免震構造は、阪神淡路大震災でその効果が認められ急速に普及している。従来の建物は地震の横揺れ(水平力)に対し壊れないだけの強さ(剛性)を持たせる耐震構造である。これに対して免震構造は、地震の水平力をゴムやベアリングでできた可動部分(免震装置)で吸収し、建物自体に伝わらせない考え方である。

効果はあるのか住宅の免震装置の試験に立ち会った。阪神淡路大震災の揺れを実験設備で再現。大きく設備が揺れる中、免震された建物のテーブル上のミルクはついにこぼれなかった。開発したメーカーの人もこれは条件の整った実験で実際はここまでの効果は・・・。といっていたが地震に対する効果が絶大なことは実感できた。建築が地面にしっかり根を下ろす従来の考えからすると革新的である。前述のケヤキの動きほど巧妙ではないにしても。

免震構造の課題。それはコストと自由度。総工事費の10〜15%増が免震建物の相場だが、これを軽減できれば・・・。そのためには、法律で定める免震建物の余剰な構造強度を引き下げることが望まれる。免震構造はどの程度地震の揺れを低減するのだろうか。構造家に伺うと、地震の揺れかた(地震波)によって違い簡単ではないのだが、震度7以上の大地震では、その力を1/5程度に軽減する効果が見込めるらしい。一方、法律で定める構造計算上はそこまで建物の地震力を軽減した設計はできず、せいぜい2割程度の軽減にとどまる。したがって免震構造を採用しても画期的な本体構造の合理化とはいかない。免震構造により自由度を獲得しコストも軽減できれば建築の夢は広がるのだが。

一方、中越地震では、博物館の免震台の上の縄文式土器が被害を受けた。いままでは地震の横揺れを抑えることが求められた免震装置であるが、不安定な土器などの場合たて揺れにより被害が生じることが明らかになった。3次元に対応するより高度な免震の需要が発生する可能性がそこにはあるかもしれない。
                                   2005年4月
┃ 免震構造
┃ 風と樹
免震構造の新しいかたち
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窓の外のケヤキをぼーっと見ていて思いついた。「風がないと樹は枯れる。」
ケヤキは軽い。風が吹くと全体が揺れる。たわむことを許すから軽い構造となる。静止することを定められている建築とは大きく違う。まるで無重力で宙に浮いているよう。風が吹くと、長さ、太さ、葉の数が異なる枝たちはそれぞれの固有周期で揺れる。この異なる周期の振動は互いに打ち消しあい幹には偏った力が働かないようだ。よくできている。これを建築の構造に応用できないだろうか。これだけ大きなたわみは建築では許容できないだろうが・・・。せめて風に揺れる樹の構造の合理性を解析する植物学者が現れないかしら。

樹の種類によって葉の伸び方は違う。桜は枝を水平に伸ばすがケヤキは3次元的に空間を占有するように葉を茂らせてゆく。先端の枝葉は豊富な太陽光を受けることになるが奥の葉には光が届かなくなる。光合成を行うためには奥の葉にも「もっと光を。」それを実現しているのが軽くて微妙な風で揺れる樹の構造なのではないだろうか。「風がないと樹が枯れる。」樹は自らを軽くし風を捉え微妙なバランスで生存のシステムを形成している。大きな樹の下の木漏れ日は、葉と葉が重なり合い離れあい微妙な運動を繰り返し明と暗が粒子のように運動する。一度として同じ形にならない光のモザイク。そしてそれを生み出す必然性。植物が静的なものだとする考えには同意できない。風によって運動しながら生きながらえている。

水辺では、樹々が水面近くに枝を伸ばしている。盲目の人が陽射しの温かさを手で感じとるように水辺に反射した太陽光に反応して枝を伸ばす。虚ろに揺れる水面は、モザイク状に届く本物の陽射しと等価なのではないか。