航空機騒音を考える文京区民の会



  国土交通大臣への要請書

 

石井啓一大臣殿

         

                       2016413

羽田増便による低空飛行ルートに反対する品川区民の会

         (代表:秋田操 東京都品川区東品川3163504

        航空機の都心低空飛行に反対する江戸川区民の会

          (代表:肥後義弘 東京都江戸川区清新町121713)

         江東区上空の飛行計画撤回を求める会

          (代表:松橋隆司 東京都江東区東砂7519615)

 

羽田空港の増便計画による新飛行経路設定に関する要請

表記の件に関して、都心への低空飛行を解禁する今回の新飛行経路は、各区の住民にきわめて大きな影響を与えるものです。かつて住民の運動の結果、国土交通省も騒音の軽減、安全性を考慮し東京湾上をできる限り旋回させる飛行経路の設定を約束し40年以上も実施してきた歴史的経過があります。国土交通省もこの経過についてはご承知のとおりです。ところが今回の新飛行経路の設定は、この歴史的経過を根底から覆すものです。住民の多数は、今回の海上から都心上空への重大な経路変更を知らされていないのが現状ではないでしょうか。国は、これまで2回の説明会を開いてきましたが、参加者は極めて少数です。例えば江東区では50万の人口に対して2回の説明会を合わせても350人程度の参加者です。重大な変更に対する住民多数の合意もないまま今年夏までに「環境に配慮した方策」を決定されようとしています。今年度の予算ではすでに「羽田空港の飛行経路の見直しに必要となる航空保安施設、誘導路の施設整備に係る調査・設計等を実施します」としその他の整備事業と合わせて前年度の2倍近い498億円の予算がついています。これでは住民の意見は聞きおくだけということになるのではないでしょうか。そうであるなら、これほど住民を愚弄する話はありません。そうでないというなら、住民の合意を得るための説明を尽くしてください。

このような状況を踏まえて、下記のとおり要請いたします。

 

                記

 

私たち住民は、国土交通省がこれまで実施してきた東京湾上をできる限り利用する飛行経路こそが、騒音、安全、大気汚染のどれをとってもこれに勝る対策はないと考えています。今回計画されている都心への低空飛行ルートは、健康や人命、住民の日々の生活に深刻・重大な影響を与えるため、経済を優位において考えてはいけない問題です。下記説明のとおり、自治体や住民と約束した信義もあるからこそ、上記飛行経路を40年余も続けてきたのではないでしょうか。これまで国土交通省がとってきたこの見識を継続し、新飛行経路の設定はやめるようよう要請します。以下は要請に関する理由です。

 

(1)東京湾上空をできる限り利用する飛行経路をとるようになったのは、1971年からはじまった低空飛行の騒音に悩まされるようになった江戸川区の運動からです。当時の区の広報紙「江戸川区のお知らせ」(昭和4821日発行)によると、区長を先頭に区議会、住民が一丸となってさまざまな運動を展開し、訴訟まで起こしてたたかい、国が海上での飛行コースを設定した誠意を認めて和解しています。これが、歴史的な経過の概略です。今回の新飛行ルートはこの歴史的な和解の約束をろくに説明もないままほごにするものです。これは信義にも反することであり、新飛行ルートは撤回すべきです。

 (2)都心上空を低空で飛行する場合は、落下物の危険があり、住民の不安は大きなものがあります。港区議会は315日、成田空港周辺で昨年、部品や氷塊の落下が4件おきていることをあげ、住民に対し丁寧な説明を尽くすよう求めています。国土交通省は、過去10年間で、成田周辺では部品13件、氷塊5件の計18件起きているのに対し、羽田空港周辺ではゼロ件としています。だから安心かといえば、落下物は東京湾上に落ちて見つかっていないだけのこと思われます。市街地の落下物は人命にかかわる大問題であり、その危険性を増す都心上空の低空飛行経路はやめるべきです。また、航空機事故の危険も否定できません。この点からも住宅密集地上空の飛行はやめるべきです。

 (3)大気汚染については、航空機排ガス中のPM2.5やそれよりはるかに小さいナノ粒子の健康影響が心配されています。米国がん学会による50万人規模の疫学調査によれば、PM2.5.の影響をとくに受けやすい人たちは老人、新生児、慢性呼吸疾患や肺炎を患っている人たちです。環境基準の達成率がきわめて低いPM2.5については、東京都から国への要望が出されています。「標準的な測定手法を定めること」や、「船舶や航空機が集中する地域の排出総量の実態や影響を把握し、排出抑制対策をこうじること」を求めています。その対策もないまま、市街地上空の低空飛行ルートを強引に進めることは人道に反するのではありませんか。とくにナノ粒子は,PM2.5よりさらに細かく、飛行機の排ガス中のナノ粒子は「大量に排出されている」と報告されています。ナノ粒子は粒径が細かければ細かいほど、肺から吐き出されずに、肺胞への沈着率が高いことが心配されています。小さいために血管から血液に入り込み血栓を生じやすく、心臓や肝臓などの臓器に影響を及ぼすと考えられています。今回の飛行コースの近くには、子どもの保育施設や学校施設、老人施設が数百の規模であるとみられるだけに、心配も大きなものがあります。これら微細粒子の影響についてはまったくと言っていいほど説明されていません。

 〈4〉騒音対策については、国はその軽減措置としてできる限り飛行経路を海上に設定してきました。これが長年にわたり維持されてきたのは、住民の負担を軽減するもっともよい対策だからです。現行飛行経路の継続が求められています。今回の都心への飛行経路の転換に際して、国土交通省は、どの地域も環境基準内であり、問題ないかのように説明しています。しかし基準値外は品川区八潮の一部だけで、人も住んでいない地域です。これでは実態に合わないことは明らかです。一つ一つの騒音を問題にせず騒音がない時も計算に入れて平均化する現行環境基準では問題が多いとされており、住民の健康を保護できないことは明らかです。WHO(世界保健機関)の「環境騒音のガイドライン」や「環境騒音による疾病負荷」などの報告では騒音を浴び続けると、睡眠障害や心臓疾患の増加、子どもの読解力の低下、記憶力の低下といった影響が指摘されています。

 (5)新飛行経路に関する情報の提供はきわめて不十分です。住民が求める情報を公開すべきです。説明会もオープンハウス型だけでなく、教室型の方式でも行うべきです。

 以上結論的にいえば、(1)歴史的経過と約束、(2)落下物や事故に対する安全対策、(3)航空機排ガス中の微細粒子の対策、〈4〉騒音対策、(5)住民への説明―のどれをとっても、これまで国土交通省が良識にもとづいて実施してきた最大限海上に経路をとり陸域への影響を最小限にするという方策に勝る環境対策はなく、都心への経路の転換は危険を増すだけで道理もありません。

よって、私たちは現行飛行経路の継続を要請するものです。

 

 最後に、国土交通省は、人口減少の社会で、豊かな生活を実現するには増便が欠かせないと説明している問題について言及しておきます。経済発展が大前提で、そのために住民の健康や暮らしに重大な影響があってもやむを得ないというのが国の立場なら撤回を求めます。言うまでもなく日本経済を支えているのは個人消費です。ところが国は、非正規雇用を増やし、実質賃金が減り続け、個人消費が落ち込んでいます。今こそ、強く求められているのは内需を暖める政策への根本的な転換です。海外から人を呼び込むだけで豊かな生活が実現するというのは、羽田だけから見た一面的でゆがんだ考えだと指摘せざるを得ません。世界経済は、中国やヨーロッパの経済状況をみても将来予測は極めて難しいのが現実です。しかし国土交通省は、4年後のオリンピック・パラリンピック後まで展望し、さらなる増便のため羽田空港の滑走路増設計画をたて、純然たる建設事業費だけでも6200〜9700億円と試算までしています。海外から人や企業呼び込むために、経済特区の空港周辺事業も含めれば、莫大な税金がつぎこまれてきましたし、さらにつぎ込まれようとしています。その税金のために、保育や教育、福祉の財源が削られます。これでは豊かな生活が実現すると期待できないと考えています。

 

 


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