携わった研究プロジェクト


携わった研究プロジェクト
これまでに所属した研究室は、森林生物学(1999-2005)、森林水文学(2005-2010)、環境学(2010-2015)、地理学(2010,2014-)を実践していました。
これら所属研究室、および共同研究機関で実施するプロジェクトに加わり、そこで必要とされる調査、解析を学び、また実施してきました。

ここで挙げる研究プロジェクトは、自ら立ち上げたプロジェクト、そのプロジェクトに貢献できたもの、または研究活動を支援してくれたプロジェクトです。

国内の研究資金の支援を受けたプロジェクト
黄土高原の植栽樹種、ニセアカシアの生理生態と水文過程の解明
カンボジア社会林の水文過程の理解と材成長の環境応答の解明
カンボジアゴム林の成長と環境への影響評価と予測法の確立
阿蘇の草原の保全は水資源涵養に寄与しているのか?
通水・生理機能を考慮した樹形およびその成長モデルの開発

海外の研究資金の支援を受けたプロジェクト
ハワイの熱帯高山性降雨林の蒸散:外来種侵入が蒸発散に及ぼす影響
乾燥した溶岩台地に侵入した外来性地下水利用型樹種Prosopis pallidaによる地下水くみ上げの実態
ハワイのサトウキビ畑の炭素吸収と蒸発散の解明を通じたバイオ燃料生産モデルの確立
エルニーニョ現象に伴う干魃により壊滅的ダメージが危惧される森林限界生態系の生理・水文過程の解明
生態系による霧の捕捉が樹木の成長生存、そして水文過程に及ぼす影響の評価


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日本の研究プロジェクト
黄土高原の植栽樹種、ニセアカシアの生理生態と水文過程の解明
(研究資金)
・ 二国間交流事業 共同研究「中国黄土高原半乾燥地における森林の水利用及び物質循環」(分担、代表:山中典和 鳥取大)、日本学術振興会、2014~2017.
・ 一般研究「ニセアカシアの蒸散特性と土壌乾燥への適応の解明」(代表)鳥取大学乾燥地研究センター, 2013~2015.
・ 若手奨励研究「降水量に沿ったニセアカシアの水利用の推移様式の解明」(代表)鳥取大学乾燥地研究センター, 2011~2012.


(内容)

黄土高原に広く植栽される樹種、ニセアカシア(Robinia pseudoacacia)の拡大がこの地域の炭素、水、養分循環に及ぼす影響の評価と予測を目的とした研究プロジェクト、および中国科学院水土保持研究所との研究交流の強化を目的としたプロジェクト。
プロジェクトの中で、ニセアカシア特有の光合成蒸散に関する特性およびその環境応答の解明、樹液流計測による蒸散量の推定を担当(論文改訂中)。

実験は鳥取大学乾燥地研究センターの砂丘の上のニセアカシア林で実施。観光地の砂丘からわずかの距離。ニセアカシアはウイーン万博への出席者により持ち込まれ、その海岸林への植栽が提唱されたのがここ鳥取だった(原、1932)。

中国黄土高原を覆うニセアカシア林。強度の乾燥に晒されながらも表土を保全する。共同研究者の中国科学院 水土保持研究所の杜盛教授が樹液流計測を実施する調査地。

鳥取大乾燥地研究センターのニセアカシア林。内部に樹液流計測センサーが設置。
砂丘の上に成立するため、夏には黄土高原並の強烈な乾燥に晒される。その際、この種独特の生理特性を示し、蒸散速度をコントロールすることが明らかに。

共同研究者 山中典和(鳥取大)、杜盛(中国科学院水土保持研究所)


カンボジア社会林の水文過程の理解と材成長の環境応答の解明
(研究資金)
・ 若手研究(B) 「光合成特性の解明を通じたカンボジアの森林蒸散の季節変動メカニズムの解明」(25850108) (代表)日本学術振興会, 2013~2014.
・ 九州大学教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト「順応的管理に基づくアジア森林フィールド教育研究のネットワーク強化と拠点形成」(研究協力・支援、代表:吉田茂二郎、九大)、九州大学、2006〜2008年


(内容)

薪炭利用による持続的な森林管理を目指すcommunity forestにおいて、在来種と人為的に持ち込まれた外来種の吸水(蒸散)による水資源への影響と、成長速度が気象環境の変動により受ける影響の解明、そしてこの地域で森林保全と住民の所得とのバランスの取れた森林管理の確立を目的としたプロジェクト。
うち、外来種と在来種の蒸散特性の解明を担当。平常には明確な差がないものの、湛水や渇水などの条件下では在来種と外来種は異なる挙動を示し、在来種の蒸散の季節変動は、雨季乾季の地下水変動への個葉スケールの適応がもたらした産物だった。また外来種での湛水での成長低下と渇水時の通導阻害への危険性が高まることが明らかとなった。(Miyazawa et al. 2014, J Hydrol., Miyazawa et al. 2014, Agric. For. Meteorol.)。

住民に管理を委ねた、森林保全型のコミュニティフォレスト。植栽された外来種と萌芽更新した在来種の混交林。カンボジア林野庁とコミュニティのサポートの下、共同研究。

下を向けば、そこが地下水。表層まで地下水が到達する雨季と対照的に、乾季は地下水はずっと低下し、樹木は乾燥に晒される。
調査に同行し、ずっとサポートしてくれたMa Vuthyさんの車(写真左、後ろ向き。カンボジア林野庁職員で共著者)。

共同研究者  熊谷朝臣(名大)、立石麻紀子(鳥取大)、溝上展也、岩永史子(九大)、Sokh Heng, Ma Vuthy(カンボジア林野庁)


カンボジアゴム林の成長と環境への影響評価と予測法の確立
(研究資金)
・ 若手研究(B) 「光合成特性の解明を通じたカンボジアの森林蒸散の季節変動メカニズムの解明」(25850108) (代表)日本学術振興会, 2013~2014.
・ 基盤研究(B)「インドシナにおけるゴム林の爆発的拡大:環境影響評価と適正造成計画の提案」(協力、代表:熊谷朝臣、名古屋大)、日本学術振興会、 2011〜2013年
・ NASA Land-cover/Land-use Change Program “The expansion of rubber and its implications for water and carbon dynamics in Montane Mainland Southeast Asia”, (研究協力・支援、代表:Jefferson Fox, East West Center, Hawaii) 2007~2011.


(内容)

アジアで爆発的に拡大するゴム林の成長(炭素吸収)と水利用(蒸発散)の実態解明と、予測のためのモデルの開発を目的とした研究プロジェクト。
樹液流計測やフラックス計測で得られた結果について、その生物学的なメカニズムの解明、そのための個葉スケールの植物生理生態特性とその環境応答の解明を担当。
これまでに、ゴムの生産に適した植栽法の再評価およびその推定法の確立、樹液流計測の環境応答の実態が解明された。(Kumagai et al. 2015 Agric. For. Meteorol., Kobayashi et al. 2014, Tree Physiol., Kumagai et al. 2013, Ecol. Model.、他数編投稿中)。

地平線まで延々と続くゴム林。インドシナ半島では、天然ゴムの値上がりもあって、ゴム林が爆発的に拡大中。

等間隔に見える限りにゴム林が植栽されているここではだいたい20mくらいまで成長する。

共同研究者熊谷朝臣、小林菜花子(名大)、TW Giambelluca, RG Mudd(ハワイ大マノア校)、AD Ziegler(国立シンガポール大)、J Fox (East West Center)、松本一穂(琉球大)、上村真由子(日大)、溝上展也(九大)、Ying Song, LimKan Tiva (カンボジアゴム庁ゴム試験所)


阿蘇の草原の保全は水資源涵養に寄与しているのか?
(研究資金)
・ 環境研究総合推進費 「阿蘇を構成する植生の蒸発散の比較研究:草原の維持は水資源涵養に寄与するか?」(代表)、環境省, 2013~2014.


(内容)

草原が減少する阿蘇において、阿蘇の巨大なカルデラ内での水資源の消費:蒸発散が増えるのではないか、という懸念を受けて始まった研究。プロジェクトの内、樹木による蒸散の解明および推定法の確立と、各植生について全体のとりまとめを担当。
従来の研究のような、森林化に伴う蒸発散の増大は阿蘇では見られないという結論に。背景には、森林の蒸発散を抑制する環境要素が阿蘇で複数存在すること、また比較対象とする牧草地の蒸発散が極めて高いことが原因と考えられる。一方で、草原放棄が引き起こしている/今後引き起こすと危惧される、牧草地の放棄が蒸発散速度の増加に及ぼす影響について警鐘(現在執筆中)。

阿蘇は元々草原に覆われていたのが、戦後の針葉樹植栽、そして近年の管理放棄草原への灌木の森林により、その面積が低下している(写真は熊本県大井上さん提供)。

共同研究者井上昭夫(熊本県大)、丸山篤志(中央農研)、大槻恭一(九大)


通水・生理機能を考慮した樹形およびその成長モデルの開発
(研究資金)
・ 基盤研究(C) (25450205) 「機能的・構造的樹木モデルを利用した稚樹の生態の統合的理解」(分担、代表:梅木清 千葉大) 日本学術振興会, 2013~2015.


(内容)

通水および光合成への植物の応答を考慮した樹形モデルの開発、および樹形モデルで計測された光合成などの諸プロセスを、自動観測される蒸散速度で検証することを目的としている。

別の研究で使用した樹形解析。樹形を三次元で再現し、上方からの光の入射、被陰、吸収と光合成を算出。
裏付けのない計算ではなく、計算値の一つの蒸散速度を実測値とつきあわせることで、計測値の実証および補正を行う予定。

共同研究者梅木清(千葉大)





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米国の研究プロジェクト

ハワイの熱帯高山性降雨林の蒸散:外来種侵入が蒸発散に及ぼす影響
(研究資金)
・ Awarding Funding for PSW Request for Proposals “Is drought performance of long-lived trees in the aseasonal tropics related to carbohydrate storage?”(分担、代表:Susan Cordell, USDA Forest Service) 、USDA Forest Service, Pacific Southwest Research Station), 2015.
・ Climatic Science Center Grant “Assessing future drying on the native Hawaiian ecosystems”(分担、Rebecca Ostertag, Professor, University of Hawaii at Hilo), US Geological Survey, 2013~2015.
・ Climatic Science Center Grant “Understanding the response of native and no-native forests to climate variability and change to support resource management in Hawai'i'”. (分担、Thomas W. Giambelluca, University of Hawaii at Manoa), US Geological Survey, 2013~2015.


(内容)

ハワイの原生林の固有種の光合成蒸散の実態解明およびその環境応答を、降水量のみ異なる二つの試験地で比較し、温暖化への影響などの評価を行う。
また同一環境に発達した、在来種森林と外来種の侵入林で光合成蒸散を調べ、外来種が生態系の機能を改変する実態を解明する。

調査地の一つ、降水量の多い方の原生林。ハワイ島は形成後新しいため、溶岩の年代とその後の風化の期間で養分状態が大きく異なる。風化に伴い、土壌中の窒素量は増え、リンは減る。ここはそのどちらもピークとなる場所で、樹木が巨大。

外来種の侵入した森林。過密、細い、そして旺盛な水資源の消費(蒸発散)。なぜ貧栄養なハワイに、それに適応できないはずの外来種が入り込めるのか。それが養分、炭素、そして水循環にどのような影響を及ぼすのか。その仕組みが、ハワイを拠点に研究するチームによって明らかにされてきています。

共同研究者R Ostertag, A Sibley (Univ Hawaii Hilo), S Cordell, A Uowolo, CP Giardina (USDA Forest Service IPIF), FC Meinzer (USDA Forest Service), C Litton, TW Giambelluca (Univ Hawaii Manoa)

乾燥した溶岩台地に侵入した外来性地下水利用型樹種Prosopis pallidaによる地下水くみ上げの実態
(研究資金)
・ EPSCoR (Experimental Program to Stimulate Competitive Research) Project, Environmental Dynamics and Ecosystem Responses group (ENDER, University of Hawaii at Manoa)、National Science Foundation (NSF).


(内容)

ハワイ島西岸の極度の乾燥地に侵入して自生する外来樹種Prosopis pallidaによる環境改変の実態を、地下水のくみ上げによる地下水減少および局所的な水循環の変化(蒸発量の増加)という観点から検証
極度の乾燥の影響からか、地下水を吸い上げるものの乾燥のストレスと思われる兆候が見られる。その一方で、強い乾燥耐性と、乾燥による危険を冒してまでも蒸散そして光合成を増大させる生理特性をもつ樹種であることが判明。この過酷な地域への侵入が成功した生態学的な仕組みの一端を明らかにした(Miyazawa et al. 2016)

ここに土など、ない。年降水量180mm、灼熱の太陽の溶岩砂漠。

調査対象のkiaweことProsopis pallida。ある面ではこの渇水環境に妥協し(葉面積、水利用効率)、別の面では妥協しない(光合成能力、気孔の調節)。
何を妥協し、何を貫き通すかが、種ごとの個性を生み出し、こうした過酷な環境での生き残りや、地理的分布の種間差を生み出す。
写真のケーブルは樹液流センサーへのケーブル。ここは野生化したヤギがおり、ケーブルをかじってしまうため、架線化している。

共同研究者BD Dudley (The National Institute of Water and Atmospheric Research), RF Hughes, S Cordell, CP Giardina (USDA Forest Service IPIF), R Ostertag (Univ Hawaii Hilo), TW Giambelluca (Univ Hawaii Manoa)

ハワイのサトウキビ畑の炭素吸収と蒸発散の解明を通じたバイオ燃料生産モデルの確立
(研究資金)
・ Funding by Naval office(研究支援).


(内容)

ハワイマウイ島のサトウキビ畑を対象に、サトウキビによる炭素吸収と蒸散およびその環境応答の解明と、モデル運用に必要な情報の提供を担当。
ゴム林の3倍、ハワイ在来種林の6倍という極めて高い炭素吸収能力を持ちながら、蒸発散は大きくないという、典型的なC4植物の特徴を持つ。その一方で、C4植物であるにもかかわらず、C3植物並の高い量子収率(炭素吸収速度/受光量)をもち、光合成速度が現在のCO2濃度において飽和しないという実態も明らかに。

現在、灌漑下であっても降水量の異なる地域では炭素・水循環に違いが生まれるのか、渦相関法による気象学的な計測と、光合成などの個葉スケールの生理特性の計測を通じて検証を実施中。

遙かに広がるサトウキビ畑での二酸化炭素の吸収と水蒸気の蒸発散を観測。他に、土壌からの呼吸速度(および微量温室効果ガスの放出も)、葉の光合成速度、水分生理の観測も実施。

かつて官製移民の行き先であったハワイでも、他の地域の安い砂糖生産によりサトウキビ産業も衰退し、ハワイではここのみに。一方、ブラジルをはじめ、バイオ燃料の急激な需要を受けて、世界的にはその面積が増加中。再び研究が必要とされている。

共同研究者S Crow, TW Giambelluca, Adel Youkhana (Univ Hawaii Manoa), Mae Nakahata (Hawaiian Commercial Sugar)

エルニーニョ現象に伴う干魃により壊滅的ダメージが危惧される森林限界生態系の生理・水文過程の解明
(研究資金)
・ 諸資金(研究支援).


(内容)

ハワイマウイ島の森林限界を対象に、エルニーニョ現象による干魃の発生と、その際の森林の機能不全の実態解明を目指す。

年間降水量が5,000mmを超える豪雨地帯でありながら、光合成や蒸散などの特性には乾燥地の植物特有の性質が多く観察される。現在、冬に到来が予想されるエルニーニョ現象下での植物の生理機能の維持と、水文過程への影響の評価のための準備中。

森林限界の上の草原から下を見る。雲がわき上がり大雨を降らせるが、森林限界付近より上に上がることがない。その境界線がエルニーニョ現象の時に低下し、森林限界付近の樹木が干魃に晒される。

徒歩で7−10時間、携帯なし、電気なし、水道なし。電力はソーラーパネルに依存。森林のわずかな隙間に設置して、林内の計測機器に電力を送る。バッテリーを含め、輸送はヘリコプター。
こうした厳しい環境に備え、今回使用する樹液流センサーは自作のHeat ratioタイプのセンサー。使用電力が、これまでの研究で使用したグラニエ式の数%で、太陽光の限られたこの地でも長期間計測が可能(だと期待)。

共同研究者S Crausbay, TW Giambelluca (Univ Hawaii Manoa)

生態系による霧の捕捉が樹木の成長生存、そして水文過程に及ぼす影響の評価
(研究資金)
Research Funding by US Geological Survey, 2015-2017. Cloud Water Interception in Hawai‘i: Developing Capacity to Characterize the Spatial Patterns and Effects Water And Ecological Processes. (分担、Thomas W. Giambelluca, University of Hawaii at Manoa).


(内容)

生態系が霧を捕捉することで期待される、樹木の蒸散抑制に伴う乾燥回避、土壌水分増加に伴う樹木・稚樹の水分状態の改善の評価、そして地域的気象モデルへの組み込みを目指した霧の発生および定量化を目的。

樹液流計測を中心とした植物の水分生理の計測を、ハワイ3つの島の5つの試験地で担当。

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