斉藤喜美子さん  家庭犬しつけ教室「ふぁーむどぎぃ」・斉藤牧場

家庭犬しつけ教室「ふぁーむどぎぃ」・斉藤牧場 斉藤喜美子さん

動物が教える命の尊さ。 (1/2)

高知大学医学部北側の交差点を北へ、山道を約3km。 南国市白木谷、山のてっぺんに広がる芝の上で、牛たちがのんびり過ごしていました。 ここは、斉藤牧場。 ご家族とともに牧場を営む斉藤喜美子さんは、ここを拠点に家庭犬しつけ教室『ふぁーむどぎぃ』を運営されています。

犬のしつけインストラクター、飼い方教室の講師、ドッグセラピーや動物愛護のボランティア、 さらには6人の子どもたちのお母さんと、たくさんの顔をもつ斉藤さんに、おはなしをお聞きしました。

正しいしつけで犬の気持ちは変わる。

飼い方教室

飼い方教室

現在犬を飼っている方、これから飼う方などを対象に、 高知県と高知市が定期的に開催している、犬の飼い方講習。 小動物管理センターで譲渡を受ける前に受講が義務づけられている飼い犬の飼養前講習会を兼ねています。 斉藤さんは、この講習会の講師のお一人です。

「犬が飼いにくくなる一番の原因は、吠える、噛みつくといった攻撃性です。 その多くは子犬の頃に手荒く扱われていたり、社会化ができていなくて、 極端に怖がりになってしまっているから。習慣づくと直すのが大変です。 相談は無料ですので、できるだけ早くご相談ください」。

犬が好きで、子どものころから家に犬がいたという斉藤さん。 それでも初めて自分で飼ったとき、犬とのつきあい方が分からず困ったそう。

犬と面と向かってつきあうのが初めてで、何も分からないまま飼い始めてしまって、 「犬をしつけるって何をしつけるがやろう」「どうやったらおりこうになるがやろう」って。 でも、犬はどんどん大きくなるし言うこときかなくなるし、これは困ったなと。 そのころ、以前から参加したいと思っていたアニマルセラピー (動物とのふれあいを通じて生活の質を向上することを目的とした治療手法)のボランティアに、 自分の犬を連れて行き始めたんです。 だけど、今考えれば犬が6ヶ月ぐらいで一番やんちゃな時期だったので、言うこときかない、 ボランティアなんてとんでもない状態。 そのときボランティアリーダーに勧められて始めたのが、インストラクターの勉強だったんです。

勉強して、ボランティアで保護とか里親探しとかいろいろやり始めました。 仕事としては、結婚してから始めて14~15年になります。

斉藤さんが行うのは、犬の生態学や学習理論を基にしたトレーニング。 犬種の特徴や犬の性格に合わせた、犬にも飼い主にも負担のないトレーニング法です。

純血種は人間の都合に合わせて遺伝子操作されてることが多くて、 吠える犬種もいるし、追いかけて物を噛む犬種もいる。 それをある程度理解して犬種を選んでほしい。 「吠えちゃだめ」「噛んじゃだめ」と、本能を出してはいけないと教えるトレーニングは、犬からすれば虐待ですよね。 むしろ、それをやって構わない状況をどこかに作ってあげるくらいの余裕がほしい。 人間が操作して作った部分、その犬の性格を理解して飼った方がお互いしんどくない。

飼い主さんから依頼を受けてトレーニングに伺うんですが、行ったその日は犬の通訳さんのような気持ち。 「この犬(この飼い主)、何考えてるか分からない」っていう飼い主と犬がいるわけですよ。 その状態からまずこの子を理解する、理解して接してあげることで、 犬は「この飼い主、いい感じ」って思い始めて、軌道が修正されていく。 最初のボタンの掛け違いをさせないっていうトレーニングなので、 飼い始めてすぐ、何なら飼う前に相談してもらいたいくらい。

「犬と暮らす」という責任。

高知県中央小動物管理センターでは、収容された子犬たちの譲渡を行っています。 譲渡を希望する方には飼い方講習の受講を義務づけ、犬の問題行動や飼養放棄を少なくする努力を続けられています。 斉藤さんはその講習会で講師を務められています。
高知県中央小動物管理センター

高知県中央小動物管理センター

高知県中央小動物管理センターでの譲渡会のようす。 この日は出された10匹すべてに里親が決まり、 「ほっとします。だけど、またすぐに新しい子が入ってくるかもしれない」と職員さん。

殺処分数は年々減少してはいますが、平成25年度は犬434匹・猫2,338匹の尊い命が、 飼い主の無責任な理由などにより奪われました。

譲渡会には柴犬くらいの大きさの子を探して来られる方が多いんですが、 高知の雑種は、成犬で男の子が17~18kg、女の子は14~15kgになるのが標準的。 よく「思ったより大きくなった」と言われます。 ちょっとごつい南方系の犬が入ってるかな。高知は暑いから、耳も大きいし。猟犬の子みたいなのも多い。 猟師さんで山に放しちゃう人がいるんです。 猟犬同士がかけあったりしながら生まれてるから、猟犬の子は猟犬で、ペットにするのが難しい。

怖がりで人慣れしてない子も多いので、まずは人慣れさせるのと、 おりこうでいられるようにある程度しつけてから譲渡会に出します。

今うちでも1頭、チワワとダックスのミックスを預かってるんですよ。 ペットショップでも“チワックス”って名前で結構売られてるんですよね。 あの怖がりの性格にチワワが加わると多分すごく吠える犬になる。 ダックスもちょっと興奮度の高い犬種。 夕べは夜泣きと人を呼ぶのにずっと吠えてたので、こんな状態で渡したらすぐ返されるでしょう。 うちでは、どれだけ吠えても相手にしないし遊ばない。 そのうち吠えてもむだだと分かって、あきらめてます。 静かにおりこうにしてたら遊んであげるということを繰り返してたら、吠えることに意味がなくなる。 子犬のときにやっておかないと、大人になって直すのはすごく大変なんですね。 吠えるのが習慣づいてて、体が覚えて反射的に吠えてる。 この状態から完璧に直すのはなかなか厳しい。

講習会でも、「怖がりになるかもしれない、何か警戒するようになるかもしれないから気をつけてください」って 繰り返しお願いするんですが、それでもときどき、「すごく怖がりになって吠えるようになった」 「ようしつけん」「よう飼わん」ってセンターに連絡があるんです。 そんなときに、センターから連絡があってトレーニングをさせてもらうんですけど、できるだけ早く相談してほしい。

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