コムスタカ―外国人と共に生きる会

多文化共生


韓国の多文化現況と社会的課題
キム・ヨンジュ(忠南女性政策開発院 研究委員)
(日本語訳者    粟谷 美奈子)

※この論文に掲載されている円グラフについては、文字表記の部文のみ掲載和訳されています。

T 韓国は多文化主義社会なのか?

 これまでの十年余り、韓国社会は外国人労働者の増加、国際結婚による移住女性※1をはじめとした居住外国人の増加により、多民族・多人種・多国籍社会に変貌してきている。また、国際結婚の増加とともに二世の子どもたちの増加は人口学的構成の側面だけではなく家族の構成と形態を変化させる要因ともなっている。
 このような変化を背景に、最近、多文化社会に対する関心と議論が急激に膨らんできている。最近2年余りの言論または学会では、多文化社会に対する各種議論が沸きあがり、政府においても『多文化社会』、『多文化主義』という用語を外国人支援対策に関する各種文献で使用している。
 特に、女性結婚移民者の存在が目立つようになったことは、韓国での多文化主義議論と政策を促す契機となった。しかし、最近の多文化主義議論の拡散とは違って、韓国社会は長い間、外国人に対する差別と排他的な認識が強かった。これまでの五十年余り、基地の町の混血児たちは父系血統社会では〔保護する価値がない〕排除された集団であり、日常的な差別の結果、大部分は経済的に貧困状態にあり(国家人権委員会2003b)、100年余の歴史を持っている韓国内少数民族集団である華僑もやはり各種の社会的制約と差別を経験している(国家人権委員会2003a※2
 歴史的に否定的な意味の「混血」とは反対となる「純血」主義の価値が強かった韓国社会で、急に、ここ何年かの間に多文化主義の価値観が支配しているように見えることに対して、少し冷静に眺める必要がある。このような現象に対して、単一民族主義と父系血統的な伝統が強い韓国社会は多民族・多人種集団と混じって生活してきた歴史はなく、このような生活の中で葛藤や交流に対する現実感がないためにむしろ多文化主義(という概念)が簡単に動員され、そこに収斂していったのではないかという見解もある(韓国社会学会、2006)
 しかし、現実の生活の中で社会的資源の配分において民族集団間の利害関係が対立したり、日常的な葛藤があらわれるとき、いつも少数民族及び人種集団または混血人に対する差別と排除に対する声が高くなる可能性がある。従って、ひとつの掛け声や単なる理想としての多文化主義ではなく、多文化社会に対する詳細な考察を基盤とした韓国の多文化主義に対する下絵を書いていかなくてはならない。
 一方で、居住外国人の増加は地域社会にも大きな変化をもたらし、今後も多くの変化を促す要因になると見られる。地域社会は、多文化的な現実に直面しそれが形成される空間という点で非常に重要な意味を持つ。国家政策の「正しさ」を確認する試験場がまさに地域社会であるからだ。その点から、地域社会は多文化主義を、うまく実践していくことのできる空間として再構築される必要があり、それが現在の韓国社会が解決しなければいけない課題である。
 本文では、多文化社会政策の背景としての女性結婚移民者を含む外国人の現況と外国人支援政策及び問題点を点検することにより、女性結婚移民者が韓国の多文化主義実現に対して持つ意味を確認できるようにした。そして、多文化主義の実現のため、現在韓国社会が解決しなければならない社会的課題を提起する。

※注1 政府は、韓国人男性と結婚した女性を総称する用語として「女性結婚移民者」という言葉を公式に使用している。本文でも、以後は「女性結婚移民者」という言葉を使う。
※2 関連研究によると、現在3世代目に入っている基地地域の「混血人」は1950年代から1960年代まで持続的に増加し、1970年代以降は徐々に減少。現在約500人程度と推定されている。
   補足説明―――ここでいう「混血人」は、米軍基地の軍人と韓国女性の間に生まれた子女を指しています。またその数が少なくなった要因として、60,70年代よりも駐屯軍人数が減ったこと、80年代にアメリカがビザを発給して受け入れをした時期があったこと、また、韓国は日本より海外移民や海外養子縁組が広く行われているので、韓国で生き難い立場の人は新天地に出て行くという選択をしたものと思われます。現在の約500人という数字は、政府が正式に調査したものではなく、海外養子などの活動をしているNGO団体が把握しているものだそうで、2世、3世は含んでいない可能性が高い。

一方、国内の華僑は現在約二万人ほどであり、関連研究によるとその半分以上である57%が飲食業に従事しており、華僑の人に対する調査からは、就業や社会福祉などでの差別が深刻だと感じている比率が80%にいたった。(国家人権委員会、2003a参照)。参考に2002年永住権制度の導入により華僑の人は永住権を獲得することとなり、2005年からは永住権を持つ外国人に地方選挙件が付与されたが、華僑学校の学力認定、障害者、老人等への各種福祉の対象からは排除されている。

U 韓国居住外国人の現況

1. 居住外国人現況

 韓国に在留する外国人の数は年毎に増加し1990年には約5万人程で全人口対比0.11%に過ぎなかったが、2000年には1%を超え、2006年には1.88%を占めている(<表2−1>参考)。在留外国人が増加した背景には1992年に韓国と中国が国交を結んだ後、韓国系中国人の就業者や結婚移民者の流入が大きく増え始めたことと、国内労働力不足現象が起因の外国人労働力の移入が大きく広がったことがある。特に1993年に「産業研修生制度」を実施することにより外国人労働力の輸入を公式に許容して以降、在留外国人の規模が大きく増え始めた。2006年の国内居住外国人は910,149人であり、この中で長期在留者が72.6%、短期在留者は27.4%と長期在留者がはるか多くの比重を占めている。その比率も最近の数年間、継続して増加推移を見せている(<表2−2>参考)。長期在留者が90日以上の在留登録と居住地申告をした外国人と登録しない長期在留者を含んでいるという事実から、長期在留者の増加は外国人の定住化傾向が深まっていることを意味する。※3

  <表2−1>総人口対比在留外国人比率
区分
1990年
1995年
2000年
2005年
2006年
在留外国人数
49,504
269,641
491,324
747,467
910,149
総人口
43,410,000
44,553,000
45,985,000
48,294,000
48,297,000
人口対比(%)
0.11
0.60
1.07
1.55
1.88
  *資料;法務部、2007、『出入国管理統計年報』

  <表2−2>
区分 2002年 2003年 2004年 2005年 2006年
在留外国人数
629,006
678,687
750,873
747,467
910,149
長期在留者数
(比率)
271,666
(43.2)
460,261
(67.8)
491,409
(65.4)
510,509
(68.3)
660,607
(72.6)
短期在留者数
(比率)
357,340
(56.8)
218,426
(32.2)
259,464
(34.6)
236,958
(31.7)
249,542
(27.4)
  * 資料;法務部、2007、『出入国管理統計年報』

※3 多文化現況を概括するうえで居住外国人の定住化傾向とともに「空間的分離または分化」である「集住化」現象も論じなくてはならないが、本文では定住化現象に限定して記述する。参考までに、ソウルの場合は工業団地地域や居住費が安い外郭地である衿川、九老、安山、城南、東豆川などには外国人労働者街が、また江南、瑞草、竜山などにはアメリカ、日本などの専門技術職従事者たちの集団住居が形成されるなど集住化現象が進行している(韓国社会学会、2006参照)

 在留外国人の性別による現況は年度別外国人登録者数の推移を通して確認できる。1999年以後、外国人登録者の性別分布は男性が56-59%、女性が31-34%程度と男性が女性より多い(<図2−1>)。そして外国人登録者の主要在留資格別推移を見てみると、外国人労働者が現在30万人に近い規模であり、その次に結婚移民者が9万人を超える規模にいたっている(<図2−2>)。数字的には外国人労働者がもっとも多く増加幅の起伏は相対的に大きい反面、結婚移民者と留学生が少しずつ増えていることも見て取れる。

<図2−1>外国人登録者の年度別推移
 -●- 男性
 -■- 女性
*  資料;法務部、『出入国管理統計年報』(1999-2006)

<図2−2>主要在留し格別の外国人登録者年度別推移
グラフ説明 上から留学生、専門職、単純労働者、結婚移民者
*  資料;法務部、『出入力管理統計年報』(2002-2006)

 一方、在留外国人の国別現況を見ると、中国(42%)、アメリカ(12%)、ベトナム(6%)、フィリピン(5%)、日本(5%)、タイ(5%)などの順になるが中国は韓国系中国人(朝鮮族)の就業者と結婚移民者の数が多いからであり、アメリカは駐韓アメリカ軍と韓国系アメリカ人の訪問居住による居住者、フィリピン、タイは外国人労働者と結婚移民者の数が多数を占めていると見られる(<図2−3>)。また、在留外国人の主要国別現況をさらに性別で見てみると、大部分男性在留者が女性より多いが、韓国系中国人と日本人の場合、女性在留者の方が多いという結果が出た。

<図2−3>在留外国人の国別分布(2006年度)
 円グラフ多い順から中国、アメリカ、ベトナム、フィリピン、タイ、日本
 最後の25パーセントはその他
*  資料;法務部、2007『出入国管理統計年報』

<図2−4>在留外国人の主要国別・性別現況
 棒グラフ左から 中国、韓国系中国、ベトナム、フィリピン、タイ、日本
*  資料;法務部、2007『出入国管理統計年報』

2. 国際結婚及び女性結婚移民者の現況

1) 国際結婚の現況
 在留外国人の増加に影響を与えている主要要因のひとつに国際結婚が増えたことによる外国人配偶者の増加があげられる。国際結婚が増加した背景には地球のグローバル化が進んだことによる国際交流と人口移動の増加及び国際在留外国人の増加などの要因と合わさり性比率の不均衡と社会的資源が比較的貧弱な男性の結婚難をあげることができる。※4
 特に1990年代中盤以降、国際結婚の急増を主導したのは農村地域と都市低所得層の男性たちだった。結婚市場において不利な条件に立たされた農村及び都市低所得層の男性集団は結婚のためのひとつの代案であり選択として「国際結婚」をすることになり、初期の主な結婚相手は中国系の韓国女性たちだった。1992年に中国との修交後、韓国系中国人との往来が以前より容易になったことから、中国系韓国女性との国際結婚が徐々に増えていったのだが「朝鮮族」と呼ばれる中国系韓国女性は同じ民族であるという点からも結婚相手としてさらに好まれるという側面がある。
 国際結婚は1990年代以降、引き続き広がり2000年からは10パーセントを声2006年には12%にいたっている(<表2−3>)。国際結婚の中でも「韓国男性+外国女性」という形態が圧倒的に高い比率を占めている。2000年の国際結婚中59.3%が「韓国男性+外国女性」であったが2006年にはその比率が76%と、現在、国際結婚の多数は韓国男性と外国女性との結婚であるといえる。

※4 1990年「20−24歳」年齢層人口の性比率は109.15、1995年は108.30、2000年は111.44にいたっており、「25−29歳」年齢層においては、1990年が99.46、1995年が100.92、2000年には100.87であった。「30−34歳」年齢層では1990年が103.77、1995年が103.00、2000年には102.13と結婚適齢期の年齢層では男性人口の方がほとんどの場合多いということがわかる(統計庁、『人口総調査』)

  <表2−3> 年度別国際結婚推移
区分
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
全体結婚件数
334,030
320,063
306,573
304,932
310,944
316,375
332,851
国際結婚件数
全体
12,319
15,234
15,913
25,658
35,447
43,121
39,690
男性
7,304
10,006
11,017
19,214
25,594
31,180
30,208
女性
5,015
5,228
4,896
6,444
9,853
11,941
9,482
国際結婚比率
4.6
4.2
5.2
8.4
11.4
13.6
11.9

  * 資料;統計庁、2007『婚姻統計結果』
 地域別に国際結婚の現況を見てみると国際結婚地域的な特性を類推することができる。まず、ソウル特別市を除いては、ほとんどが農村地域に含まれている地域(広域道)が都市地域(広域市)より国際結婚比率が高く、広域道の場合「韓国男性+外国女性」の結婚が相対的に高い反面、広域市の場合「韓国女性+外国男性」の結婚が相対的に多い(<表2−4>、<表2−5>)。
 <表2−5>を見ると、現在、韓国の農林業従事者の国際結婚比率が平均41.0%であり、農村地域の比重が高い地域であるほど国際結婚比率が高くなっていることがわかる(慶南52.6%、慶北50.2パーセント)
 次に国際結婚の国籍別推移と現況をみると、韓国男性の場合2000年以降、配偶者の国籍は主に中国、日本、フィリピン、ベトナム、モンゴルなどが、韓国女性の場合には中国、日本、アメリカ、カナダ、パキスタンが多数を占めている。2000年以後国籍別順位が少しずつ変わってきているが、韓国男性の場合中国、日本、フィリピンの順から2003年以後、ベトナム女性との結婚が急増したことにより中国、ベトナムの順に変わった。韓国女性の場合には日本、アメリカ、中国の順から日本、中国、アメリカの順に中国男性との結婚が大きく増えていることがわかる(<表2−5>、<図2−5>)。

  <表2−4>2006年 市道(広域自治体)別国際結婚件数と比率
区分
総結婚件数
国際結婚
韓国男性+外国女性
韓国女性+外国男性
結婚件数
比率
結婚件数
比率
結婚件数
比率
総計*
333,752
39,690
11.9
30,208
9.1
9,482
2.9
ソウル
73,924
9,127
12.4
6,168
8.4
2,959
4.0
釜山
20,017
1,986
9.9
1,466
7.3
520
2.6
仁川
13,892
1,295
9.3
1,070
7.7
225
1.6
大邱
17,261
1,977
11.5
1,572
9.1
405
2.4
大田
8,487
723
8.5
643
7.6
80
0.9
光州
9,502
823
8.7
687
7.2
136
1.5
蔚山
7,493
678
9.0
620
8.3
58
0.7
京畿道
77,231
8,321
10.8
6,492
8.4
1,829
2.4
江原道
8,731
907
10.4
795
9.1
112
1.3
忠清北道
9,291
1,063
11.4
953
10.3
110
1.1
忠清南道
13,373
1,659
12.4
1,472
11.0
187
1.4
全羅北道
10,429
1,464
14.0
1,343
12.9
121
1.1
全羅南道
10,507
1,695
16.1
1,582
15.1
113
1.0
慶尚北道
16,178
2,070
12.8
1,885
11.7
185
1.1
慶尚南道
20,789
2,463
11.9
2,240
10.8
223
1.1
済州
3,576
379
10.7
277
7.8
102
2.9
  * 国外含む
  * *資料;統計庁、2007『婚姻統計結果』

  <表2−5>農林漁業従事者の国際結婚
区分
2005年
2006年
全体男性国際結婚比率
農林業従事者男性の国際結婚比率
全体男性国際結婚比率
農林業従事者男性の国際結婚比率
全国
9.9
35.9
9.1
41.0
ソウル
10.7
35.7
8.3
36.2
釜山
7.4
20.2
7.3
19.9
仁川
7.7
47.2
7.7
44.1
大邱
12.2
34.6
9.1
37.9
大田
6.4
35.9
7.6
40.0
光州
8.6
38.3
7.2
40.0
蔚山
8.1
42.4
8.3
34.8
京畿道
10.1
30.4
8.4
31.0
江原道
9.1
32.9
9.1
36.6
忠清北道
11.0
46.3
10.3
44.3
忠清南道
11.4
41.4
11.0
41.2
全羅北道
13.6
42.3
12.9
44.2
全羅南道
13.3
39.3
15.1
47.0
慶尚北道
10.2
43.6
11.7
50.2
慶尚南道
8.8
40.0
10.8
52.6
済州
6.8
19.2
7.7
20.9
  *資料;統計庁、2007『婚姻統計結果』

  <表2−6>国際結婚国籍別推移
類型
国家
2001
2002
2003
2004
2005
2006
韓国男性+外国女性
全体
10,006
11,017
19,214
25,594
31,180
30,208
日本
976
959
1,242
1,224
1,255
1,484
中国
7,001
7,041
13,373
18,527
20,635
14,608
アメリカ
265
267
323
344
285
334
フィリピン
510
850
944
964
997
1,157
ベトナム
134
476
1,403
2,462
5,822
10,131
タイ
185
330
346
326
270
273
ロシア
157
241
297
318
236
206
モンゴル
118
195
318
504
561
594
その他
660
658
968
925
1,119
1,421
韓国女性+外国男性
全体
5,228
4,896
6,444
9,583
11,941
9,482
日本
3,011
2,377
2,613
3,378
3,672
3,756
中国
222
272
1,199
3,621
5,042
2,597
アメリカ
1,132
1,210
1,237
1,348
1,413
1,455
ドイツ
97
84
93
110
85
129
カナダ
164
174
223
230
285
308
フランス
58
80
78
83
76
98
オーストラリア
79
89
108
136
102
139
パキスタン
64
126
130
103
219
152
その他
401
484
763
844
1,047
848
  *資料;統計庁 婚姻統計

<図2−5>韓国男性の国籍別結婚推移
*資料;統計庁 婚姻統計

 「韓国男性+外国女性」の国際結婚で地域別に外国人配偶者の分布現況をみると、全体的に韓国とベトナムが多数を占めており、フィリピン、日本モンゴルは地域によって少しずつ順位に差があるがそれほど大きな意味はないように見える。しかし中国とベトナム女性の比率においては、仁川と蔚山を除いた、ソウル、大邱、釜山、光州、大田の広域市は中国の数が多い反面、江原、忠北、忠南、全北、全南、慶北、慶南の広域道(京畿と済州を除く)はベトナム女性の数が多い傾向がある。これは地域別に、都市地域の男性は中国女性との結婚が、農村地域の場合ベトナム女性との結婚が相対的に多いということを示している。

<図2−6>2006年度 市道別外国時妻の国籍別婚姻現況
棒グラフ上から その他、モンゴル、ベトナム、フィリピン、日本、中国
    左から ソウル、釜山、仁川、大邱、光州、大田、蔚山、京畿、江原、忠北、忠南、全北、全南、慶北、慶南、済州
*資料;統計庁 婚姻統計

2) 結婚移民者の現況 
 法務部の資料によると、現在、結婚移民者は総93,786人であり女性が88.3%、男性が11.7%となっている。※5 出身国分布現況は女性結婚移民者の場合、韓国系中国、中国(漢族)、ベトナム、日本の順であり、男性結婚移民者は韓国系中国、中国、日本の順である(<表2−7>、図<2−7>)。
 最近の何年かで国際結婚全体の大多数を占める「韓国男性+外国女性」の結婚においてベトナムとの結婚が30%以上である点を考慮すると、これから数年の間で全体結婚移民者数でベトナム人が占有する比率が大きく伸びるとみられる。
  
  <表2−7>結婚移民者の出身国分布別居住現況(06.12)
出身国
全体
女性
男性
人数
比率
人数
比率
韓国系中国
35,801
31,183
37.7
4,618
42.2
中国
20,485
18,541
22.4
1,944
17.7
ベトナム
14,831
14,768
17.8
63
0.6
日本
6,546
5,977
7.2
569
5.2
フィリピン
4,324
4,186
5.1
138
1.3
タイ
1,581
1,555
1.9
26
0.2
モンゴル
1,641
1,614
2.0
27
0.3
ロシア
1,085
1,046
1.3
39
0.4
ウズベキスタン
1,056
1,024
1.2
32
0.3
その他
6,436
2,934
3.6
3,502
32.0
全体
93,786
82,828
100.0
10,958
100.0
  *資料;法務部、2007『出入国管理統計年報』

<図2−7>女性結婚移民者の出身国別現況
 多い順に 韓国系中国、中国、ベトナム、日本、フィリピン、モンゴル、その他

  * 資料;法務部、2007『出入国管理統計年報』

 次に地域別の結婚移民者居住状況をみると、結婚移民者の半数以上である58.6%がソウル、京畿、仁川の首都圏地域に住んでおり、全般的に地域の人口規模と同じ水準である。
 性別居住状況は、ソウルと広域市では男性結婚移民者の比率が相対的に高く、広域道では女性結婚移民者の比率が相対的に高い。
 関連研究においてもこのような地域別の差異をみせており、都市居住結婚移民者の比率が76%、農村居住結婚移民者の比率は23.5%と、都市居住者がはるかに多く、女性結婚移民者は農村地域に、男性結婚移民者は都市地域に多く居住しているという結果になっている(ソル・ドンフン、イ・ヘギョン、チョ・ソンナム、2006)

  <表2−8>地域別結婚移民者居住現況
区分
総人口
結婚移民者数
総計
比率
女性
比率
男性
比率
93,786
100.0
82,828
100.0
10,958
100.0
ソウル
9,762,546
24,992
26.7
20,418
24.7
4,874
41.8
釜山
3,512,547
4,320
4.6
3,888
4.7
432
4.0
仁川
2,517,680
5,721
6.1
4,994
6.0
727
6.6
大邱
2,456,016
2,641
2.6
2,388
2.9
253
2.3
大田
1,438,551
2,108
2.3
1,899
2.3
209
1.9
光州
1,413,644
1,643
1.8
1,531
1.9
112
1.0
蔚山
1,044,934
1,464
1.6
1,362
1.7
102
0.9
京畿道
10,341,006
24,143
25.8
20,847
25.2
3,296
30.1
江原道
1,460,770
2,408
2.6
2,275
2.8
133
1.2
忠清北道
1,453,872
2,891
3.1
2,702
3.3
189
1.7
忠清南道
1,879,417
4,084
4.4
3,873
4.7
211
1.9
全羅北道
1,778,879
3,667
3.9
3,528
4.3
139
1.9
全羅南道
1,815,174
3,785
4.0
3,713
4.5
72
1.3
慶尚北道
2,594,719
4,349
4.6
4,161
5.0
188
1.7
慶尚南道
3,040,993
4,822
5.2
4,574
5.5
248
2.3
済州
530,686
748
0.8
675
0.8
73
0.7
  *資料;法務部2007『出入国管理統計』、統計庁2005『人口総調査』

V.政府の居住外国人政策

1 居住外国人に対する政策の変化と現況

 2003年頃までは、韓国の外国人政策のほとんどは管理と統制中心で、国内労働力需要に必要な労働力の供給という側面からのものであった。
 しかし、外国人在留の形が外国人労働者をはじめ、結婚移民者、外国籍を持つ韓国人と多様化し、永住または国籍取得外国人が増加するとともに、変化してゆく状況にあった外国人政策を新しく整備しなくてはならなくなった。またここには、それまでの外国人制度の問題点に対する政府自らの認識と、市民団体の制度改善に対する根気よい要求も影響を与えた。
 代表的な例として、1993年に実施された産業研修生制度は外国人労働者の人権侵害と不法労働を作り出すという批判に直面し、女性結婚移民者の結婚過程での人権侵害や、結婚後の社会的差別と人権侵害に対する批判も高まった。そのうえ結婚移民者の子供たちもだんだんと増えてゆくにしたがい、結婚移民者とその子供たちにたいする定着支援と保護が社会的課題として台頭してきた。
 このような背景から、政府では2004年頃から外国人関連法令と制度を新設したり改正したりして、それまでの管理と統制の観点から社会統合の観点を加えたものに切り替え始めた。すなわち、外国人の一時的在留ではなく居住を前提とした社会統合政策の必要性を認識しはじめたということだ。※6
 まず2002年に永住権制度を新設して、国内華僑など外国籍所持者たちに永住権を与え、2004年には産業研修生制度を外国人労働者の労働三権を保障するなどの内容の雇用許可制度に転換した。また、2005年には、地方選挙に限り、永住権者に選挙権を与えた。
 一方、行政自治部では2006年8月に『居住外国人支援業務便覧』を各地方自治体に配布したのだが、ここには<居住外国人支援条例標準案>が含まれており、この標準案では居住外国人の地位と支援基盤づくり、地域社会適応及び制度提供などの支援、多文化尊重の地域社会造成などに関する内容が盛り込まれている。
 また2007年に入り、法務部が主管する《在韓外国人処遇基本法》を制定した(2007.5)。この法律は、大きく @中央政府及び地方政府は五年毎に外国人政策施行計画を樹立する A在韓外国人及び子女に対する不合理な差別の防止と社会的適応の支援 B適応教育の推進、子女に対する保育支援など C事実婚関係で出産した子女、永住権者、難民の支援、保護 D共に生きる環境づくり などに関する内容が含まれている。
 これ以外にも、2007年5月には《多文化家族支援法》が、国会に発議されもした。
 現在、中央政府で推進している居住外国人に対する法令と制度は、地方政府にも相当な影響を与えている。このような法令と制度は、居住外国人たちを地域社会に参加させることができる法的、行政的な根拠となるからだ。
 最近、このような変化に力を得て、2006年から《居住外国人支援条例》を制定したり、準備を進めている地方自治体が増加している。

  <表2−9>外国人に関する主要制度の変化
年度
内容
1992.12
1993.11
1997.12

1999.9

2002.4

2002.12

2003.9

2004.8

2005.8

2006.1

2006.8

2007.5

難民協約加入
外国人産業研修生制度導入(出入国管理法)
父母両系血統主義採択(国籍法改正)

一部在外同胞の就業活動、金融・不動産取引自由化(在外同胞の出入国と法的地位に関する法律)

永住権制度新設(出入国管理法)

中国同胞に対する就業管理制度導入(出入国管理法)

不法滞在者合法化措置

外国人雇用許可制度実施(外国人勤労者の雇用等に関する法律)

永住権所持外国人の地方選挙権付与(公職選挙法)

外国人権益増進協議会設置(法務部)

居住外国人支援業務便覧の制作及び配布(行政自治部)

在韓外国人処遇基本法制定

  *資料;外国人政策委員会 2006『第一回 外国人政策会議資料』参照

※6 これは2006年5月に設置された「外国人政策委員会」の政策目標によくあらわされているが、ここでは「外国人の人権尊重と社会統合」と「優秀な外国人人材誘致支援」を設定している。(外国人政策委員会、2006)

2 女性結婚移民者への支援政策

 現在、居住外国人の中でも、女性結婚移民者支援に対する政府の関心が非常に高い。この理由としては、大部分が国際定住することが予想される集団であるうえに「国民の配偶者」として、韓国籍を取得する可能性が高いからである。特に、女性結婚移民者の子どもたちが、だんだん成長して数を増してくるに従い、女性結婚移民者への直接支援だけではなく、子女の養育、保育、教育などに関する支援も少しずつ進んできている。※7
 相当数の結婚移民者が言語的・文化的差異による困難にぶつかっており、経済的に低所得層である場合が多い。また、女性結婚移民者のかなりが中国と東南アジアの開発途上国出身で、これらに対する社会的偏見や差別的な認識も強い。そのうえ、父系中心の家族文化伝統が強い韓国社会において一般的に女性に与えられる家族内の役割と関係は、女性結婚移民者をより困難な状況に陥らせる要因となる。
 女性結婚移民者の数が急増するにしたがい、政府ではこれらの適応と統合に対する支援策を強化しはじめた。2006年4月に13の部署が参加して「女性結婚移民者の社会統合支援対策方案」が出され、現在いくつかの部署で、韓国語教材の発刊、韓国語教育支援、結婚移住者支援センター設置及び運営、結婚移民者子女教育支援などの政策が推進されている(<表2−10>)。

※7 教育人材資源部の統計によると、結婚移民者子女は総7,998人。うち、小学生6,795人、中学生924人、高校生が279人となっている。(2006年4月資料)

  <表2−10>
   中央政府の結婚移民者に対する社会統合支援政策の主要推進状況
部署名
内容
法務部
−婚姻破綻及び離婚による簡易帰化申請時の立証用件緩和
−外国人政策委員会構成及び運営(2006)
保健福祉部
−結婚仲介業管理に関する法律の制定推進
女性家庭部
−結婚移民者家庭支援センターの設置・運営
−外国人専用休憩所設置・運営
−女性結婚移民者用韓国語教材の制作・配給
−産前・産後の手伝い派遣事業
教育人的資源部
−多文化家庭子女教育支援対策及び指定学校運営
農林部
−女性結婚移民者のための訪問ヘルパー
文化観光部
−社会文化芸術教育プログラム(女性結婚移民者)運営

 特に、中央政府だけでなく、地方政府でも女性結婚移民者の支援に多くの関心と財源を割いている。ここには、都市地域と農村地域の格差の拡がり、少子高齢化が深刻になり活力を失ってきている地域社会の危機意識も含まれている。
 一方、女性結婚移民者に対する支援と政策的関心が高まるにつれ関連NGOや活動家が増えてきた。女性結婚移民者の支援を政策化することができたのは、これまで地域の多くのNGOの提言や批判、そして活動があったからこそ可能であった。

3 居住外国人及び女性結婚移民者政策の特性と問題点

 多文化主義が、ひとつの社会で人種、民族などの多様な集団の中で少数集団が差別を受けたり排除されたりしないよう多様性を認めて擁護する理念だとするとき、外国人政策の多文化主義的方針を定める基準は、外国人集団に対する支援程度の量的規模や数ではなく「多様性」と「平等性」の原理にどれだけ立脚しているかにあると考える。「多様性」と「平等性」は生存権のような最小限の人権という次元ではなく、少数集団の文化的多様性を維持し社会的・政治的な平等性を目指さなくてはならない。
 しかし、現在外国人支援政策と女性結婚移民者に対する支援政策がは、これまでのところ社会・政治的な平等や多様性の次元までは至っておらず、生存の保障という次元にとどまっているようにみえる。特に、外国人労働者の社会的権利の形成に対しては敵対的な認識を持ったり警戒する人も多い。また、女性結婚移民者の支援に対しては、かなり多くの人が共感しているが、女性結婚移民者個人の社会的地位形成よりは、子どもの出産や養育の役割を担う人であるから支援しなくてはならない集団であるという認識が多い。※8
 女性結婚移民者の社会統合のためには福祉支援政策も大変重要であるが、これを超えてこれらの人の社会的力量(social empowerment)と多文化的な相互理解を高める政策を強化しなくてはならない。
 ジェンダーの観点から見ると、女性結婚移民者の社会的力量の強化は「外国人」として、多文化主義の実現を促進する契機となることができるだけではなく、父系中心的な家族文化を弱めるひとつの要素ともなる。逆の言い方をすれば、多文化主義の実現は、女性結婚移民者のジェンダー地位の向上を前提としたとき、実質的に可能であるということを意味する。
 付け加えるなら国際結婚家族が本当の多文化家族になるためには、家族内での文化的多様性と平等性が実現しなくてはならない。文化的多様性と平等性を基盤とした多文化主義的国際結婚家族が増えたとき、地域社会全般の多文化主義を進めていくことができる。このような点から女性結婚移民者に対する政策は家族の多文化主義を高める政策の方向により拡大していかなくてはならない。これは、これからの女性結婚移民者支援政策は女性結婚移民者と子女の多様な文化のアイデンティティを認め、夫やほかの家族構成員の多文化主義的な認識や行動を強めることができるようにする方向に導かなくてはならないことを意味する。

※8 女性結婚移民者を「再生産の手段」と認識する典型的な政策のひとつが、一部地方政府によって推進されている《農村男性結婚支援条例》とそれによる国際結婚経費の支援を上げることができる。一部地方政府では政府の予算で男性に限り国際結婚に必要な経費の一部を支援している。

W 多文化共生のための韓国社会の課題

 現在、韓国社会は多文化社会へと徐々に変わりつつある。しかし、人口学的構成の側面から多文化社会になったからといって、それが多文化主義の社会を意味するのではない。多文化主義の社会は国家的次元の一貫した政策推進と多文化的環境に合致した地域社会の再構成がなされたときに肯定的に実現される。
 そういった点で社会全体と地域社会は多文化コミュニティ構築するために努力しなければならないいくつかの課題を抱えている。ここでは、中央政府及び地方政府のみならず地域のNGO、地域住民全てが含まれる。多文化共生のための韓国社会の課題を示すと次のようになる。
 一つ目は、中央政府は居住外国人や結婚移民者に対する政策において細部政策にいたるまで一貫した観点と方向で推進しなくてはならない。このためには、政策の現実化のための制度の整備や環境構築で後押ししなくてはならない。また限られた支援の効率的な分配と、推進役割に関連した政策の調整・調節を併せて行わなくてはならない。
 二つ目は、地方政府が居住外国人の社会参加を促進する政策を積極的に推進しなくてはならない。居住外国人と地域住民との相互交流と外国人の多様な要求が具体的に政策に反映できるように多様な推進体系と経路をつくらなくてはならない。多文化共生は外国人及び多様な少数集団が参加主体となるときに可能である。
 三つ目は、地方政府はNGOとのパートナーシップを基盤に連携・協力を強化しなくてはならない。NGOは、単なる支援対象ではなく多文化主義の政策推進において大事な同伴者である。こことの連携・協力は地方政府が財源を支援しNGOが単純に実施するという形態の縦の関係ではなく相互補完の関係だということを意味する。NGOの問題意識と提案は、ひとつ間違えると陥ってしまいがちな政策の「抽象性」をより現実的なものに変えていくことに寄与するものである。
 四つ目は、地域のNGOは地域住民の多文化的感性を高めるための活動をより積極的に進めなくてはならない。地域住民の多文化理解を高め、地域住民がNGO活動の支持者、助力者になれるよう外国人支援活動やボランティアの育成にも力を入れる必要がある。
 今の韓国社会では多文化社会は現在進行形であり未完のプロジェクトである。多文化共生社会のため政府、地域社会、地域住民、そして私たち自身を含んだ全ての役割と責任は重い。


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