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富士山噴火と被害

著者:古明地 光久

T 富士山の噴火歴
U 富士山ハザードマップ
V 生命・身体・財産への影響
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T 富士山の噴火歴

雲海の向こうには、白銀に輝く富士が静かに聳えている。私は、そのような光景を見たいがために、山梨を右往左往している。黎明の富士、夕焼け富士、かさ雲の富士、白銀の富士、嵐の富士・・・。私の大好きな富士山です。

「そんな富士なんて、陳腐で、仰々しくて、目障りで、大・大・大の大嫌いーっ!」という、あたかも怨念さえも感じさせるような方にお会いしたことがある。また、そのような方が意外と多いのも事実である。

本稿の内容は、そのような方々には、はなはだ心地よいものかもしれない。何故ならば、噴火によって、あの美しい富士山が、見るも無残なよれよれの姿となり、また、火山ガスや降灰によって結膜炎や気管支炎などに悩まされる、我々の姿を想像できるからである。

さて、大昔には、今の富士山はなかったのである。数十万年前の其処には、小御岳火山があったらしい。

約十万年前に、小御岳火山が爆発的噴火を繰り返し、古富士火山が形成された。さらに、約一万年前には古富士火山が噴火し、現在の姿(新富士火山)となった。富士山は活火山であり、今後も噴火を繰り返すであろう。

日本の火山の寿命は数十万年と言われている。富士山の年齢は約8万年であるので、まだまだ若い火山であり、今後も噴火は続くであろう。参考までに、箱根火山の年齢は40万年、浅間火山や伊豆大島火山は3万年、開門岳火山は3千年である。


理科年表より、富士山の噴火歴を調べてみた。

781、800-01年:噴火形式は火山爆発と溶岩流。足柄路が降灰砂に埋没し、箱根路が開かれる。延歴19-20年。

864−66年:噴火形式は溶岩流(青木が原溶岩流)。がせの海を西湖と精進湖に2分し、人家が埋没する。

937、999、1033年:噴火形式は火山爆発と溶岩流であるが、定かではない。長元5年。

1083、1511、1700年、1707年:噴火形式は火山爆発。噴出物総量8億m3。降灰砂は東方90kmの川崎で厚さ5cm。大被害が生じた。宝永4年。

1707年の宝永噴火の規模や被害の程度は甚大なものであり、富士山ハザードマップ検討委員会中間報告(平成14年6月12日)において、この宝永噴火の規模を基準として各種の検討を行なっている。



U 富士山ハザードマップ

詳細は以下をご覧ください:

富士山ハザードマップ検討委員会委員長コメント
富士山ハザードマップ検討委員会中間報告


「富士山ハザードマップ検討委員会」設置の経緯

2000年10月から12月及び翌年4月から5月にかけて富士山の直下で低周波地震が群発した。過去20年間の観測の中で特異な現象であり、富士山の地下にマグマが存在していることを示すものと理解された。

平成13年7月、国及び関係する県、市町村の構成による「富士山ハザードマップ作成協議会」が設置された。防災対策の確立、それらの基礎となるハザードマップや防災マップの作成などを目的とする。

平成13年7月、「富士山ハザードマップ検討委員会」が設置された。専門的見地からの検討を行なう。

溶岩流の到達時間:富士山ハザードマップ検討委員会中間報告の図19に相当する。
   


降灰予測:富士山ハザードマップ検討委員会中間報告の図20に相当する。

宝永噴火が各季節に発生した場合を想定。




被害想定:富士山ハザードマップ検討委員会中間報告の表6-3に相当する。

宝永噴火が発生した場合を想定。
   




V 生命・身体・財産への影響

溶岩流

山梨県における溶岩流の到達地域は、以下のようになります。これら地域は、「富士山と富士五湖」という、山梨県の大切な観光名所に依存しています。また、別荘地や有名なゴルフ場なども多くあり、「富士山噴火のハザードマップ」という、危険性を暗示するお墨付きの公開によって、不動産としての価値は確実に低下するでしょう。

西八代郡上九一色村(本栖湖と精進湖が含まれる)
南都留郡鳴沢村
南都留郡足和田村(西湖が含まれる)
南都留郡河口湖町(河口湖が含まれる)
南都留郡勝山村
南都留郡忍野村
南都留郡山中湖村(山中湖が含まれる)
富士吉田市

火山灰

噴火による降灰が到達する地域は、風向に依存しますが、山梨、静岡、神奈川、東京、千葉、茨城、埼玉、群馬、長野などの全域あるいは一部が、降灰量、2cm地域に含まれます。

夏の山梨は特に悲劇的であり、山梨県のみが集中的に痛めつけられるようです。

山梨県は、日本列島のほぼ中央に位置し、周囲に富士山、南アルプス、八ヶ岳など3,000メートル級の山々を有する山岳県です。人間の住める面積は非常に狭く、可住地面積割合は21%で、47都道府県の少ない方から4番目と、如何に急峻な山岳地帯であるかが、お分かりでしょう。

県民の多くは、地すべりや傾斜地の崩壊など、平地に比べれば遥かに災害が起き易い、”傾斜地”の一部分を平らに造成して家を建てています。雨が降り続く時には、飲料水の取り入れ口は大丈夫か、飲料水は濁ってないか、裏山は崩れないか、裏山からの鉄砲水はこないか、裏山からの落石はどうか、落石による道路の閉鎖はないか、道路の擁護壁は大丈夫か、道路沿いの崖は崩れないか、川の増水はどうか、家の近くに地すべりは起きないか、違法な造成工事はないかなどと、さまざまなことが心配になります。また、時としては、重さ数トンもの巨岩が上流から流されるという、水圧の凄まじさの痕跡を見ることもできます。

このように、山梨の殆どの地域が、傾斜地や地すべりの起きやすい地形なのです。当然のことながら、家の近くを流れる渓流の流速は、平地の場合よりはるかに大きいのです。

降灰量9億m3という、想像もできないほど大量の火山灰が、短期間に降り注ぐことになります。火山灰が堆積した山岳部では、降雨によって土石流となり、森林を破壊しながら斜面を流れ落ち、周辺の沢へと流れ込むでしょう。流れを下るにつれて、土石流の流速も流量も急速に増加します。土石流の通過面には、破壊された森林、田畑、道。家屋などが残されるでしょう。山際、谷や渓流などの傍の家屋などは特に危険と思われます。

甲府盆地の場合は、どのようになるのでしょうか。

盆地の周囲には、図にも示されるように、数多くの急流があります。それらの流れは、盆地の底部を流れる笛吹川と釜無川に流れ込み、またこれら二つの河川は、合流して富士川となります。すなわち、盆地周辺に堆積した降灰は、これら笛吹川、釜無川、そして富士川を目指して流れ落ちるわけです。支流からの土石流は、川底を嵩上げするでしょう。その結果、盆地の底部では予期せぬ水害が多発すると思われます。宝永噴火の際の降灰量は、約9億m3でした。被害の凄まじさが想像されます。

   


森林・農業
森林は1cm以上の降灰で50%の被害を受け、10cm以上で壊滅的打撃を被ると言われています。また、稲作は0.5mmの降灰で、その年の収穫は見込めないそうです。

果樹の場合の被害は極めて深刻です。お米や野菜のような、播種と収穫という一年サイクルの作物とは異なります。

果樹の苗を植え、生産能力を持つまでに育てるには5,6年の歳月がかかります。5,6年の歳月をかけて育てた樹でも、樹一本一本が異なる遺伝子特性を有するため、生産品の品質、収量などには大きな差異があります。低位の果樹は淘汰をしなければなりません。樹そのものが財産なのです。また、意識するか否かは人によって異なりますが、果樹の場合は、一本の樹に必要な葉の枚数までも考えながら育てる必要があります。太陽光と大気そして葉面(裏も表も)との、健全な関わり合いによってのみ果樹は生存できます。多量の降灰によって葉面が覆われると、それらができなくなり、場合によっては枯死するでしょう。

建物被害
「富士山ハザードマップ検討委員会中間報告」によると、富士山噴火による被害総額は、最大で約2兆5千億円(梅雨期の噴火の場合)と見積もられている。その殆どが降灰による被害である。当然ではあるが、死傷者の金額換算は行なわれていないし、人災による被害の分も組み入れられていない。

農林水産業の被害が最も多く、ついで建物被害、商業、観光・・・となっている。



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