第7話 江戸っ子が宵越しの銭を持たない理由

「てやんでえ、こちとら江戸っ子だい。宵越しの銭は持たねえや」…

落語や時代劇でおなじみのせりふです。でも、江戸っ子はどうして宵越しの銭を持たなかったのでしょうか。江戸

きっぷがいいという気質もあったのでしょうが、最大の理由はおそらく、大火事が頻発したことでした。天正18年(1590)から明暦3年(1657)までの67年間で、記録に残る大火が 140回。つまり江戸は半年に1回、大火事に見舞われていたのです。木と紙の家に火がつけばひとたまりもありません。その度に、体ひとつで命からがら逃げ回ったことでしょう。

 その上、江戸はお金を貯めておくのが難しいまちでした。銀行のような貯蓄機関がなかったのす。といって住居には鍵がないので、隠しても泥棒にいつ盗まれるか分かりません。江戸ではお金の保管が非常に難しかったので、焼けたり盗まれるよりは使い切ってしまった方がいいと考え、「宵越しの銭は持たない」江戸気質が育ったのでしょう。

火災の度に、町民はお金も家財道具も失いました。しかし何度焼け落ちても、江戸はその度に復興しました。家具やお金を失っても、人々のエネルギーさえ残っていれば、まちは見事によみがえることを何度も何度も実証したのです。
商店街の衰退や、ふるさとの過疎化の進行は、江戸の火事とちょっと似ています。ただ一晩で燃えてなくなるか、長い期 間にゆっくり滅びていくかの違いだけです。
江戸の町民はその度立ち上がり、まちの復興を果たしてきました。現代の私たちも、エネルギーさえ残っていればまちの復興はできるはずです。ここで泣き言でも言おうものなら、 江戸っ子に「てやんでえ、べらぼうめ」と笑い飛ばされることでしょう。

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