異説 新たなる旅立ち 
カプチーノさん作

2.帰還編

(3)

地球時間正午にヤマトは防衛軍の地下ドックに入り、作業スタッフに引継ぎを行った。

北野含め太助たち新人は今回の航海で一回り大きくなった。それは退艦時の行動をみれば一目瞭然であった。教官たちが目を細めて満足げにうなづいていた。

そして新人同士の固いつながりが出来た今、みな名残惜しそうに退艦している。守とサーシァは佐渡に付き添われて防衛軍病院へ一足先に出発した。

そして最後、第一艦橋のメンバーが揃って、防衛軍からまわされたエアカーに乗り込んだ。


〜地球防衛軍司令部〜

メインスタッフは防衛軍長官の執務室内に揃った。長官の入室と共に全員が直立不動で敬礼をした。

「ご苦労であった。まずはかけてくれ・・・となりにいるのは早川参事官だ。今回の件で非常に力になってくれた。」

「早川です。よろしくお願いします」と挨拶され、メインスタッフもそれに応えた。

「さて、まず結論から言おう。ヤマトは今後有事の場合対応するという形をとる。新人の訓練航海の結果も考慮したが、まだ経験不足でヤマト本体を任せることはできないようだな?沖田のような艦長がいれば君たちがそうだったように、新人でも乗組員として機能するとはおもうのだがね。ヤマトには艦長が必要だ。」

もっともな意見であった。そうやって全員を束ね、大きな任務にも責任もってあたれる重厚な人物が必要だということであった。
確かにその位置に一番近いところにいる古代だが、いかんせん若さゆえの無謀さと繊細さが未だ混在する。藤堂としてはここはまず古代を一度気分的に解放させ、またさまざまな経験をさせていずれは防衛軍の要職を担ってほしいと長い目で考えていた。

今回の独断による出航も、ヤマト艦長という人物がいればまたちがう形をしたのではないかと・・・上に立つものは部下を死地においやることができる図太さも必要なのだが、報告書を見る限りではどうやらこの指揮官はまだまだ自分が飛び出していくほうなので、そのあたりのところをもう一度学ばせたいと考えていた。

「それからここにいる全員は経験者という形で、そのまま引き続きヤマト乗組員という肩書きをも持つからそのつもりでいてくれたまえ。では新しい任務だ。」と長官がいい、早川がみんなに辞令書を配った。

みんなは手渡された辞令書をお互い見比べながら驚いている。

「あの・・長官・・・彗星帝国についての処分のほうは?」

古代やみんなが気になっていることだった。今の話だと自分たちは今後もなにかあればヤマトに乗艦するようになっているが・・・

「彗星帝国との戦い、無断出航等における生存しているヤマト乗組員への賞罰は無しとする。ただし亡くなった乗組員やその遺族への対応は軍務の規定によって執り行われる。名誉等も尊重した扱いだ。」

長官がそう宣言したことで、この件については片がついたということになる。遺族への対応は古代が願ったとおりだが、自分への対応がそれでいいのかという気持ちが表情にでていたようで、早川参事官が補足説明をおこなった。

「古代さん、これ以上この件については無しですよ。私もこれ以上はできませんよ。私のほうでもいろいろ調査をしました。軍法会議にあなたをかけることもできたのですが、でも独断で地球を出発したときあなたの年齢はまだ19でした。まあ年齢で助かったわけではありませんが・・・
彗星帝国の報告書や今回の訓練航海の報告等を読ませていただいて、あなたは確かにヤマトにおいて戦闘の指揮が取れる。そして宇宙戦士が持つ危機意識を高く持っている・・・
でも、それだけです。
このさきあなたがどういう方面に進んでいかれるのかわかりませんが、指揮官としてなら・・視野をひろげ、宇宙戦士としてなら・・すそ野を広げていくことが大切です。
そういった長官の含みがあっての辞令です。さきほどのお話にあったように、ヤマトは有事に対応する艦なので今後はどこの艦隊にも所属しません。長官直属の艦なのです。」

それがどういうことなのかは、みんなにもわかることだった。長官の命令のみで動く独立部隊なのだ。長官の意思=ヤマトの運航となるのだ。

「そして我々はこれからヤマト新艦長の選定に入ります。現場で指揮をとり、また艦を降りてなお対外責任をもとれる艦長が必要です。ヤマト艦長は艦内、艦外においてそれだけの力を揮える(ふるえる)人でなければなりません。」

もっともな意見であった。確かに古代では艦内の指揮はとれても、まだ艦外の諸事に対応するにはあまりにも若すぎる。

「厳しくいいましたが、それだけヤマトによせる信頼が高いということを含んでおいてください。それと今回の訓練航海の新人たちの報告書ですが・・・」

みんなは一様に驚いた。

「新人たちの報告書って?」

「古代さんに長官から別オーダーが入っているように、新人たちにも訓練学校の指導教官から別オーダーが入ってます。」

そんなことを知らない古代たちは冷や汗ものだった。それは言い換えればヤマト艦内での訓練についての報告を教官にあてているのだから、何を書いてあるのだろうとおおいに気になるところだった。だがそんなことは意に介せず、早川は淡々と語った。

「いやあ・・優秀な新人たちだけにすぐ対応してくれました・・・艦載機科の坂本くんが興味深いレポートをあげています。」

その言葉に全員、坂本のやつ何書いたんだ?と興味津々だった。

「・・・『連日のスクランブル発進や、休憩時間等を無視した訓練のやり方に不満やとまどいがあったが、イスカンダル救出での戦いを経験したあと、生きて全員で地球に戻ることが、こんなにも価値のあることで、なにものにもかえられないほど重要なことだと・・・いまさらながら訓練の意味がわかった気がします』
・・・大きな変化を遂げたと教官たちはみな一様に驚いてましたよ。ははは・・・パンツ1枚で艦内1周とはね!」

古代にしてみれば赤面やら冷や汗でどうにも居心地が悪い。

「まあまあ・・早川くん、そこらへんでやめておこう。」

長官が間に入ってくれた。

「今回の件では彼が殆ど各部署へ対応してくれた、陰の立役者なのだよ。ともかくこれでひとまずの区切りだ。今後は新しい職務にまい進してもらいたい。」

そこでメインスタッフの間からはほおっと硬い空気が取り除かれた。

「あの・・・私は?・・」

とそこで今まで黙っていた雪が声をあげた。彼女にだけは早川参事官より辞令書が未だ渡されていなかった。

「ああ・・そうだった。雪、君はここにいる連中と違って宇宙戦士というカテゴリーの中に含まれていない。民間登用という形でイスカンダルへの航海に始まり、帰還後は防衛軍のスタッフとして勤務してもらっていたが・・・」

「あの・・それは私が認められていないということですか?もし、戦士としての訓練が足りていないのでしたらすぐに訓練にでます!」

雪は宇宙戦士訓練学校を卒業しているわけではない。なので宇宙戦士ではないし、しかも民間登用というカテゴリーの中にいる。雪としては自分が認可されていないのにヤマトに乗り組んでいると言われているのかと思った。

「いやいや、そんなことを言っているのではないよ。今の君ならこれを機にどこか他の民間企業、研究所、付属病院で働くことができるし、私はそのように紹介状を書くこともできる。だが君がそれを望まず、ここにいるメンバーと同じようにこのまま軍属の人間となって働いていくなら・・・」

「イスカンダル航海よりヤマトにて3度の戦いを経験してきた今となっては、私も宇宙戦士の心は持っています。軍で働くことに迷いはありません。」

きっぱりと言い切った。自分はいつでも古代の近くにいたい。ならば道はひとつだ。このままこの仲間たちとともに一緒にいたい。まわりにいた人間も雪の意見に納得した。密航までしてついてくるのだ。なまじっかな男より、よっぽど性根はできている。

「ならば、きみへの辞令だ。」

と言って長官が雪に辞令書を手渡した。雪は受け取り、読み上げた。

「森雪、防衛軍長官秘書を命ず・・・私が?」

長官は穏やかな表情で雪を見ている。

「君ほどの適任者はいないよ。」

「あ・・でも・・・・」

「補足いたしましょう。長官秘書の仕事は、長官のスケジュール管理や来客者への応対などがメインですが、あなたの看護士としての経験で長官の健康管理や来客者への応対は普通にできると思います。
あと長官の外遊先への同行などもあります。その際にはあなたのヤマト戦士としての危機管理意識をもって、ときにはSPとしての能力を求められることがあるかもしれません。
また連邦政府の公式行事、パーティーへの出席もあります。」

「政府の公式行事?!」

「確かに最初は驚くでしょうが、大丈夫です。異星人とも立ちまわれるあなただ。いまさら同じ地球人の政府高官相手などなんともないでしょ?」

それは暗にデスラー総統とのやりとりをほのめかしたもので、このシニカルな物言いには雪も苦笑せざるをえない。

「それにあなたが潤滑油としてここで多くの人に接していくということは、やがてはここにいるみんなが働きやすくなるということでもあります。
それに・・・思い出してください。ヤマトは長官直属の艦です。ヤマト艦長が決まったとしても、あなたの婚約者は艦長代理です。あなたが長官の秘書になるということがどういことか・・・おわかりになりますね?」

自分の目に見えないところでさまざまな目論見がなされていて、空恐ろしい気がした。そんな雪の心を鼓舞するかのように早川がいった。

「宇宙戦士の心を持って、防衛軍に貢献していただきたい。」

その早川の言葉は雪を充分に奮い立たせた。

「わかりました。森雪、長官秘書を勤めます。」

「うむ、頼んだぞ。」

こうして古代やメインスタッフの新たなる任務が決まった。その後真田、山崎は引き続き長官、早川参事官と打ち合わせのため別室へ移動していった。

「なあ古代・・・ちょっと早いけどみんなで飲みにいくか?こうしてみんなで集まることもなかなかないかもしれないからさ。」

と島が提案した。

「そうだな。今後のみんなの新しい任務の成功を祈って行くか!」

いつもの気の置けない仲間たちとの食事や語らい。

「ぼくたちヤマトに乗ってるときは食事も交代だから、こうして一同揃って食べる機会って考えてみればあんまりないですよね?」

「ああ、しかも戦闘や砲等の修理とかやってるとそれどころじゃなくなるしな。」

「こうして地球に揃っていられるのも、これからの任務のことを考えるとなかなかないかもな。」

今日の長官の話によってまずは区切りがつけられた。古代にしてみればようやくはっきりしたということで、気分が開放的になったのか、いつもより早いペースで飲んでいた。大丈夫?と雪がといかけるが、古代の気持ちがわかるだけに今日はおおめにみていた。

(訓練航海に出る前と様子が変わってほっとしてる。あのときあなた死に場所を探してるようだった・・・お兄さんと再会したこともあるかもしれないけど・・・でも・・・前を向いていけるようになったのね。)
そんな古代へ仲間たちがいつもの如く冷やかしを入れている。今回は妊娠騒動があったのでみんなそのことには容赦ないようだった。

「おい、古代!お前いつ雪に手をだしたんだ?」

「式を延期するといっておきながら、あの騒ぎだもんなあ・・・」

「だーかーらー早く結婚式をおこなえばいいんですよ!」

「だあ〜いいだろ?そんなこと・・・俺と雪のことなんか!」

「ダメです!二人のことについては・・・みんなで、亡くなった乗組員の分も含めて!見守る義務があるんですからね。」

ヤマトで出会い、結ばれた二人はやはりヤマトある限りみんなの注目を浴びるのだ。

相原がいった言葉には、確かにあの英雄の丘のみんなも、お前たちのことを気にしてるぞ、といいたかったのだ。そこまでいわれるとさすがの古代や雪も顔を見合わせてみんなの追及をそらすよりほかなかった。

みんなとの食事を終えてそれぞれが帰路につく。二人きりになった古代と雪は指を絡ませて歩く。

地球に戻ってきた。出航前のあの暗澹たる、悲壮な思いは消えていた。

古代にしてみれば処分がなかったということで返って重い十字架を背負ったような気がした。だがそれは生きている限り背負いたいものでもあった。忘れてはならないことだから・・

重さにつぶされそうになったらみんなに声をだせばいいのだ。そう一番身近な雪に伝えればいいのだ。もう彼女は他人じゃないから。

そう考えていた。結婚式のドタキャンからどれほど多くのことを体験し、そしてここまできたのか。雪がいてくれた。いつでもどんなときでも自分に寄り添ってくれていた。
式もあげずにいきなり同棲することに問題がないわけではないが、でも言わずにいられなかった。

「雪・・一緒に暮らさないか?」

「新たなる旅立ち」それはヤマト本体の今後の進むべき道と古代や雪の新しい門出。そしてまた時は流れ始める。



終わり

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