ストレス社会



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子供もストレスを感じる時代

現代社会を特徴づけるものは、社会に蔓延するストレスである。現代人は時間に追われ、ゆったりと生活することができない。暇があると、忙しく新聞を読み、喫茶店で雑誌を読み漁り、パチンコをし、タバコを吸い、友達と喋り続けている。休日に家族と行楽地に行っても、多くの人の波にもまれてあわただしく時間を過ごし、家に戻ってやっとほっとする。本当に息つくところがない。眠っていても夢をみることが多い。
ストレスから解放されようとして、毎日酒を飲む人も多い。何よりも仕事のストレスが現代人を打ちのめしている。仕事には家族の生活が掛かっている。その仕事のストレスが現代人を疲労困憊させている。
そして親の生活態度が子供にも伝染し、子供もストレスを感じやすい環境の中で生活している。


現代の子供は学校でストレスを感じる。
教師は子供が上級学校へ進学するための知識を教え込むことに精一杯で、しつけまでは手が回らない。家庭も子供に学校でいい成績を取らせることを第一目標にし、子供も成績がよければ、いい人間であるという環境の中で育つ。子供は幼稚園のときから習い事をし、競争の中で生活することを学ぶ。
子供には何が大切かという共通認識が欠落している。小学校時代から、学校不適応の子供がたくさんできる。そういう子供は心のストレスを他の子供や周囲の人間に向けて発散する場合が多い。暴力的な子供になる。昔の腕白小僧とは違い、自己疎外された子供であることが多い。
成績のいい子供は、大人の表情を読み取り、おとなしい子供になろうとする。子供の大人の表情を読み取る能力は、成績のいい子、悪い子に拘わらず、本能的に鋭い。子供は自分にまだ信頼できないから、周囲の大人の行いを真似して行動する。変な大人社会の言動に対して、子供なりに何か変という意識をもって育つ。その結果、いい子供でも、時には大人を驚かせるような問題行動をすることがある。
子供同士のいじめも陰湿なものが多い。子供の世界は狭いから、些細な出来事が子供の心を傷つけ、ストレスになる。不登校になることもある。


両親とも共働きで、十分に子供の世話をできない家庭が増えている。
親はお金、地位、名誉を得ることが子供の教育の最高の環境と考え、そのために毎日、身を粉にして働く。子供は取り残されている。その子供の心の砂漠は、癒しがたいストレスである。
学校でも、お金、地位、名誉のある家庭の子供が威張るケースが多い。それが当然という雰囲気が、子供にも大人にもある。お金、地位、名誉のある家庭の子供でも敏感に愛に飢えていることがある。PTAの会長や役員の子弟がぐれて、さまざまな社会問題を引き起こすことがある。
子供の心は、とくにお金、地位、名誉とは無関係に働き、活動する。
一般的に良い子の多い現代社会では、子供はストレスをためやすく、そのストレスが子供の健全な発達を阻害し、不完全燃焼の大人への道をつくる。


ストレスは病気の元凶

現代はすべてが惰性で動いている一面がある。職場で、他分掌や他部門の仕事に無関心で済ませることが多い。自分の会社が今どういう状況になっているのかわからない人も多い。取り合えず目先の自分の仕事が精一杯で、職場の他のことに気を配る余裕がない。自分の仕事さえ惰性で行っていることがある。大抵が自分の知らないところで動いていく。この微妙なことが日々ストレスになっていく。
情報化社会の現代では、あまりにも多くのことが自分に関係なく動いていく。自分の生活の根幹と関わっていることが自分に解からないまま決められていく。自分はただ自分に与えられた一部分の仕事を忙しくこなすだけの毎日である。全体をすべて把握している人間は誰もいないという現実がある。現代社会は複雑怪奇で、一人の人間がひとりで把握し、支配できるようなものではなくなっている。すべての人が明き盲である。この状況が知らず知らすのうちに現代人をストレス状態に陥らせる。現代人は解からなくても解かっている振りをすることが得意である。この常なる偽善状態が、現代人の心を、ストレスが常態的に存在していても、それを否定する心理構造に追い込む。
どの人間もストレスを抱えていて、そのストレスが自分でも解からない状況に現代人は置かれている。


現代人は行き詰まりやすい。集団的に会社が行き詰って倒産することもある。職場の分掌や部門が行き詰って、たくさんの問題やトラブルを発生することがある。個人が行き詰ることも多い。ストレスが個人や集団に集積して、普段から現状が解からない状況にあり、その上、問題やトラブルが発生すると、解決能力を超えたストレスの大きさに、たちまちダウンしてしまう。
個人の場合、一時的に職場を休むけれど、ストレスの深刻さゆえに、結局は長期の休業になることがある。
現代人は普段からどこか体の不調を訴えている。ストレスが蓄積すると、当人の体の一番弱い部分が病気となって現れる。
現代人は肥満気味である。ストレスが続くと内蔵疾患として発病する肥満人が多い。
酒を飲むことで、ストレスを忘れようとしているサラリーマンも多いが、行き詰ると、心臓疾患や脳疾患で病院行きになる人間も多い。ひどい場合は麻痺が残ったり、死ぬこともある。
他人の目には、あんなに元気な人が死ぬなんて、という印象があるが、当人の心の中は、当人も知らないうちにストレスまみれになっている。現代という時代の恐ろしさである。


現代人は心の病に罹りやすい。それほど現代人の心は子供のときからストレスを知らず知らずのうちに日常的に受け、強いストレスに襲われると、ダウンしてしまう傾向にある。
心の病に罹った当人は、周囲のものには理解できないほど自分を責める。そしてさらに自分を窮地に陥れる。
心の病の代表的なものはうつ病である。
うつ病患者は精神科の治療を受けることになるが、精神科に通院することに抵抗感のある患者が多い。精神科に通うことは、自分を駄目人間と認めるような自己否定の感情をもつ。
うつ病患者の中には、明るく振舞おうとする人間もいるが、心の底では相手が自分をどう見ているかに対して驚くほど過敏である。
うつ病患者に限らず、自分が認められないことに対して現代人は敏感である。
自分の知らない広大な世界の中にあって、自分が理解されない、認められないことは、自己否定というストレスを生み、なんらかの意味でエリート意識の強い現代人には、このストレスはあらゆる病気の元凶になる。


苦しみ社会

サラリーマンはワイシャツにネクタイ姿の自分をときどき会社の奴隷のようだと思うときがある。古代ローマの奴隷や南北戦争以前のアメリカの奴隷と違って、現代のサラリーマンは清潔であり、豊かな物質文明の中に暮らしているから、肉体的にはエリートのようだが、心が会社のくびきに繋がれており、自由がないと思うときがある。残業も多く、上司に与えられた仕事を汗水たらしてひたすら生活のために止む得ず行っているとき、自分が奴隷のように思えてくる。
終身雇用制度の崩れた現代社会では、サラリーマンはそれぞれが激しい競争に巻き込まれ、リストラされることも多くなり、給料が上がらない状況に陥ることもある。
それぞれのサラリーマンが生活のために苦しむ状況が増している。
サラリーマン個人個人が、会社の中で、歯車として扱われ、熱い心をもった人間として認められないことも、自分を奴隷視して眺める一因になる。


欲望を満たすためのさまざまな媒体が社会の中に数多く存在することも、一方では楽しみでありながら、場合によっては、苦しみの原因になる。
会社や職場だけで満足する人間はほとんどいない。職場で十分に認められない苦しさを、人間は自分のさまざまな欲望を満たすことによって、自分を慰めようとする。
現代社会には、欲望を満たすためのさまざまな娯楽にあふれている。パチンコ、競馬、競輪、酒場、クラブ、キャバレー等である。
またお金を得る欲望を満たすための、株式をはじめとするさまざまな投機がある。
いずれの娯楽も刹那的なスリルを味わわせるものばかりである。
現代社会の激しい刹那性が、人々を死に至るほどの苦しみに突き落とす。


現代人は厳しい競争社会の中で生きている。
この競争に勝ち抜くには、自分の中のさまざまな欲望の声のすべてに耳を傾けていたのでは、中途半端な人間になってしまってとても勝ち目はない。仕事に打ち込んで、家庭を顧みないほどの熱心さを見せてこそ上司も認める。
仕事のために家庭が犠牲になる。当人は家庭以外の所で欲望のはけ口を求める。
家庭の中の子供たちや妻が犠牲になることになる。子供たちの心のゆがみ、屈折は内向し、人知れず苦しむことになる。
競争社会の中の心のゆがみ、価値観のねじれ、価値観の倒錯は現代社会において甚だしいものがある。この苦しみが社会の根底にある。
人間を人間とも思わない職場内での人事、人間関係、人の心を傷つけることへの無関心、冷酷さ、人間を人間とも思わない学校での子供たちの人間関係、人間を人間とも思わない社会での事件が、苦しむ社会の底の奥知れぬ深さを語っている。


悪の社会

豊かな物質主義の社会は、夜を輝かせるネオンサインによく現れている。
電気の光が、昼間だけではなく夜遅くまで働くことを可能にしたが、色鮮やかなネオンほど、人間の欲望を誘惑する豊かさはない。
ネオンは光のイルミネーションと呼ばれ、人々の欲望を掻き立てる。
人々の欲望を刺激するために、人間の英知を結集してあらゆる技術が作り出される。
夜に輝く光やネオンは、夜を昼に変える技術だが、人間の知恵は、白いものを黒と思い込ませる詐術に長けている。
人の欲望を刺激するために、妖艶な美女を使った広告や人の心をとろかせる美しい文章に飾られた広告がマスメディアに頻繁に登場する。
消費者は、知らず知らずのうちに美しさに潜む悪の誘惑に誘われる。


学歴のある人間ほど、嘘をつくことが巧みである。競争社会の中で生きるうちに、嘘をつくことが快感にさえなってしまう。どんな場合でも動揺しないこと、冷酷さを保つことが求められる。顔を赤らめること、正直者であることが馬鹿者と等しい者になってしまう倒錯が現代の上流社会にある。
学歴のある、嘘をつくことに巧みな、冷酷な人間が、科学の進歩の名のもとに、地球の森林を破壊し、河川を汚染し、大気のオゾン層を破壊し、地雷をつくり、戦争に人々を駆り出し、核兵器を作り、地球を何回崩壊させても有り余るほどの核に汚染された地球に変えてしまった。


知識が人間の清浄な命を汚染させている。どの人間にでも存在している良心と無垢な命の輝きが知識によって汚濁している。
人間の心は日常的に麻痺し、悪が善であるかのような錯覚をもって生きている人間が多い。
人は生まれてから死ぬまで騙され続けて生きている。



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