はじめに

 ここではMStudio Mind Labの使い方について解説します。
 MStudioBandLab(最近フリーソフトになるとともにMindLabに改名したようです)はSavrasov氏(New Jersey Institute of Technology (NJIT)の教授)が作った、lmto法を用いるlmtartをエンジンにしたウィンドウズで動くバンド計算のソフトです。
 これまでのMStudioBandLab3.0までは有料でしたが、US Department of Energy からお金をもらったようでMindLab4.0から無料になったようです。このソフトの特徴を一言で言うと操作が簡単であるということです。lmtartへの入力ファイルの作成、lmtartの出力ファイルからバンド図や状態密度図をグラフィック化する作業をウィンドウズのGUIで行えます。初めてバンド計算をする人がさわれば、lmtartとのデータの橋渡しが行われているということすら意識せずに使えるはずです。
 バンド計算のソフトでフリーのものは、日本人が作ったものを含めいくつかありますが、これほど簡単にできるものはないと思います。初めてバンド計算をする人(学部生くらい?)がいろいろとさわって、lmtartのファイルとにらめっこしながら勉強していくにはとてもよいソフトだと思います。しかしこのソフトの使い方が日本語で説明されたものは(たぶん)ないようです。
そこでここでは、細かいところはとばして、とにかくSiの電子状態を計算し、バンド図や状態密度図を描くための手順を示しました。もっと詳しいことはMStudionのマニュアルやLmtartのマニュアルを読んでみてください。





とにかくSiの計算をする

 まずhttp://physics.njit.edu/~mindlab/からMStudioMindLabをダウンロードし、これを解凍してインストールします。 デスクトップにできたこのアイコンがMStudioへのショートカットです。(ここではMStudioBandLab3.0ですがMindLab4.0でもまったく同じのようです)プログラムはPlogramFilessのMStudioに入っていると思いますが、その中のLmtRun、DataBaseというフォルダに対してのショートカットを作成しておくと後々便利です。


 ここで、計算に必要なデータですが、他の電子状態計算ソフトと同じく、計算したい物質を構成する元素とその電荷、格子定数、原子の位置、つまりその物質の結晶構造です。
起動すると写真の画面になるので、まず最初に写真の赤丸で囲ったボタンをクリックします。
 下の写真の画面になるはずです。このソフトのインターフェイスは4つのタブから構成されていて、@の「Atoms」(現在開いているタブ)で結晶のデータを入力します。そしてAの「Properties」で計算の実行とそれに関わる設定、そして計算結果から各種物性の計算とその可視化を行います。真ん中の2つのタブはここでは使いません。
以下
B格子定数
C基本単位胞の指定
D元素
E元素の電荷
F元素の位置
G元素の分類
Hマフィンティン球の大きさ
を入力します。
Spin Unrestricted、LS Coupled、Set Temperatureにはここではチェックは入れません。
Use Cartesian SystemとBasis of Translationsは、原子の座標を入力する際、それぞれデカルト座標を用いるか、Cに入力した基本単位胞を構成するベクトルを用いるか、ということです。単純立方格子などはどちらを用いても同じですが、六方晶系などでは後者を使った方が入力しやすいと思います。今回はデカルト座標で入力します。 それでは具体的に各入力欄の説明です。


B格子定数
 単位はa.u.(1a.u.=0.529177Å)。Siであればa=の面心立方格子なので上から10.26,1,1となります。


C基本単位胞の指定
ここで入力するのはブラベ格子ではなく基本単位胞です。面心立方格子の基本単位胞は図に太線で示したもので、構成するベクトルは(0,1/2,1/2),(1/2,0,1/2),(1/2,1/2,0)です。なので、この欄には上段0,1/2,1/2、中段1/2,0,1/2、下段1/2,1/2,0と入力します。



DEF元素の名前と位置
Elementの欄にSiと入力、Chargeの欄に14と入力します。ここで指定しなければならない個数は、指定した基本単位胞の中にあり結晶基を構成する原子すべてです。同じサイトにあるからはぶけるということはありません。今回の場合、これに相当する原子は(0,0,0)と(1/4,1/4,1/4)にある赤丸で囲った二つです。


G元素の分類
今回は二つのSiが同じサイトにあるのでSortの欄は両方とも1と入力します。異なる元素、同じ元素でもサイトが異なる場合は違う数字(2,3,…)になります。


 ここまで入力したらFind Groupを押します。これで対称操作の数が求まるので、入力した結晶構造(座標)が正しいかチェックできるはずです。出てきたウィンドウは閉じてしまいます。
次にFind Spheresを押してマフィンティン球の大きさを計算します。Hの欄が自動的に埋まったはずです。ここに0が並んだりする場合はどこかおかしな入力をしているはずなのでもう一度確かめてみてください。
最終的には下の写真のようになっているはずです。

これで結晶構造の入力が終わったので、次は計算そのものの設定と、計算の実行、計算結果の可視化をするAのPropertiesをクリックします。

Choose method for calculationを最も精度の高いLMTO PLWにします。続いてPrepareをクリックしてiterationの回数を入力します。これはセルフコンシステン計算を何回繰り返すかで、デフォルトでは収束する前にストップしてしまうので、100とします。このウィンドウには「適用」「OK」といったボタンはないので、100と入力したらウィンドウを閉じてしまいます。これで100に設定されています。
これで最低限の設定は終了です。
Computeを押して計算を開始します。マシンによってはSiでも時間がかかってしまうのでしばらく放置です。


ビジュアル化する

SCF計算が終了すると以下のようなウィンドウが出てくるのでYesを押します。

これでメインのSCF計算が終わったので、続いてバンド図や状態密度図の計算と可視化を行います。
Find Propertyにチェックを入れ、Fat Bandsを選択し、Computeをクリックしバンド図を求める計算を開始します。

少しすると、計算が終了したのでバンド図を直ちに描くかということを聞くウィンドウが出るのでYesをクリックします。

次にバンド図を描く当たっての設定画面ですが、eVとrelativeEFにチェックを入れるだけで、一番下のVisualize Using・・・をクリックします。

これでバンド図が描けたはずです。一度SCF計算が終了していれば、Find Propertyの中にあるものは同じ手順で計算し、ビジュアル化できます。


記録のしかたとデータベースの使い方


 これまではSiについて結晶構造から入力してきましたが、実はSiを含め数々の結晶構造のデータがデータベースに 収められています。画面右上にあるDatabaseをクリックして呼び出せます。
 ここで、これまでの結果をセーブするには多少複雑な作業が必要です。普通にファイル→保存がうまくいきません。
これまでに生成されたファイルはLmtRunというフォルダの中にBand1.iniなどという名前で存在しているはずです。 これらを直接Databaseに保存することでセーブしてしまいます。具体的には、Databaseフォルダの中に 適当なフォルダを作り、その中に今回はSiなのでSiというフォルダを作ります。その中にLmtRunの中に 生成されたファイルをコピーします。この際Bands1となっているファイル名を、入れるフォルダ (今回はSi)の名前と同じにしておく必要があります。Si.strなどに変更します。以上で次回からはDatabase の中から今回の結果が呼び出せます。