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結核症の診断と治療

未感染者が結核菌に初めて感染→初感染
結核菌は患者の痰のしぶきを吸い込むことによって気道から肺に入り,胸膜直下の肺胞に定着する(感染の成立
  1. 好中球と肺胞マクロファージに貪食
  2. 一部は殺菌されることなくマクロファージ内で増殖を繰り返し,
    マクロファージを殺して浸出性病巣を作る=
    初感染原発巣
    マクロファージがリンパ行性に所属の肺門リンパ節に移行=
    肺門リンパ節病変
                                  <初期変化群>
  3. 一部の菌は増殖することなく,persisterとして生存し続ける
    一部の菌はリンパ行性あるいは,血行性(silent bacillemia)に肺尖部に達し,persisterとして生存し続ける
初感染を受けたヒトの一部で,肺の初感染原発巣,肺門リンパ節病巣,あるいは両者に,初感染に引き続いて進行性の病変が形成される
肺門・縦隔リンパ節結核,頸部リンパ節結核,胸膜炎など,リンパ行性に進展
縦隔内の静脈角リンパ節から結核性に散布→
粟粒結核(早期蔓延)
BCG免疫→初期変化群形成後のリンパ行性,血行性の進展を阻止し一次結核の発病を阻止すると言われている)
  1. 慢性結核症(二次結核症)
初感染後長い年月を経て発病
persisterとして残存していた結核菌が,内因性に再燃,それによる病変が管内性に進展したもの.通常,
肺尖部(S1,S2)ないしS6から進展することが多い.
  1. 再感染
ヒトの結核では外来性感染は稀ではあるが,菌の曝露量が大きかったり,HIV感染者のように宿主の免疫能の低下が著しい場合には,再感染による発病があり得る.
喀痰などの材料,病変組織から結核菌を証明すれば確定   重要!
結核症の基礎疾患
糖尿病,じん肺,腹部手術,副腎皮質ステロイド薬使用歴,透析療法,HIV感染,高齢,悪性腫瘍
症状
我が国では新発見患者の80%以上が自覚症状で発見されている.
咳,痰,胸痛,血痰,喀血,発熱,倦怠感など

咳,痰が2週間以上続く患者では,結核も念頭において検査を行うべきである
ツベルクリン反応
結核の診断にはあまり有効ではない
   ツ反陽性者のうち感染性結核患者の比率
    70歳代・・・80%
    30歳台・・・3.1%
    20歳代・・・1.3%

ツ反の判定基準(結核予防法施行規則)
発赤の長径 判定 符号
9mm以下 陰性 (-)
10mm以上
弱陽性 (+)
10mm以上硬結(+) 中等度陽性 (++)
10mm以上硬結(+)
二重発赤・水疱・壊死を伴う
強陽性 (+++)
結核菌検査
蛍光染色の方が見落としが少なく,観察に要する時間も短いため,推奨される
ただし菌量が1視野に1個以下の場合はZN法で確認する.

判定法
 (−)  
 (1+) ガフキー2号相当
 (2+) ガフキー5号相当
 (3+) ガフキー9号相当
液体培地:発育が速いが,菌数がわからない,結核菌とNTMが同時に検出された場合には薬剤感受性検査を誤る
小川培地(卵培地):発育が遅いが,液体培地に生えない菌も検出しうる
小川培地を用いる.結核菌に対する検査である.NTMには用いない.
画像所見
割愛
治療を要する結核患者を診断した場合,2日以内に保健所へ届け出が必要(結核予防法22条)
結核を伝染させるおそれのある場合は患者を結核療養所または病院に入院させることができる(入所命令 結核予防法29条)
化学療法の基本的目標→結核患者の体内に生存する結核菌を撲滅すること
 ↓
感受性のある抗結核薬を,3剤以上組み合わせた多剤併用療法を,少なくとも6ヶ月間継続して投与
化学療法失敗の最大の原因=治療中断と不完全な治療
結核治療薬の分類
@First-line drugs(a) 最も強力な抗菌作用を示し,菌の撲滅に必須の薬剤 RFP,INH,PZA
AFirst-line drugs(b) 主に静菌的に作用し,@との併用で効果が期待される薬剤 SM,EB
BSecond-line drugs @,Aに比し抗菌力は劣るが,多剤併用で効果が期待される薬剤 KM,TH,EVM,PAS,CS
初回治療の標準療法
(A)法 RFP+INH+PZA+SM(or EB)で2ヶ月間治療後,RFP+INH(+EB)で4ヶ月間治療
(B)法 RFP+INH+SM(or EB)で6ヶ月間治療後,RFP+INH(+EB)で3ヶ月間治療
薬剤の標準投与量(日本結核病学会 結核.Vol.78,No.7:497-499.2003より引用 )
薬剤名 標準量mg/kg/day) 最大量(mg/kg/day) 備考
RFP 10 600
INH 5 300
PZA 25 1500
EB* 15(25) 750 (1000) 最初の2ヶ月間は25mg/kg (1000mg/day)投与してもよい (視力障害に注意). 但し3ヶ月以降は15mg/kg (750mg/day)とする.
SM** 15 750 (1000) 投与量は毎日投与の場合の量である. 最初の2ヶ月以内は毎日投与してもよい(KMは特に副作用に注意). SM 週2回、KM週3回投与の場合は1日最大1g/bodyとする. SM/KM/EVMは同時に併用しない.
KM** 15 750 (1000)
TH*** 10 600 200mg/dayより漸増する(消化器症状が強いので)
EVM**** 20 1000 最初の2ヶ月間は毎日、以後は週2-3回投与
PAS 200 12000
CS 10 500
LVFX***** 8 600 抗結核薬としては未承認. INH and / or RFP が耐性または使用できない時に使用を考慮(小児と妊婦は禁忌).
服薬期間の延長
耐性肺結核の治療
  1. RFP耐性/INH感受性の場合
PZA使用可能の場合
INH+PZA+SM+EB(+LVFXまたはsecond-line drugsのうち1剤)の4〜5剤を菌陰性化後6ヶ月間
その後INH+EB(+LVFXまたはsecond-line drugsのうち1剤)の2〜3剤を12ヶ月間
治療期間の合計:菌陰性化後18ヶ月間
PZAが使用できない場合:
INH・SM・EBにレボフロキサシンまたは感受性のあるsecond-line drugの1剤を加えた4剤で菌陰性化6ヵ月
その後INH・EB・second-line drugの3剤で治療
治療期間の合計:菌陰性化後18〜24ヶ月間
  1. RFP感受性/INH耐性の場合
PZA使用可能の場合
RFP・PZA・SM・EB(・レボフロキサシンまたはsecond-line drugの1剤)の4〜5剤で菌陰性化6ヵ月
その後RFP・EB2剤で治療
治療期間の合計は9ヶ月間または菌陰性化後6ヶ月間のいずれか長い期間
SMの投与は最大6ヵ月間
PZAが使用できない場合:
RFP・SM・EB・レボフロキサシンまたはsecond-line drugの1剤の4剤で菌陰性化後6ヵ月
その後RFP・EBの2剤で治療
治療期間は12ヵ月, または, 菌陰性化後9ヵ月のいずれか長い期間
SMの投与は最大6ヵ月間
  1. RFP耐性/INH耐性の場合
→日本結核病学会 結核医療基準の見直し第2報を参照→ 日本結核病学会
副作用への対処法(参考:近畿中央胸部疾患センターガイドライン)
  1. 肝障害

GOT または GPTが200を越えるか、総ビリルビンが2.0以上になれば薬剤中止. GOT、GPT、総ビリルビンの上昇が軽度でも、食欲不振や吐き気等の自覚症状が出た場合は薬剤中止

<HREZ投与中に肝機能が悪化し薬剤中止となった時の対応>

GOT・GPTが100以下になったところで、一時的にSMまたはLVFXを併用し、まず3日間S (L) を次いで3日間Eを加えて肝機能の悪化のない事を確認する. 次いでR(R再投与時は上記注意点を守る)を加えて3日後に肝機能の悪化がないことを確かめる. 次いでHを加えてやはり3日後に肝機能の悪化がない事を確認. ここまで投与可能であれば、S (L)は中止とする. 各薬剤投与後肝機能の再悪化があればその薬剤が原因と考え以後投与しない. EHRまで投与可能の場合、特別な理由がある場合を除きZの再投与は行わない.
  S or L → +E → +R → +H 
(→ +Z) S or Lの中止

  1. 骨髄抑制
白血球2000または顆粒球1000以下血小板10万以下となれば薬剤中止.
  1. 皮疹
体表のおよそ1/3を超える範囲に薬疹がでるか、水泡や壊死を伴う重症皮疹の場合には薬剤中止.

HR何れかの副作用により皮疹・発熱が生じた場合結核病学会の指針に従い減感作療法を行う. 減感作療法中に再度副作用が生じた場合は直ちに当該薬剤を中止し以後使用しない. HR両者に減感作をする場合は1剤ずつ行う. 耐性菌の誘導を防止するため減感作は確実に服用できる2剤をまず投与した上で行う.

*日本結核病学会INH/RFPの減感作の方法

day 1〜3 4〜6 7〜9 10〜12 13〜15 16〜
INH(mg) 25 50 100 200 300 400
RFP(mg) 25 50 100 200 300 450
  1. 薬剤のためと思われる38℃以上の発熱が2日以上続いたら薬剤中止
  1. 腎障害
クレアチニンが2を超える腎機能障害が生じた場合薬剤中止
R/S/Z/LVFXには腎機能障害の副作用が報告されている.
H/Eには腎機能障害の報告はないが、減量を考慮する必要はある.
 クレアチニンクリアランスが30未満の場合、EB 0.5x週3回投与がATSでは推奨されている.
  1. 高尿酸血症
PZA投与時尿酸値12までは症状なければ放置. 12を越えるか関節痛を訴える場合ユリノームを適宜併用する(当初から併用する必要はない)
注:PZA投与時の高尿酸血症には
ザイロリックを投与しない。同剤のxanthine oxidase 阻害作用によりPZAの代謝産物のピラジン酸の濃度がさらに上昇するとの報告がある(Lacroix C. et al: Eur. Respir. J 1:807-811, 1988)。
肺外結核の治療(参考:近畿中央胸部疾患センターガイドライン)
  1. 結核性胸膜炎
肺結核と全く同じ。治療開始時に胸水はできるだけ排液するが、ドレーンを挿入する必要はない。
  1. 結核性リンパ節炎
化学療法は肺結核に準じるが、治療期間を3ヶ月間延長する. 初期に診断も兼ねてリンパ節をなるべく切除する. 正しく治療しても、初期3〜4ヶ月間リンパ節病変の悪化がしばしばみられる. きちんと治療しても再発が多いのも特徴である(真の再発ではないとの意見もある).
  1. 骨・関節結核、腎結核、粟粒結核等血行性の播種による結核
化学療法は肺結核に準じるが、治療期間は1年間とする(例2HREZ+4HRE+6HR). 必要な場合外科手術を併用する.
  1. 結核性髄膜炎
最重症の結核として18ヶ月間治療する(例 2HREZ+4HRE+12HR). 初期1ヶ月間1mg/kgのプレドニン(または相当量のデカドロン)を併用し、その後の1ヶ月間で漸減する. 脳・脊髄に後遺症を残す事がある.
  1. 結核性心膜炎
治療期間は3)と同じく1年間でよいが、髄膜炎と同じ様に初期2ヶ月間はステロイドを併用する.
参考 WHO/CDC 2004
    上記の1,2はカテゴリーV(非重症型肺外結核)、3,4,5はカテゴリーT(重症型)に分類
category TB patient initial phase continuation phase
T 新規塗抹陽性
新規広範囲病変
HIV陽性
重症型肺外結核
2HRZE
(髄膜炎ではE→S)
4HR
U 既治療塗抹陽性 2HRZES/1HRZE 5HRE
category T失敗例で
MDRが予測される
個々の状況に合わせて選択
V 既治療塗抹陰性
非重症型肺外結核
2HRZ(E) 4HR
W 慢性排菌例
多剤耐性
 
*重症肺外結核 粟粒結核、髄膜、心膜、腹膜、両側大量胸水、脊椎、腸、生殖泌尿器
妊娠中の女性に対する治療
SM,PZAは使用しない
6HRE+3HR を原則とする
1) INHを含まないレジメン 2) PZAを含まないレジメン 3) INH、RFP、PZAのうち1剤のみを含むレジメン 4) INH、RFP、PZAのいずれも含まないレジメン