麻薬類不法取引防止に関する特例法

<制定>95.12.6法律第5011号

<一部改正>97.12.31法律第5493号(金融実名取引及び秘密保証に関する法律)

第1章 総則

第2章 入国及び上陸手続等の特例

第3章 罰則

第4章 没収に関する手続等の特例

第5章 第三者参加申請等の特例

第6章 保全手続

 第1節 没収保全

 第2節 追徴保全

 第3節 補則

第7章 没収裁判及び追徴裁判の執行及び保全に関する国際共助手続

附則

第1章 総則

 

第1条(目的)この法律は、国際的協力の下に麻薬類と関連する不法行為を助長する行為等の防止を通じて麻薬類犯罪の鎮圧及び予防を図り、これに関する国際協約の効率的施行のために麻薬法・向精神性医薬品管理法・大麻管理法その他関係法律に対する特例等を規定することを目的とする。

 

第2条(定義)@ この法律において"麻薬類"とは、麻薬法第2条第1項の規定による麻薬、向精神性医薬品管理法第2条第1項の規定による向精神性医薬品及び大麻管理法第2条第1項の規定による大麻をいう。

A この法律において"麻薬類犯罪"とは、次の罪(その罪と他の罪が刑法第40条の関係にある場合には、その他の罪を含む。)をいう。

 1.第6条・第9条又は第10条の罪

 2.麻薬法第60条・第61条・第62条又は第63条の罪

 3.向精神性医薬品管理法第40条・第41条・第42条又は第43条第1項の罪

 4.大麻管理法第18条・第19条又は第20条の罪

B この法律において"不法収益"とは、麻薬類犯罪の犯罪行為により得た財産、その犯罪行為の報酬として得た財産又は麻薬法第62条第1項第2号(未遂犯を含む。)、向精神性医薬品管理法第43条第1項第2号又は大麻管理法第20条第1項第4号(未遂犯を含む。)の罪に関係する資金をいう。

C この法律において"不法収益に由来する財産"とは、不法収益の果実として得た財産、不法収益の対価として得た財産、これらの財産の対価として得た財産その他不法収益の保有又は処分により得た財産をいう。

D この法律において"不法収益等"とは、不法収益、不法収益に由来する財産及びその財産及びその財産以外の財産が混和した財産をいう。

 

第2章 入国及び上陸手続等の特例

 

第3条(入国及び上陸手続の特例)@ 出入国管理公務員は、出入国管理法第11条第1項第1号に該当する者との疑いのある外国人から入国許可の申請がある場合、麻薬類の分散及びその外国人の逃走を防止するために充分の監視体制が確保されていて麻薬類犯罪の捜査に関して、その外国人を入国させる必要があるという検事の要請があるときは、法務部長官の承認を得て出入国管理法第11条第1項第1号の規定にかかわらず、その外国人の入国を許可することができる。

A 出入国管理公務員は、出入国管理法第11条第1項第1号に該当する者との疑いのある外国人から同法第14条第1項の規定による上陸許可の申請がある場合、麻薬類の分散及びその外国人の逃走を防止するために充分な監視体制が確保されていて麻薬類犯罪の捜査に関してその外国人を上陸させる必要があるという検事の要請があるときは、法務部長官の承認を得て同法第14条第1項但書の規定にかかわらず、その外国人の上陸を許可することができる。

B 出入国管理公務員は、前2項の規定による入国許可又は上陸許可を受けた外国人に対して検事から引き続き大韓民国に滞留するようにすることが適当でないという通報を受けたときは、直ちにその外国人の入国又は上陸当時その外国人が出入国管理法第11条第1項第1号に該当していたか否かを審査しなければならない。

C 出入国管理公務員は、第3項の規定による審査の結果、その外国人が出入国管理法第11条第1項第1号に該当すると認めるときは、法務部長官の承認を得てその外国人に対する入国許可又は上陸許可を取り消さなければならない。

D 司法警察官は、検事に申請して検事が第1項から第3項までの規定による要請又は通報をする。

 

第4条(税関手続の特例)@ 税関長は、関税法第140条の規定による貨物の検査時、貨物に麻薬類が隠匿されていると判明し、又はその疑いがある場合、当該麻薬類の分散を防止するために充分な監視体制が確保されていて麻薬類犯罪の捜査に関してその麻薬類が外国に搬出され、又は大韓民国に搬入される必要があるという検事の要請があるときは、次の各号の措置をすることができる。ただし、その措置を採ることが関税関係法令の立法目的に照らして相当でないと認めるときは、要請した検事との協議を経てその措置をしないことができる。

 1.当該貨物(当該貨物に隠匿されている麻薬類を除く。)に対する関税法第137条の規定による輸出入又は返送の免許

 2.その他検事の要請に応じるために必要な措置

A 前項(第1号を除く。)の規定は、関税法第151条の規定による郵便物の検査時、その物に麻薬類が隠匿されていることが判明し、又はその疑いがある場合にこれを準用する。この場合、当該麻薬類に対しては、同法第148条の規定を適用しない。

B 司法警察官は、検事に申請して検事が第1項及び第2項の規定による要請を行う。

 

第5条(金融機関による申告)@ 金融実名取引及び秘密保証に関する法律第2条第1号の規定による金融機関(以下"金融機関"という。)に従事する者であって大統領令が定める業務を遂行する者は、その業務において収受した財産が不法収益等であることを知ったとき又はその業務に関係する取引相手方が第7条の罪に該当する行為をしたを知ったときは、他の法令の規定にかかわらず、遅滞なく大統領令が定めるところにより、書面により検察総長に申告しなければならない。<改正97・12・31>

A 前項の場合、金融機関に従事する者は、同項の規定により申告をしようとし、又は申告した場合、これをその申告に関連する取引相手方及びその関係者に漏洩してはならない。

 

第3章 罰則

 

第6条(業として行った不法輸入等)@ 次の各号の1に該当する行為を業とした者(これらの行為と第9条に該当する行為を共にすることを業とした者を含む。)は、死刑・無期又は10年以上の懲役に処する。この場合、1億ウォン以下の罰金を併科する。

 1.麻薬法第60条(第4項を除く。)・第61条又は第62条(第1項第2号を除く。)に該当する行為

 2.向精神性医薬品管理法第40条(第4項を除く。)に該当する行為

 3.大麻管理法第18条に該当する行為

A 次の各号の1に該当する行為を業とした者(これら行為と第9条に該当する行為を共にすることを業とした者を含む。)は3年以上の有期懲役に処する。この場合、3千万ウォン以下の罰金を併科する。

 1.向精神性医薬品管理法第41条又は第42条(第2項及び第3項中第2項の未遂犯部分は除く。)に該当する行為

 2.大麻管理法第19条(第3項を除く。)に該当する行為

 

第7条(不法収益等の隠匿・仮装)@ 麻薬類犯罪の発見又は不法収益等の出処に関する捜査を妨害し、又は不法収益等の没収を回避する目的により不法収益等の性質・所在・出処又は帰属関係を隠匿し、又は仮装した者は、7年以下の懲役又は3千万ウォン以下の罰金に処し、又はこれを併科することができる。

A 前項の未遂犯は処罰する。

B 第1項の罪を犯す目的により予備又は陰謀した者は、2年以下の懲役又は1千万ウォン以下の罰金に処する。

 

第8条(不法収益等の収受)情を知って不法収益等を収受した者は、3年以下の懲役又は1千万ウォン以下の罰金に処し、又はこれを併科することができる。ただし、法令上の義務履行として提供されたものを収受した者又は契約(債権者に相当な財産上の利益を提供するものに限る。)時に、その契約に関連する債務の履行が不法収益等により行われるものであるという情を知らずにその契約に関連する債務の履行として提供されていたものを収受した者の場合には、この限りでない。

 

第9条(麻薬類としての物品の輸入等)@ 麻薬類犯罪(麻薬類の輸入又は輸出に関連するものに限る。)を犯す目的により麻薬類と認識して交付を受け、又は取得する薬物その他の物品を輸入又は輸出した者は、3年以上の有期懲役に処する。

A 麻薬類犯罪(麻薬類の譲渡・譲受又は所持に関連するものに限る。)を犯す目的により薬物その他物品を麻薬類により認識し、譲渡・譲受し、又はこれを所持した者は、5年以下の懲役又は500万ウォン以下の罰金に処する。

 

第10条(煽動等)麻薬類犯罪(第9条及び本条の犯罪を除く。)、第7条又は第8条の犯罪の実行又は麻薬類の乱用を公然と煽動し、又は勧誘した者は、3年以下の懲役又は1千万ウォン以下の罰金に処する。

 

第11条(未申告等)第5条の規定に違反した者は、2年以下の懲役又は1千万ウォン以下の罰金に処する。

 

第12条(国外犯)第6条から第8条まで及び第10条の犯罪は、刑法第5条の例による。

 

第13条(不法収益等の没収)@ 次の財産はこれを没収する。ただし、第7条第1項・第2項又は第8条の罪が不法収益又は不法収益に由来する財産及びこれらの財産以外の財産が混和した財産に関係する場合に、その犯罪に対して第3号から第5号までの規定による財産の全部を没収することが相当でないと認めるときは、その一部だけを没収することができる。

 1.不法収益

 2.不法収益に由来する財産

 3.第7条第1項・第2項又は第8条の犯罪行為に関係する不法収益等

 4.第7条第1項・第2項又は第8条の犯罪行為により発生し、又はその犯罪行為により得た財産又はその犯罪行為の報酬として得た財産

 5.第3号又は第4号の規定による財産の果実又は対価として得た財産又はこれらの財産の対価として得た財産その他その財産の保有又は処分により得た財産

A 前項の規定により没収しなければならない財産の性質、使用状況又はその財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情によりこれを没収することが相当でないと認めるときは、前項の規定にかかわらず、没収しないことができる。

B 次の財産は、これを没収することができる。

 1.第7条第3項の犯罪行為に関係する不法収益等

 2.第7条第3項の犯罪行為により発生し、又はその犯罪行為により得た財産又はその犯罪行為の報酬として得た財産

 3.第1号又は第2号の規定による財産の果実又は対価として得た財産又はこれらの財産の対価として得た財産その他その財産の保有又は処分により得た財産

 

第14条(不法収益等が混和した財産の没収)第13条第1項各号又は第3項各号の規定による財産(以下"不法財産"という。)が不法財産以外の財産と混和した場合に、その不法財産を没収しなければならないときは、その混和により生じた財産(以下"混和財産"という。)中その不法財産(当該混和に関連する部分に限る。)の金額又は数量に相当する部分を没収することができる。

 

第15条(没収の要件等)@ 第13条の規定による没収は、不法財産又は混和財産が犯人以外の者に帰属しない場合に限る。ただし、犯人以外の者が犯罪後その情を知ってその不法財産又は混和財産を取得した場合(その不法財産又は混和財産の取得が第8条但書の規定による不法収益等の収受に該当する場合を除く。)には、その不法財産又は混和財産が犯人以外の者に帰属した場合にもこれを没収することができる。

A 地上権・抵当権その他の権利がその上に存在する財産を第13条の規定により没収する場合に、犯人以外の者が犯罪以前にその権利を取得したとき又は犯人以外の者が犯罪後その情を知らずにその権利を取得したときは、その権利を存続させる。

 

第16条(追徴)@ 第13条第1項の規定により没収しなければならない財産を没収できず、又は同条第2項の規定により没収しないときは、その価額を犯人から追徴する。

A 第13条第3項の規定による財産を没収できず、又はその財産の性質、使用状況又はその財産に関する犯人以外の者の権利の有無その他の事情により、これを没収することが相当でないと認めるときは、その価額を犯人から追徴することができる。

 

第17条(不法収益の推定)第6条の罪に関係する不法収益を算定する場合において、同条各号の規定による行為を業とした期間内に犯人が取得した財産であってその価額が当該期間内の犯人の財産運用状況又は法令による給付の受領状況等に照らして明らかに高額であると認められ、その取得した財産が不法収益金額・財産取得時期等諸般事情に照らして同条の罪により得た不法収益により形成されたと見るべき相当の蓋然性がある場合には、その罪に関係する不法収益等と推定する。

 

第18条(両罰規定)法人の代表者、法人又は個人の代理人・使用人その他従業員がその法人又は個人の業務に関して第6条から第11条までの違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は個人に対しても各該当条の罰金刑を科する。

 

第4章 没収に関する手続等の特例

 

第19条(権利存続の宣告)裁判所は、地上権・抵当権その他の権利がその上に存在する財産を没収する場合に、第15条第2項の規定により当該権利を存続させるときは、没収の宣告と同時にその趣旨を宣告しなければならない。

 

第20条(没収された財産の処分等)@ 没収された財産は、検事がこれを処分しなければならない。

A 検事は、債権の没収裁判が確定した場合その債権の債務者に対して没収裁判の抄本を送付してその要旨を通知しなければならない。

 

第21条(没収の裁判に基づく登記等)@ 権利の移転に登記又は登録(以下"登記等"という。)を要する財産を没収する裁判に伴う権利の移転等の登記等は検事が嘱託する。

A 検事が前項の規定による登記等を関係機関に嘱託する場合に、没収により効力を失った処分の制限に関連する登記等又は没収により消滅した権利の取得に関連する登記等がなされ、又はその没収に関して第6章第1節の規定により没収保全命令又は附帯保全命令に関連する登記等がなされているときは、その登記等の抹消も各々嘱託したものとみなす。

 

第22条(刑事補償の特例)不動産又は動産でない財産の没収執行に対する刑事補償に関しては、刑事補償法第4条第6項の規定を準用する。

 

第5章 第三者参加申請等の特例

 

第23条(告知)@ 検事が公訴を提起する場合において、この法律の規定により被告人外の者の財産又は地上権・抵当権その他の権利がその上に存在する財産に対して没収が必要であると認めるときは、直ちにその財産を有する者又はその財産上に地上権・抵当権その他の権利を有する者であって被告人外の者(以下"第三者"という。)に書面により次の事項を告知しなければならない。

 1.被告人に対する刑事事件が係属中の裁判所

 2.被告人に対する刑事事件名及び被告人の姓名

 3.没収しなければならない財産の品名・数量その他その財産を特定することができる事項

 4.没収の理由となる事実の要旨

 5.被告人に対する刑事事件手続への参加申請が可能であるとの趣旨

 6.参加申請が可能な期間

 7.被告人に対する刑事事件に対して公判期日が定められた場合には、公判期日

A 検事は、第三者の所在を知ることができず、又はその他の事由により前項の規定による告知をすることができないときは、前項各号の事項を官報又は日刊新聞に掲載して所属地方検察庁又は支庁の掲示板に14日間掲示して公告しなければならない。

B 検事は、前2項の規定による告知又は公告をしたときは、これを証明する書面を裁判所に提出しなければならない。

 

第24条(参加手続)@ 没収されるおそれがある財産を有する第三者は、第1審裁判がある前まで(略式手続による裁判がある場合には、正式裁判請求が可能な期間が経過する前までをいい、この場合、正式裁判請求があるときは、通常の公判手続による第1審裁判がある前までをいう。以下同じ。)被告人に対する刑事事件が係属中の裁判所に対して書面により被告人に対する刑事事件手続への参加申請をすることができる。ただし、第23条第1項又は第2項の規定による告知又は公告があったときは、告知又は公告があった日から14日以内に参加申請をすることができる。

A 第23条第3項の規定により告知又は公告に関する書面の提出を受けた裁判所が被告人に対する刑事事件を他の裁判所に移送した後に参加申請を受けたときは、被告人に対する刑事事件を移送を受けた裁判所にその申請書面を送付しなければならない。この場合には、被告人に対する刑事事件を移送した裁判所に対して参加申請をしたときに参加申請をしたものとみなす。

B 裁判所は、参加申請が法律上の方式に違反し、又は第1項の規定による期間が経過した後になされたとき又は没収しなければならない財産又は没収しなければならない財産上に存在する地上権・抵当権その他の権利が申請人に帰属しないことが明白なときは、参加申請を棄却しなければならない。ただし、第1項但書の規定による期間内に参加申請をしないことが申請人の責任に帰することができない事由であるものと認めるときは、第1審裁判がある前まで参加を許可することができる。

C 裁判所は、前項の場合を除いては参加申請を許可しなければならない。ただし、没収することが不可能、又は没収が不必要であるという検事の意見が相当であると認めるときは、参加申請を棄却することができる。

D 裁判所が参加を許可した場合に、没収しなければならない財産又は没収しなければならない財産上に存在する地上権・抵当権その他の権利が参加が許可された者(以下、本章 で"参加人"という。)に帰属しないことが明白となったときは、参加を許可した裁判を取り消さなければならず、没収することが不可能、又は没収が不必要であるという検事の意見が相当であると認めるときは、参加を許可した裁判を取り消すことができる。

E 参加に関する裁判は、検事・参加申請人・参加人・被告人又は弁護人の意見を聞いて決定しなければならない。

F 検事・参加申請人又は参加人は、参加申請を棄却した決定又は参加を許可した裁判を取り消した決定に対して即時抗告することができる。

G 参加申請の取下げは、書面でしなければならない。ただし、公判期日においては、口頭によりすることができる。

 

第25条(参加人の権利)@ 参加人は、この法律に特別の規定がある場合を除いては、没収に関して被告人と同じ訴訟上の権利を有する。

A 前項の規定は、参加人を証人として訊問することを妨げない。

 

第26条(参加人の出席等)@ 参加人は、公判期日に出席することを要しない。

A 裁判所が参加人の所在を知らないときは、公判期日の通知その他書類の送達を要しない。

B 裁判所は、公判期日に出席した参加人に対して没収の理由となる事実の要旨、参加前の公判期日における審理に関して重要な事項その他参加人の権利を保護するために必要であると認める事項を告知し、没収に関して陳述する機会を与える。

 

第27条(証拠)@ 参加人の参加は、刑事訴訟法第310条の2から第318条の3までの規定を適用するのに影響を及ぼさない。

A 裁判所は、刑事訴訟法第318条及び第318条の3本文の規定により証拠とすることが可能な書面又は陳述を調査した場合に、参加人がその書面又は陳述の内容となった陳述をした者を証人として調査することを請求したときは、参加人の権利の保護に必要であると認める場合、これを調査しなければならない。参加人の参加前に調査した証人に対して参加人が更にその調査を請求したときにもまた同じである。

 

第28条(没収裁判の制限)第三者が参加許可を受けていないときは、次の各号の1に該当する場合を除いては、第三者が有する財産又は第三者が地上権・抵当権その他の権利をその上に有する財産に対して没収裁判をすることができない。

 1.第23条第1項又は第2項の規定による告知又は公告がある日から14日が経過したとき。ただし、没収しなければならない財産又は没収しなければならない財産上に存在する地上権・抵当権その他権利が参加申請人又は参加人に帰属しないことが明白であるという理由により参加申請が棄却され、又は没収することが不可能、又は不必要であるという検事の意見により参加申請が棄却される場合又は参加を許可する裁判が取り消された場合には、没収裁判をすることができない。

 2.参加申請が法律上の方式に違反して棄却されたとき

 3.参加申請の取下げがあるとき

 

第29条(上訴)@ 原審の参加人は、上訴審においても参加人としての地位を有する。

A 参加人が上訴したときは、検事又は被告人が上訴をしなければならず、又は上訴の放棄又は取下げをした場合にも原審裁判中没収に関する部分は確定しない。

B 前項の場合に、被告人は、上訴審及びその後の審級において公判期日に出席することを要しない。この場合、刑事訴訟法第33条・第282条及び第283条の規定は、これを適用しない。

C 前2項の規定は、略式手続による裁判に対して参加人が正式裁判の請求をした場合にこれを準用する。

 

第30条(代理人)@ この法律の規定により被告人に対する刑事事件手続に関しては、第三者は、弁護士中から代理人を選任して訴訟行為を代理させることができる。この場合には、刑事訴訟法第32条第1項及び第35条の規定を準用する。

A 代理人は、参加人の書面による同意がなければ参加の取下げ、正式裁判請求の取下げ、上訴の放棄又は取下げをすることができない。

 

第31条(刑事訴訟法の準用)@ 第三者の訴訟能力に関しては、刑事訴訟法第26条から第28条までの規定を、第三者の訴訟費用負担に関しては、同法第186条及び第191条の規定をそれぞれ準用する。

A 第23条第1項の規定による財産を没収する手続に関しては、この法律に特別の規定がある場合を除いては、刑事訴訟法の規定を準用する。

 

第32条(他の手続との関係)第23条第1項の規定による財産を没収する裁判は、自らの責任に帰すことができない事由により被告人に対する刑事事件手続で権利を主張できなかった第三者の権利には影響を及ぼさない。

 

第6章 保全手続

 

第1節 没収保全

 

第33条(没収保全命令)@ 裁判所は、麻薬類犯罪等に関連する被告人に対する刑事事件に関して、この法律、麻薬法、向精神性医薬品管理法、大麻管理法その他の法令の規定により没収することができる財産(以下"没収対象財産"という。)に該当すると判断するに足りる相当な理由があってその財産を没収するために必要であると認めるときは、検事の請求により又は職権により没収保全命令を発してその財産に関する処分を禁止することができる。

A 裁判所は、地上権・抵当権その他権利がその上に存在する財産に対して没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合に、その権利が没収により消滅するとみるに足りる相当な理由があり、その財産を没収するために必要であると認めるとき又はその権利が仮装されたものとみるに足りる相当な理由があると認めるときは、検事の請求により又は職権により別途の附帯保全命令を発してその権利の処分を禁止することができる。

B 没収保全命令書又は附帯保全命令書には、被告人の姓名、罪名、公訴事実の要旨、没収の根拠となる法令の条項、処分を禁止する財産又は権利の表示、これらの財産又は権利を有する者の姓名、発付年月日その他最高裁判所規則が定める事項を記載し、裁判した裁判官が署名捺印しなければならない。

C 裁判長は、緊急を要する場合には、第1項又は第2項の規定による処分をし、又は合議部の構成員にその処分をさせることができる。

D 不動産又は動産に対する没収保全は、刑事訴訟法の規定による押収を妨げない。

 

第34条(起訴前没収保全命令)@ 検事は、前条第1項又は第2項の規定による理由及び必要があると認める場合には、公訴が提起される前においても地方裁判所判事に請求して同条第1項又は第2項の規定による処分を受けることができ、司法警察官は、検事に申請して検事の請求により処分を受けることができる。

A 司法警察官は、没収保全命令又は附帯保全命令が発された場合には、遅滞なく関係書類を検事に送付しなければならない。

B 第1項の規定による請求は、検事が所属する地方検察庁又は支庁所在地を管轄する地方裁判所又は支院の判事にしなければならない。

C 第1項の規定による請求を受けた判事は、没収保全に関して裁判所又は裁判長と同じ権限を有する。

D 検事は、第1項の規定による没収保全後公訴を提起したときは、その要旨を没収保全命令を受けた者(被告人を除く。)に通知しなければならない。ただし、その人の所在が不明、又はその他の理由により通知をすることができないときは、通知に替えてその要旨を所属地方検察庁又は支庁の掲示板に7日間掲示して公告しなければならない。

 

第35条(没収保全に関する裁判の執行)@ 没収保全に関する裁判は、検事の指揮により執行する。

A 前項の規定による没収保全命令の執行は、その命令により処分が禁止される財産を有する者にその命令の謄本が送達される前においてもすることができる。

 

第36条(没収保全の効力)没収保全された財産(以下"没収保全財産"という。)に対してその保全後に行った処分は、没収に関してその効力を発生しない。ただし、第47条第1項本文の規定による場合(第50条第4項及び第5項の規定により準用される場合を含む。)及び没収保全命令に対抗することができる担保権の実行としての処分の場合には、この限りでない。

 

第37条(不動産の没収保全)@ 不動産の没収保全は、その処分を禁止する内容の没収保全命令により行う。

A 前項の没収保全命令の謄本は、不動産の所有者に送達しなければならない。

B 不動産に対する没収保全命令の執行は、没収保全登記をする方法により行う。

C 前項の登記は、検事が嘱託する。

D 不動産に対する没収保全の効力は、没収保全登記が行われたときに発生する。

E 不動産に対して登記請求権を保全するための処分禁止仮処分の登記がなされた後没収保全登記がなされた場合に、その仮処分債権者が保全しようとする登記請求権により登記をするときは、没収保全登記による処分の制限は、その仮処分登記に伴う権利の取得又は消滅に影響を及ぼさない。

F 民事訴訟法第603条第2項・第611条第2項及び第612条の規定は、不動産の没収保全に関してこれを準用する。この場合、同法第603条第2項中"債務者"は"没収保全財産を有する者"と、同法第611条第2項中"第1項"及び同法第612条中"第611条"は"麻薬類不法取引防止に関する特例法第37条第4項"と、同法第612条中"裁判所"は"検事"と読み替えるものとする。

 

第38条(船舶等の没収保全)登記することができる船舶、航空法により登録された航空機、自動車管理法により登録された自動車、建設機械管理法により登録された建設機械その他登記又は登録により権利変動がなされる物等の没収保全に関しては、不動産に対する没収保全の例による。

第39条(動産の没収保全)@ 動産(前条に規定したもの以外のものをいう。以下、本条において同じ。)の没収保全は、その処分を禁止する趣旨の没収保全命令により行う。

A 前項の没収保全命令の謄本は、動産の所有者(占有者が異なる場合、その占有者を含む。)に送達しなければならない。

B 刑事訴訟法の規定により押収されない動産又は同法第130条第1項の規定により看守者を置き、又は所有者若しくは適当な者に保管させることができる動産に関して没収保全命令があるときは、検事は、公示書を貼付させ、又はその他相当な方法によりその趣旨を公示する措置を採らなければならない。

C 動産の没収保全の効力は、没収保全命令の謄本が所有者に送達されたときに発生する。

 

第40条(債権の没収保全)@ 債権の没収保全は、債権者には債権の処分及び領収を禁じ、債務者には、債権者に対する支払いを禁止する趣旨の没収保全命令により行う。

A 前項の没収保全命令の謄本は、債権者及び債務者に送達しなければならない。

B 債権の没収保全の効力は、没収保全命令の謄本が債務者に送達されたときに発生する。

C 没収保全命令により没収保全された金銭の支払いを目的とする債権(以下"金銭債権"という。)の債務者(以下第46条及び第50条において"第三債務者"という。)は、その債権額に相当する金額を供託することができる。この場合には、債権者の供託金取戻請求権に対して没収保全執行がなされたものとみなす。

D 民事訴訟法第562条の規定は、債権の没収保全に関してこれを準用する。この場合、同法第562条第1項中"差押"は"没収保全"と、"債権者"は"検事"と、同法第562条第2項中"差押命令"は"没収保全命令"と読み替えるものとする。

第41条(その他財産権の没収保全)@ 第37条から第40条までの規定による財産以外の財産権(以下、本条において"その他財産権"という。)の没収保全に関しては、本条に特別に定めた事項を除き、債権の没収保全の例による。

A その他財産権中債務者又はこれに準ずる者がない場合(第3項の場合を除く。)、没収保全の効力は、没収保全命令の謄本がその権利者に送達されたときに発生する。

B 第37条第3項から第6項まで及び民事訴訟法第611条第2項・第612条の規定は、その他財産権中権利の移転に登記等を要する場合に関してこれを準用する。この場合、民事訴訟法第611条第2項中"第1項"及び同法第612条中"第611条"は"麻薬類不法取引防止に関する特例法第41条第3項の規定により準用される第37条第4項"と、同法第612条中"裁判所"は"検事"と読み替えるものとする。

 

第42条(没収保全命令の取消)@ 裁判所は、没収保全の理由又は必要がなくなり、又は没収保全の期間が不当に長くなったときは、検事又は没収保全財産を有する者(その人が被告人又は被疑者の場合には、その弁護人を含む。)の請求又は職権による決定により没収保全命令を取り消さなければならない。

A 裁判所は、検事の請求による場合を除いては、前項の決定をするときに検事の意見を聞かなければならない。

 

第43条(没収保全命令の失効)@ 没収保全命令は、没収宣告がない裁判(刑事訴訟法第327条第2号の規定による場合を除く。)が確定したときは、その効力を失う。

A 刑事訴訟法第327条第2号の規定による公訴棄却の判決がある場合に、その判決が確定した日から30日以内にその事件に対して公訴が提起されないときは、没収保全命令はその効力を失う。

 

第44条(失効等場合の措置)検事は、没収保全が失効したときは、遅滞なく没収保全登記に対する抹消嘱託をして、公示書の除去その他必要な措置をしなければならない。

 

第45条(没収保全財産に対する強制執行手続の制限)@ 没収保全がなされた後に、その没収保全の対象となった不動産又は第38条の規定による船舶、航空機、自動車又は建設機械その他登記又は登録により権利変動がなされる物等に対して強制競売開始決定がなされた場合又はその没収保全の対象となった有体動産が強制執行により差し押さえられた場合には、没収保全が失効した後でなければ強制執行による換価手続をすることができない。

A 没収保全された債権に対して強制執行による差押命令が発された場合に、その差押債権者は、差し押さえられた債権中没収保全された部分に対しては、没収保全が失効しなければ債権を領収することがすることができない。

B 第1項の規定に没収保全された後に、強制執行により差し押さえられた債権が条件附、期限附又は反対履行と関連しており、又はその他の事由により推尋が困難な場合にこれを準用する。

C 没収保全されたその他財産権(民事訴訟法第584条第1項の規定によるその他財産権をいう。)に対する強制執行に関しては、没収保全された債権に対する強制執行の例による。

第46条(第三債務者の供託)@ 金銭債権の第三債務者は、当該債権が没収保全された後にその没収保全の対象となった債権に対して強制執行による差押命令の送達を受けたときは、その債権の全額を債務履行地の地方裁判所又は支院に供託することができる。

A 第三債務者が前項の規定による供託をしたときは、その理由を没収保全命令を発した裁判所に申告しなければならない。

B 第三債務者が第1項の規定により供託をした場合、執行裁判所は、供託された金額中から没収保全された金銭債権の金額に相当する部分に関しては、没収保全が失効したときに、その残り部分に関しては、供託されたときに各々配当手続を開始する。

C 第1項及び第2項の規定は、強制執行により差し押さえられた金銭債権に関して没収保全になった場合に第三債務者の供託に関してこれを準用する。この場合、"没収保全命令を発した裁判所"は"差押命令を発した裁判所"と読み替えるものとする。

D 第三債務者が第1項(第4項で準用する場合を含む。)の規定により供託した場合に、民事訴訟法第580条の規定を適用する場合において同法第580条第1項第1号の"第581条第3項"は、"麻薬類不法取引防止に関する特例法第46条第2項(同法第46条第4項で準用する場合を含む。)"と読み替えるものとする。

 

第47条(強制執行の対象となった財産の没収制限)@ 没収保全される前に強制競売開始決定又は強制執行により差し押さえられた財産に対しては、没収裁判をすることができない。ただし、差押債権者の債権が仮装されたものであるとき、差押債権者が没収対象財産という事実を知って強制執行を申請したとき又は差押債権者が犯人であるときは、この限りでない。

A 没収対象財産上に存在する地上権・抵当権その他権利として附帯保全命令により処分が禁止されたものに対し、その処分禁止前に強制競売開始決定又は強制執行により差し押さえられた場合に、その財産を没収するときは、その権利を存続させることとして没収の宣告と同時にその趣旨を宣告しなければならない。ただし、差押債権者の債権が仮装されたものであるとき、差押債権者が没収によりその権利が消滅するという事実を知って強制執行を申請したとき又は差押債権者が犯人であるときは、この限りでない。

B 強制競売開始決定又は強制執行により差し押さえられた財産に対して没収保全命令が発された場合その財産に関して差押債権者(被告人が差押債権者を除く。)が当該刑事事件手続への参加の許可を受けていないときは、その財産に対して没収裁判をすることができない。前項の規定による財産の没収においてもまた同じである。

C 第5章の規定は、第3項の没収に関する手続に関してこれを準用する。

第48条(強制執行の停止)@ 裁判所は、強制競売開始決定又は強制執行により差し押さえられた財産に対して没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合に第47条第1項但書の規定による事由があると判断するに足りる相当な理由があるときは、検事の請求又は職権による決定により強制執行の停止を命じることができる。

A 検事が前項の決定書謄本を執行裁判所に提出したときは、執行裁判所は、強制執行を停止しなければならない。この場合、民事訴訟法の規定を適用する場合においては、同法第510条第2号の書類が提出されたものとみなす。

B 裁判所は、没収保全が失効したとき、第1項の理由がなくなったとき又は強制執行停止期間が不当に長くなったときは、検事又は差押債権者の請求又は職権により第1項の決定を取り消さなければならない。

C 第42条第2項の規定は、第3項の場合にこれを準用する。

 

第49条(担保権の実行のための競売手続との調整)@ 没収保全財産上に存在する担保権が没収保全された後に成立し、又は附帯保全命令により処分が禁止された場合その担保権の実行(差押を除く。)は、没収保全又は附帯保全命令による処分禁止が失効しなければこれをすることができない。

A 担保権の実行のための競売手続が開始された後、その担保権に対して附帯保全命令が発された場合に、検事がその命令の謄本を提出したときは、執行裁判所は、その手続を停止しなければならない。この場合、民事訴訟法の規定を適用するにおいては、同法第726条第1項第5号(同法第729条及び第732条において準用する場合を含む。)の規定による文書が提出されたものとみなす。

第50条(その他手続との調整)@ 第45条の規定は、没収保全された財産が滞納処分(国税徴収法及び地方税法の規定又はその例による各種徴収手続をいう。以下同じである。)により差し押さえられた場合、没収保全された財産を有する者に対して破産宣告又は和議開始決定(以下、本条において"破産宣告等"という。)がある場合又は没収保全された財産を有する会社に対して整理手続開始決定がある場合に、その手続の制限に関してこれを準用する。

A 第46条の規定は、没収保全された金銭債権に対して滞納処分による差押がある場合又は滞納処分により差し押さえられた金銭債権に対して没収保全がある場合に、第三債務者の供託に関してこれを準用する。

B 第46条第1項及び第2項の規定は、没収保全された金銭債権に対して仮差押がある場合又は仮差押えされた金銭債権に対して没収保全がある場合に、第三債務者の供託に関してこれを準用する。

C 第47条の規定は、没収保全される前にその没収保全の対象となった財産に対して仮差押がある場合又は没収対象財産上に存在する地上権・抵当権その他の権利であって附帯保全命令により処分が禁止されたものに対し、その処分禁止前に仮差押がある場合に、これらの財産の没収制限に関してこれを準用する。

D 第47条第1項本文の規定は、没収保全される前にその没収保全の対象となった財産に対して滞納処分による差押がある場合、没収保全される前にその没収保全の対象となった財産を有する者に対して破産宣告等がある場合又は没収保全される前にその没収保全の対象となった財産を有する会社に対して整理手続開始決定がある場合にこのような財産の没収制限に関してこれを準用する。

E 第47条第2項本文の規定は、没収対象財産上に存在する地上権・抵当権その他権利であって附帯保全命令により処分が禁止されたものに関してその処分禁止前に滞納処分による差押がある場合、没収対象財産上に存在する地上権その他権利であって附帯保全命令により処分が禁止された権利の権利者に対してその処分禁止前に破産宣告等がある場合又は没収対象財産上に存在する地上権その他権利であって附帯保全命令により処分が禁止された権利を有した会社に関してその処分禁止前に整理手続開始決定がある場合にこのような財産の没収制限に関してこれを準用する。

F 第48条の規定は、仮差し押さえられた財産に対して没収保全命令を発した場合又は発しようとする場合に、強制執行停止に関してこれを準用する。

第51条(附帯保全命令の効力等)@ 附帯保全命令は、その命令に関係する没収保全の効力が存続する間その効力がある。

A 附帯保全命令による処分禁止に関しては、この法律に特別な規定がある場合を除いては没収保全に関する規定を準用する。

第2節 追徴保全

第52条(追徴保全命令)@ 裁判所は、麻薬類犯罪等に関連する被告人に対する刑事事件に関して第16条の規定により追徴しなければならない場合に該当すると判断するに足りる相当な理由がある場合であって追徴裁判を執行できなくなるおそれがあり、又は執行が顕著に困難になるおそれがあると認めるときは、検事の請求により又は職権により追徴保全命令を発して被告人に対して財産の処分を禁止することができる。

A 追徴保全命令は、追徴裁判の執行のために保全することが相当であると認められる金額(以下"追徴保全額"という。)を定めて特定財産に対して発しなければならない。ただし、有体動産に関しては、その目的物を特定しないことができる。

B 追徴保全命令には追徴保全命令の執行停止又は執行処分の取消のために被告人が供託しなければならない金額(以下"追徴保全解放金"という。)を定めなければならない。

C 追徴保全命令書には被告人の姓名、罪名、公訴事実の要旨、追徴の根拠となる法令の条項、追徴保全額、処分を禁止する財産の表示、追徴保全解放金額、発付年月日その他最高裁判所規則が定める事項を記載して裁判した裁判官が署名捺印しなければならない。D 第33条第4項の規定は、追徴保全に関してこれを準用する。

第53条(起訴前追徴保全命令)@ 検事は、第52条第1項の理由と必要があると認められる場合には、公訴が提起される前でも地方裁判所判事に請求して同項の規定による処分を受けることができる。

A 第34条第3項及び第4項の規定は、第1項の規定による追徴保全に関してこれを準用する。

第54条(追徴保全命令の執行)@ 追徴保全命令は検事の命令により執行する。この場合、検事の命令は民事訴訟法の規定による仮差押命令と同じ効力を有する。

A 追徴保全命令の執行は、追徴保全命令の謄本が被告人又は被疑者に送達される前にも行うことができる。

B 追徴保全命令の執行に関しては、この法律に特別な規定がある場合を除き、民事訴訟法その他仮差押執行の手続に関する法令の規定を準用する。この場合、法令の規定により仮差押命令を発した裁判所が仮差押執行裁判所であって管轄することとされている仮差押の執行に関しては、第1項の規定による命令を発した検事が所属する検察庁に対応する裁判所がこれを管轄する。

 

第55条(金銭債権債務者の供託)追徴保全命令により追徴保全執行された金銭債権の債務者は、その債権額に相当する金額を供託することができる。この場合には、債権者の供託金取戻請求権に対して追徴保全執行がなされたものとみなす。

 

第56条(追徴保全解放金の供託及び追徴等の裁判の執行)@ 追徴保全解放金が供託された後に追徴裁判が確定したとき又は仮納裁判が宣告されたときは、供託された金額の範囲内において追徴又は仮納裁判の執行があったものとみなす。

A 追徴宣告された場合に、供託された追徴保全解放金が追徴金額を超過するときは、その超過額を被告人に還付しなければならない。

第57条(追徴保全命令の取消)裁判所は、追徴保全の理由又は必要がなくなり、又は追徴保全期間が不当に長くなったときは、検事、被告人・被疑者又はその弁護人の請求又は職権による決定により追徴保全命令を取り消さなければならない。この場合、第42条第2項の規定を準用する。

第58条(追徴保全命令の失効)@ 追徴保全命令は、追徴宣告がない裁判(刑事訴訟法第327条第2号の規定による場合を除く。)が確定したときは、その効力を失う。

A 第43条第2項の規定は、刑事訴訟法第327条第2号の規定による公訴棄却の判決がある場合における追徴保全命令の効力に関してこれを準用する。

第59条(追徴保全命令が失効した場合の措置)検事は、追徴保全命令が失効し、又は追徴保全解放金が供託された場合には、迅速に第54条第1項の規定による命令を取消することと同時に追徴保全命令に伴う追徴保全執行の停止又は取消のために必要な措置をしなければならない。

 

第3節 補則

 

第60条(送達)没収保全又は追徴保全(追徴保全命令に伴う追徴保全執行を除く。以下、本節において同じ。)に関する書類の送達に関しては、最高裁判所規則に特別の規定がある場合を除いては、民事訴訟に関する法令の規定を準用する。この場合、民事訴訟法第179条第1項の規定による公示送達の効力発生時期に関しては、同法第181条第1項本文及び第2項の規定にかかわらず、その期間を7日とする。

第61条(上訴提起期間中の処分等)上訴提起期間内の事件でまだ上訴が提起されない事件及び上訴したが訴訟記録が上訴裁判所に到達しない事件に関して没収保全又は追徴保全に関する処分をするべき場合には、原審裁判所がその処分をしなければならない。

第62条(不服申請)@ 没収保全又は追徴保全に関する裁判所の決定に対しては、抗告することができる。

A 没収保全又は追徴保全に関する裁判官の裁判に不服がある者は、その裁判官が所属した裁判所にその裁判の取消又は変更を請求することができる。

B 前項の規定による不服申請の手続に関しては、刑事訴訟法第416条第1項の規定による裁判の取消又は変更の請求に関連する手続規定を準用する。

第63条(準用)没収保全及び追徴保全に関する手続に関しては、この法律に特別な規定がある場合を除いては、刑事訴訟法の規定を準用する。

 

第7章 没収裁判及び追徴裁判の執行及び保全に関する国際共助手続

 

第64条(共助の実施)@ 麻薬類犯罪等に該当する行為に対する外国の刑事事件に関してその外国から条約により没収又は追徴の確定裁判の執行又は没収若しくは追徴のための財産保全の共助要請があるときは、次の各号の1に該当する場合を除いては、その要請に関して共助をすることができる。

 1.共助犯罪(共助要請においてその対象になる犯罪をいう。以下同じ。)に関して大韓民国の法令により刑罰を科することができないと認められる場合

 2.共助犯罪に関する事件に対して大韓民国裁判所で裁判が係属中であるか、又は確定裁判がある場合又は共助対象財産に関して既に没収保全命令又は追徴保全命令が発された場合

 3.没収の確定裁判の執行共助又は没収を目的にした保全共助要請に関係する財産が大韓民国法令により没収裁判又は没収保全をすることができる財産に該当しない場合

 4.追徴の確定裁判の執行共助又は追徴を目的にした保全共助要請に関係する共助犯罪に対して大韓民国法令により追徴裁判又は追徴保全をすることができないと認められる場合

 5.没収の確定裁判の執行共助要請に関係する財産を有し、又はその財産上に地上権・抵当権その他の権利であると認めるに足りる相当な理由がある第三者が自らの責任により返せない事由により当該裁判手続で自らの権利を主張できなかったと認められる場合

 6.没収又は追徴を目的にした保全共助に対して第33条第1項又は第52条第1項の規定による事由がないと認められる場合。ただし、保全共助要請が要請国の裁判所又は裁判官が行った没収又は追徴を目的にした保全裁判に基づいた要請又は没収若しくは追徴裁判の確定後の要請の場合には、この限りでない。

A 地上権・抵当権その他権利が設定された財産に関して没収の確定裁判の執行共助をする場合において大韓民国の法令によりその財産を没収する場合、その権利を存続させなければならない場合に該当になるときは、その権利を存続させなければならない。

 

第65条(追徴とみなす没収)@ 不法財産に替えてその価額が不法財産の価額に相当する財産であってその裁判を受けた者が有する財産を没収する確定裁判の執行に関する共助要請においては、その確定裁判は、この法律による共助実施に関しては、その者からその財産の価額を追徴する確定裁判とみなす。

A 第1項の規定は、不法財産に替えてその価額が不法財産の価額に相当する財産を没収することを目的とした保全共助要請に関してもこれを準用する。

第66条(要請の受付)共助要請の受付は、外務部長官が行う。ただし、緊急を要する事情又は特別の事情がある場合には、法務部長官が外務部長官の同意を得てこれを行うことができる。

第67条(裁判所の審査)@ 検事は、共助要請が没収又は追徴の確定裁判の執行に関する場合に、は裁判所に対して共助をすることができる場合に該当しているか否かに関して審査を請求しなければならない。

A 裁判所は、審査の結果、審査請求が不適法であるときは、これを却下する決定を、共助要請に関係する確定裁判の全部又は一部に対して共助することができる場合に該当するときは、該当部分に対する共助許可決定を、その全部に対して共助することができない場合に該当するときは、共助拒絶決定をしなければならない。

B 裁判所は、没収の確定裁判執行の共助要請に対して共助許可決定をする場合に、第64条第2項の規定により存続させなければならない権利があるときは、その権利を存続させる趣旨の決定を同時にしなければならない。

C 裁判所は、追徴の確定裁判執行の共助要請に対して共助許可決定をするときには、追徴しなければならない金額を大韓民国のウォン貨(韓国ウォン)により換算して共に表示しなければならない。

D 裁判所は、第1項の規定による審査をする場合において共助要請に関連する確定裁判の当否に対しては、審査することがすることができない。

E 第1項の規定による審査をする場合、次の各号の者(以下"利害関係人"という。)が当該審査請求事件の手続に参加することを許可しないときは、共助許可決定をすることができない。

 1.没収の確定裁判の執行共助の場合には、要請に関係する財産を有し、又はその財産上に地上権・抵当権その他権利であると認めるだけの相当な理由がある者又はこれらの財産又は権利に関して没収保全される前に強制競売開始決定又は強制執行による差押・仮差押されている場合における差押債権者又は仮差押債権者

 2.追徴の確定裁判の執行共助の場合には当該裁判を受けた者

F 裁判所は、審査の請求に関して決定をするときは、検事及び審査請求事件の手続に参加が許可された者(以下"共助審査参加人"という。)の意見を聞かなければならない。

G 裁判所は、共助審査参加人が口頭により意見を陳述しようとするとき又は裁判所が証人又は鑑定人を訊問するときは、訊問期日を定めて共助審査参加人に指定された訊問期日に出席する機会を与える。この場合、共助審査参加人が出席できず、訊問期日に代理人を出席させたとき又は共助審査参加人に書面により意見を陳述する機会を与えたときは、共助審査参加人に出席する機会を与えたものとみなす。

H 検事は、前項の規定による訊問期日の手続に参加することができる。

 

第68条(抗告)@ 検事及び共助審査参加人は、審査請求に関する決定に対して抗告することができる。

A 前項の抗告提起期間は14日とする。

 

第69条(決定の効力)没収又は追徴の確定裁判執行の共助要請に対して共助許可決定が確定したときは、その没収又は追徴の確定裁判は、共助の実施に関して大韓民国裁判所が宣告した没収又は追徴の確定裁判とみなす。

 

第70条(決定の取消)@ 裁判所は、没収又は追徴の確定裁判執行の共助要請に対して共助許可決定が確定した場合、その没収又は追徴の確定裁判が取り消され、又はその他その効力がなくなったときは、検事又は利害関係人の請求により決定により共助許可決定を取り消さなければならない。

A 前項の取消決定が確定したときは、刑事補償法による没収又は追徴執行による補償の例により補償する。

B 第68条の規定は、第1項の請求による決定に関してこれを準用する。

 

第71条(没収保全の請求)@ 検事は、共助要請が没収を目的にした保全に関するものである場合には、判事に没収保全命令を請求しなければならない。この場合、検事は、必要とすると認めるときには、附帯保全命令を請求することができる。

A 第67条第1項の審査請求があった後は、没収保全に関する処分は審査請求を受けた裁判所が行う。

 

第72条(追徴保全の請求)@ 検事は、共助要請が追徴を目的にした保全に関するものである場合には、判事に追徴保全命令を請求しなければならない。

A 第71条第2項の規定は、追徴保全に関する処分に関してこれを準用する。

 

第73条(公訴提起前の保全期間)@ 没収又は追徴を目的とする保全共助要請が公訴提起されない事件に対するものであった場合には、没収保全命令又は追徴保全命令が発された日から45日以内に要請国からその事件に対して公訴が提起されたという趣旨の通知がないときは、その没収保全命令又は追徴保全命令は効力を失う。

A 裁判官は、要請国からやむを得ない事由により前項の規定による期間内に公訴を提起することができないという趣旨の通知があるときは、検事の請求により30日を超過しない範囲内で保全期間を更新することができる。やむを得ない事由により更新された期間内に公訴を提起することができないという趣旨の通知がある場合にもまた同じである。

 

第74条(手続の取消)@ 検事は、共助要請を撤回する趣旨の通知がある場合には、遅滞なく審査請求、没収保全請求又は追徴保全請求を取り消し、又は没収保全命令又は追徴保全命令の取消を請求しなければならない。

A 裁判所又は裁判官は、前項の規定による没収保全命令又は追徴保全命令の取消請求がある場合には、遅滞なく没収保全命令又は追徴保全命令を取り消さなければならない。

 

第75条(事実の調査)裁判所又は判事は、本章の規定による審査・没収保全又は追徴保全に関する処分をする必要がある場合には、事実の調査をすることができる。この場合、証人を訊問し、又は検証をすることができ、鑑定・通訳又は翻訳を命じることができる。

 

第76条(検事の処分)@ 検事は、この章の規定による没収保全又は追徴保全の請求又は没収保全命令又は追徴保全命令の執行に関して必要であると認める場合には、関係人の出席を要求して陳述を聞くことができ、鑑定・通訳又は翻訳を嘱託し、又は実況調査をすることができ、書類その他の物の所有者・所持者又は保管者にその提出を要求し、又は公共機関その他団体に対してその事実を照会し、又は必要な事項の報告を要求することができる。

A 検事は、この章の規定による没収保全又は追徴保全の請求又は没収保全命令又は追徴保全命令の執行に関して必要とすると認める場合には、地方裁判所判事に請求して発行を受けた令状により押収・捜索又は検証をすることができる。

B 検事は、司法警察官吏に前2項の規定による処分を命じることができる。

 

第77条(管轄裁判所)この章の規定による審査・没収保全・追徴保全又は令状発付の請求は請求した検事が所属する検察庁の所在地を管轄する地方裁判所又はその支院又はその所属の判事にしなければならない。

第78条(準用)この章に特別な規定がある場合を除いては、裁判所又は裁判官がした審査、処分又は令状の発付、検事又は司法警察官吏等がした処分、利害関係人の参加に対しては、この法律第4章から第6章まで、刑事訴訟法、刑事訴訟費用法の規定を、共助要請を受理した場合にあってその措置に対しては、国際刑事司法共助法及び犯罪人引渡法の規定を各々その性質に反しない範囲内において準用する。


附則

@ (施行日)この法律は、公布した日から施行する。

A (不法収益等隠匿及び収受行為に対する経過措置)第7条及び第8条の規定は、次の各号の1に該当する財産及び資金に関してこの法律施行後にした行為に対してもこれを適用する。

 1.この法律施行前にした麻薬法違反の罪、向精神性医薬品管理法違反の罪及び大麻管理法違反の罪(特定犯罪加重処罰等に関する法律第11条に該当する罪を含む。)に当たる行為(大韓民国外で行った行為であって大韓民国内で行ったとすればこれらの罪に該当する行為を含む。)であってこの法律施行後に行ったとすれば麻薬類犯罪に該当する行為(以下、本項において"麻薬類犯罪行為"という。)により得た財産

 2.麻薬類犯罪行為の報酬として得た財産

 3.この法律施行前に行った麻薬法第62条第1項第2号(未遂犯を含む。)、向精神性医薬品管理法第43条第1項第2号、大麻管理法第20条第1項第4号(未遂犯を含む。)の罪に該当する行為(大韓民国外で行なった行為であって大韓民国内で行ったとしたらこれらの罪に該当する行為を含む。)により提供された資金

B (没収・追徴保全に対する経過措置)第6章の規定は、前項の規定による財産又は資金であって法令の規定により没収することができる物の没収のための保全及びこれら法令の規定によりその価額を追徴することができる場合における追徴のための保全に対してもこれを適用する。この場合、第52条中"第16条"は"麻薬法第70条但書、向精神性医薬品管理法第47条第1項但書又は大麻管理法第23条第1項但書"と読み替えるものとする。

C (国際共助に対する経過措置)第7章の規定は、この法律施行前に行った犯罪であってこの法律施行後に行ったとしたら麻薬類犯罪に該当する行為に関する外国からの共助の要請に対してもこれを適用する。

附則<97・12・31>

第1条(施行日)この法律は、公布した日から施行する。

第2条から第14条まで  省略