラバマ州合衆国宇宙ロケットセンターに展示されている。

●コロンビア号(Columbia, 1979年建造 OV-102)>

 シャトルとして初めて宇宙に行った機体。初号機として万全を期して製作されたために、他のシャトルよりも4トン重く、その分だけ積載量が少ない。「コロンビア」とは、大航海時代にアメリカではじめて世界一周した船「コロンビア号」から命名。ちなみに、コロンビアという名前は”アメリカ大陸を発見した”とされるコロンブスの名前を女性風にした名前のつけかたで、コロンビア号を擬人化した際はher(彼女の)と表現され、英語圏では女性の名前らしい。28回目の飛行時に事故で失われた。

 この機体は、初期は偵察戦闘機SR-71ブラックバードから転用された射出座席2席及び射出用ハッチが装備されていた。しかし、射出座席は打ち上げ時に射出すると固体ロケットブースターの2800℃の炎にさらされる、マッハ3以下の時(=着陸の7分前程度)だけしか使用できない、最大で乗員が7人搭乗しているのに、仲間を残して船長とパイロットだけ逃げ出すことは出来ない等の理由から、STS-4ミッション以降で動作は中止し、STS-9ミッション以降は射出座席は取り外された。

初飛行>1981年4月12日 STS-1にてスペースシャトルとして初飛行。STS-9にて最初の「スペースラブ」ミッション。STS-65で向井さん搭乗。STS-87で土井さん搭乗。

累計飛行回数>28回。生涯の飛行時間は7218時間で約300日間地球軌道上に滞在。2003年STS-107ミッションの帰還時にテキサス州上空で空中分解し搭乗員7人死亡

写真>初期のコロンビア号。液体燃料タンクが白いので、打ち上げ1-3回目ぐらいの写真。コロンビア号は、翼面上部の黒いタイル部分が大きいのが特徴で、この部分は後期まで変更されることはなかった。初期は、打ち上げ待機時の液体燃料タンクの温度上昇を懸念して液体燃料タンクは白く塗装していたが、塗装重量増加の割に温度上昇予防効果が少ない事が判明して塗装しないことになった。

写真>後期のコロンビア号。 コロンビアは、 開発初期から随時改良が加えられており、STS-9(1983)ミッション以降に、尾翼の耐熱性を向上させるために黒いタイルを増加するとともに、垂直尾翼前方先端に機体の熱分布を監視するテレビカメラが設置されたポッド( SILT pod)が設置されたので尾翼上部が丸くなっている。1992年以降は、ドローグシュート(パラシュートみたいなもの )を搭載する関係で垂直尾翼の後方下部先端の形状が変更された。

 初期のコロンビア号は、垂直尾翼根元近くにある膨らみの部分の前部が、すべて白色のタイルで覆われているが、大気圏突入時に予想以上に温度が上がる事が判明したので、すぐに断熱性の高い黒色タイルに変更された。

●チャレンジャー号(Challenger, 1978年頃建造 OV-09)>

 構造強度試験機として建造され、256本の油圧ジャッキを使用して836ヶ所の荷重ポイントを制御して、11ヶ月に及ぶ連続耐久性試験、耐熱試験に使用された。その後、シャトルに改修されたが、10回目の飛行時に事故で失われた。「チャレンジャー」とは、イギリス海軍の研究用帆船の名前に由来。 英語でチャレンジとは「出来そうにないけれど、やってみる、挑戦する」という意味で、単に「やってみる」というのはトライという単語。

初飛行>1983年4月4日。STS-8にて初の夜間打ち上げ。

累計飛行回数>10回。生涯の飛行時間は1496時間で約62日間地球軌道上に滞在。1986年STS-51-Lミッションの打ち上げ時に空中分解し搭乗員7人死亡

 写真はSTS-51Fの打ち上げ時(チャレンジャー号)

●ディスカバリー号(Discovery, 1983年建造 OV-103)>

 船名は大航海時代にハワイ諸島を発見したクック船長(キャプテン・クック)の地球探査船に由来。既に40回近く飛行している。チャレンジャー号の事故の後には、24億ドル( 日本円の現在の価値にすると約1兆円ぐらい)かけて、茶色の燃料タンクには8ヶ所、メイン・エンジンには31ヶ所、固体ロケット・ブースターには155ヶ所、シャトル本体には220ヶ所の改良が加えられた。

 さらに、コロンビア号の事故後は、主翼に1秒間に2万個の微小物体との衝突を検知できるセンサー、22個の温度センサー、66個の加速度センサーが設置された。退役後、ディスカバリーはスミソニアン航空宇宙博物館の別館のウドバー・ハジー・センター(バージニア州)で展示されている。1984年の初飛行以来、2011年の運用終了までの27年間で合計39回、365日間飛行し、地球を5800回程度回った。

初飛行>1984年8月30日、STS-31ミッションでハッブル宇宙望遠鏡、STS-41で太陽極軌道探査機「ユリシーズ」を運搬、STS-60で初のロシア人飛行士が搭乗。STS-92で若田さん搭乗。STS-114で野口さん搭乗。STS-124で星出さん搭乗。STS-119で若田さん搭乗。STS-131で山崎さん搭乗。

累計飛行回数>39回。 生涯の飛行時間は8721時間で約363日間地球軌道上に滞在。

●アトランティス号(Atlantis, 1985年建造 OV-104)>

 アトランティスとは「大西洋」を意味し、1940年頃に活躍した海洋調査船に由来。アトランティス号以前では、断熱タイルのメンテナンスに非常に手間がかかったため、従来の断熱タイルの他に「耐熱ブランケット( 毛布)」を大量に採用し、結果として大幅に軽量化された。シャトルの初飛行はコロンビア号だったが、一番最後はアトランティス号が飛行し、これまでに累計33回飛行して退役した。

 アトランティスはケネディ宇宙センター(フロリダ州)に展示予定。アトランティス号は、後期に着陸距離を短くするためにドローグシュート(パラシュートみたいなもの)を装備したので、尾翼のデザインが変更され、ドローグシュートの排出口として尾翼後端下部に四角いドアが設置されていた。アトランティス号は、最も早い時期(西暦2000年)にコックピットがグラスコックピット化(計器が液晶画面)された機体でもある。

初飛行>1985年10月3日、STS-30で金星探査機「マゼラン」、STS-34で木星探査機「ガリレオ」を放出。STS-71で宇宙ステーション「ミール」と初ドッキング

累計飛行回数>33回。生涯の飛行時間は7261時間で約303日間地球軌道上に滞在。

 写真 アトランティス号、尾翼後端下部に四角い部分が見える。

●エンデバー号(Endeavour, 1991年建造 OV-105)>

 エンデバーは「努力」という意味で、大航海時代のクック船長 (キャプテン・クック)の船名に由来し、公立の小・中学生を対象とした一般公募から決定。チャレンジャー号の事故後、建造が検討され、エンタープライズ号の宇宙船への改修が検討されたが、改修費用の点からディスカバリー号とアトランティス号の予備部品を利用して建造。

 合計、25回飛行した後、退役し、今後はカリフォルニア科学センター(ロサンゼルス)に展示される予定。エンデバー号の建造にあたっては、よりパワフルなコンピュータ、改良型ナビゲーション・システム、予備電力装置、連続28日間の宇宙滞在を可能にした配管と配線設備、着陸の際にシャトルのスピードを落とすドラッグ・シュート(ドローグ・シュートの方が発音的には正しい)などの最新式の機器類を取り入れ、これらのシステムは、その後、他のシャトルにも採用された。

初飛行>1992年5月7日、STS-61にてハッブル宇宙望遠鏡の第1回修理実施。STS-47で毛利さん搭乗。STS-72で若田さん搭乗。STS-88で向井さん搭乗。STS-123で土井さん搭乗。STS-127で若田さん地球に帰還。

累計飛行回数> 25回。生涯の飛行時間は6808時間で約284日間地球軌道上に滞在。

スペース・シャトルの合計飛行回数>135回 (そのうち、16回がアメリカ軍関係の秘密ミッション)

 当初の計画では、シャトルは1機当たり100回飛行し、2週間に1回の割合で打ち上げる予定だったが、システムが複雑すぎてメンテナンスが大変だった、膨大な維持費がかかった等の理由によって、結果的には、シャトル30年の運用によって打ち上げ回数は135回にとどまった。計135回の打ち上げで、日本人の宇宙飛行士7人を含む計16カ国の355人(のべにすると852人)を宇宙に運んだ一方、1986年のチャレンジャー爆発事故と2003年のコロンビア空中分解で計14人が犠牲となった。

 コロンビア号、チャレンジャー号、ディスカバリー号、アトランティス号、エンデバー号の合計5機で、累計するとスペースシャトルは、30年間の運用期間中に1312日(3.6年)地球軌道上に滞在したことになる。135回のフライトで一番時間が短かかったのは、チャレンジャー事故のSTS-51Lミッションで1分13秒。打ち上げから着陸までの時間でいうと一番短かったのはコロンビア号のSTS-2ミッションで54時間13分12秒。一番長かったのはコロンビア号のSTS-80ミッションで423時間53分18秒だった。

参考文献>コクピットイズム「スペース・シャトル最終便」イカロス出版

2 スペース・シャトル・システムにかかった費用

 

 一般にスペース・シャトルと呼ばれている飛行機型のオービター(軌道船)だけでは、宇宙には行けず、外部燃料タンク、固体ロケット・ブースター、発射台、管制塔、着陸用滑走路、整備棟、部品メーカー、輸送用ジャンボジェット機、予備のエンジン、世界各地(ニューメキシコ、カリフォルニア、ハワイ、スペイン、沖縄)にある緊急着陸用滑走路、等々を含めて「スペース・シャトル・システム」と呼ぶ。

 最新のオービターであるエンデバー号( 92年初飛行 )は、建造費約2000億円。スペース・シャトル・システムの開発費は30年前の価格で約5兆円。

 シャトルの運用を維持するには、約180億円/月が必要で、ケネディ宇宙センターではコロンビア号事故以降は1回の打ち上げにつき、約900億円かかり、7000〜9000人が何らかの形で関わっていた。初飛行から計135回の飛行でスペース・シャトル計画は終了し、135回X900億円で、これまでの打ち上げで単純に計算しても合計12兆1500億円を使用していることになる。合計5隻の実飛行シャトルの建造でも、2000億円X5=1兆円の建造費がかかっていた。

 システムの開発費5兆円+建造費1兆円+運行経費12兆円=18兆円で、システムの開発費が30年前の金額であることを考慮すると、累計は24兆円以上は使用していると考えられる。

 計画当初は、シャトル1機あたりの生涯飛行回数は100回、年5回の運行(2週間に1回の打ち上げを予定していた)、打ち上げ一回につき30億円の経費を予定( 実際には、コロンビア号事故以前は1回の打ち上げに540億円、コロンビア号事故以降は900億円かかった )していたが、機体のメンテナンス及び事故の問題から実際には最も多い年で9回/年にとどまった。

○シャトル内の蛍光灯>打ち上げ時の振動で割れない特注品で一本数千万円。

○断熱タイル>3万4千個程度ある断熱タイルは昔のデータによると1個1000-5000ドル(10万円から50万円)程度かかっている。別の資料によると1平方mで10万ドル(=1000-200万円)。ちなみにアポロ計画の際の大気圏再突入用遮断シールドは1平方m=30万ドル( 今の感覚でいうと約4億円 )していた。

○スイッチ>シャトルに使用されるトグルスイッチは、真空状態でも使用可能なように&火花が飛ばないように内部の切り替え部分が金属チタンのケースに電子ビームで封印されており、1980年代に一個数千ドルのコストがかかっており、仮に2000ドルとすると現在の価格にして60-100万円ぐらいになる。

 また、無重量空間では、宇宙飛行士や物が飛び回って意図せずにスイッチを押してしまう事態があるので重要なスイッチの周辺にはスイッチガードが設置されている。

○タイヤホイール>着陸用車輪のホイールは強度を維持したまま軽くする必要から、金属チタンの塊から切削加工したもので値段は1本50万ドル( 1〜3億円程度 )。

○タイヤ>スペース・シャトルのタイヤはトラックのタイヤよりは大きくはないが、ボーイング747タイヤの3倍の荷重に耐えるとともに、時速250マイル( 時速400km )のスピードに耐えるようになっており、要求される性能を備えた上で、究極に軽くなるように設計されていて費用は5540ドル( 日本の感覚で言うと100-300万円 )。

○その他>(特殊布製バッグ)資料によると2001年で283ドルなので現在の日本円の価値にして20万円ぐらい。(シャトル専用LANコネクタ)2007年で2個で2200ドルとなっているので1個40万円〜60万円ぐらい。

○輸送費>シャトルは、打ち上げ場であるケネディ宇宙スペースセンター付属の滑走路に着陸するのが基本であるが、悪天候の関係でカリフォルニア州のエドワーズ空軍基地などに着陸した場合、その後、NASAのボーイング747特別機 (2機あり、アメリカン航空と日本航空の中古機を改造したもの)に「おんぶ、ピギーバック」して輸送され、この輸送費は約600万ドル(約5億4000万円)かかる。

 宇宙への運搬費から計算すると、コップ1杯(200g?)の水は30-40万円になるらしい。ちなみに、NASA宇宙飛行士の年収は6万5千ドル〜(650万円程度、ただし米国は物価が安いので実質的には約2倍の1300万円ぐらいの価値がある)、日本人宇宙飛行士は、シャトルの搭乗が決まる〜搭乗後までは特別手当てがついて年収1000万円を超えるといわれる。

2.1 宇宙服のあれこれ、値段>

 シャトル用に米国が開発した船外活動用宇宙服(Extravehicular Mobility Unit: EMU 重さ約120kg)は、ハミルトン・スタンダード社が1970年代に1900万ドルかけて開発したものであり、宇宙服アセンブリが100万ドル( 約9000万円)、生命維持装置が900万ドル(約8億2千万円)で合わせて1,000万ドル(約9億1千万円)。船外活動3回に1回ぐらいの割合で、徹底的に整備される。

 なお、船外活動用宇宙服は各パーツ毎にいくつものサイズが用意され、宇宙飛行士の体格に合わせて、パーツを交換する。グローブ(手袋)は宇宙飛行士毎に用意され、ひと20,000ドル(約180万円)で、最近の宇宙服は、宇宙空間で太陽のあたらない場所は氷点下の温度なので、指先が冷えないようにヒーターが内臓されている。

 アポロ計画の際は、宇宙飛行士それぞれの体にあわせて(指先の長さまで合わせた)宇宙服(地球では船外活動服 28kgだが、宇宙空間に出ると実質0kgになる。)が新調され 、背負っている生命維持装置(4時間分の酸素、通信装置入り)は、地球では約54kgで、合計すると約82kgあった。宇宙服内を単純に1気圧で加圧すると、風船のように均等に加圧され、指を曲げる、腕を動かす、足を曲げる事さえ困難になるので、酸素が主成分で0.3気圧になっていた。

 それでも、動きにくかったので、月面ではウサギ跳びをして移動していた。アポロ計画時の宇宙服( 船外活動服 )は、装備一式を着用するのに、同僚の手をかりて1時間もかかったのに対してシャトル用では一人で5分しかかからない。

アポロ月面活動ジャーナル(船外活動服 詳細写真編)

 最近では、宇宙服内の気圧を落とす(ただし、宇宙服内の気圧を下げすぎると、潜水病(血液中の窒素が泡となって気化する)になる恐れがあり、( 現在の国際宇宙ステーションの船外活動の際は、活動12時間前から、体内の窒素を減らす準備をしている )、服の表面を鎧のように硬い気密構造にする等の特別な工夫が施されている。

 また、月面活動では、宇宙服を船内に回収した際に、微細なレゴリス(月面上の微細なチリ)が宇宙船内に入り込んで、宇宙飛行士は花粉症に似た症状を示すとともに、レゴリスが機器類の中に入り込んで故障の原因になることが想定されたので、最近は、宇宙服を船内に持ち込まず、月面車と一体にして必要な時だけ、月面車から宇宙服部分を切り離して使用するという方法も検討されている。

 シャトルの打ち上げ風景で、宇宙飛行士がオレンジ色の服を着ているのをよく見る。一般人は、あれが宇宙服と思っているが、あれは打ち上げ時に、シャトルなどで打ち上げの際に空気漏れが起きた際に宇宙飛行士が一瞬で気絶する可能性があるので、その対策のために着ているもので、正式には「ハイ・プレッシャー・スーツ」といい、服の色合いから通称「パンプキン・スーツ(カボチャ・スーツ)」とも呼ばれる服である。

 初期の頃( STS-4まで )は、偵察戦闘機のSR-71から流用した黄土色のハイ・プレッシャースーツを着用していたが、問題はなかったのでSTS-5以降は省略された。STS-5からチャレンジャー号が爆発したSTS-51Lミッションまでは、打ち上げ時に関してはNASA独自の空色のフライトスーツに白いヘルメットを着用していたが、チャレンジャー事故後、離陸時&着陸時の安全策としてオレンジ色(インディアン・オレンジ色)のハイ・プレッシャースーツ( 背中のパラシュートも含めると43kgある。 )が開発されて着用するようになった。

 よって、打ち上げ時と帰還時にのみ着る特別な服であり、オレンジ色は海に不時着した時に発見されやすいためで、背中には簡易パラシュートを背負っている。シャトルからの脱出といっても、打ち上げ時には宇宙空間まで出てから宇宙ステーションまで行くか、帰還時には着陸の1分前程度( スピードがマッハ1以下になる時 )しかチャンスがないので、実際に役立つどうかは不明。ちなみに映画「スペースカウボーイ」では、大気圏突入後のスペースシャトルからの脱出シーンが見られる。

 宇宙飛行士が会見の時に着ている青い「つなぎ、作業服」(フライトスーツ、ジャンプスーツともいう)が、宇宙飛行士としての公式スーツ( 初期は水色、現在はロイヤルブルー )であり、「宇宙飛行士として会見する時には必ず着るもの」である。また船外活動時に着る服こそが、本当の宇宙服であり、宇宙空間では強烈な紫外線、日の当たっているところは200℃、日陰は-150℃で、微小な隕石が弾丸のように超高速で飛んでくる環境なので、それの対策が施されている。

 

3 スペース・シャトルの打ち上げ

 

3.0 打ち上げ前の準備、機体整備>

 

 シャトルの整備場(オービター点検整備施設(OPF))は、世界で最も複雑であるとともに、清潔な整備場と言われており、シャトルのコックピットの整備の際には、静電気を発生させないように白い服(最近は緑色)に着替える。 シャトルの耐熱タイルの修理には187人が関わっており、小さなキズを発見すると、歯科用ドリルを用いて穴を開けて、詰め物をして硬化させて磨くので、一つの修理には約3時間かかり、約40-60日間かけて修理している。

 タイルを取り外す際には、基本的には電熱線式のリムーバーを用いて切り出し、取り出したタイル穴にパテを埋めて、穴の形のコピーを作成し、断熱タイルの製造元で、型を元にして、「打ち上げ&帰還時の機体のねじれ、熱膨張を計算して3ミリメートルのすきま」が出来るようにタイルを作製する。

 シャトルをクレーンで吊り下げて、補助ロケットと燃料タンクを取り付けるのに48時間かかり、1兆円以上するシャトル本体をクレーン一本で吊り下げることが許されるまでには、クレーン運転者は3-5年の訓練を受ける。

 ロケット、燃料タンクをとりつけたシャトルは、クローラーと呼ばれる移動台に載せられて発射場まで移動し、クローラーの最高スピードは時速1マイル(1.6km)であり、燃費が1m/Lという世界で最も燃費の悪い乗り物としても有名である。このクローラーの乗員は18人であり、移動に時間がかかるのでポータブルトイレも用意されており、発射台に近づく際にはレーザー&GPSを使用して位置あわせを行う。

 発射台では120人の技師が作業に従事しており、整備場から運搬されたシャトルは、最低三週間かけて、外観のチェック、内部の燃料の積み込みが行われる。このように、シャトルの整備にはアメリカ中の12以上の施設、何万人という熟練工が関与していた。各オービターは約3年に1度、およそ1年かけてオーバーホール(分解をともなう定期点検)され、構造部材の劣化状況まで含めた大掛かりな整備作業や新型機器への更新などが行われていた。

参考情報> スペース・シャトルの運搬方法、打ち上げ準備は、「ニュートン別冊宇宙開発」 教育社に詳しく載っている。

3.1 打ち上げに必用な燃料>

 

 打ち上げ時の最大総重量は約2000トン(シャトル本体78トン+最大荷物25トン=約100トン、外部燃料タンクは756トン、固体ロケットブースターは590トンx2)で、約100トンの本体を打ち上げるために、最初の2分間で固体ロケットブースター中の527x2=1054トンの固体燃料を消費するとと同時に、外部燃料タンク中の約730トンの液体水素と液体酸素を打ち上げ後、約8分30秒で消費する。

 つまり簡単に言うと、約100トンのシャトル+荷物を打ち上げるために、約1800トンの燃料を約8分で消費する。

 打ち上げ時に使用される固体ロケット・ブースターは過塩素酸アンモニウムと粉末の金属アルミニウムを混合し、合成ゴムで固めたものを燃料としており、打ち上げから約2分間燃焼し、アルミ粉末の燃焼により、ブースターからは大量の白煙が噴出する。

 ちなみに、アポロ計画で使用したサターンVロケットの第一段ロケットの燃料はケロシン(簡単にいうと水分を徹底的に抜いた灯油)で、旅客機のジェット・エンジンの燃料もケロシン。水を抜くのは高度1万メートルでは燃料中の水分が凍って配管が詰まる恐れがあるためで、実際に冷戦時のB52爆撃機(長時間、上空で待機していた。)で詰まった例がある。

 これら燃料の違いに由来して、シャトル本体のエンジンの炎は青白く、一方、ブースターの燃焼炎は白く見える。大量の液体水素を使用して危険なので燃料供給係は、自ら志願して業務にあたっており、発射台の下には、アポロ計画時代に作製された緊急脱出用のカゴで避難できる分厚いコンクリートで出来た部屋が用意されている。

 固体ロケット・ブースターの推力は1本1200トン、メイン・エンジンの最大推力は1個200トンなので、打ち上げ時の推力は、1200*2+200*3=3000トン。つまり打ち上げ時には2000トンの機体を3000トンの推力で打ち上げていることになる。

3.2 打ち上げ時>

 

0 打ち上げ時間の設定>スペースシャトルに限らず、宇宙船・ロケットの打ち上げはたいてい〇時〇分〇秒などのように中途半端な時刻に設定される。これはローンチウインドウ(打ち上げ用の窓)とよばれる 打ち上げ可能な時間帯に合わせて時間が決められるため。

 たとえばシャトルが宇宙ステーションに行く際には、宇宙ステーションの軌道面が打ち上げ場所(フロリダ)の上空を通過するタイミングに合わせて、時間が決められている。宇宙ステーションは1日2回フロリダ上空を通過するが、シャトル周辺の打ち上げ安全確保(シャトルが爆発した際の周辺の安全確保)のために北東方向への打ち上げしかできなかったので、一日に一回しか打ち上げ時間の設定は出来なかった。

1 打ち上げ前の準備>シャトルの発射に関しては、発射の4-5時間前に統合宇宙司令部の宇宙監視網が宇宙を漂っている3500万個にも及ぶスペース ・デブリの軌道を解析し、シャトルの軌道近くを通過する物体がないことを確認している。また、緊急着陸に備えて、世界中(ニューメキシコ、カリフォルニア、ハワイ、スペイン、沖縄)の緊急着陸用の滑走路を準備する。

 打ち上げに際しては、コンピュータの「打ち上げシーケンス・プログラム」によって淡々と進められるため、打ち上げセンターには「発射ボタン」というものは存在しない。よって、搭乗員が行う操作はほとんどなく、非常事態の発生時の操作に備えている。打ち上げ10?秒前には、シャトルのエンジン燃料配管部分があるスペース(垂直尾翼の下部分)に、燃料が漏れて爆発しないように、自動で窒素を充填する。

2 打ち上げ16秒前>シャトルは固体ロケット・ブースター(以下、ブースター)下部に各4本、合計8本の爆発ボルトで固定されており、南方向を背にする方向で設置されている。発射の16秒前に、騒音防御装置が作動し、打ち上げ時の固体ロケット・ブースターからの音響振動、衝撃波からシャトルを守るため、及び打ち上げ場周辺への騒音を抑えるために、発射台や固体ロケット・ブースターの排気ガスの誘導坑に1100立方メートルの水を霧状にして放出する。

 1100立方メートルは110万リットル、これは25mプールの容積が35万リットルなので、25mプールにして約3個分の水を16秒程度で放出する能力。

 打ち上げ時の映像で、エンジンの先で火花が散っている映像があるが、あれは、気化して漏れた水素ガスが爆発を起こす前に、微小な火花で燃焼させるためである。

3 エンジン点火>離陸の6.60秒前にシャトル本体のエンジンNo.3が点火される。次に、6.48秒前にエンジンNo.2、次に6.36秒前に中央のエンジンがコンピュータによって点火される。これは、シャトルの後方から見て右、左、中央の順番。シャトルのエンジンは、液体燃料を使用しているので、エンジンに異常があればコンピュータが燃料をカットして離陸を中止する。

 エンジンの燃焼に異常が無い場合は、コンピュータが出力を100%にした後、固体ロケットブースターに点火する。なぜ、離陸の6.6秒前にエンジンを点火するかといえば、固体ロケット・ブースターは固体燃料を使用しているため、点火した後は火を消すことが出来ないためである。また、エンジンはシャトル(オービター+外部燃料タンク+固体ロケット・ブースター)の重心から外れた位置にあるため、エンジンの点火による巨大推力の発生によって、シャトル全体がわずかに傾き(外部燃料タンク先端で60cm程度)、この傾きが自然に垂直に戻るのに6.6秒かかるためである。

4 固定ボルト解放>コンピュータがエンジンの推力が90%に達したことを確認したら、ロケットブースターに点火信号が送られ、ブースターの点火の直前に固体ロケット・ブースターを発射台に固定していた8本のボルトを爆破してボルトが開放され、シャトルは発進する。

 シャトルは打ち上げ20秒程度で回転して地球が見えるようにしたあと、打ち上げ速度を稼ぐため&燃料節約のために東方向に飛行する。シャトルの総重量2250トンに対して打ち上げ時の出力は3200トンあり、十分な余裕があり、打ち上げ台を6秒かかって離脱する。ブースターは固体燃料を使用するロケットとしては史上最大のものである。

5 マックスQ>打ち上げ30秒後>シャトルのエンジンは推力を67%から109%まで変えることができる。発射時には大きな力が必要なので104%の推力を出すが、スピードが出るにつれ、大気圏では空気抵抗が大きくなり、空中分解の危険があるので、機体にかかる最大動圧(Max.Q,空気抵抗が最大になる時)になったら(打上げから約28秒後)、機体への負荷を抑えるため67%まで推力を絞る。この時、シャトルには30cm平方に290kgの空気圧がかかる。

 ある程度空気が薄くなって空気抵抗が小さくなれば、加速しても大丈夫なので約60秒後に再び推力は104%に戻す。ただ、シャトルの場合、最大加速度は3G以下となっているため、空気抵抗がなくなって燃料を使い果たして機体が軽くなり、3Gを越えそうになる前に推力を再び徐々に絞りこんでいく。

 最大推力が109%と中途半端なのは、エンジンが改良されて推力が増加したので、設計段階の推力から換算して使用しているため。ちなみに、人間に8Gがかかると腕が動かなくなり、12Gで眼球が平らになって焦点が合わなくなって視界がぼやけ、15Gがかかると胸が破れそうになり、背中じゅうの毛細血管が破裂するという。

6 固体ロケットブースター分離>上昇開始後約2分で高度約40kmで、全長45mの巨大ブースターを爆発ボルト&分離ロケットエンジンによって分離。

7 エンジン燃焼停止(打ち上げ9分後)>ケープ・カナベラル東方1200km、高度115kmで外部燃料タンク切り離し。その後、1分30秒慣性飛行。

8 軌道変更用ロケット点火>3トンの推力を有する2つのロケット(Orbital Manuevering Subsystem, OMS)を使用して、最終的に高度270kmの地球周回軌道に到達。

 シャトルの初打ち上げの日( 1981年4月12日、船長ジョン・ヤング(当時50才)、パイロット ロバート・”ボブ”・クリッペン(当時43才)には、ケープ・カナベラルの海岸に、数十万人が集まり、ジャーナリスト4000人を含むNASAから招待された8万人が打ち上げを見守った。

参考情報>スペース・シャトルの運搬方法、打ち上げ準備は、「ニュートン別冊 宇宙開発」教育社に詳しく載っている。

 

3.3 スペース シャトル・システムの爆破システム>

 

 米国連邦法によって、ロケット事故から民間人を守るためにシャトルを含む、すべてのロケットには最初から爆薬が設置されている。これは打ち上げ時にシャトルのコントロールが効かなくなって、市街地へ墜落することを防ぐためであり、打ち上げ場の安全主任(Range Safety、レンジ・セーフティー)である空軍将校が、打ち上げ時のすべての情報を一方的に監視しながら(=飛行管制センターとの情報のやりとりはしない)、必要に応じて遠隔操作によって爆破できるようになっている。

 具体的には、外部燃料タンクと両方の固体ロケットブースター内部に爆薬が設置されており、このシステムを作動した場合には、シャトルのコックピットに「爆破システム作動」の表示が出た直後に爆破するようになっている。確実に爆破出来るようにシステムは二重に設置されており、片方が故障しても、もう片方の指令で実行できるようになっている。

 打ち上げ場安全主任(レンジ・セーフティー)は、地上近くでシャトルを爆破した場合、固体ロケット・ブースター中の527x2=1054トンの固体燃料と、外部燃料タンク中の約730トンの液体水素が爆発することになり、爆風及び衝撃波で打ち上げ場近くの民間人も事故に巻き込むことになるので、大気の状態によっては打ち上げを中止させる権限も有している。

 空軍将校は、「宇宙飛行士の命を奪う可能性の高い爆破指令をためらわない」ように宇宙飛行士主催の行事には一切参加しないというのが慣例になっている。

 累計135回の打ち上げにおいて、このシステムは一度だけ作動されたことがあり、それはチャレンジャー号爆発の時に制御不能になった固体ロケット・ブースターが近隣地域に落下するのを防ぐために使用された。

 爆破システムの存在は、当然、宇宙飛行士にも知らされており、宇宙飛行士は搭乗前に遺書を準備している。打ち上げ時には、家族(配偶者、子まで)が発射場の特等席で打ち上げを見守るが、その際には家族と親しい宇宙飛行士が寄り添い、打ち上げ失敗時の精神的ケアを担当することになっている。

参考文献>「ライディング・ロケット ぶっとび宇宙飛行士 スペース・シャトルのすべてを語る(上巻、下巻)」、化学同人

詳細は、スペース ・シャトル・クルー・オペレーション・マニュアル(フライトマニュアル 1161ページ PDF 無料)の「1-4-7ページ」を参照。

 

3.4 スペース・シャトルの緊急時脱出システム>

打ち上げ時の脱出> 打ち上げ準備中にトラブルが発生した場合、宇宙飛行士達は、自力でシャトルから脱出し、緊急脱出用のカゴに乗ってケーブルカーのように打ち上げ台から脱出出来るようになっており(この風景は映画「メン・イン・ブラック3」の後半で見られる)、そのために、シャトルのハッチ(ドア)は内側から比較的簡単に開くように出来ている。

 これは、内側のハッチが開きにくくて、死亡者が出たアポロ1号事故の反省に基づいて設計されたためであるが、その後、シャトルでの宇宙飛行中にハッチの取っ手に興味を示した飛行士(某中東国の王子)がいたことから(宇宙飛行中にハッチが開くと全員死亡)、シャトル運用中期以降は、取っ手部分に船長が飛行中にカギをかけられるように変更された。

 実飛行一号機のコロンビア号には、初期は偵察戦闘機SR-71ブラックバードから転用された射出座席2席及び射出用ハッチが装備されていた。しかし、射出座席は打ち上げ後、2分以内なら射出できる設計になっていたが、2分以上立つと脱出高度が高くなりすぎ、速度も高くなりすぎる上、射出すると固体ロケットブースターの2800℃の炎にさらされる、マッハ3以下の時(=着陸の7分前程度)だけしか使用できない、最大で乗員が7人搭乗しているのに、仲間を残して船長とパイロットだけ逃げ出すことは出来ない等の理由から、中期から射出座席による脱出システムは不採用になった。シャトルの初期設計プランでは、非常時には戦闘爆撃機F-111で採用された「コックピットまるごと分離」してパラシュートで帰還することも検討されたが、結局は不採用になった。

着陸時の脱出>

空中脱出> シャトル運用中期以降は着陸時にハッチ部分からパラシュートで脱出出来るように「脱出バー」が設置された。この脱出バーについては、映画「スペース・カウボーイ」の後半で脱出風景を見ることが出来る。

海上での脱出> 旅客機と同じように滑り台式のゴムボートがあり、出入り口ハッチから脱出する。詳細は、スペース・シャトル・クルー・オペレーション・マニュアル(フライトマニュアル 1161ページ PDF 無料)「2-10-14ページ」を参照。

着陸後の脱出> 本来の滑走路以外に不時着し、出入り口ハッチから脱出できない場合には、コックピット上部の窓から脱出出来るようになっている。この際、機体外部 (上部)は大気圏再突入時の加熱によって、まだ200-300℃であるので、脱出に際しては、専用の耐熱毛布を機体外面にかけてから脱出するようになっている。

詳細はスペース・シャトル・クルー・オペレーション・マニュアル(フライトマニュアル 1161ページ PDF 無料)

「2-10-18ページ」を参照。

参考文献> 「スペース・シャトル搭乗員ハンドブック」 角川書店

 

3.5 スペース・シャトルのその他>

 シャトルが、地球周回軌道に乗るまでの時間は約8.5分、一回のフライトで翼を使用する時間は着陸時の5分間。基本は宇宙に2週間滞在するようになっており、宇宙空間で機体に深刻なトラブルが生じた場合は、予備のシャトルが救出に行く体制が整えられており、トラブルのあったシャトルを放棄して、船外活動服を着た宇宙飛行士が宇宙空間を移動して救援のシャトルに移乗し、船外活動服を着る資格のない飛行士は、酸素マスクをつけて球状の袋に入って船外活動服を着た飛行士に連れて行ってもらう予定だった。

参考文献>「コクピットイズム スペース・シャトル最終便」 イカロス出版

参考文献>「スペース・シャトル搭乗員ハンドブック 」 角川書店

4 スペース・シャトル・オービターの宇宙空間での状況

 宇宙空間では、太陽光の当たる場所は表面温度が100℃以上、影の部分は-150℃になるため、シャトルが地球軌道上にいる間は、貨物庫(ペイロード・ベイ)のハッチを開けて、機内に熱がこもらないようにしている。またペイロード・ベイ・ハッチの裏側には、銀色のラジエーターが装備されており、シャトルの電力源である燃料電池から発生する熱を宇宙空間に放出しており、強烈な太陽光線によってラジエーターが加熱されないように、シャトルから見て地球表面が上部にあるように飛行している。

 これは、地上から見ると背面飛行している姿勢。よって、写真でよく見られる「宇宙で貨物庫を開けている姿」が宇宙空間に滞在している時の本来の姿である。映画などではカッコよく見せるために機首を進行方向に向けているが、微細な宇宙ゴミ(スペース・デブリ)が窓に衝突する確率を下げるために、実際には船尾を進行方向に向けて背面飛行していた。

 シャトル胴体の同じ面を長時間太陽方向に向けていると、その部分の温度が上昇し(その反対面は低温になって)熱的にひずむので、このような姿勢(=飛行機が飛んでいるような姿勢)は長時間は取れない。従って、実験要求などの理由がなければ、基本的には、地球に背を向けた状態で飛行する。

 NASAの定義では、地球からの高度100km以上を宇宙と定義しており、高度100km以上に到達した人を宇宙飛行士と呼ぶ。国際宇宙ステーションは地上400kmを飛行している。ちなみに、地球から月までの距離は約38万km、スペース・シャトルが高度100-400kmを周回するのに対して、アポロ計画では、月まで片道3日かけてシャトルの3800倍の距離を往復した。

 シャトル、国際宇宙ステーション内が無重力状態なのは、地球重力の届かない高度を飛行している訳ではなく、実際には宇宙ステーションの高度でも、地球の9割の引力が働いている。しかし、猛烈なスピードで地球を回転することで遠心力が働き、これが引力とつりあっていることで、無重量状態(無重力ではない)となっており、周回速度が下がると重力に負けて地球に落下を始める。よって、地球に帰還するときは、わざと周回速度を下げて自然落下を始めるようにする。

<スペース・デブリ問題> 西暦2000年段階で、人類は約4500個の人工衛星を打ち上げており、宇宙には9000個以上の人工物体が浮遊しており、1ミリメートルから10センチメートルの破片(デブリ)は3500万個が地球周辺を漂っているという。そのために、シャトルのコックピットの窓は、ほとんど毎回、新品に交換されていた。中型のデブリの位置情報はNASAがすべて把握しており、シャトルの飛行中は、デブリがシャトルの軌道に近づく場合は、警報が出され、衝突が予測される場合には、シャトルの軌道を変更( 宇宙空間ではスピードを増減するだけで軌道高度が変化する。)するように決まっている。

参考情報> スペース・デブリについては、「ニュートン別冊 宇宙への挑戦」 ニュートンプレスが詳しく解説。

 

5 スペース・シャトル・オービターの着陸

 アポロ宇宙船時代は、太平洋上の特定の領域に着水すれば、付近で待機していた空母が回収にあたったが、小型旅客機程度の大きさがあるシャトルは、アメリカ、フロリダにある特定の滑走路に着陸せねばならず、着陸時はジェットエンジンのついていない巨大なグライダーなので、着陸のやり直しは出来ない。

 シャトルは、打ち上げ場であるケネディ宇宙スペースセンター付属の滑走路に着陸するのが基本であるが、悪天候の関係で、カリフォルニア州のエドワーズ空軍基地などに着陸した場合には、その後、NASAのボーイング747特別機に「おんぶ、ピギー・バック」して輸送され、この輸送費は約600万ドル(約5億4000万円)かかる。よって、緊急の場合を除き、出来るだけケネディ宇宙スペースセンターに着陸するように努めていた。

 シャトルは着陸のやり直しは出来ないので、何時何分何秒に1秒も間違えずに、どの地点で降下をはじめるかを決定しておかねばならない。飛行場の天候を確かめて、着陸する飛行場の近くまで接近した後に”隕石が落下するように”急速に高度を下げる。着陸のやり直しは出来ないので、オーバーランに備えてケネディ宇宙センターには世界最長( オーバーラン部分も含めると全長5.2km )の滑走路が整備されている。

 大規模国際空港の滑走路が全長4km程度であることを考えると、かなり長いことが分かる。また、シャトルの高速着陸に耐えるために、コンクリート舗装は厚さ40cm、平坦性も100mで1.6mmの精度で建造されており、水溜りによるハイドロプレーン現象を抑えるために、十字型のミゾが彫ってある。

 地球周回軌道では、飛行高度に応じて機体の遠心力と地球の重力がつりあう速度があり、この速度を維持することによって、地球を周回できる。

 地球への帰還は約1時間前から準備が始まり、約30分かけて各種システムの点検が行われる。その後、コンピュータが自動で姿勢制御システムを用いて帰還用の姿勢 (進行方向とは逆方向、かつ船底が地球方向になる側)に変更した後、周回軌道の高度122km上でOMS (Orbiter Maneuvering System)エンジンを点火して、シャトルの速度を落とした後、機首を進行方向に変更すると、その後、自然に地球の重力で落下が始まる。

 この時、着陸30分前、マッハ25程度、グライドスロープ45度(1m進む間に1m降下するということ)であり、機首から大気中に突入すると、風圧による空中分解及び大気との摩擦熱( 正確には 大気との摩擦ではなく、空気を高速で圧縮した際に発生する熱( 大気の圧縮断熱による発熱で、あまりに高速であると大気が機体周辺を流れにくくなり、圧縮されて高温になる。)、及び高熱によるプラズマの発生)によって機体表面温度が上がり過ぎるために、向かい角32度(40度の説もある)になるように自動的に機首を上げるようになっている。向かい角32度というのは、機体下面全体で空気を均一に受けることによって落下速度及び摩擦熱の増加を防ぐための角度である。

 大気圏に突入すると高度80kmから50kmまでは大気によって加熱され機首と翼の前面(シャトルで灰色の部分)は最高で1600℃以上になる。最高温度になるのは高度70kmで着陸約20分前。高度が下がるにつれて大気濃度が上がりラダーやエレボンが効くようになってくるので、さらに速度を落とすためにマッハ2.5程度の速度で最大80度に傾いて自動的にS字ターンを行う。この時のグライドスロープは30度(約2m進む間に1m降下する)。

 着陸地点から距離40km、高度15kmになるとシャトルは滑走路に進入するためのトラフィック ・パターン ( 高度に応じて、何回も旋回する )に入り、着陸1分30秒前に音速以下の速度になり( この際、衝撃波が発生し、連続して2回”ドン”という音がフロリダ周辺に響き渡る )、20度のグライドスロープ(=下降割合、下降率。 ”垂直落下は90度のグライドスロープということになる。”)にしたがって滑走路に進入してくる。ちなみに、通常の旅客機のグライドスロープは約2.5度に設定されており、旅客機の10倍程度の降下率で落下してくることになる。

 高度600m、時速430km、タッチダウン15秒前で車輪が下ろされ、約346kmで着陸(ジェット旅客機の着陸速度は約260km)した後、待機していた防毒作業班が、機体から有毒な燃料であるヒドラジンを抜き取り、 着陸直後は船体の白い部分は200℃であるので機体表面の温度が宇宙飛行士が外に出られる温度になるまで約1時間待機する。その後、飛行士達は、30分から1時間かけて医師による簡単な問診を受けてから解放される。

 機体は、温度が下がるまで約4時間大気中で放置された後に整備塔に移動する。初期のシャトルは、そのまま着陸していたが、中期以降は、オーバーランを防ぐために、ドローグ・シュート(ドラッグ・シュート)と呼ばれるパラシュートを展開して、滑走距離を短縮した。ちなみに、ドラッグシュートは停止直前に分離されて、停止後にシャトルが風にあおられるのを防いでいる。また、シャトルの着陸風景で、小型ジェット機が並走している映像があるが、あれはシャトルの車輪( メイン ・ギア )が、いつごろ接地しそうかを目視で確認して、シャトルクルーに連絡するために飛行している。

参考文献> 「コクピットイズム スペース・シャトル最終便」 イカロス出版

6 スペース・シャトルの構造

 

6.1スペース・シャトル・オービターの構造

 

本物のスペースシャトルを近くでいくらでも見られるサイト>「グーグル ストリートビュー ケネディ宇宙センター」NEW

全体の寸法>一般にスペース・シャトルと呼ばれているオービター( 飛行機の形をしたもの )の全長は37m、幅は23.7mで、旅客機で言うとボーイング737-800型程度、エアバスA320程度の大きさ。貨物室( ペイロード・ベイ )の寸法は、直径4.6m、長さ18mで、最大約24トンの荷物を収容可能。一般的な大型路線バスの寸法は、全長10m、高さ3.1m、重量10トン、最高でお客74人を乗せた場合は重量14.4トンであるので、シャトルは満員の路線バスを余裕で大気圏外に運ぶ能力がある。100回の打ち上げに耐えるように設計されており、後期型シャトルでは、宇宙飛行士7人が故障に備えて最大30日間生活出来るように改造されていた。

 シャトルの主契約はロックウェル・インターナショナル社(契約時の名前は、ノースアメリカン・ロックウェル社、現在はボーインング社の一部門。)胴体中央部は、ジェネラル・ダイナミックス社、コンベア社製、機首部分、荷台扉、メイン・エンジン、後部胴体はロックウェル・インターナショナル社製、垂直尾翼はフェアチャイルド社製、メイン・ギア、ノーズ・ギアはメナスコ社製、主翼はグラマン社製、翼前縁部品はLTVエアロスペース社製、断熱タイルはロッキード社製、軌道変換ロケット(OMS)はマクドネル・ダグラス社製。船内環境はハミルトン・スタンダード社製、飛行操縦装置とレーダー高度計はハネウエル(ハニウェル)社製、燃料電池はプラット&ホイットニー社製。固体燃料ロケットはシオコル・ケミカル社、外部燃料タンクはマーチン・マリエッタ社、船内コンピュータはIBM社、固体ロケットの組み立てと発射装置はユナイテッド・スペース・ブースター社製。

窓(ウインドウ)>シャトルには、コックピット前方に6枚、天井部分に2枚、後部フライトデッキ(ペイロード・ベイ側)に2枚、サイド・ハッチの小窓1枚の計11枚の窓があり、合計37枚のガラスが使用されている。3層のガラスから構成されるのが基本であるが、後部フライトデッキは2層。また場所、層によりガラスの厚さは異なる。

 最も厚みがあるのは、コックピット前方の6枚で、外側の層は、厚さ1.58cm、中央層3.3cm、内側の窓ガラスは1.65cm。この3枚は役割が異なり、外側は427℃までの高温に耐えると共に、スペース・デブリ(小さい隕石や、衛星の破片など)衝突に耐えるように強化されている。一番内側のガラスは与圧を保つためのガラス。これらのガラスには反射防止コーティングや赤外線カット・コーティングなども施されている。

 ガラスの材質は、内側と中間のガラスがアルミ・シリカ・ガラス(コーニング社製1723ガラス)、一番外側のガラスは、溶融シリカ・ガラス(コーニング社製7940 高純度溶融シリカガラス、Corning glass 7940 high purity fused silica)を使用。これだけ厚みのあるガラスだが、操縦や地球観測時に支障をきたさないように非常に透過性が良いガラスとなっている。

 また、宇宙から帰還するたびに、ガラス表面を丹念に調べ、髪の毛1本のキズでもあれば事故の原因になるので交換しており、ほとんど毎回、スペース・デブリの衝突の関係で外部ガラスは新品に交換されていた。さらに全ての窓には個々の窓ガラスを囲むようにして冷却水用のパイプが独立して、故障しても大丈夫なように2系統設置されており、循環水で窓枠を冷却している。

 シャトルには雨用のワイパーがなく、整備作業中にガラスをキズつけないように打ち上げ直前まで専用のカバーで覆っている。

 外観からは分からないが、シャトルのコックピット部分は断熱性を増加させるために魔法瓶のような入れ子構造になっており、そのせいでフロントガラス部分からの眺めは良好ではなく、宇宙飛行士の話によると、コックピット上部の天窓やペイロード側の窓の方が宇宙空間がよく見えるという。また、強度的問題、宇宙からの強烈な紫外線、放射線の影響をさけるために、窓は意図的に小さく作られている。

参考にした引用元>JAXA 広報、情報センター

耐熱部品、断熱タイル、機体との接着方法、断熱ブランケット(断熱毛布)>

断熱タイル>シャトルは基本的には最小限の補修で100回の飛行に耐えるように設計されたが、実際には微小なキズが発見されたタイルは毎回取り替えることになった。タイル同士は3mmの隙間を開けて「圧力分離パッド」と呼ばれるNomex(ノーメックス)製フェルトに接着され、接着剤でアルミ合金製機体に接着されている。タイルの多くは手のひらサイズであり、タイル同士のすきま&柔らかいフェルトによって飛行中に機体が歪む、捻じれることに対応している。

白いタイル>LRSIタイル(低温再使用可能表面断熱タイル) (Low-Temperature Reusable Surface Insulation tiles)

 シャトルの白いタイル、黒いタイル部分は石英ガラス・ファイバーの三次元構造からなる「断熱タイル(=耐熱タイルではない)」で構成され、標準的なタイルの寸法は約15cm角、厚さは約3cm、密度は0.14で、つまり80%程度は空気が含まれている軽石のようなものでロッキード社が開発した。

 結晶ではなくガラス状石英という点が重要であり、結晶状石英は200℃付近で結晶変態(結晶の構造がクリスタロバイトに変化)を起こし、タイルが脆くなるので、技術者たちは純度99.7%以上の珪素砂をミネソタ州の鉱山から見つけてきた。ちなみに、石英の純度が低い場合は耐熱温度が下がるという問題がある。

 石英ガラス・ファイバー層の上には、ホウ酸ケイ素ガラスでコーティングして太陽光からの熱を反射するようになっており、その上に飛行中の空気抵抗を抑えるように、耐水性ポリマーがコーティングしてある。また、すべてのタイルにはシリアルナンバーが表面に印刷、裏面に刻印されている。シリアルナンバーがVOではじまるタイルは飛行用に作製されたタイルで、VTではじまるナンバーのタイルはテスト用に作製されたタイルである。

 大気圏に突入すると、シャトルの白い部分の温度は300℃を超えて、着陸直後でも200℃以上になっているので、着陸後、機体表面が冷えるのを待ってから、宇宙飛行士は機体から降りる。

黒いタイル>HRSIタイル( 高温再使用可能表面断熱タイル ) (High-Temperature Reusable Surface Insulation tiles)

 黒い部分は、白い断熱タイル上に、ホウ酸ケイ素ガラスに輻射熱を放出する黒色顔料(テトラボロン・シリサイド、Tetraboron silicide, B4Si )を混ぜて、厚さ2-3mmにコーティングしたものであり、黒いタイル表面に侵入する熱エネルギーの9割は、輻射熱、放射光として即時に外部空間に放出され、内部には1割の熱エネルギーしか伝わらないようになっており、機体構造体のアルミ合金部分は最大で177℃以上にはならないようになっている。

 「断熱タイル」は、初期の機体では機体の約70%を占め、形状の異なる約3万4千種類のタイル(複雑な形状の機体に合わせて作るために、一つとして同じ形状、厚みのものはないとされる。当然、タイル個々に設計図を作成しており、パソコンでタイル番号を入力すると、コンピュータ制御工作機が自動で切り出し、その後手作業によって黒い物質をスプレーして仕上げる。)で覆われており、後期のアトランティス号、エンデバー号あたりになると、断熱毛布の使用によってタイル数は2万6千個程度に減っている。

 断熱タイルはアルミ合金製の機体表面に耐熱ナイロン製のクッション材を通じて接着剤で固定されており、タイルは熱膨張及び内部金属製構造体の飛行中のねじれを計算して3ミリメートルの隙間を設けて配置されており、その隙間にはセラミック繊維製板が挟みこまれている。

 タイルは、大気圏再突入の際に、ある一定の温度を越えた場合、次回の打ち上げまでに交換する必要があるが、これまでは、その温度を越えたかどうかは分からず、一つ一つタイルを検査していた。そこで、最近のシャトルでは、タイルひとつひとつに無線タグと温度センサを組み合わせたものを取り付け、無線タグのデータから迅速にタイルを交換できるようにしている。

 3万4千個程度ある断熱タイルは、昔のデータによると、1個1000〜5000ドル(10万円から50万円)程度であり、平均すると1回の飛行で30-100個の断熱レンガが交換されており、2009年から2010年にかけて約9000個のタイルが廃棄される見通しとなっている。

 2010年度のシャトル運用停止にともなって断熱タイルの廃棄、教育機関への配布が検討された際、石英ガラスファイバーの発がん性も検討されたが、NASAの報告書によると発がん性はなく、目や肌に触れた時にかゆみが起こる程度との事。複雑な機体構造に一枚一枚貼り付ける構造なので、基本的にはタイル一枚一枚の形状は異なり、そのために機体ごとにタイル地図が作製されている。

参考文献> スペース・シャトルのタイルの作り方の詳細

機体との接着>

 断熱タイルは、高純度の酸化ケイ素繊維で作製されているので、大気圏突入時の1600℃に耐えるが、機体はアルミニウム合金で出来ているので200℃程度で機体が軟化してしまう。また、断熱タイルは、ほとんど熱膨張しないのに対して、アルミニウム合金は熱膨張するので、シャトル開発にあたってはタイルと機体との接着をどうするかが問題になった。

 それで、断熱タイルの裏面にフェルト状シートを挟み、接着剤にはシリコーン(高分子有機シリコン化合物)を使用してこの問題を解決した。また、炭素繊維強化炭素複合材料(C/Cコンポジット)で作製されている部分(シャトルの灰色部品)は、交換を容易にするためにボルト締めされている。

機体タイルの補修方法>

 シャトルの耐熱タイルの修理には187人が関わっており、小さなキズを発見すると、歯科用ドリルを用いて穴を開けて、詰め物をして硬化させて磨くので、一つの修理には約3時間かかり、約40-60日間かけて修理していた。タイルを取り外す際には、基本的には電熱線式のリムーバーを用いて切り出し、取り出したタイル穴にパテを埋めて、穴の形のコピーを作成し、断熱タイルの製造元で、初期は3.4万個、後期は2万個あるセラミック製の型を元にして、機体のねじれ、熱膨張を計算して3ミリメートルのすきまが出来るようにタイルを作製する。

断熱ブランケット、断熱毛布>Flexible Insulation Blankets (FIBs) (柔軟な断熱毛布)、Composite Flexible Blanket Insulation (CFBI)と表現することも。

 初期のシャトル(コロンビア、チャレンジャーぐらいまで)の機首部分の多くは白い「断熱タイル」で大部分が覆われていたが、打ち上げ時のタイルの損傷、脱落、剥離の反省から中期以降のシャトルでは「白い断熱タイル」は少なく、機体の軽量化を兼ねて「白い断熱ブランケット(布)」を採用している。場所はペイロード・ハッチ、翼上面、胴体側面などで、後期のディスカバリーなどでは、コックピット周辺も断熱ブランケットに変更された。この布は、NOMEXと呼ばれる耐熱性ナイロン繊維のシートで、厚さは4mmから1.6cm。これらの形状は、単純なものから小さくて複雑なものまであり、部品によっては工場のおばあちゃん従業員がミシンで縫って仕上げていた。

写真>窓周辺と出入り口周辺を除くと、後期シャトル(コロンビア、チャレンジャーよりも後)は断熱毛布が使用されているのが分かる。

耐熱部品(灰色の部品)>Reinforced Carbon-Carbon、「炭素繊維強化炭素複合材料」

 機体先端、翼先端の灰色の部分は、最も加熱される部分(大気圏突入時に、この灰色部品は1650℃に加熱される。)で炭素複合材料製の「耐熱部品」で出来ており、この部品には最高1600℃以上の温度とマッハ20程度の空気圧、及び機体自身から発生する衝撃波の負荷がかかる。

 この部品は、英語ではReinforced Carbon-Carbon、日本語では「炭素繊維強化炭素複合材料」と呼ばれ、炭素繊維製の部品にさらに炭素を染み込ませ、さらに大気中での酸化を防ぐために表面にはシリコン・カーバイト(SiC)の層がコーティングされている。また、シリコン・カーバイト層と炭素部分の熱膨張差によるクラックの発生を抑えるために、テトラエチル・シリケートをコーティングし、その上に空気抵抗を抑えるために、つやのあるオーバーコート材でコーティングしている。

 炭素繊維は1600℃になっても実用的な強度を維持するが、大気中では450℃以上で燃える。よって、炭素が燃えないように、シリコン・カーバイトでコーティングして炭素が酸素と接触するのを防止している。シリコン・カーバイトは、炭素とケイ素の化合物で、炭化ケイ素とも呼ばれ、商品名「カーボランダム」が有名。高純度の炭化ケイ素は無色透明で、純度が悪くなるにつれて不純物の色によって黒色になる。よって、シャトル用は、薄い灰色なので高純度に近いといえる。

 大気圏突入時に、この灰色部品は1650℃に加熱されるが、この熱が内部に侵入しないように、灰色部品の中にはセラミック・ファイバーで出来た毛布とシリカ・ガラスファイバーが詰めてある。これら灰色の部品は交換が容易なように、ボルトで機体に接合してある。

 

居住空間(クルー・モジュール)>

 クルー・モジュールは、外部から断熱及び気密確保のために、魔法瓶のように機体外殻から幅1m程度、中空(ここが真空か、何かの気体が充填されているかは不明)に浮かぶような構造になっている。 そのせいでフロントガラス部分からの眺めは良好ではなく、コックピット上部の天窓やペイロード側の窓の方が宇宙空間がよく見えるという。

 シャトルのクルー・モジュール内部は、3階建てになっており、一階は空気清浄ユニット及びゴミ箱が詰まっているので通常は入らない。人間が排出する二酸化炭素は一階の空気洗浄ユニット(使い捨ての水酸化リチウム缶で12時間使用すると交換)にて濾過し、人間は酸素濃度が60%以上では酸素中毒になるので、それ以下になるようにコントロールされており、地上と同じ窒素80%、酸素20%になっている。

 船内の気圧は、アメリカの宇宙船としては初めて、地上と同じ窒素と酸素の混合体で1気圧。シャトル内の空気は人の呼吸、水蒸気、熱、微生物、装置などからでる微量なガスなどでつねに汚染されているので、シャトル内の空気は約7分で交換されていた。湿度は結露したり生理的な悪影響が起きたりしないように30-65%に維持されており、熱交換機で凝縮されて湿った空気を空気・水分離器を使用して水と空気に遠心分離して水は汚水タンクに、空気はキャビンに戻されていた。

 ちなみに、アポロ宇宙船では、機体の軽量化のために3分の1気圧の純酸素で満たし、旧ソ連のソユーズは伝統的に大気と同じ空気を使用していた。

 二階は居住空間で、スペースとしては6畳間ぐらいあるが、その半分程度は宇宙服(船外活動服)を着るための大きなエアロックがあるので、実質としては、横1.3m、幅3.3m、高さは2.1mであり、つまり6畳間の半分ぐらいのスペースに、トイレ、ベッド(3段ベット1台、縦型ベッド1台、無重量空間では、そもそもベッドは必要ないが、プライバシー保護のため )、台所( オーブン、手洗い )がある。

 この程度のスペースは地上では狭く感じるが無重量空間では3次元で空間を使えるので、狭くは感じないらしい。宇宙空間でのやけどを防ぐ意味で、船内で使えるお湯は60-70℃に制限されており、宇宙用のカップラーメンも60℃程度で食べられるように工夫されており、船内の電力事情が厳しいのでオーブンを使うのに30分ぐらいかかるらしい。室温は標準で17℃で、実際には18℃から27℃だった。

 三階は操縦席であり、固定式のパイロット席の空間を除くと、幅1.8m、横1m(畳1枚より少し大きい程度、大人3人分の肩幅ぐらい)のスペースしかない。打ち上げ時にはここに、シートが2つ増設され、宇宙空間に出ると、このシートを片付けてミッション・スペシャリスト、ペイロード・スペシャリストの作業場になる。また、パイロット・シートも前に折りたたんで、ここで寝ることも出来るようになっている。

 これらの空間では、2人から最大で7人が、2週間程度生活することになり、いざという時には10人乗れるようになっている。打ち上げ、着陸時に、操縦席に座る4人以外の宇宙飛行士は、 計器もない2階席で、天井までそびえるロッカー(ここに食料、生活必需品がスポンジ製ケースに収めてある)を前にして座って過ごすことになる。

 ちなみに、テレビで宇宙空間で宇宙飛行士が無重力状態で空中を回転したり、飛び回っている場面があるが、あれはスペース・シャトルのコックピット、居住空間ではなく(=狭すぎて飛び回るスペースがない)、スペース・ラブ(シャトルの荷物室に臨時に設置した宇宙実験室)、宇宙ステーションでの映像である。ただ、宇宙飛行士の映像では必ずこの場面が出てくるのでNASAでは「宇宙飛行士は遊んでばかりいる」と思われるのは心外で、当局としてはこのシーンは流して欲しくないと思っている。

 シャトルは、軌道上長期滞在(Extended Duration Orbit:EDO)キットと呼ばれる主に電力確保のための液体酸素と液体水素のタンクなどを取り付けることにより16〜18日間までの飛行が可能。一番新しいスペース・シャトルであるエンデバー号は、建造当初より最長28日間の長期飛行能力を有しているが長期間飛行するには、食料や、衣服などの搭載スペースを確保しなければならないほか、搭乗員の筋力や操縦能力の維持などの問題があり、長くても14〜16日間が現実的。

 宇宙飛行士達には、起床時に洗顔と一日の準備のために45分与えられ、就寝時にも、その準備のために45分間与えられる。また、食事と後片付けのために60分間が一日三回与えられる。全員が同時に寝る事は安全上少ないが、そういう場合は、管制官からの応答に応えるために、だれか一人がヘッドホンをして寝ることになっている。また、無重量空間で寝ると、空気の対流がないために、呼吸から排出されたCO2が顔の周りで滞留して窒息の危険があるので、シャトル船内の空気はファンによって常にかき混ぜられており、静かな空間では結構うるさいので耳栓をして寝るようになっている。

 宇宙飛行士の服の着替えの基準は、Tシャツとショートパンツは毎日1着を使用。ズボンは7日間使用。ハンカチ、下着、靴下は3日で一つ使用し、靴と上着は飛行中ずっと同じものを着用する。

参考にした引用元>JAXA 広報、情報センター

 

スペース・シャトルのトイレ・システム>

 打ち上げ時は、打ち上げ約2時間前に搭乗し、上向きのシートに縛り付けられるのでトイレには行けず、事前にオレンジ色のフライト・スーツ(正式にはハイ・プレッシャー・スーツ(高高度与圧服)、通称パンプキン・スーツ=打ち上げ、着陸時に宇宙船の気圧が低下した場合に備える服でパラシュート装備)の下に「おむつ」をはいている。

 宇宙空間では、重力がほとんどないので、地上と同じようなトイレは出来ない。地上と同様におしっこすると、狭いコックピット内で尿が漂流し、宇宙飛行士がそれを吸引して肺に入ったり、操縦計器の内部に入ってショートする可能性がある。

 よって、シャトルでは、宇宙空間用の特別なトイレが採用されている。使用方法としては、まず、トイレの扉を開き、このままでは、まだ外から丸見えなので、カーテンを閉める(上用と横用がある)。次に、トイレ中に体が浮かないように足を軽く固定するとともに、ヒザ押さえで便座に体を固定し、手摺につかまる。

 「おしっこ」の場合は、男女それぞれの尿吸引アタッチメントに取り替えた上で、便器上部にあるハンドルを引くと、掃除機のホース状の機器が空気吸引を始め、それをあてがって尿を吸引する。理由は不明だが、宇宙空間に出ると、人間はオナラが出やすくなるらしく、狭い宇宙船内でのトイレは結構恥ずかしいようで、皆、聞かなかったフリをする。

 「うんち」の場合は、ハンドルを引くと「便座直下のバルブ」が開き、空気吸引を開始するとともに便器内部のカッターが毎分1500回転で回転し、大便を瞬時に切り刻み、便器内部のタンク内壁に大便を貼付ける。その後、ハンドルをOFFにすると「便座直下のバルブ」は閉じ、「宇宙空間に通じているバルブ」が開いて便器内部は宇宙空間と同じ絶対真空にさらされて一瞬で凍結乾燥するようになっている。大便、嘔吐物は、このように乾燥状態にして地球に持って帰る。一方、尿、及び燃料電池で生成した水は飲用水、手洗いに使用された後、排水タンクで貯蔵した後、数日ごとに宇宙空間に自動的に放出される。

 このトイレは、適切な使用が難しく、うんちが内部カッターまで届かないことがある。よって、宇宙飛行士は、事前に地上で、肛門のモニター映像を見ながら、何度も正確な場所(便座直下バルブ管の中心部)に「うんち」を落とす練習をさせられる。

 このトイレの開発にあたっては、多くの女性看護士のボランティアが参加し、無重力体験用大型ジェット機(あだ名はゲロ彗星)がすぐに離陸できるようにスタンバイした上で、ボランティアにアイス・ティーを大量に飲んでもらって、一回約30秒の無重力状態下において数種類のトイレ試作品でおしっこやうんちをするテストを何百回もした。ちなみに、テレビでこの様子(ジェット機内で楽しそうに無重力状態で泳ぐ映像)が流されることがあるが、あれ(楽しそうに泳ぎ回る)は最初の数回だけで、実際にはその後(訓練では約50回無重力飛行を繰り返す)は、ほとんどの訓練生は飛行機酔い、及び他人の嘔吐物の臭いにつられて嘔吐し、機内には嘔吐物の臭いが充満する。

 搭乗者が気持ち悪くなるのは、はじめての無重量感覚のせいではなく、無重量状態が終了して、飛行機が再上昇する際に体に2Gがかかり、0G、2G、0G、2Gの極端な状態を40回以上繰り返すためだといわれている。

 日本人は一日に0.4〜2L、欧米人は〜0.4Lのオナラをしており、オナラは可燃性ガスであるので、狭い宇宙船や宇宙ステーションに充満すると爆発の危険性があるので、NASAではオナラ対策の研究を進めている。シャトルでは、CO2以外のにおい、ガスは活性炭を使用した脱臭フィルターで除去していた。

参考文献> 「ライディング・ロケット ぶっとび宇宙飛行士 スペース・シャトルのすべてを語る (上巻、下巻)」、化学同人

コンピュータ・システム 、その他の装備>

 シャトルの操縦系統はコンピュータ制御のフライ・バイ・ワイヤと呼ばれるシステムであり、昔の飛行機のように、物理的に操縦輪とラダー、エルロンがつながっているわけではない。

 操縦輪の操作は電気信号としてコンピュータで処理されてから、操作信号が駆動用モーターに伝わるようになっており、基本的には、宇宙飛行士が自分でしなければいけない仕事は車輪を降ろして滑走中にブレーキをかけることぐらいと言われている。フライバイワイヤシステムでは、人間が無謀な操縦輪操作を行っても、コンピュータが安全を判断して、自動的に安全の範囲内で調整を行うようになっている。

 シャトルのコントロール・システムとしては、フライトデッキにはディスプレーや操縦装置がずらりと並んでおり、その数は2000を越して、これはアポロ宇宙船の3倍にもなっている。操縦輪といっても、実際にはフライトスティックであり、このフライトスティックは圧力感知式であるので、人間が手で押しても実際には大きく傾く訳ではない。

 コンピュータ・システムは、NASA、米空軍、IBM社、ハネウェルなどの技術陣が関与し、シャトルの打ち上げ時のメインエンジンの運転を制御するマイクロコンピュータは22.5Gの振動に耐えるように製作されている。

 コンピュータは汎用でソフトウェアも同じものが4台(IBM製)、及びバックアップ用として汎用の4台のコンピュータとはソフトも設計も異なるコンピュータ1台(ロックウェル・インターナショナル製)の計5台の複合体で形成されており、38系統のシステムと接続している。これらのコンピュータが随時お互いの命令を監視しており、基本は汎用4台のコンピュータの結果の多数決によって判断している。IBMは、ソフトウェアの開発にあたっては、3万時間以上のテストを行った。

 汎用4台のコンピュータがすべて故障した場合には、バックアップ用コンピュータの指示によって動くようになっている。これら5台のコンピュータのうち、1台が故障しても安全に離陸でき、2台が故障しても安全に着陸できるようになっている。バックアップ用コンピュータは、汎用コンピュータ4台が故障した時にのみ稼動するようになっている。

 その他に、3基の航法管制装置、9種類のタイマー(宇宙では離陸後の経過時間で判断し、宇宙飛行士の生活はヒューストン時間に合わせて行動する。)、地上との連絡用に2基のUHF通信機、マイクロ波による着陸誘導装置、23種類の各種アンテナなどが設置されている。

参考文献> 「スペース・シャトル 宇宙連絡船の全容」 共立出版

参考文献> 「スペース・シャトル搭乗員ハンドブック」 角川書店

シャトルの電力システム>

 シャトルには燃料電池が3基搭載されており、そこから全電力(平均7-12KW)を得ている。シャトルの燃料電池は、水素と酸素を化学反応させることによって電力と水を得ることが可能であり、ここで生成された水は飲み水としても使える。燃料電池は、電気を貯めておいて放電する電池ではなく発電器の一種である。

 燃料となる酸素と水素は貨物室の下にある液体酸素タンクと液体水素タンクに貯蔵されており(=当然、これらを冷やしておくための冷却システムもある)、各燃料電池が生成する電力は、通常2kwから12kw(最大16kw)。燃料電池1基あたりの重量は約116kg、大きさは高さ約35.6cm、幅約38.1cm、長さ約1m。燃料電池から生成された水は、クルーの飲料等に使用するため飲料水タンク(80L入り4個)へ送られるが、使い切れない余分な水は船外へ排出される。

参考にした引用元>JAXA 広報、情報センター

タイヤ、ホイール>

 シャトルのタイヤはミシュラン製(正確には、最初はB.F.グッドリッチがタイヤがタイヤ、ホイール、ブレーキ部分を担当し、1989年にミシュランがB.F.グッドリッチの航空タイヤ部門を買収した。)で、様々な高度、温度に対応できるように、窒素が充填されており、メイン・ギヤのタイヤ(直径44.5インチ(113cm)、幅16インチ(41cm))の空気圧は340気圧、ノーズ・ギヤのタイヤ(直径32インチ(81cm)、幅8.8インチ(22cm))の空気圧は300気圧で、エックス線検査とNASA独自の検査をパスしてはじめてシャトルに搭載される。

 メイン・ギヤ用タイヤは1回着陸したら交換され、ノーズ・ギヤは2回着陸したら交換されるようになっている。スペース・シャトルのタイヤはトラックのタイヤよりは大きくはないが、ボーイング747用タイヤの3倍の荷重に耐えるとともに、時速250マイル(時速400km)のスピードに耐えるようになっており、要求される性能を備えた上で、究極に軽くなるように設計されていて費用は5540ドル(日本の感覚で言うと100-300万円)。着陸用車輪のホイールは軽くする必要から、金属チタンの塊から削り出したもので、値段は30年前の値段で1本50万ドル(今の日本の貨幣価値にすると3億円程度)。ちなみに、1988年頃、ブリジストン製航空用タイヤがスペースシャトル用タイヤとして検討された時期があった。

メイン・エンジン>スペース・シャトル・メイン・エンジン(SSME, Space Shuttle Main Engines)

 シャトルのメイン・エンジンは、ロックウェル・インターナショナル社のロケットダイン部門が製作。シャトルのメイン・エンジンの燃料は液体水素と液体酸素を混ぜたもので、毎分6.3万リットルの液体酸素と17万リットルの液体水素を消費し、エンジン1基あたり200トンの推力が出る。実際にはエンジンを3基積んで最大推力600トンを約8分30秒間発生させる。ちなみに固体ロケット・ブースターの推力は1本1200トンで合計2本ついているので推力2400トン。

 外部燃料タンク&固体ロケットブースターを含めたシャトル全体の推力の77%は固体ロケットブースターが担当している。シャトル(オービター本体)は、荷物を最大限に積んだ場合の重量は約100トンなので、外部燃料タンクなしが可能ならば、このエンジン1基で宇宙に行ける計算になる。

 エンジン燃焼中の熱によってエンジンのジェット・ノズル(釣鐘状の部分)が溶ける、強度低下するのを予防するためにジェット・ノズルには全面に渡って液体水素が循環するパイプが設置されており(というよりも、パイプでノズルが作製されているという方が正しい)、打ち上げの際にはエンジン付近に大気中の水分が凝結して氷が付いているのが見える。

 メイン・エンジンの寿命は約450分で、55回は繰り返し使えるように設計されており、推力は65-109%の範囲で可変可能。推力が100%を超えているのは、設計後に改良されてパワーアップしたから。また、飛行中の方向転換が出来るようにロケット・エンジン自体を動かす(ジンバル機構、上下10.5度、左右8.5度)ことが可能(固体ロケット・ブースターもジンバルで可変可能)である。

 エンジンは予備燃焼室(プレ・バーナー)、と主燃焼室(メイン・バーナー)からなり、予備燃焼室で、わざと不完全燃焼させた水素・酸素混合ガスで、高圧ターボポンプを駆動させて外部燃料タンクから大量の液化水素、液化酸素を供給するとともに、不完全燃焼ガスを主燃焼室に送り込み、水素1と酸素6の割合で完全燃焼させて、音速以下の燃焼ガスを作製し、一度ガスを狭い流路に収束することで音速のスピードにした上で、ジェット・ノズルを経由することによって超音速のガスにしている。

 燃焼室は高温、高圧になるので燃焼室の周りに390本のパイプで燃焼前の液体水素を流して冷却している。 燃料を燃焼器に注入する注入器は直径56センチだが、そこには525本の噴射孔と75枚のバッフルが組み込まれている。 シャトルには、それぞれのエンジンに関するすべてのデータを記録する装置があり、個別のエンジンについての使用歴を瞬時に引き出すことが出来るようになっている。

 このエンジンは、ディーゼル機関車28台分の馬力を備えているが、エンジンの重量はディーゼル機関車の7分の1しかないパワフルなものであり、軽量化のために溶接部分は4000か所、そのうち電子ビーム溶接は200か所に上る。

参考文献> 「 ニュートン 特集 スペースシャトル」 教育社1981年10月号

参考文献> 「スペース・シャトル 宇宙連絡船の全容」 共立出版

軌道操作システム>(OMS, Orbital Maneuvering System、マクドネル・ダグラス社製)

 固体ロケットブースターで離陸した後、固体ロケットブースターを分離後(離陸時の大部分が固体ロケットブースターによる推力)、シャトルのメイン・エンジンによって宇宙空間に出た後に、所定の高度まで(宇宙空間では、速度だけで高度が自動的に決まる。)の移動を行うためのエンジン・システム。シャトル尾翼の両脇のコブの出た部分に、酸化剤と燃料のタンク、エンジンがある。

 酸化剤は4酸化窒素、燃料は有毒なモノメチル・ヒドラジンであり、この二つは混ぜ合わせるだけで爆発する性質があるため、ヘリウム・タンクからヘリウム・ガスで燃料、酸化剤を押し出して混合することによって宇宙空間での一時的な推力を得ており、方向制御が可能なようにジンバル機構(ノズルの噴射方向が変えられる。)が設置されている。このシステムは10年、合計1000回の点火、のべ15時間の燃焼に耐えられるように設計されている。

参考文献>「ニュートン 特集 スペース・シャトル」 教育社 1981年10月号

 

姿勢制御システム>(RCS, Reaction Control System)

 宇宙空間及び大気圏突入時のシャトルの姿勢制御を行うために、シャトルの機首部分及び外部ポッド部分には、姿勢制御システムが設置してある。RCSシステムのエンジンには2種類あり、プライマリー・スラスター及びバーニア・スラスターと呼ばれている。プライマリー・スラスターは姿勢制御用で、推力は3870ニュートン、バーニア・スラスターの推力は111ニュートンで、微調整に使用される。基本的には宇宙空間のシャトルの姿勢はコンピュータが自動で調整するようになっている。

 シャトルには38基のプライマリー・スラスター、6基のバーニア・スラスター、合わせて44基の姿勢制御用エンジンがある。これらの燃料は、OMSと同じ酸化剤、燃料を使用してあり、RCS専用の酸化剤タンク、燃料タンク、ヘリウム・タンクが設置してあるが、故障時に備えて、OMSと燃料を融通できる設計になっている。

参考文献> 「 ニュートン 特集 スペース・シャトル」 教育社1981年10月号

貨物用ドア、アーム、荷台(ペイロード)>

 貨物を運ぶための空間(ペイロード)の扉(ハッチ)は、無重量空間である宇宙空間で開閉するためにあるので、地上で自力で開閉する能力は必要なく、そのために、軽量化を優先するために、出力の小さなモーターで構成されている。よって、地球上ではハッチを開閉するほどの出力はなく、簡単にいうと「地球上では自力でドアを開けることは出来ない」。同様に、荷物を動かすアームも、無重量(重さが0に近い)の荷物を動かすだけなので、地球上ではアーム自身を動かす事も難しいほど非力な仕様となっている。

 荷台に品物を積む際は、地上で横向きの荷台に固定した後、シャトル全体を吊り下げて立てるので垂直状態で荷物の固定が大丈夫かのチェックが行われていた。貨物用ドアの内側には、シャトル内部の温度を調節するための銀色のラジエーターパネルが装備されている。基本的に宇宙空間は真空状態なので、宇宙空間ではシャトルは魔法瓶につつまれているような状態となり、そのままでは機体内部に熱がたまるのでシャトルが地球軌道上にいる時には、荷物ドアを開放してラジエーターで宇宙空間に熱を放出していた。

尾翼、エンジン付近>

 機体後部下部には、外部燃料タンクからエンジンに燃料を通す蓋つきの大きな穴が2つあいており、中には猛烈な勢いで燃料を送るポンプがある。ここは、液体水素が漏れて水素爆発しないように、燃料充填と同時に不燃性の窒素ガスを充填するような気密構造になっており、過去には、第1回目の打ち上げ中止時に整備員が、この区画に入って窒息で亡くなる事故も起きている。

6.1スペース・シャトル・オービター以外の構造、付属施設

固体燃料ロケット・ブースター>SRB; Solid Rocket Booster

 固体ロケット・ブースターは、固体燃料を使用するロケットとしては史上最大のものであり、燃焼開始から2分間で全燃料を燃焼する。20回程度の再使用に耐えられるように設計されており、打ち上げ後は、内蔵パラシュートによって海面に着水するように出来ており、専用の船で回収している。

 ブースターは粉末過塩素酸アンモニウム69.83%(酸化剤)と粉末の金属アルミニウム16%(燃料)、酸化鉄0.17%(触媒)を混合し、合成ゴム12%(PBAN(ポリブタジエン系)詳細は「ロケットエンジンの推進剤」で検索)、エポキシ硬化剤2%(結合剤)で固めたものを燃料としており、打ち上げから約2分間燃焼し、金属アルミ粉末の燃焼によってロケット・ブースターからは大量の白煙が噴出する。

 ブースター1本(自重83トン)には503トンの固体燃料がセットされており、1200トンの推力を発生するとともに、ノズル部分は打ち上げ方向制御可能なようにジンバル機構による可動式になっている。打ち上げ時には、このブースターの後部スカート部(厚さ1.3-5cmの高張力アルミ板製)2本がシャトルの全重量2000トンを支えており、シャトルのメイン・エンジンが順調に作動するとコンピュータが判断すると固体ロケット・ブースターのホールド・ダウン・ボルト&爆発式ナットが破壊されて、ブースターに点火されて打ち上げとなる。

 重量的には、2本の固体ロケット・ブースターが打ち上げ時の全重量の半分の重さがあり、シャトル全推力の77%を発生。固体ロケット分離時は、全長45mのブースターが上昇中のシャトルに悪影響を及ぼさないように、推力10トンの分離用固体燃料ロケットモーターが2本のブースターで合計8個設置してあり、0.66秒噴射する。分離後は、80トンのロケット・ブースターが超音速状態で弾道飛行を行い、ケネディ宇宙基地から185km離れた海上にパラシュートで着水する。着水後は、リバティ・スター、フリーダム・スターという回収船によって回収後、再利用された。

外部燃料タンク>ET; External Tank

 シャトル本体のメイン・エンジンに、液体酸素(604トン、タンク上方部分に充填)と液体水素(102トン、タンク下方部分に充填)燃料(燃料合計706トン、容量にして200万リットル)を供給する&固体ロケット・ブースター、シャトルを固定するのが目的で、アルミニウム・リチウム合金製で、自重は34トン、大きさはボーイング747の胴体部分程度ある。暑いフロリダにおいて大量の液体燃料(液体酸素はマイナス219℃、液体水素はマイナス253℃)を低温に保たねばならないために、燃料は打ち上げ直前に満タンになるように充填されていた。

 400個以上の2.5cm厚の超軽量断熱材(コルクーエポキシ コンポジット、SLA)のパネルで覆った上に、噴射泡状絶縁体(Sofa)と呼ばれるポリウレタン材料(黄色い外観)で覆われており、燃料充填時に落雷にあっても大丈夫なように避雷針もついている。スペースシャトル計画の初期構想段階では、この外部燃料タンクも回収して再利用する計画だったが、巨大すぎて回収にコストがかかり過ぎるとして「使い捨て」使用になった。

 打ち上げの際にはホース(直径43.2センチメートル)で、シャトル底部とつながれている。タンク前部には液体酸素(タンク上部)、後部には液体水素(タンク下部)が充填されており、それぞれのタンク内には打ち上げ時の振動や重力加速度の変化で起きる液体の波動を吸収する装置がついている。シャトル運行初期には、太陽熱による温度上昇を懸念して白色に塗装されていたが、効果は薄いことが判明して取りやめになり、この結果、270kg軽くなった。打ち上げ後、タンクは大気圏突入時に大部分は燃えて無くなる様に設計されており、燃え尽きない部分はインド洋に落下していた。

 一個の外部燃料タンクの製造から飛行までのコストは1970年代の価格で約200万ドル( 現在の感覚では12億円ぐらい?)と計算されており、累計135回のフライトで、ボーイング747レベルの大きさの燃料タンクが135個、インド洋に投棄された事になる。

クローラー、トランスポータ−(シャトル運搬車)>

 ロケット、燃料タンクをとりつけたシャトルは、クローラー(クローラーとは、水泳のクロールと同じで、”這いつくばって進む”という意味、いわゆるキャタピラ、(キャタピラーは、イモ虫という意味))と呼ばれる移動台に載せられて発射場まで移動し、クローラーの最高スピードは時速1マイル(1.6km)であり、燃費が1m/Lという"世界で最も燃費の悪い乗り物"としても有名だった。

 このクローラーの乗員は18人であり、移動に時間がかかるのでポータブル・トイレも用意されており、発射台に近づく際にはGPSとレーザーを使用して位置合わせを行っていた。このクローラーのサイズは43mx37m、重量2480トンで、油圧システムでデッキを水平に保ちながら6-8時間かけてシャトルを運んでおり、2台保有していた。

シャトル用滑走路>

 シャトルは大気圏飛行用のジェットエンジンがないので、着陸のやり直しは出来ず、飛行場の天候を確かめて着陸する飛行場の近くまで接近した後に、”隕石が落下するように”急速に高度を下げる。着陸のやり直しは出来ないので、オーバーランに備えてケネディ宇宙センターには世界最長(オーバーラン部分も含めると全長5.2km)の滑走路が整備されている。大規模国際空港の滑走路が全長4km程度であることを考えるとかなり長いことが分かる。また、シャトルの高速着陸に耐えるために、コンクリート舗装は厚さ40cm、平坦性も100mで1.6mmの精度で建造されている。

打ち上げプロセス ・システム(Launch Processing System, LPS)>

 シャトルの打ち上げには、LPSと呼ばれるコンピュータ・システムが採用されており、アポロ計画時には450項目あったチェック項目が45項目になり、アポロ計画時には28時間かかったカウントダウン時間も、2時間半に短縮された。

シャトル・シミュレーター>

 1976年に完成したシャトルのシミュレータは、シンガー社で製作されて、これには当時で1300万ドル(現在の日本円では100億円ぐらい?)かかっており、シミュレータでは、本番と同様に垂直に立てる事も可能で、シャトルの運動がそのまま再現できるようになっており、パイロットは1100-1400時間(毎日2時間訓練しても700日かかる)のシミュレータ訓練を受けていた。

シャトル 空輸用輸送機>

 シャトル輸送機は、シャトルがケネディ宇宙センター以外に着陸した場合や、工場での定期点検するときに使用され、ボーイング747を改造したもので、2機保有したうちの1機は日本航空で国内線を飛行していた機体である。

 

ソ連製スペース・シャトル ブラン>

ギガジン>旧ソ連版スペース・シャトル「ブラン」、野ざらしの今と華やかな過去の画像


ここでは、個人の趣味として、勉強がてらスペース・シャトルの世界( 宇宙、NASA、構造、速度、打ち上げ、技術等 )を記述しています。


アポロ計画(人間が他の星に行った)の世界を楽しむサイト

スペースシャトルの世界を楽しむサイト

Kusumotoエンタメ版

宇宙開発関係の豆知識集のサイト

宇宙関係のリンク(動画、文献等) 

アポロ 月表面ジャーナル Apollo Lunar Surface Journal

アポロ イメージジャーナル Apollo Image Gallery