本資料は、大韓民国政府の公示事項を周知せしめるために発行された、最も基本的な文書である。わが国の官報がそうであるように、そこには、国家の基本法である憲法条文のような極めて基本的なものから、個々の国家官僚の異動にいたるまで、韓国研究を行う場合に必須の膨大な情報が収められている。
 にもかかわらず、資料としての「官報」は、これまであまり注目を浴びてこなかった。その理由としては、そもそもこの官報自体の所蔵状況が整っていなかったったことが挙げられよう。事実、韓国においてさえ、建国当初から今日まで発行された全ての官報をすべからく全てそのまま所蔵する機関は、決して多くはなく、多くの研究者はその所在確認のために多くの労苦をさいてきた。
 このような状況をもたらした原因の一つは、建国直後の韓国における混乱した政治的、経済的、社会的状況にあろう。なかんずく重要なのは、この国が建国から2年も経たない間に経験することとなった朝鮮戦争である。建国当初の決してそれ自身十分に整備された状態にあったとは言えなかった様々な歴史的・社会的資料保存機関はこの戦争により大きな打撃を受けることとなった。そしてその深刻さは、他ならぬこの国家の基本資料である「官報」が、韓国における最大の図書館である国立中央図書館においてさえ、この戦争を前後する時期の官報を完全な状態で保存されていない、ということに端的に現われていよう。
 そして、今回の大韓民国「官報」復刻の最大の意義もまさにここにこそある。すなわち、本復刻は、従来一部の研究者にのみ知られていた事実、即ち、韓国内においてはまとまった状態では所蔵されていない「官報」が、実は幸運にも日本国内には比較的良好な状態で残っているということに着目して計画されたものである。復刻の対象となる年次は、上述のように韓国国内おいてさえ、まとまって所蔵されたものを探すことが困難となっている1948年から1953年、即ち、大韓民国建国の年から、朝鮮戦争終結の年までとなっている。
 本復刻の対象となるこの時期は、今日一般に「第一共和国期」と呼ばれる1948年から1960年までの、韓国の「建国の父」李承晩が大統領として統治した時期の前半期に当たっている。B.カミングス『朝鮮戦争の起源』と、アメリカから公開された外交文書に刺激され活発な研究が行われている1945年から1948年までの「米軍占領期」とは異なり、「第一共和国期」についての研究は、今日、極めて遅れた状態にあり、それはいわば現代韓国史研究のブラックホール的存在とさえなっている。その理由の一つが、正に、ここまで述べてきた、この時代における資料状態の劣悪さであり、その意味でも本復刻の重要性は、韓国現代史研究の進展において、決定的な意味を持つことになろう。(本CD-ROM「解説」より)

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