「SHOGUN」研究メモ


■主な登場人物
ブラックソーン(安針) イギリスの水先案内人。1600年、日本に漂着。虎長の信任を得て侍に登用され、その勝利の一翼を担う。
吉井虎長 太閤亡きあと筆頭大老を務める。知略・忍耐ともに抜群の武将で、天下統一と恒久平和の樹立を図り、天下分け目の関ヶ原の戦いを目指して全力を集中する。
戸田まり子 逆臣明智の娘で文太郎の妻。ラテン語、ポルトガル語を話す美貌の切支丹。虎長のためにブラックソーンの通訳を務め、恋仲となり死に場所を求める。
石堂和成 虎長の天下統一を阻止しようとする西軍の実力者。
柏木矢部 伊豆の大名で虎長の傘下に入るが危険な野心家。
柏木近江 矢部の甥で、頭の切れる青年武将。
イエズス会 日本で布教活動にあたる切支丹の教団。切支丹大名に影響力をもち、貿易を支配するこの教団の帰趨は天下の形勢に響く。巡察使デラクァ卿をはじめ、日本語に通じたアルヴィト神父らが活躍する。新教徒ブラックソーンは彼らの敵である。
フェリエラ ポルトガルの貿易船“黒船”の艦長で危険な人物。
ロドリゲス 黒船の水先案内人で、ブラックソーンとは敵味方を越えた海の男の友情で結ばれる。
落葉 太閤の側室で、遺児弥右衛門の母。
 太閤の正室。天下を憂え虎長との和を図る。
 虎長の側室。大坂城に人質として暮らす賢い女。
村次 網代村の村長で網元、実は虎長の間者。
戸田広松・文太郎 広松は虎長の一の腹心。その子文太郎は佐倉城主で、直情径行だが文武両道にすぐれ、まり子を深く愛している。
藤子 戸田広松の孫娘。夫と子を失い、虎長の命でブラックソーンの側室となる。
その他、切支丹大名の木山大野播磨、虎長の異父弟で信州の大名坐滝、三島の置屋のおかみ行子、伊豆の遊女で虎長に落籍される、イエズス会の日本人修道士ミカエル浦賀らが人間模様を織りなしていく。

粗筋
  時は慶長5年(1600)の春、天下分け目の関ヶ原の合戦の半年前である。1隻のオランダ船が伊豆の網代村に漂着した。船の上では船長よりも権限がある“水先案内人”は、ジョン・ブラックソーンというイギリス人であった。初めて見る日本は、金銀財宝が山のごとき“ジパング”のはずだったが、事実は大きく違って、厳しいモラルに生きる侍階級が治める、不思議な文化をもつ国であった……
  彼らが最初に会う侍は、伊豆の領主、柏木矢部と、その甥の柏木近江の二人である。矢部は冷酷で短気、政治的野心に燃える戦国大名。近江は若年ながら、智勇兼備で、叔父に登用される。
  運命は彼らを吉井虎長に引き合わせることになる。関八州の領主で、天下を二分する一方の雄である。これに対する西の雄は石堂和成。彼らは共に故太閤の遺志を奉じ、5大老会議なる制度を運営しているが、分裂は必至。石堂派には全キリシタン大名が味方をしている。ブラックソーンを引見した虎長は、スペインとポルトガルが世界の植民地を二分するサラゴサ条約に調印しており、日本はポルトガル領予定地と聞き、世界の動きに目を開かれ、ブラックソーンを庇護しようと考えた。それを通訳した戸田まり子は、逆臣明智仁斎の娘。ポルトガル語とラテン語を解し、歌道に通じ、キリスト教に入信している、才色兼備のうえに侍の心をもった戦国女性である。
  一方、新教徒ブラックソーンの出現は、日明貿易の媒介をして巨利を博してきたポルトガル人にとって脅威となり、イエズス会のアルヴィト神父、巡察使卿デラクァらは頭を痛める……(上巻)

  伊豆においてブラックソーンは日本人の生きざまとものの考え方をまり子から学びとり、少しずつ日本の侍らしくなっていく。まり子は西洋流の“愛”を学び、半ば死んだ自分の心の中の“愛”をブラックソーンに傾ける。
  吉井虎長は伊豆に視察にくる。全国の形勢は日増しに石堂和成に有利となり、切支丹大名の中核である大野木山は石堂と完全な協調関係に入った。虎長の天下になれば、切支丹は迫害されると信じ石堂と結んでいるのだ。全切支丹大名を相手にしては、さすがの虎長をもってしても天下分け目の戦には勝てない。
  ある日、大老会議の命を受けた、虎長の異父弟で信濃の大名である坐滝が伊豆を訪れた。彼は五大老会議の伝言を持ってきたのだ。それは有無を言わせぬもので、虎長が大坂に来て、大老の前で恭順の意を示せ、さもなければ、謀反の心ありと認める、というものだった。
  虎長は一日考え、「大坂に行く」旨の返事をする。それを聞いて坐滝は臆病者と嘲笑し、家臣たちは動揺した。戦わずして軍門に下る主君が信じられなかった。
  しかし、虎長の胸中には、ただ日本国の将来のみがあった。日本国に恒久の平和を樹立する体制をいかにしてつくるか……今は戦う時期ではない、時間をかせぐのだ。
  “縁”という目に見えない糸がわかってきたという安針(ブラックソーン)に虎長は言う。「そうだ。安針、縁を解するのが知恵の始まりだ。次は忍耐だ。忍耐が非常に大事なものだ。強者とは忍耐のできる人間のことだ、安針。忍耐とは七つの感情を抑えることだ。憎しみ、愛欲、喜び、心配、怒り、悲しみ、恐れ、の七つだ。七つの感情に負けなければ、おまえは、忍耐強くなり、ものごとの理をわきまえるようになり、永劫の和に至ることができるのだ」と。(中巻)

  石堂和成の作戦は功を奏した。吉井虎長は苦境に立たされ、江戸にもどって回天の秘策を練る。安針まり子は、三島から江戸まで東海道を旅する。道中、二人の恋は燃えあがる。しかし、それは江戸の一の橋までのことだと、まり子は安針に約束させる。江戸にもどった安針はエラスムス号がみごとに修復されているのに驚く。しかもそれが日本人の手によって修理されたとは、信じ難いことだった。安針は久しぶりに、江戸にいるヴィンクらの船乗り仲間と再開する。しかし、彼らはシラミだらけで、不潔で、臭く、日夜酔いつぶれており、安針にはそれが自分の仲間であり同胞であるとは、とても考えられないことであった。
  安針はみごとに修復されたエラスムス号に乗って黒船を襲い、ポルトガルの資金源を絶ち、それによって木山大野らの切支丹大名の力を弱め、天下の形勢を虎長に有利に導こうと、虎長に提案し、許される。いまや200人の侍を家臣とした彼は、必要な熟練水夫と砲手の獲得のために長崎へ向かおうとする。一方、まり子は、虎長にとって最も不利な条件の一つである桐壺をはじめとする人質を大坂城から救出し、石堂の足もとをすくおうと、死を覚悟して大坂に向かう。安針と柏木矢部は長崎に行く前に大坂に寄るが、まり子、安針、矢部らは石堂によって体よく大坂城に軟禁されてしまう。石堂は勅命をもって虎長を大坂に呼びだすことを考える。虎長が大坂に来れば、石堂の自家薬籠中のものとなるのは必定。
  ここにいたって、いよいよ天下分け目の戦いの機運が熟していく……(下巻)

以上、原作本カバー見返しより転載

資料
ジェームズ・クラベル著「SHOGUN」上・中・下巻(綱淵謙錠=監修 宮川一郎=訳)TBSブリタニカ・刊
W・C・フラナガン著“Days of Shogun”(小林信彦=訳「素晴らしい日本文化」所収)


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