Lavenduraアイピースの始まり  (掲載開始日 2015.04.25)


 望遠鏡で惑星や風景を見るときにいつも『何で天体望遠鏡用のアイピースは歪が多いのだろう???』と感じていました。
当時私はそれほど良いアイピースを所有していた訳ではなかったので尚更だったのかもしれませんがそんな意識は常に持っていました。

 その所有アイピースの中で唯一『これは凄い・・・』と思えるものがTeleVueのRadianでした。

 でもRadianは高価なアイピースでラインナップを揃えるほどお小遣いも多くないし、それに何より18mmよりも長いアイピースがなかったのが不満でした。

 希望の市販製品が無いならば自分で作る・・・、そのような訳で、メカ好き、望遠鏡好き、自作好きの私は8年ほど前からアイピースの設計と製作にちょっと凝っておりました。
 自作アイピースの目標は歪曲収差の全く無いRadianの品質で、それを達成するためのスタートポイントを整像性がそこそこ高いといわれるプローセルに置くことにしました。

 古い光学の教科書を見たり、自分なりに無収差アイピースの論理を考えたりしているうちに気が付いたのです!!

 『現在販売されている2群4枚のプローセルアイピースは後群の補正量が不足している』って・・・。



 上の図はレンズの形式と焦点面の像面湾曲を模式的に示したものですが、通常凸レンズは焦点面もレンズの凸面方向に湾曲しています。
これを修正する最も効果的な方法は次の図のように、『同じレンズ』を『同じ位置』に『反対向きに置く』ことです。



 でもこれって紙の上でのシミュレーションだから可能なことで、実際に元素の塊であるガラスのレンズを同じ場所に2枚置くことはできないわけです。
 そこで次善の策として2枚のレンズの位置を適当に離しておくことになります。



 こうすると左から入った光は左側のレンズで光束を収束されながら右のレンズに入ることになります。もし右のレンズが左のレンズの焦点距離の1/2の位置にあるとすると光束はレンズの1/2の領域に入射します。すると等価的に右のレンズの曲率はレンズ本来の曲率の半分になってしまうことになります・・・。つまり、右のレンズの収差補正量は左のレンズの半分しかないのです!!

 それでは、必要な補正量を確保するには??・・・聡明な皆さんならば幾つかの方法のあることがお分かりだと思います。


 不足する補正量をもう1枚同じ曲率比のレンズを入れて補正すれば・・・ということでLavenduraアイピースを試作したのが7年ほど前でした。

 Lavenduraアイピースはそのような訳で3群のレンズ配置を持つものですが、それぞれの群は個々に色収差を発生させないようにアクロマティック設計としました。(つまり3群6枚のレンズ系です)

 このようにしたら・・・、見かけの視界は45度程度と狭いのですが完全に歪曲収差ゼロ、倍率の色収差もゼロ、コントラスト抜群のアイピースができることがわかりました。 

   資料1 Lavenduraアイピースの始まり (Lavendura63mm/55mm説明資料)
   資料2 Lavenduraアイピースの始まり (Lavendura30mm説明資料)


 試作したアイピースをGigaOptのYさんに見ていただいたところ「なにコレ??・・・歪が全然ないじゃない!!」と言われ、更に、石川町SLFで参加者の皆さんに見ていただいたところ『イイネ!!』という評価たくさんと『欲しい!!』というご要望をいただきました。

 そう言われたら作るしかないよね・・・
 やるのならばとびっきりカッコウのいい物にしなくちゃね・・・
 もちろん性能は絶対条件で・・・

 そんな考えでお付き合いのあったスタークラウドのYさんと相談して製品化することにしました。

 『製品化・・・』、Yさんのお店で取引のある望遠鏡を製作している機械加工メーカーさんに問い合わせてくださったところ金物製作の最低ロットが100個、「うううっ・・・」、相当な初期投資が必要なのです。それでも『欲しい!!』といわれた方のお顔が瞼の前に現れて「つくってよ・・・」って言うんです。

 それならば清水の舞台から飛び降りて・・・、金属筐体とレンズを単体毎に外注製作、組み立ては自分で、販売はGigaOptとスタークラウドのお店で・・・、役割分担が決まり事業がスタートしたのでした。

 光学製品、特に『アイピース=黒色』・・・、新参者でしかも望遠鏡業界のしきたりなどを気にする必要の無いアマチュアの私ですからアイピースだってもっとカラフルに、もっとおしゃれに、もっと多機能に、・・・、そんな思いを込めた大胆な設計をしてみました。




 上の写真は左から製品化したLavendura63mm、Lavendura55mm、Lavendura30mmの3種類です。
 外観は私の好きな植物のラベンダー色の高艶アルマイト処理(硬質アルマイトの厚さは50μmもあるんですよ!!)、シンプルでかつ拡張性のある機能性を確保するために直胴筐体として焦点距離は飾りリングの色で区別するようにしました。

 光学設計上Lavehdura形式のアイピースは組み立ての際のゴミ混入に対する注意が他のアイピースよりも必要になります。そこで微細なごみを防止する環境の確保策としてクリーンブースやクリーンコンプレッサー、帯電防止用イオナイザーなどを購入して万全のゴミ対策、筐体の飾りリングに表示する文字はシルク印刷では安っぽいので貴金属屋さんが使うリング用彫刻機などを購入したり、焦点距離計やアイリリーフ測定装置を自作したり・・・とにかくいろいろな準備をして組み立てを開始しました。

 販売開始をするとご購入されたお客様からNet上にいろいろな評価をいただくようになりました。

 下のURLはスタークラウドさんのLavendura30mmのページでページの後半にお客様から寄せられたお声が掲載されております。
 販売店さんのお話では双眼望遠鏡用として2本ずつご購入されるお客様が多いことと、Ha太陽望遠鏡との相性が極めて高いというご評価をいただくことが多いとのことです。

   http://www.starcloud.jp/SHOP/LD-30.html

 そのような訳でLavenduraシリーズのアイピースはユーザーの皆様に支えられてLotの生産拡大と新規ラインナップの拡大を行おうとしているところです。

 今後のラインナップとして以下のシリーズ構成にな.る計画で、既に試作による光学性能の確認を終え、製品版の設計と製作を進めております。

   
Lavendura63mm  (製品化済み)  第1ロット販売終了(2013.8〜2014.10)、第2ロット販売開始(2015.06〜)
   Lavendura55mm  (製品化済み)  限定10本のみ生産
   Lavendura50mm            第1ロット準備中
   Lavendura40mm            第1ロット準備中

   Lavendura30mm  (製品化済み)  第1ロット販売中(2014.10〜) 残り僅かです
   Lavendura12mm            試作品検証中
   Ha-Lavendura20mm          試作品検証中


 これからもアマチュアとしてのユーザー目線で欲しいものを開発していきたいと考えております。


 下の写真は用意したクリーンブース、彫刻マシン、セオドライト、焦点距離計、旋盤とフライス盤、光学平面などの機器類です。

 レンズ組み立て用のクリーンブースです。

 3軸NCの彫刻マシンです。名称の彫り込みに使います。

  セオドライトです。遠方の視野範囲測定でアイピースの視野角を計算します。

  焦点距離計。自作ですがJIS規格の焦点距離計と同じ測定原理です。

  旋盤とフライス盤。筐体等の加工や試作品製作に使用します。

  22cm(1/20λ)と8cm(1/8λ)のオプティカルフラット、球面計です。





追加掲載日 2015.06.09