Kobe Standing Bar

 週末のアルバイトにモバイル立ち呑みを始めた。移動立ち呑みである。営業日は金曜日と土曜日。金曜日は6時から、土曜日は昼過ぎから。
 保健所から移動店舗の許可を得て、軽のバンに冷蔵庫や調理スペース、カウンターを造り付けた「店舗」を用意して、Webサイトにメニューや移動スケジュールをアップして、さて開店である。屋号は「Bob’s Stand」。

 「立ち呑み」というからには、店先で飲むことのできる酒屋でなくてはならない。したがって、基本は移動酒屋。バンの後方にはお客さんが自分で取り出すことのできる冷蔵庫があり、その横には缶詰や乾き物、練り物、パック物(ところてんや納豆、玉子豆腐、etc)、カップ物(麺やスープ系)が並ぶ。そこだけ見るとKIOSKの店先のようだ。でもKIOSKと違う点は、中には調理台あり、外にはカウンターがある点である。

 飲み物は缶が中心。ビールにチューハイ、焼酎水割、ウイスキー水割、ワイン、etc、…。缶はつぶしてしまえばぺらぺらになってしまう。ゴミの嵩を増やさないための一工夫。缶でフォローできない日本酒やワイン、そのほかのお酒は、量り売りもある。製氷機や湯煎器もあるので、夏は氷が出せるし、冬は熱燗もいける。もちろんお湯割もOK。

 肴は店頭に並んだ缶詰や乾き物が中心だが、調理台があるので缶詰の食材を元にちょっとした料理ができる。例えば、「コンビーフソテー コーン添え」や「筋肉さんまのトマト煮」、「フランクフルトソーセージ ザワークラウト添え」といった具合である。料理した場合、燃料代だけはもらうことにしている。

 ひとつだけあらかじめ仕込んでおくメニューがある。ミニカレー、〆に食べてもらうカレーである。大の男なら3口ほどで食べられるミニカレー。1杯200円、ほとんどのご常連が頼んでくれる。

 出没する場所は立ち呑みのない地区。ポートアイランドや六甲アイランド、渦森台や白川台、西神ニュータウン。酒屋の立ち呑みが未だ育たない島の中や、かつてはニュータウンだった住宅地である。
 ポートアイランドや六甲アイランドに出没するのは金曜日。勤め帰りのサラリーマンがご常連だ。三宮や住吉に出る前の軽く1杯である。島内に住むご年配もご常連だ。
 渦森台や白川台、西神ニュータウンに出没するのは土曜日。昼過ぎから出没するが、早々と近所のご年配のご常連が、続々と集まってくる。地区のコミュニケーションの場にもなっている。

 バンの回りには10人ほどが立てるカウンターを造り付けた。でも、10人ほどのカウンターなんてすぐに埋まってしまう。
 ご常連の中にはマイカウンターを持参する剛の者も現れた。写生用の折りたたみ式の画板を改良したもので、本来は絵の具や筆を収納するスペースに、皿や箸、各種調味料が収納されていて、広げてストラップを首から下げると、即席の移動カウンターになるという、アイデアグッズである。
 こちらでカウンターの増設をしなくてもご常連の方で増設してくれるという塩梅。

 とある金曜日の営業はこんな感じ。今宵の出没ポイントはポートアイランドの中埠頭駅近くにあるかたつむり広場。出没情報は事前にWebページで告知してある。開店の6時にはすでに人が集まっている。晩夏の頃合なので、みなさんまずはビール。各々が好きな銘柄を冷蔵庫から取り出す。電子マネーを受け付けるようにしたので、お勘定は瞬時に終わる。
 ご常連の1人、手っ取り早い乾き物をつまみつつ、少し落ち着いてきたところでコンビーフ缶とコーン缶とグリンピース缶を選び、「マスター、これソテーして!」。
 コンビーフ缶を開け、湯煎した包丁で5o厚にスライスし、オリーブオイルを多めに張ったフライパンにニンニクを放り込み、軽くソテーする。コンビーフの表面がカリッとしたところで皿に引き上げ、残ったオリーブオイルにコーンとグリンピースを放り込む。ニンニクの香りがついたところでコンビーフの横に添える。赤のコンビーフ、黄のコーン、緑のグリンピース、このご常連なかなかやるなあ!彩りの良い一品が完成した。缶詰代と燃料代で500円ほど。このご常連は3人でシェアしている。ビールを飲み干したあとは白ワインの量り売りを2杯ほど。最初の乾き物、ビール、コンビーフのソテー、ワイン2杯で1人当たり1,000円弱。センベロだ。三宮に出てさらに飲むらしく、〆のミニカレーは取らなかった。

 とある土曜日の営業はこんな感じ。今日の出没ポイントは渦森台の渦森会館前。出没情報は事前にWebページで告知するが、Webを見ないご常連も多いので前の週に張り紙をしておく。午後から渦森会館で地区の集まりがあったようだ。秋の気配が濃厚になってきた夕方なので、日本酒を頼む人が多い。
 ご常連の1人が鯖の水煮缶を取り上げて、「にいちゃん!これで塩焼きできるかな!」。う〜ん、どうやろ?キッチンペーパーに余分な水分を吸わせ、塩を振り、焼き網に乗せてみる。皮目がカリッ、としたところで皿に取り大根おろしを添えて出す。土曜日の営業は仕込みに時間が取れるので、大根おろしや刻みねぎなどの薬味は準備する。塩鯖はけっこう好評のようだ。

 さて、来週の土曜日は立ち呑みが少ない北区を開拓してみようかなぁ。。。


 

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慕撫