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< 圧電セラミック・アクチュエータ読本 >

 ( 2014年11月改定 )

  楠本 慶二 著

まえがき>

  ここでは、意外に身近な存在である圧電セラミックスやセラミック・アクチュエータとその将来性、種類、駆動方法について勉強していきます。 間違った記述は、随時、訂正しており、ここに記した情報はすべて新聞、メディア等に過去に公表された情報をまとめたものです。 印刷すると13ページになるようです。

<目次>----------------------------------------------------------

 1. 圧電セラミックスって何?

 2. どこで使われている?

 3. セラミック・アクチュエータの種類、構造

 4. 素材は?

 5. 駆動方法について

 6. 気をつけたいこと

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圧電アクチュエータのメーカーについては、圧電・電子セラミックスリストの項を参考にしてください。

 

1 圧電セラミックスって何? 

 圧電セラミックスや電歪セラミックスは、電圧を印加すると物理的に歪む、変形するという性質があり、これらのセラミックスを用いて作製された固体変位素子を総称してセラミック ・アクチュエータと呼ぶ。

 現在までに、さまざまな種類のアクチュエータが考案されており、例えば、セラミック単体の変位を利用するものでは、モノモルフ、ユニモルフ、バイモルフ、積層型、ムーニー型、マルチムーニー型、シンバル型などがある。

 その他に、圧電素子の超音波振動を用いた超音波モ−タ(回転駆動)、超音波リニア型モータ(直線駆動)があり、光駆動のものとしては、PLZT (PZTLaを少量固溶させた化合物)の光起電力を活かした光アクチュエータ、静電型光モータ、光シャッターなどが提案されている。

 また、特殊なセラミックスとしては、”形状記憶セラミックス”というのが提案されており、これは電圧を印加することによって、”電界を印加しないでも歪んだ状態を維持可能”であるらしく、省電力やコンパクト化の観点から将来、電磁リレー の代替が提案されている。ただ、この材料については、研究している機関は限られており、市販されてはいない。

2 どこに使用されている?

  圧電セラミックスは、安価なブザー、衝撃センサー、超音波振動子やランジュバン振動子として既に幅広く使用されており、最近は 半導体産業用アクチュエータや、圧電トランスといった高電圧発生装置、LED程度の省電力デバイスのマイクロ電源としての利用が本格化しており、2013年頃から、日本でもコモンレール型ディーゼルエンジン車(これらの車は、排気ガスの浄化システムと組み合わせて、クリーンディーゼル車と呼ばれている)の燃料噴射インジェクタの部品としての利用が増えてきた。

  特に、セラミック・アクチュエータは、小型化が可能、制御回路と相性の良い電圧駆動、大きな力の発生、応答性の速さで利点がある。セラミック ・アクチュエータの動作距離は、ミクロン単位と小さいが、工夫することによって使用されている。

<ミクロンレベルの変位、振動、高速応答を利用する応用例>

○半導体製造装置用精密位置調整装置 (ポジショナー)

  最近の半導体回路の線幅は、サブミクロン・サイズ(1ミクロン以下)で作られており、この半導体回路を製作するためには、半導体のフォトマスク(型)を サブミクロン以下の精度で正確に合わせる必要がある。そこで、この精密な位置決めにセラミックアクチュエータの活躍が期待されている。

○インクジェット技術の応用

インクジェット・プリンタ

⇒ この製品の実用化によって、自宅のパソコンで安価で手軽に高品質のカラー印刷物、写真がプリント出来るようになった。

  これは超音波振動子以外で最も成功した圧電応用製品であると考えられる。現在、インクジェット技術は数多くの方式が考案され実用化されているが、エプソンの圧電 方式とキヤノンのバブルジェット方式が特に有名。ちなみに、バブルジェット式は圧電効果は利用していない。

  圧電式はスペースシャトルに載って宇宙でも活躍している。これは、バブルジェット式が気圧の変化に弱いためと聞いている。

  また、圧電式はインク打出しパワーがあるため、インク吐出パワーが要求される無機系顔料インク(=耐候性が高い)が使用出来るそうで、最近は顔料を使用したインクが発売されている。ちなみに、エプソンのプリンタでPM-XXXというのは、染料系インク、PX-XXXというのは顔料系のインクを使用しているそうだ。しかし、最近はバブルジェット式でもアルバムで保存すれば100年間は色あせしないインクが開発されている。

  圧電式のインクジェットプリンタのヘッドは、歴史的には日本ガイシが開発したと言われているが、開発の時点でエプソンがどの程度関わったのかは不明。これは日本ガイシがセラミックスの会社であり、セラミックスの微細加工技術を有していたからと思われる。ただし、最近ではエプソン社でも溶液法によってピエゾヘッドの開発製造を行っており(これは新聞などで公開された情報)、これは、印刷物の解像度を向上させるためにノズル数を増加させる必要があるからである。

バイオテクノロジー

⇒ インクジェット技術を利用して、ガラス基板上に一度に数十のDNA断片を印刷してDNAチップを安価に製造する研究が検討されている。また、マイクロ圧電ポンプを用いて、ガラスチップ上で薬品を効率良く混合する応用も考えられている。

フラットパネルディスプレイ

⇒ 有機ELディスプレーの作製においては、現在、高価な真空蒸着装置が必要であるが、これをインクジェット技術で印刷によって安価に作製しようという研究が行われている。

半導体回路の作製

⇒ インクジェット技術を利用して、プラスチック上に半導体回路を印刷によって作製しようという試みも行われている。

この方法だと、材料と製造コストが、かなり抑えられる可能性がある。

ディーゼル・エンジンの燃料噴射装置

⇒ 現在、使用されている燃料噴射弁は電磁弁方式で応答性は1msオーダーであり、これを工夫して燃焼制御を行っている。しかし、圧電素子なら0.1msオーダーの応答速度が実現するので、より厳密な燃料量の噴射制御が可能であり、結果として燃費向上とPM(粒子状廃棄物)に役立つ。 企業の紹介文によると圧電式インジェクタは、エンジンシリンダー内の一回の爆発の間に、7回?ぐらい、それぞれの爆発環境に応じた最適な量の燃料を噴射しているそうだ。すでに超高圧コモンレール式ディーゼル ・エンジン燃料噴射装置として圧電素子を使用したディーゼル・エンジン搭載の商用車がヨーロッパでデビューしており、日本のメーカーからも2005年から販売される模様。興味のある方は、ボッシュやデンソーのホームページで「コモンレール」に関係したところを参照されたし。また、自動車メーカーの最近のディーゼル車 (2013年以降はクリーンディーゼル車と表現する事が多い)でコモンレール式と記述してあるなら、ピエゾ式の可能性が高い。

将来的には、ディーゼル・エンジン型ハイブリッド車が自動車の主流になるとの予測もある。

 ちなみに、日本ではディーゼル車は、PMを排出するというので嫌われ者の感がある。しかし、フランスでは、販売される新車の50%がディーゼル車である。これは、軽油がガソリンより安いこと、CO2排出量が少なく、燃費がいい事、ガソリンエンジンよりも耐久性に優れるので環境に優しいとされているからである。また、欧州車は、ディーゼル車の技術が進んでいるので乗り心地もいいらしい。

粉体の合成

⇒ 微細な粉体の合成方法の一つに、有機金属溶液の熱分解法がある。

  現在は超音波(これもほとんどが圧電セラ駆動)によって、この溶液を霧状にして電気炉で溶液を熱分解して粉末を合成しているが、この応用として、インクジェット技術により、精密に噴射量を制御した液滴を電気炉に吹き込むことによって、均一な粒径を有する粉末を合成する。また、溶融した金属を超音波によって噴射して微細で丸い粒を作る試みも行われている。

 

< 軽量、過酷な環境での応用例 >  

  航空宇宙関係では、まず衛星の振動防止への応用が期待されている。これは、宇宙では空気抵抗がほとんどないから、振動がいつまでたっても収まらない。そこで、この振動を止めるために小型で軽量なアクチュエータが必要となり、例えばNASAのライセンスの元でドイツのSmart Material社が販売している。また、戦闘機の垂直尾翼表面にセラミックアクチュエータを張り付けて翼面の乱流を制御する試みや、ヘリコプターの翼にアクチュエータを内蔵して、ヘリコプター飛行時のフラッター音(パタパタという音)を消す研究も行われている。

< アクチュエータを分散配置することによる応用例 >  

  天文学関係では大型望遠鏡への応用が期待されている。最近、国立天文台の最新鋭大型望遠鏡「すばる」に代表される巨大な望遠鏡が製作されるようになっている。しかし、望遠鏡に使われる鏡が大きいと、 鏡の姿勢に応じて重力の影響を受けて鏡が歪んでしまい、そのままでは鏡の焦点が合わないために精細な画像を得ることができない。そこで、小型のアクチュエータを鏡の裏に無数に取り付けて、歪みを 随時補正することが行われている。ちなみに 「すばる」のアクチュエータはセラミック製ではなく油圧式である。

< 振動を利用する応用例 > 

  実用化されている身近な圧電セラミックスの応用例としては、パソコン用インクジェット・プリンタのインクジェットヘッド部品、一眼レフカメラのオートフォーカス内部品(超音波モータ、レンズ部分にUSMと書いてあるやつだが、2010年ごろからUSM式は新型の小型モータに代替されて減りつつある。)、自動車のサスペンション内油圧制御部品(残念ながら現在は使用されていない)、携帯電話の呼び出し用ブザーなどがある。

  なお、携帯電話の呼出用振動子(ブルブル震える機能)は、現在はモータ駆動であるが、消費電力が大きいためにそろそろ圧電振動子を使用したものが製品化されるようだ。また、最近、圧電セラミック製スピーカ(NEC製)が携帯電話に採用されて販売され た。さらに、富士フイルムは、高分子と圧電セラミックスをコンポジット化した、紙状スピーカーを試作している。

 

< これからの分野 >

マイクロマシンの駆動部

  ⇒ マイクロマシンの足や腕に相当するもので、電圧を印加するとセラミックが直接動く(実際には駆動電圧の関係で共振駆動 の場合が多い)という固体変位素子の特徴を活かしている。具体的には、圧電振動子に長い金属部分を接合し、金属部品の共振を活かして動くものや、「圧電式のマイクロポンプと液体の入ったチューブを組み合わせて人工筋肉」を形成するなどの案が考えられている。

インテリジェント構造・システムにおける埋め込み型アクチュエータ

  ⇒ インテリジェント構造では、構造部材と機能材料の融合化、一体化が重要なので、ここに固体変位素子を使う。

 例えば、飛行機の主翼表面に張り付けることによって空気抵抗を減らし燃費を上げるという案があり、これは、アメリカで実際にF18戦闘機で実験を行っている。

 また、アイデア段階だが、ジェットエンジンの内側に張り付けて、エンジンのファンブレードとの距離をアクティブに変化させることによって推進力の向上を目指すという研究もある。さらに、振動や騒音で困っているところに張りつけて、圧電効果によって振動を電気エネルギーに変換し、電気エネルギーを抵抗などでジュール熱に変換することで振動や騒音を減少させるなどがアイデアとしてある。

簡易電子機器の電源(エネルギー・ハーベスティング、エナジー・ハーベスティング)

  ⇒ 簡単な発電で良ければ、例えば、すごくタフな圧電式発電装置作って、山とかで遭難したら強力なLED光らせるとか、SOS電波発生させるアイデアは既に考えられており、一部商品化されている。ちなみに、クオーツ式の時計は、水晶(クオーツ)の圧電効果(正確には圧電発振による共振振動)を利用している。具体的には、水晶を特定の大きさに切って、これに電圧をかけると特定の周波数で振動するので、これを適当に減速して1秒ごとに秒針を進めている。

光スイッチ

  ⇒ 透光性セラミックス、単結晶(ニオブ酸カリウム、タンタル酸リチウム)を用いて、電圧を変化させて瞬時に単結晶内の屈折率を変化させることによって、光ファイバーにおける光の進路を変更させる部品がある。また、最近は、フォトニック結晶といってPLZTセラミックスの柱を数十ミクロン間隔で並べて、特定の波長の光だけを反射させるという技術も研究されている。さらに、違う方式としては、”信号を送る時だけ”圧電素子によって光ファイバー同士を接合させるというタイプも試作され ている。

光シャッター

  ⇒ 例えば透光性のPLZTを使って、 核攻撃用爆撃機パイロット用のゴーグル(米軍の製品番号はEEU-2A/P goggle)として光シャッターが実用化された。

  これは、核兵器が爆発する際に発生する強烈な閃光からパイロットの眼を守るためである。 ミサイル技術が未熟だった冷戦中は、戦略爆撃機で、核兵器を目標地まで、高速で運送し、投下するという任務があり、自分の投下した核兵器で、爆撃機パイロットが失明する危険性があった。また、相手側も、上空で小型核兵器を爆発させて、パイロットを失明させるという手段に及ぶ危険性があった。身近な所では 溶接の際のゴーグルも過去にあったような気がするが、コストの点で実用化はされていない。また、PLZTはデジカメの業務用プリンタの露光用シャッタとして利用されているらしい。

圧電式糸電話 

  ⇒ おもちゃ程度の話であるが 、秋葉原などの電気街で100円で販売している圧電ブザーを2個用意して、これらを長い電線を通じて電極が逆になるように接続すると、会話(=音圧で電気信号発生)⇒電気 信号⇒電気信号から音⇒(会話)で、この「おもちゃ」では、一方通行のトランシーバー型の圧電式糸電話が出来る。また、この「おもちゃ」を2つ用意すると、電話のようなリアルタイム型の糸電話が出来る。これは自分もやってみたがなかなか遊べる。

楽器用アクチュエータ

  ⇒ 以前、どこかの記事で「本物のバイオリンをスピーカーとして使用」している人の記事を見たことがある。

 バイオリンは、弦の振動を、駒と呼ばれる部分を通じて表板に伝えて増幅することによって音が出ている。よって駒と弦の間にアクチュエータを入れて振動させれば、「本物の音が聞こえる」スピーカーとなる。

 最近は圧電セラミックスを使用したツイーター(高音用スピーカー)は、コイルや磁石などの駆動部を介して紙の振動板を動かす従来のスピーカーよりも音が発生する時間が短いので、音がリアルであり臨場感が増すという理由で好評らしい。

 高級なキーボードなどで、鍵盤の下部分にバイモルフのセンサを入れて打鍵力を検知する、電子ドラムにおいて叩く所のゴムに圧電センサーを埋め込んで叩く力を検知するという使い方も提案されている。

 さらに、センサとして圧電式のピックアップは、高感度ということで好評らしく、PZT系かどうかは分からないがサイレントタイプのピックアップとして既に組み込まれ販売されている。これについてはYahooで、「ピエゾ+ピックアップ」で検索してみるといい。

携帯電話、PDA内蔵カメラ用ズームレンズユニット、タッチパネル用触覚フィードバック機能

  ⇒ 最近は、携帯電話にカメラが内蔵して いるのがある。これからは、あれも高機能化して、ズーム機構が組み入れられるようになっていく。その時、ズーム機構中のレンズを動かすのに、圧電セラミックスの急速変形(正確にはインパクト駆動)を利用する方法が検討されている。このユニットは、ぶれ防止装置(CCDを直接動かすタイプ)として現在、販売中のデジカメに搭載されている。ちなみに、携帯電話では通常の電磁モーターでは磁界を発生させる(=電磁ノイズの元)、小型 化が難しい、組立が難しい、電力を多く使用する電流駆動という理由から、圧電式の方が好ましいとされている。

  最近はiphone, ipadなどタッチパネルのIT機器が流行しているが、これらは感覚的に”ボタン、アイコンを押した”感がなくて、人間には違和感があるよう。よって、液晶パネル裏側に圧電素子を仕込み、”タッチした瞬間に振動させて、キーボードを押したような感覚を与える”機構(キーワード>触覚フィードバック機能)が考慮され、実用化に向けて研究が進められている。

パソコン用冷却装置 ”ピエゾファン”

  ⇒ 最近、パソコンの高性能化に伴ないCPUが発生する熱が問題となっている。現在は通常のモーター式の冷却ファンが設置されているが、このファンは静かな環境では音がうるさい上に消費電力も大きい。よって、現在、圧電セラミックスを使用した「うちわタイプの冷却ファン」が研究されている。このファンは、通常のファンと比べて消費電力が150分の1、ギアもベアリングもないので熱がほとんど放出されない、静かである、回路の電子信号に干渉する電磁ノイズを発生させない、風切り音もない、小型化可能という特徴を有している。そのうちに、実用化される?

パソコン用水冷式冷却装置用圧電ポンプ

  ⇒ 最近、パソコンの空冷ファンの音がうるさいというので、水冷式(正確には液冷式)のパソコンが開発され販売され たことがあるが、その後のCPUの省電力化にともない、このタイプのパソコンは下火になった。

  水冷式では、当然、液体を循環させるためにポンプが必要となる。このポンプがうるさいと意味がないので、静かで小型化が可能な圧電バイモルフ式のポンプが開発され、既に大手電気メーカーの製品として販売されている。また、インテルなどでは、LSIに直接、液体シリコンを流し込む(どぶ漬け)にする方向の研究が行なわれているので、これ用にも使用可能かもしれない。

この応用形としては、AIBOなどの小型ロボット用の超小型油圧アクチュエータ(圧電ポンプタイプ)としても使用可能かもしれない。

安全用夜間照明

  ⇒ 最近は夜に犬の散歩をさせている人が多い。また、飼い犬の首輪にLEDが付いているものもあるらしく、夜中に、はっきりと青い光が輝いている事がある。よって、このLEDの電源として、圧電バイモルフの先に重りをつけたものが有効であると思う。また、これの発展形としては、電波の発信装置を仕込むと飼い犬やお年寄りが迷子になった時に便利かもしれない。これなら永久に電池要らずである。 最近は、夜間の散歩用にクツのつま先にLED+電池が仕込んであるのがあるが、あれも圧電式ならば半永久に使用できることだろう。

圧電トランス

  ⇒ トランス(電圧変圧器ともいう、英語ではトランスフォーマー)といえば、昔は電線を巻いたもので、巻き数によって電圧を変換するものが主流であった。

  しかし、最近の電子機器の小型化、省電力化によって、従来の巻き線型は小型化が難しいため、最近は圧電セラミックスを使用した圧電トランスというのが開発されており、主に日本製のノートパソコンの液晶用バックライトの高電圧発生装置として既に実用化されている。従来は小型の液晶部品にしか向かないと言われていたが、最近は大型液晶用も開発されているようである。圧電トランスは通常の巻き線トランスに比べ、電子機器に組み込んだ際の部品の数を減らせるほか、効率や信頼性が高いことから最近では採用が増加しており、近い将来、価格も巻き線トランス並みの価格に近づくと言われている。 ただし、最近は、LED照明が普及したので圧電トランスの出番は減少している

人工筋肉スーツの筋肉駆動用エアの送り出し用電磁弁の代替品

  ⇒ 介護を必要とする老人は、今後、増大すると見込まれており、老人を持ち上げたり、移動させるのに、介護する人は重労働となっている。そこで、人間が着る”マッスルスーツ”という機械や、老人に着せて歩行をアシストする機械の開発が行われている。ここに使用されるのは、ゴムを空気圧で膨らませて使用する人工筋肉であるが、これに空気を送るのに、現在は電磁弁というのが使用されている。電磁弁はモーターと同じで電流で駆動し、圧電アクチュエータと比べると大きく電流駆動であるためにアクチュエータ個数が多いと必要な電流量も大きくなり、駆動装置も大きく、高価になる。そこで、圧電式の空気ポンプを使用すると小型で使いやすくなる。

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たとえば、以下のようなアクチュエータも、用途が合えば(電磁バルブの大体、省電力化等)、非常に有効です。

メカノトランスフォーマ(変位拡大型圧電アクチュエータ)とか圧電バイモルフ式ポンプ

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LED式液晶テレビ、有機ELテレビ用スピーカー

 圧電式スピーカーはこれまで音質が悪いということで、液晶テレビには採用されることはなかったが、最近のLED式液晶テレビや有機ELなど、テレビの厚さが1cm程度になってくると、従来の磁石式スピーカーでは、最低でも厚さが2cm程度必要なために対応しにくい。こういう事情から最近は、従来の金属板に圧電セラミックスを貼るタイプではなく、圧電薄膜を6-8枚積層して樹脂で固めた圧電スピーカーが京セラで開発されている。また、樹脂に圧電セラ粒子を混ぜたタイプのスピーカーも富士フイルムで試作されている。

 

3 アクチュエータの種類と構造

単純型アクチュエータ

< 単板型 >

 圧電セラミックの板に電極をつけただけの最もシンプルなタイプ。超音波振動子などがこれにあたる。最近は、2層程度で構成するものもある。

< 積層型、スタック型 >

  単板型では、駆動するのに高電圧が必要なので(超音波駆動の話は除く)、一枚当りの厚みを薄くすることによって駆動電圧を下げるという発想で開発されたタイプ。

  積層セラミックコンデンサなどでは、セラミック一層の厚さが1ミクロンぐらいになっているが、圧電セラミックでは強度と特性劣化の関係で100ミクロンぐらいが限度とされる。マルチモルフと同様に、静電容量が大きくなるという問題がある。実際には数十層で構成される積層アクチュエータや、アクチュエータ駆動中の亀裂の発生を考慮して、十層程度のアクチュエータを機械的に直列に接続して構成したアクチュエータなどもある。

< ムーニー型、Moonie >

  米国ペンシルバニア州立大学のニューナム先生が考案したアクチュエータの構造。具体的には圧電セラミックスの上部、もしくは両面に、お月様(Moon)のような浅い空洞を持つ電極を兼ねた金属キャップ(日本でいう長崎の”メガネ橋”を想像してください)を張り付けることによって、圧電セラミックスのd33d31歪を同時に利用するというもの。発生力は劣るが、変位が確か3倍ぐらいにはなっていたと思う。セラミック部を積層体にしたものをマルチムーニーという。

< シンバル型、Cymbal  >

 ムーニー型における金属キャップの形状を楽器のシンバルのような形にして変位をさらに大きくしたもの。そのうちに、マルチシンバルも出てくるだろう。

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以下のようなアクチュエータも、用途が合えば(電磁バルブの大体、省電力化等)、非常に有効です。

メカノトランスフォーマ(変位拡大型圧電アクチュエータ)

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< 超音波モータ型 >

超音波モータもアクチュエータと呼んでいいのか分からないが、一応紹介する。

  基本的なタイプとしては、一枚の圧電体において、片面に複雑な電極パターンを印刷し、交互に分極方向を替えて分極処理し、そこに超音波の進行波を発生させて、上部のローターを摩擦によって動かすものが有名。

  ただし、一枚のセラミックス板に複数の分極部を形成すると、部分的に応力が集中し、割れなどが発生する事もあり、製造コストも高くなるので最近は、駆動部分を工夫することによって、全面分極した一枚の圧電セラミックスを用いて超音波モーターを形成する研究が行なわれている。

 圧電体の形としては、リング状タイプが有名だが、直線状、円筒状(棒状)などが現在までに提案されている。

ちなみに、JAXAつくば宇宙センターの売店には、棒状の超音波モーターが2500円で販売中。

 ある企業では、直径2mmの超音波モータが開発中らしく、このような小型の超音波モータはすでに腕時計の日付駆動部(パーペチュアルカレンダー)として組み込まれ、販売された事があるが現在、販売されているかは分からない。

興味がある人は特許庁の電子図書館で超音波+モータで検索したら、形状が見られる。

  超音波モータの利点としては、応答性が早い、小型化が可能で高トルク、静止トルクが大きい(→止まっている時は回転軸が回らないという意味、 普通のモータは手で回転軸を回すと回る)、位置決め分解能が高い、中空構造が可能、磁気の影響を受けない、磁気ノイズを出さない、電圧駆動なので省電力等が挙げられる。 また、超小型の超音波モータは、義手や義足の関節部分(指の関節でもいい)や、動物型ロボット(アイボなど)の関節部分などへの応用が見込まれている。ちなみに、現在、車には約50のモーター(超音波モータではない)が使用されているそうだ。

超音波モータの実用化例 >

カメラ。。オートフォーカス(AF)式レンズ駆動装置、AFボディ台、監視カメラ用台

自動車。。。ヘッドレスト、ハンドル・チルト・テレスコ、アンテナ ・ローテータ

時計。。。腕時計振動アラーム、置き時計からくり機構、腕時計日送り機構

産業機器。。。半導体製造装置位置決め機構、ステージ送り機構、パーツフィーダー、印刷機、農機具苗振り分け機構

住宅設備機器。。ロールスクリーンの昇降、ロールカーテン

医療機器。。。MRI、インジェクター、手術用顕微鏡

AV機器。。。ステレオ用オートボリューム、ビデオカメラ、航空機液晶TV格納

情報機器。。。カードリーダー、プリンター、コピー

理化学機器。。。露光装置、磁気測定装置

 カメラのオートフォーカス用モータに関しては、通常のモーターよりも高速にピント合わせが可能である事から、超音波モーター が実用化され、これはレンズにUSM (UltraSonic Motorの略)と記述してある。超音波モータの欠点としては、耐久性が低いこととされ、最近までは耐久時間が20時間程度であった。

  超音波モータはカメラレンズ駆動用モータとして既に実用化されているが、カメラの場合は一回の駆動時間が約0.2秒と短かく、止まっていいる時間の方が圧倒的に多いために耐久性の点では問題にならなかった。 しかし最近は、小型化が可能、ギア音が出ない、回転速度が安定している、電磁モータで必要とされる減速ギア機構が不必要といった超音波モータの特徴を活かしてコピー機などへの応用が検討されており、これらの応用に適した3千時間以上の耐久性を有する超音波モータも開発されている。また、カメラなどでは90年代中期から、コストダウンを兼ねて従来のリング型から棒状に超音波モータの形状も変更されており、超音波モータを搭載した製品が大量生産されている。ただ、耐久性の高い、信頼性の高い超音波モーターは、カメラメーカーなどのコア技術、コア製品として外販していないので、これが超音波モータのさらなる普及の障害になっているという話もある。 ただし、2010年代頃から技術革新で、USM型レンズの他にステッピングモーター駆動型のレンズも販売されている。

 

屈曲変位型アクチュエータ

< モノモルフ >

  シムと呼ばれる金属板(最近はFRP製もある)を使用せず、一枚の圧電セラミックの板だけで屈曲変位(曲がり)を起こさせる構造のアクチュエータ。 バイモルフやモノモルフでは、金属板との接着層や、金属電極層に応力集中し、信頼性や安定性に問題がある場合があるが、モノモルフはこれらの問題が少ない。現在、半導体効果を利用するものと、傾斜機能材料化することによって実現するものがある。

半導体版

  ⇒ 圧電セラミックスの添加剤を加えて半導体化させ、半導体の接合部効果と圧電効果のシナジー効果を利用し、セラミック板内に電圧の不均一状態を形成させて変形させる。

傾斜機能材料版

  ⇒ ドクターブレード法などの方法を用いて組成の微妙に異なる組成、具体的には誘電率の著しく異なる組成を一体化して焼結して傾斜機能材料とし、ここに電圧を印可すると誘電率の違いによって電界強度が異なるために、結果として歪む。

< ユニモルフ >

  一枚の金属板に一枚の圧電セラミックを張りつけ、セラミックスのd31方向の変位によって変形させるものを言う。金属板に水熱合成やメッキ、スパッタなどでPZTを合成しても良い。ただし、金属とセラミックスでは、熱膨張率がかなり違うので、使用中にセラミックの発熱によって温度が上昇し、金属板が膨張して特性が落ちる事が考えられる。また、接着剤の種類と塗り方、金属板の保持の仕方によって得られる変位は大きく異なる。

  また、一枚の金属板の両面に薄い圧電セラミックスの板を貼り付けて、これだけでは変位が小さいので金属板の周囲に高分子膜を貼り付けて、変位を大きくしたアクチュエータが”圧電フィルムスピーカー”と称して携帯電話用スピーカーとして採用されている。

< バイモルフ >

  二枚の圧電セラミックスを用いて構成されるアクチュエータの総称。

  二枚の間に電極兼強度を持たせるために金属板をはさんだ構造が多いが、分極方向が180度異なる二枚のセラミックスで構成されるタイプはシリーズ型、分極方向が同じ二枚のセラミックスで構成されるタイプはパラレル型と呼ぶ。接着剤、金属の種類、圧電材と金属板の厚さの関係で歪量は大きく変化する。

  バイモルフ型は、弱い力で比較的高い電圧が発生するという特徴があるので、「バイモルフ+LED」を組み合わせた製品(例えば、キーホルダー(暗いところで、キーホルダーのボタンを押すとLEDが光って鍵穴が見える)が販売されたことがある。

< マルチモルフ >

  実物は見たことがないのではっきりとは分からないが、おそらく薄っぺらい積層セラミックアクチュエータの事だと思う。こうすると、圧電セラミックに対する電界強度が大きくなるので、駆動電圧が下がるというメリットがある。しかし、 デバイスの静電容量が大きくなるので、高速駆動の際に電流が大きくなるというデメリットもある。

<  RAINBOW, Reduced and Internally Biased Oxide Wafer  >

  Clemson大学のHeartling先生 (PLZTで有名なHeartling先生?)によって開発されたモノモルフ系のアクチュエータ。はっきりとは覚えていないが、確かヤング率の異なるPZTを一体焼結した構造だったと思う。

4 素材

  セラミックアクチュエータ用素材としては、大別すると圧電材料と電歪材料に分類される。材料の形態としては、単結晶又はセラミックスがあるが、単結晶は材料のバラつきがある上に、高価であり、変位の稼げる積層アクチュエータを作製しにくいという欠点があるため、主流としては単結晶よりも特性は劣るもののセラミックスを使用してアクチュエータが作製されている。変位が小さいという欠点については、必要とされる発生力と変位量の関係を考慮して各種変位拡大機構を採用することで対応している。

  圧電セラミックスは、歪の温度依存性が少なく、センサとしても使用できるという長所と、歪のヒステリシスが大きいという短所があり、既に広く応用されている。圧電セラミックスといえば、PZT (PbZrO3-PbTiO3)が非常に有名であるが、現在、アクチュエータ用としてはPZTを主体とした材料はあまり用いられておらず、実際にはPZTPb(Mg,Nb)O3Pb(Ni,Nb)O3系に代表される鉛系複合ペロブスカイト型化合物を固溶させた三成分系材料が使用されている。例えば、お手元のアクチュエータが淡い緑色ならばNiNiOは濃い緑色)が配合されている証拠である。

  一方、電歪セラミックスについては、電界の印加にともなう歪の履歴(ヒステリシス)がほとんどない、分極処理が不要で、電界を印加するだけで歪が発生するという長所がある反面、種類が少なく、歪発生量の温度依存性が大きい、材料の比誘電率が数万と非常に大きく、高周波駆動すると大量の電流が必要になるというという短所があり、現在では特殊な用途(宇宙、軍事関係)で使用されているに過ぎない。歴史的に代表的な素材としてはPb(Mg.Nb)O3-PbTiO3 (PMN-PT)系、著者が見出した材料Pb(Ni,Nb)O3-PbTiO3(PNN-PT)系が知られており、PMN-PT系についてはアメリカのセラミックメーカーでElectrostrictorと称して材料及びアクチュエータという形で販売している。また、光を駆動エネルギーとした材料ではPLZT ( (Pb,La)(Zr,Ti)O3 )も知られている。

 

5 駆動方法について

 (アクチュエータの駆動は、専門外なので問い合わせはご遠慮下さい。)

○圧電素子の共振現象の利用(超音波素子など)

  圧電素子に”圧電素子の寸法から決定される共振周波数”付近の交流を印加すると低い電圧で振動するので、これを利用する。超音波振動子などはこのパターンで駆動されている。ただし、共振周波数は駆動中の発熱などによって微妙に変化するので、実際には 、わずかに駆動周波数をずらす事によって結果として安定して駆動させているらしい。

○静的駆動(位置決めアクチュエータなど)

  圧電素子に、変位センサーなどを貼りつけたり、組み込んでおき、電気回路によって常に目的の変位になるように電圧を加える。また、特殊な分野では、アクチュエータの周辺にヒータを組み込んで常に一定温度で駆動させるという方法も取られている。バイモルフなどでは、3線式や2線式で駆動されている。

  バイモルフなどでは、長時間変形させたまま放置すると、シム材の塑性変形やセラミック材の分極状態の変化によって「片方に反ったまま」になることがあるので、駆動方法に注意する必要があるらしい。また、駆動の方法によっては、アクチュエータの一部に応力がかかって割れの原因となることがある。これらは、駆動パターンの変更や、適切なシム材とセラミック材料の選択、及びシム材とセラミック材の厚みのバランスによって解決出来るようだ。

○インパクト駆動

  圧電素子は、電圧を印可した瞬間に変形するという高い反応性を有している。よって、圧電素子の片方に重りをつけておくと、「慣性の法則」によって、アクチュエータ自身が動いたり、重りなどの対象物を移動させる事が可能となる。これをインパクト駆動と呼ぶ。ただし、一般にセラミックスは衝撃に弱いので、この点に工夫が必要となる。

 

6 気をつけたいこと 

○セラミックアクチュエータは、主として圧電の逆効果(電気→力)を利用しているが、取り付け方に注意しないと、振動によって圧電素子に電圧が発生し(圧電効果、力→電気)、結果としてアクチュエータ特性が低下することがある。 

○圧電アクチュエータは、荷重、取りつけ方法、駆動周波数、駆動電圧、使用温度に応じて変位量が変化し、引っ張り応力、衝撃には特に弱い。 


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