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キッチン火山学

膨らむケーキ・萎むケーキ -失敗お菓子に見る火山の世界-



 火山が噴火すると、熱い溶岩が流れ出したり、火山ガス(水蒸気、二酸化炭素、硫黄など)、
火山弾、軽石、火山灰が火口から噴出します。
火山噴出物を調べると、ガスが抜けたあとの穴が残っているのが観察できます。
地下で融けていた岩石(マグマ)が発泡するためにはどんな条件が必要でしょうか?
ここでは、カップケーキを食べながら考えます。
失敗ケーキ達こそ、火山噴火を考えるよい材料になるかも知れません。

実験:市販材料を使った電子レンジによる加熱実験
準備するもの:
モコモコシフォンケーキ@永谷園4袋、卵4個、
透明マグカップ4個@中国茶と茶器のチンシャン、箸4本

ポイント:
実験では卵を1/3個、 2/3個、 1個、2個と変化させて発泡の組織変化を観察。
卵の量を変化させる事で、発泡源となる水分量と固化のタンパク質の量が変化する。
(小麦粉に対するベーキングパウダーの量は固定される)

事前に火山を歩き、様々な重さ(密度)の石があるあることを体験していると効果的です。
子供とは、「みただけで重さ(密度)があてられるんだ」と、当てっこゲームをしながら歩きました。
「すごーい!」と言ってもらえるのは、最初の10分だけで、未就学児でも、あっというまに見わけがつくようになりました。
結果
カップが熱くなっているので気をつけましょう。鍋つかみや軍手があると便利です。
演示では、
1)卵1個(規定量)の実験からやってみよう。おいしそうにふくらんだところをぜひ見せよう。
2)2/3個で膨らみが悪いこと、
3)1/3個でさらに膨らみが悪い上に、ふわふわしていないこと(弾力性にかける)。
4)2個の実験では、レンジの中でどんどん膨らんで、レンジから取り出した後に、萎む様子を強調すると良い。
卵2個にケーキのもとを入れるとだまになったり、白身が偏りやすい。卵1個分でまぜた後に2個目の卵をまぜるとよい。ただし、偏った白身も中の組織(泡の形状など)が見やすくなって良い。
5)最後に、4個を並べて背の高さ比べで、膨らみ具合を観察する。
  ここで、実際の軽石と並べくらべるとなお良い。

http://www.calstatela.edu/faculty/acolvil/igneous/pumice.jpg
卵(L)1/3個
泡が粗く連結
膨らまない
弾力性がない
(湿気た煎餅)
卵2/3個
泡が粗い
膨らんだ
やや弾力性あり
卵1個
膨らむ
こまかい泡
底部には泡溜まり
弾力性あり
卵2個
泡がち密
弾力性あり
(もちもち感)
縮む溶岩ドーム!?
試食
切り分けながら、目と口で観察するポイントを話そう!
1)卵1個(規定量):底に泡溜まりが見える。底のガスは上面から抜け切らなかったことを示す。ふわふわしっとりした口触りは、スポンジに適度な水分があることを意味する。
2)2/3個:底の泡溜りは顕著ではなく、泡が粗く、膨らみも悪い。ただし、そこそこに膨らんでいる。
3)1/3:底の泡黙りは存在せず、泡はさらに粗く、泡が連結している。膨らみはさらに悪い。スポンジはぱさぱさしており、水分が抜けてしまっていることがわかる。
4)2個:萎んでしまったスポンジは、かなり水分を含んでおり、強い弾力性を持つ。泡は潰れてしまっているが、連結はあまり見られない。高温状態でせっかく膨らんでも、冷却に伴い、ガスの体積は縮み、水分が凝集してしまうことが原因と考えられる。膨らんだ状態で、外気と空気のやり取りをできてこそ、萎まないケーキができる。
まとめ:軽石ができるためには
膨らむ時:
 適度な粘性とガス成分が逃げない構造(独立気泡)
膨らんだ後:
 適度な強度と空気が入る構造(連結気泡)

を必要とする
お菓子つくりのコツ:火山学的解釈
失敗例 お菓子つくりのコツ 火山学的解釈
スポンジが膨らまない・固い 共立て時に湯煎で暖めすぎない(卵黄が変成する)
生地をさっくりまぜる
粘りがありすぎると膨らまない
スポンジがぼそぼそする 泡立てが足りない 大きな粗い泡からは揮発性成分(水分)が逃げやすい
スポンジが焼き上がり後の陥没 別立ての卵白を泡立てすぎない(機械の泡立て機はきめの細かい泡が立ちすぎるので、仕上げは手で) (数密度の高い)細かい泡はメルト壁が破れにくく、空気を取り込めず、加熱時に膨らんでも、冷却時に萎む
シューが途中で萎んだ 膨らんだ後に、温度を下げて水分を飛ばす(途中でオーブンをあけない) 急冷すると、柔らかいために変形しやすく、水は凝集し、空気を取り込む暇もない
おまけ1:爆発噴火と非爆発噴火
カップの底にある泡溜りは実際の噴火では爆発的な噴火に相当します。ガスが効率的に逃げると雲仙岳の溶岩ドームのような、非爆発噴火になりますが、ガスが抜けないと、ピナツボ火山のような爆発的噴火(プリニー式)になります。
おまけ2:男鹿半島の流紋岩質溶岩
卵2個の実験ではカップからケーキが溢れだすことがあります。あふれたときには、流紋岩質溶岩にみたててみました。あふれないためには、トールマグを使用することをおすすめします。
また、ベーキングパウダーは卵とまぜると発泡が始まります。まぜたあとは、すみやかにレンジで過熱してください。あるいは、すぐに過熱したものと、放置後に過熱したものを比較することもおすすめです。
参考:小麦粉を使ったお菓子

カップケーキ、クッキー、蒸しパン、(シフォンケーキ、パイ、シュー)
基本材料:小麦粉、ベーキングパウダー(or 重曹)、卵、塩、砂糖、サラダ油
作り方 :材料を混ぜて加熱する(生地に空気を練り混む場合もあり)
加熱方法:蒸し器、電子レンジ、オーブン、グリル、トースター
発泡源 :水および炭酸ガス(空気)
固化物質:卵(タンパク質)、小麦粉(グルテン)
ホワイトソース(?)からクッキーまで、生地の堅さをどんどんかえられる。また、重曹の量で発泡量もコントロール可能。
イースト菌(微生物:糖を食べておもに炭酸ガスとアルコールを排出)を使うパンは発泡過程が異なるため今回の実験では除外

参考:卵の特徴と役割
・加熱によりタンパク質が凝固し、お菓子をまとめる。
・白身の凝固時間は短く、凝固温度が高い( 75−80度)。
 黄身の凝固時間は長く、凝固温度が低い( 65−70度)。
 →半熟卵や温泉卵の調理に応用
・卵を泡立てるとタンパク質が変成する。変成タンパク質がせっけん分子の ように働き、フォーム(泡の集団)を形成。
 →シフォンケーキ
参考サイト
重曹v.s. ベーキングパウダー:Tokyo Gas 「食の110番」へ
むしパンがふくらむのはなぜ?:お菓子(DE)科学


本実験は、「カップケーキにみる泡の成長」(旧HP)(2005年地球惑星合同大会「キッチン地球科学」(HP栗田氏))での発表をもとに、キッチン火山学@2005年火山学会秋季大会にて実演したものです。
October,2005作成 February, 2006更新