コムスタカ―外国人と共に生きる会

多文化共生


韓国の外国人処遇基本法と、忠清南道居住外国人支援条例の紹介
中島 真一郎



「管理と排除」から、「多文化共生」へ向けて転換する韓国政府の外国人政策

 韓国政府は、日本と同様な「管理と排除」を中心とする入国管理制度を採用し、日本の入国管理及び難民認定法や入管政策を参考に、その後追いをするかのように1990年代から2003年までは、1992年難民条約の批准、1993年産業研修制度の導入、1997年 父母両系主義への国籍法の改正、2002年永住権制度の新設、韓国系中国人(朝鮮族)の就業管理制度の導入等をおこなって来ました。(日本は、1981年難民条約を批准し、入管法の改定では、1981年に留学の派生として研修を在留資格4-1-6の2として導入し、1991年に「研修」、1993年『技能実習生』、1989年日系人3世を主な対象に「定住者」の在留資格を創設、1985年に父系主義から父母両系主義への国籍法の改正を行っています。)
 1990年代以降、韓国社会における移住外国人の増加、その居住の長期化や定住化が進行するとともに、NGOなどの市民団体や労働組合の批判や運動により、産業研修生や居住外国人への人権侵害が社会問題化してきました。
 これらの事態に対応し、韓国政府や自治体は、これまでの「管理と排除」を中心とする外国人政策から、2003年以降、多文化共生をめざす外国人政策へ転換していきます。
 2003年には、未登録外国人のアムネステイ(合法化)を一定の条件付で実施しました。2004年には、批判の強かった産業研修生制度を廃止し、外国人労働許可制を導入しました。
 2005年には、「永住者」の在留資格を持つ外国籍住民への地方選挙権を付与します。
 2006年には 法務部に、外国人権益増進協議会が創設され、行政自治部による居住外国人支援業務便覧が製作・配布されました。
 そして、2007年5月には、在韓外国人処遇基本法が制定(同年7月より施行)されました。この法律と並行して、韓国の広域自治体(日本の都道府県や、政令指定都市にあたり 全国に16ある)や、基礎自治体(日本の市町村自治体にあたる)では、居住外国人支援条例の制定や国際家族の支援センターの設置がなされ、居住外国人や国際家族に対して、様々な支援を行政の責務としておこうことになっています。
 2003年以降の韓国政府や自治体における外国人政策の転換は、「管理と排除」を中心とする日本の入管政策の後追いから脱して、在韓外国人等を韓国社会の構成員と認め、その人権を尊重し、多文化共生社会をめざすという内容を持つものであり、今後日本の外国人政策が目指すべき方向と具体的内容を実践しようとしています。

1、韓国の外国人処遇基本法 日本語訳 (韓国語原文付き)
  在韓外国人処遇基本法(新)制定 2007.5.17 法律第8442号
  附則 (第8442号, 2007.5.17)
  この法は公布されて2カ月が経過した日から施行される。

内容紹介

 同法は、第1章−5章、条文は、第1条から第23条までからなる。
 その目的は、「 この法は、在韓外国人に対する処遇などに関する基本的な事項を定めたものであり、在韓外国人が大韓民国の社会に適応し、個人の能力を充分に発揮できるようにし、大韓民国国民と在韓外国人がお互いを理解し尊重する社会環境をつくり大韓民国の発展と社会統合に貢献することを目的とする。 」(第一条)を掲げている。
 その実現のために、 「法務部長官は関係中央行政機関の長と協議し5年ごとに外国人政策に関する基本計画(以下「基本計画」という)を樹立しなくてはならない。」(第5条)、また、「 関係中央行政機関の長は基本計画に従い、所管別に年度別施行計画を樹立・施行しなくてはならない。 」(第6条)とされている、
 さらに「外国人政策に関する主要事項を審議・調整し、国務総理の所属として外国人政策委員会(以下「委員会」という)を置く。」 (第8条)と規定されている。

 在韓外国人等(在韓外国人・結婚移民とその子女・永住者・難民・国籍取得者)の人権擁護のために、「 国家及び地方自治団体は在韓外国人またはその子女に対して不合理な処罰防止及び人権擁護のための教育・広報、その他必要な処置を行うよう努めなくてはならない。 」(第10条)と規定され、また、在韓外国人の社会的適応の支援のために 「国家及び地方自治団体は在韓外国人が大韓民国で生活するに必要な基本的素養と知識に関する教育・情報提供及び相談などの支援を行える。」(第11条) と規定している。
 韓国民と在韓外国人等が共に暮らす環境づくりのために、「国家及び地方自治団体は国民と在韓外国人がお互いの歴史・文化及び制度を理解し尊重することができるよう、教育、広報、不合理な制度の是正やその他必要な処置を行うよう努めなくてはならない。 」(第18条)と規定され、「国民と在韓外国人がお互いの文化と伝統を尊重しながら共に暮らしていける社会環境をつくるために毎年5月20日を世界人の日とし、世界人の日から一週間の期間を世界人週間とする。 」(第19条)と規定している。

2、「忠清南道居住外国人支援条例」日本語訳 (韓国語原文付き)
  忠清南道居住外国人支援条例制定(条例 第3266号, 2007. 7. 30)

  この条例の施行に関して必要な事項は規則で定める。
  附則(条例第3266号)    この条例は公布した日から施行する。

内容紹介

 同条例は、第1章から第3章、条文は第1条から第17条までからなる。
 その目的として、「この条例は忠清南道に居住する外国人の地域社会適応と生活の便宜向上を図り、自立生活に必要な行政的・財政的支援方案を準備することにより地域社会の一員として定着できるようにすることを目的とする。 」(第1条)と規定している。
 また、居住外国人の地位を、「@居住外国人は法令または他の条例などで制限がない限りにおいて住民と同じく道の財産と公共施設を利用することができ、道の各種の行政的・財政的な恩恵を受けることができる。 A忠清南道知事(以下「道知事」という)は居住外国人が地域共同体の構成員として道政に参加できるよう努めなくてはならない。」(第3条)と規定し、「 道内に居住し、次の各号のどれかひとつに該当する者は支援対象とする。ただし『出入国管理法』などによる大韓民国での合法的に在留できる法的地位を持たない外国人は除外する。   1.居住外国人   2.大韓民国の国籍を新しく取得した者  3.結婚移民者 4.その他韓国語など韓国文化と生活に慣れていない者 」(第4条)を支援対象と規定している。
 そして、「@道知事は道内に居住する外国人が地域社会に早期に定着できるよう支援し、居住外国人が地域住民と共に生きていける条件形成のための施策を推進しなくてはならない。 A道知事は道内に居住する外国人の数など外国人支援施策推進に必要な実態調査を実施することができる。 」(第5条)


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