樹液流速度、測れます


はじめに


木が土から吸う水は全て幹の中を樹液として流れます(カブトムシが吸うアレではありません)。この樹液流を測ることで、植物がどれだけ水を吸うか知ることが出来ます。

また吸われた水は、光合成の際に大気に吐き出されます(蒸散)。この水の流れ=樹液流速度は、樹木の息づかいを知るための大きな手がかりなのです。実際に樹液流観測により、樹木個体あるいは森林の光合成を高精度に推定する技術は確立・検証されています(<--同位体計測と組み合わせることで)。


湿った葉内から渇いた大気への水蒸気の漏出が蒸散。高濃度の大気中CO2が消費された葉内に流入する現象が光合成(によるCO2吸収)。それらの速度は、通り道である気孔の通りやすさで決まる、または強い関係を持つ。
蒸散として葉から放出される水は全て幹を樹液流として通過する。


植物の挙動を調べる他の生理学的な計測法と違い、樹液流計測は個体全体の吸水・光合成を、10-30分間隔で連続的かつ自動的に測ることができます。センサーの製作、設置も他の同様の計測と比べて極めて容易で安価です。設置場所もあまり問いません。
人の脈を取るように樹木の一挙一動を細かく知ることが出来る樹液流計測は、様々な知見を私たちに与えてくれると期待されます。



異常気象が来たとき、人が森林に手を加えたとき、森はその息づかいをどう変えるのか。扱いが容易になった樹液流センサーを活用することで、気温や降水量、日射のように、植物の活動を測れる樹液流観測は長期観測の技術の一つに、樹液流速度は観測対象になり得ると思います。

安価で扱いの容易な樹液流センサーの技術が広まり、日本中で観測が立ち上がれば、温暖化に伴う森林の変化の将来予測、気象環境の地理変異が生み出す生態系機能の多様性の実態の解明など、これまでの観測とその技術は大きく補完されます。
苦しくなった木の状態を知ることも出来ます。夏の猛暑や冬の極寒など、温度計の生物版としても活用が期待されます。果樹の水やり調節など、本来の用途でもより手軽に活用できるでしょう。

数年に一度の降雪や夏の短期間の高温などの突発的な極端現象は森林に大きな影響を及ぼすと考えられるものの、その評価が難しいのが実態です。
樹木の成長など活動を調べる一番有名な観測法は毎木調査ですが、数年に一度の頻度で行われる長期観測では、こうした短期的な現象の影響は見落とし取りこぼされてしまいます(Phillips et al. 2010, New Phytol)。

些細な、しかし森林の将来を変えてしまうような細かい現象をも漏れなく掬い取り、森林や生態系のこれまで、そして行く末を測る技術として、樹液流計測は役立つことでしょう。


「今年の夏は暑かったよね」。ではその猛暑は森林の水利用や成長にどれほどの影響を及ぼしたのでしょうか?こうした疑問に答えることができます。



ですがその技術は、技術を必要とする生態学者など生物学者には馴染みのないものです。データの解析や解釈も、生物学には縁のない、地球物理学の知識を必要とします。

このページでは、樹液流センサーの製作、観測の立ち上げ、材料の調達、設置、そしてそこから得られる情報を用いた解析について紹介します。製作や設置のコスト、よく失敗するパターンなど、素人からこの技術に携わった経験を活かしたいと考えています。

このページ、あるいはここで紹介するページを参考に、各地で身近な技術として樹液流計測が立ち上がり、日本全体で森林の成り立ちと行く末を占う知見が数多く得られれば、こうした技術を使い、伝える身として、これに勝る喜びはありません。

樹液流から何が分かるのか?

樹液流センサーの種類と特徴

様子を見てみる:Heat ratio methodセンサー

実際に作ってみる:Heat ratio methodセンサー

   2.Heater probeを作る

   3.Pulse emitterを作る

   4.ケーブルを準備する

   5.ロガーとセンサーをつなぐ

   6.バッテリーをつなぐ

センサーの設置法(準備中)

出力データの解析(準備中)

樹液流から植物の振る舞いを抽出する

樹液流計測で使用するプログラム一覧


その他近況

・ 実際に作ってみる:Heat ratio methodセンサー」の改訂をしました。製作に必要な情報は全て入っており、誰でもセンサーを作れる仕様になっています。
とはいえ、本を読んだだけで野球ができないのと同じで、すぐにできるわけではありません。試行錯誤してみて下さい。試行錯誤がイヤな方は、直接ご連絡下さい。

・ グズグズして一向に進まなかった「樹液流計測で使用するプログラム一覧」を改訂しました。CR10およびCR10Xで動かすためのプログラムをダウンロードできます。

・ Chen et al. (2012, Tree Physiol)による諸補正のための、データ収集用のプログラム(CR1000)および収集データの解析用のプログラム(RとR2Winbugs、試作品)をアップしました。

センサー製作法が長くて読みづらいので、6つに区切りました。配線およびバッテリーについても記載しました。

改訂の過程で、配線がマニュアルの箇所ごとにバラバラであることが判明しました。やりやすいように変えてきた経緯があるのですが、一旦整理しました。もしかするとまだ整理し切れていない場所があるかもあるかもしれませんが、ご容赦ください。

もどる