ハワイの研究調査地
2015/ 7/ 9 ハレアカラ森林限界調査地
2015/ 2/23 ハレアカラ本調査、の予定
2015/ 1/21 マウイサトウキビプランテーション フラックスタワー立ち上げ
2014/12/ 3 ハレアカラ下見調査


7月 9日 ハレアカラ本調査


数度にわたる調査地移動失敗を経て、ようやく到着しました。


調査地の森林限界上、その名もgrassland cabinにヘリが到着。下りてくるのはTechnicianのMike。ヘリのローターが、マジでやばい。スキップしたらそのまま吸い込まれそう。


(あまり良い写真じゃないけどきれいだから)調査地の概要。今いるのは小屋近く、森林限界上の草原地帯。左手が斜面下で、ポツポツと樹木が現れる。さらに水平距離200m斜面を下りると森林に。早朝は一面の雲海。


その森林のわずかなギャップにソーラーパネルを設置。ここまで、バッテリー3つ(Deep cycle、20kg以上)を三つ、パネル、装置を入れる箱いくつか、くっそ重たい高電圧用ケーブル一巻き、支柱(これが一番大変)二種類など、200mの藪だらけの細い泥道を全て運んだ。さすがに60過ぎで膝の悪いMikeに持たせるわけにはいかない。野外調査はこんなもの。


中味をお見せできませんが、銀マットの中に樹液流センサーHeat ratio sensorが設置されています。森林とは言え、どの木もほとんど細くて低い。銀マットを巻くのは、太陽光による熱が計測値に影響しないようにするため。うまく測れることを祈るばかり。
センサーの写真がないのは、調査が大変すぎて撮影どころじゃなかったから。


嵐が近づいているので徒歩で拠点のTNCハウスへ。TNCはThe Nature Conservancyの略。アメリカ最大の自然保護のNPO団体の所有する家、なのだけれど、実態はハレアカラ国立公園が管理。標高2000mで、いつもここを拠点に仕事に出ている。
登場はもう少し後。写真は、向かいのハワイ島の山々。雲海の向こうに見えるのが、左からマウナケア(4200mくらい)、コハラ(ほとんど見えない、マウナケアの山裾右下にちょこっとだけ頭を出している)、マウナケア(約4200m)そしてフアラライ(マウナロアの右の雲海からぼんやりと少しだけ頭が見える、2500mくらい)。
これにキラウエアがあればハワイ島の5大火山が全てそろうけど、キラウェアは反対側のマウナロア山麓。写真手前は、ハレアカラの火口の崩壊箇所。


帰り道、日を遮るもの、Nothing。


クレーターに一旦下りる。標高300m、超傾斜。往路は登りで、1時間はかかる。当然、ベースのTNCハウスに行くためには、もう一度クレーターを上らないといけない


咲き始めの稀少固有種、Silver Sword。数十年かけて養分を蓄積し、一度だけ花を咲かせて死んでいく。
気候変動により一帯に雨が降らなくなり、その生存が危ぶまれている。


長いクレーターを歩き(二時間)、最後の登りを上り終え(1時間半)さらに一時間歩いてTNCハウスに到着。公園ゲート脇の公園事務所に併設。靴擦れと日焼けでそこら中が痛い。


2月23日 ハレアカラ本調査、の予定


前回の下見を基に準備を整え、いよいよ樹液流計測システムを森林限界に立ち上げます。
火口の向こうまで、健脚で7時間、前回は行きに10時間かけていくところに、重たい導線(50lb=20kg)と特に重たいDeep cycleの自動車バッテリー三つ、そしてでっかいソーラーパネルを歩いて持って行くのは不可能です。キナバルのワーカーやシェルパが必要になります。

今回はHaleakala National Parkの現場トップ、Timmyのヘリで現場まで資材運搬、そしてセンサーの設置を試みます。


ヘリポート(と呼ばれる原っぱ)から、これから向かう稜線を臨みます。山岳拠点のTNCハウス(2,000m)から車で曲がりくねった道を海岸沿いに1時間。海にはクジラがよく見えました。
稜線の向こうから、貿易風に乗った雲が滝のように駆け下りてきています。こういう日は嵐になることが多いのは、日本でもハワイでも同じ。

風が強いこともあり、結局調査は終了。Park rangerたちから話を聞くと、明日はHeliの講習でヘリが使えない、翌日と翌々日は別の業務が既に予約されていて、その次(土曜日)からは大荒れになるとの見込み。業務のキャンセル待ちをするしかない。
だがキャンセルが出るとなると、天気の問題だが、ハレアカラで随一の天気の悪い調査地に向かう私たちにとって、それはチャンスなのでしょうか?

することもないので、ハレアカラ山頂まで西オレゴン大学から来ているMarkと自動車で向かうことに。そう、山頂の3,000mまで車で行けます。入山料は$10(私たちは調査なのでタダ)。ではここから・・・


ハワイおよび熱帯太平洋島嶼の気候条件


その山頂から見たクレーター。左が北で、前から貿易風が海の湿気を運んで吹き付けます。左側の風上では最高降水量10,000mm、右側になると降水量が数百ミリにまで落ち込む。
この時点での風速は本州での台風最接近時並み。冬とは言え、気温は真昼でも10℃ほど。とはいえ、植物の生存を脅かすほどではないため、ここでの森林限界は高度とともに乾く乾燥が原因

高度とともに乾く。日本とは反対です。屋久島で一番雨が降るのは山頂部(らしい)。高標高ほど雲がかかり雨が降るというのが一般的ですが、マウナケア山山頂に天文台があるように、ここでは高標高で雨が降らないという現象が発生します。
隣のハワイ島で、マウナケア・マウナロアの二つの4,000m峰の間を貫くSaddle road(馬の鞍のようだから)を走ると、途中まで大雨だったのが嘘のように、2,000m付近から晴れ上がり、同時に森が草原に変わります。

この現象、ハドレー循環(cell)という地球レベルでの現象が関係しています。赤道付近で暖められた空気は、上空で冷やされて密度が高くなった(重くなった)後、ハワイの付近で一旦地上に向けて降りてきます。この空気の塊がハドレーcell。
上空で冷やされたとはいえ、この降下する(subsideという)空気は、地上から山を沸き上がって、同時に冷やされてきた空気よりも暖かい。このとき、ハワイでは高度とともに気温が上がるという現象が起きます。本来、高度とともに気温が下がるはずが、逆転して、気温が上がる:逆転層(Inversion)が形成されるのです。

湿った地表付近の空気を上に押し上げる力は、「上の冷たい空気よりも下からの空気は暖かくて軽い」という浮力です。この浮力は、「上により軽い暖かい空気がある」逆転層があると働かなくなります。逆転層の上は、雲が上がれない、常に晴れる地域です。ハレアカラ上部はいつも逆転層の上。火口底に草木がないのは、単純に噴火から間がなく、植生の回復が遅いだけ。

このハドレー循環の力は、いつも一定ではありません。エルニーニョ現象などが発生するとこの地域では強力になり、いつもは雲霧帯の標高でも雨が降らなくなることがあります。年々、逆転層の高さが低くなる、とこの公園のRanger達は口をそろえます。つまり、雨の降らない雲霧帯が増えている。気候変動と関係があるとにらんで研究者は研究を続けています。

私たち、水文および植物生態を調べるチームは、これまで、今、そしてこれからの気候変動下で植物がどれほど乾燥の影響を受けるのか、いつの乾燥か(雨季、乾季)、生存に直結するような強烈な乾燥がいつどれほどの頻度で発生するのか、その解明を目的としています。


天体観測所の下の雲海。そう、ここに逆転層があり、雲は上に上がってこれない


・・・・とハワイの気象条件を説明したところで。
結局、今回は全く調査が出来ませんでした。ヘリコプターの利用状況が活発な時期だったのと、運悪く天気が悪かったのが原因。戦略の練り直しです。

次の調査時に計測の内容もご紹介したいと思います。


1月21日 サトウキビプランテーション フラックスタワー立ち上げ

ざわわ ざわわ、とサトウキビ畑を抜けてやってきました。広大なサトウキビ畑です。
今回のプロジェクト、目的はハワイのサトウキビ畑に、どれほどのバイオ燃料の生産力があるのか、またそれをどのように推定するのか、というモデル構築が目的となっています。その一環で、バイオ燃料の元となるCO2の吸収量の知見が必要とされ、それ故にフラックス計測で関わることになりました。


こちらが、アメリカ人にはホノルルのあるオアフよりも、また火山があるハワイ島(Big island)よりも人気のあるマウイ島です。後ろに見えるのは、3000mの休火山、ハレアカラです。おっと、下で紹介済みだった。


フラックスタワーの立ち上げには、私以外に研究室付きの頼れるTechnician、マイクがついてきてくれました。他に、共同研究機関でもあるサトウキビ畑HC&Sからカイルを始め3人の若者が協力。

なんとか立ち上がりました。風上やや左側にある木立が気にならないこともないのですが(150mくらい)、これまでのデータを見る限り、影響は微少でしょう。

今回使用するのは、Campbellが開発したCSATと、EC100という名の赤外線ガス分析機。分析機の方は使うのは他のサイトも含めて初めて。他は基本的に他と大して変わりません

これから2年かけて、今はまだ地面を這っているようなサトウキビがだんだん大きくなり、最終的には3mを超すようになります。その間、CO2の吸収はどうなるのか、水資源の消費である蒸発散は増え続けるのか、炭素吸収活動である地下部への炭素の供給、そして地下部での炭素の反応および温室効果ガス(CO2、メタン、N2O)の発生はどうなるのか、をじっくりと調べる予定です。


12月 3日 ハレアカラ登山
  今回のハワイ調査の目玉の一つが、森林限界に環境要因が及ぼす影響とその仕組みの解明。
  森林限界が決まる仕組みと言えば、高標高における低温による成長阻害、あるいは分解風化が低温により阻害されることによる土壌形成および養分不足、が一般によく言われます。標高が3000mを超えるハワイにおいても森林限界は存在しますが、熱帯のハワイでは事情が少々異なります。

  共同研究者のCrausbay et al. (2014, Oecologia)によれば、ハワイの森林限界を決める環境要素は「土壌の乾燥」。因みにここ、年降水量は5,000mm!「一年に400日雨が降る」と言われる屋久島の高標高で8,000mmです。なおマウイ島かカウアイ島の風上地域では10,000mmを超す地点も多くあります。
  降水量について関心をお持ちの方は、こちらをどうぞ。使い方はすぐに分かると思います。単純に、おもしろいです。引用はGiambelluca et al. (2013)をどうぞ。

  この一年中雨の降る地域での乾燥による成長阻害とは何なのか、調べてきました。

  

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  調査地はマウイ島ハレアカラ火山。前世紀の初めに一度火山活動をした、巨大な火口を持つ休火山です。スタートは標高2,500mの駐車場、あと少し車を走らせればハワイ諸島屈指の観光名所、ハレアカラ山頂です。昔の写真ですが、こんな感じ


ちょっと画像が粗い。また夕暮れ時だったので、火口内部がよく見えない。朝焼けには、火口が真っ赤に燃え上がり、”太陽の家”(Hale:家、akala:太陽)にふさわしい眺望となります。


早速登山道。3泊4日の山小屋生活なので重装備。ボスのTom、院生のAbby,そしてColoradoからの助っ人というか責任者、Shelly Crausbayからなる4人パーティー


標高450mのクレーター岸壁の登山道。結構狭く、隣が絶壁の場所も。
  ここは大恐慌時代、ニューディール政策の公共事業の一環として作られました。爆破も含む手作業ですべて作られたそうです。日本ではいろいろ言われていますが、F. ルーズベルト大統領はこちらでは偉大な存在です


クレーターを30分も歩くと、溶岩砂漠。映画「2001年宇宙の旅」が撮影されただけあって、火星みたい。
  銀色に光るまん丸な植物は、この地域の高山固有種のSilverSword。生涯に一度だけ茎を伸ばして花を咲かせ、そして死んでいきます。この形は葉の温度を適切に保つ上で吸光機能などを強化したもの、らしいです。思えば、このSilverswordの葉温を計ったという研究が、初めて読んだボスのTom(共著:Rick MeinzerやG Goldsteinらと)の論文だった(当時修士。当然全く知らなかった)。

  この辺からは一般の登山者では立ち入ることが出来ない(地図にも未記載)ルートになります。たぶんよほどの装備をしてよほどの理由がない限り、許可も下りません。


クレーターを再び上ります。Tomもさすがにお疲れ。


クレーターの崩壊箇所から、隣島のハワイ島(Big island)の双璧、マウナケアとマウナロアが見えてきました。左は山頂のすばる望遠鏡が(双眼鏡で見えました)、右にはCO2濃度の近年の増加を示す有名なグラフのデータが採取されて続けている気象台があります。マウナケアは休火山(4,205M)、マウナロアは活火山(4160mくらいと思う)です。


クレーターを登ったもののみが見れる絶景。海の手前に見えるのは、マウイの辺境の地、Hana。リンドバーグが最期の時を送った箇所でもあり、同様の富豪たちが多忙な日常から逃れる憩いの場として知られます。海の向こうには、Big islandの二峰


Cabinに到着。水は雨水(5,000mmだからね)、ガスはプロパンなど充実。トイレはいわゆる「どっぽん」だけれど低温のためにはえはいない(夏が怖い)。
  が、ヒーターがない。電気もない。次回は必需品。物品輸送はもっぱら公園のヘリ


翌々日、遠くの調査地まで遠出。朝からひたすら雨と雲と霧。ゴアテックスのブーツが濡れてきた。そんな中太陽が指すと、目の前に虹。調査地はあの丘の向こう
この付近は特に保全が厳しい地域で、立ち入りもきわめて厳しく制限されている。理解者が多い中での調査ですら許可にかかる時間は甚大


起きたら氷点下だった。外では水滴が霜に。Mont Bellのシュラフ(5度まで)が効かない。ハワイの調査地(1300m)用に買ったものだから、仕方ない。


断崖に立つ気象ステーション。マウイ島ではTomが主導する気象観測ネットワーク、HaleNetが25年間稼働し続けている。降雨などのマップを作れるのも、こうした長年の活動があってのたまもの。日本の気象観測とは違い、行政などから安定した資金が供給されるわけではない。研究だけではなく、活動資金の獲得や地元との合意形成や理解の醸成など、本当によくやる人だと思う


最終日を前に、夕焼け。本当に美しい。星空はもっと美しいが、外はもっともっと寒い(しかも靴も服もぐしょ濡れ)


ハワイ州の鳥、ネネ。固有のカモ。因みに岩場の向こうは断崖絶壁。


数は多くないけど、高山植物もちらほら。


ようやく調査から戻った宿舎に、子連れのネネ。

  何とか無事4泊5日の強行スケジュールが終わり、みんな無事に帰りました。行きは10時間、帰りは9時間でした。たぶん7時間まで短縮可能だけど、みんなのペース次第だから、これからもこんなものでしょう。
  今回は偵察(Recon.)調査。この次から本番で、ソーラーパネルやバッテリー、今回切らしたプロパンの詰め替えやヒーターなどの持ち込みが必要になります。

  

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