《いわゆる健康食品》
(最終改訂:2003.5.31.) トップページに

 ここでは、いわゆる健康食品、栄養補助食品、特定保健用食品、いわゆるハーブ類について
書きます。


〈参考資料〉
・健康食品の位置づけ(http://www.kenkou.metro.tokyo.jp/yakuji/kansi/kensyoku/itizuke.html)
・いわゆる栄養補助食品の取扱いに関する検討会報告書の公表について(http://www1.mhlw.go.jp/houkodou/1203/h0327-3_13.html)


〈いわゆる健康食品〉
 「健康食品」はよく使われる言葉ですが、法律用語から言えば、「健康食品」という用語
はありません。
薬事法で定められた医薬品と食品衛生法で定められた食品があります。このことからいうと医薬
品でないものは食品になります。つまり「健康食品」は医薬品ではないため、食品ということに
なります。

〈栄養補助食品〉:アメリカ合衆国のカテゴリ−
 アメリカ合衆国では1994年に成立した栄養補助食品・健康・教育法という法律に基づき栄養
補助食品は医薬品と食品の中間に位置する新しいカテゴリーの食品とされます。
 ・栄養補助食品:次の条件が満たされていなければなりません
   *ビタミン、ミネラル、ハーブなどを1種類以上含む
   *通常の食品とは違った形状(錠剤やカプセル剤)であること

 ・栄養補助食品の効能・効果:
   *科学的根拠があればアメリカ食品医薬品局(FDA)に通知するだけで一定の内容を記載
    できます
   *この記載内容がFDAによる評価を受けていないことを明示する義務があります
   *製造管理および品質管理にかんする基準(GMP:Good manufacturing practice)
    に適合している必要があります  
       



〈栄養食品〉:日本におけるカテゴリ−
  2001年4月の食品栄養法の改正の中で、栄養食品に対して一定の規格基準、表示基準などを
 定めています。これは「保健機能食品制度」です。従来からある「特定健康用食品」と新設の
 「栄養機能食品」に分けられます。


(1)〈保健機能食品〉

 (1)−1〈特定保健用食品〉(いわゆる「トクホ」)
 これは栄養改善法第12条第1項に基づいた特定用途食品です。この食品は厚生大臣の許可を
受けて、保険の用途、効果の表示が許可されています。1991年9月から開始された制度ですが、
日本独特の制度です。
このような特定保健用食品は2000年では196品目あります。2001年5月現在では251品目に増え
ています。

 「特定保健用食品」として許可を受ける為には学術的裏付けのある資料や安全性に関する資料
などを厚生労働省に提出し、審査を受ける必要があります。このようにして許可された商品には
そ具体的な機能「お腹の調子を整えるのに役立ちます」「血圧が高めの方の食品」と表示する事
が許可されたものなどがあります。(ただし、「血圧が高めの方の食品」とはいっても「高血圧
症の予防薬および治療薬ではありません」との摂取上の注意書きがあります。)

 *2001年4月の「食品衛生法」の改正により従来は食用油やヨーグルトに限られていた審査対
象に、新たにカプセルや錠剤タイプの食品も加えられ、これまで公表していなかった審査の手続
きや基準を公表することになりました。


 (1)−2〈栄養機能食品〉
 2001年4月の食品衛生法の改正に伴い新設されたものです。
これは、ビタミンや一部のミネラルなどの栄養素が規定量含有された錠剤等の栄養食品について、
個別に構成労働省の許可を得なくても「栄養機能食品」という表記およびその栄養素がもたらす
機能を表示できるようになりました。

 現在対象になっている栄養素はビタミン12種類とミネラル2種類です。
  ・ビタミン:ビタミンA
        ビタミンD
        ビタミンE
        ビタミンB群−ビタミンB1
               ビタミンB2
               ナイアシン
               ビタミンB6
               葉酸
               ビタミンB12
               ビオチン
               パントテン酸
        ビタミンC

  ・ミネラル:カルシウム
        鉄

今後その他の栄養素についても安全性に関する科学的データなどを考慮しながら追加されていく
予定とのことです。

 *これらの栄養素は摂りすぎると(過剰摂取)体に悪影響を及ぼす場合もあるため、「1日当
たりの摂取目安量」と同時に「副作用の注意喚起」の表示も義務付けられています。

 **栄養機能食品の栄養素の配合限度量:通常の食事をしたという前提で、栄養機能食品で
                    摂取してもよい1日分の限度量
 
  ・ビタミン:ビタミンA   上限600mcg(2000IU)、下限180mcg(600IU)
        ビタミンD   上限 50mcg(200IU)、 下限0.9mcg(35IU)
        ビタミンE   上限150mg、         下限3mg
        ビタミンB1  上限25mg、          下限0.3mg
        ビタミンB2  上限12mg、          下限0.4mg
        ナイアシン   上限15mg、          下限5mg
        ビタミンB6  上限10mg、          下限0.5mg
        葉酸      上限200mcg、        下限70mcg
        ビタミンB12 上限60mcg、         下限0.8mcg
        ビオチン    上限500mcg、        下限10mcg
        パントテン酸  上限30mg、          下限2mg
        ビタミンC   上限1,000mg、       下限35mg

  ・ミネラル:カルシウム   上限600mg、         下限35mg
        鉄       上限10mg、          下限4mg



(2)〈一般食品〉:この中にいわゆる健康食品、いわゆるハーブ類が含まれます。

〈いわゆるハーブ類〉
 ハーブは本来薬草の意味です。日本においては1998年にハーブ類が規制緩和されました
(厚生省通達「いわゆるハーブ類の取り扱いについて」)。この規制緩和によりセントジョー
ンズワートやイチョウ葉などの7品目が導入されました。
 これらのものは錠剤やカプセル剤などの形状であっても、次の条件が満たされれば食品とな
ります。
  *食品である旨が明示されていること
  *医薬品的な効能・効果を標榜しない
という条件です。これが満たされれば医薬品とはみなされない=食品です。

 ・セントジョーンズワート:これは和名(標準和名)をセイヨウオトギリソウというハーブ
    です。ヨーロッパ・西アジア・北アフリカ近辺を原産とするオトギリソウ科の多年草で
    す。またヨーロッパや南北アメリカ、オーストラリアでは大規模に栽培されています。
    日本の山野に自生するオトギリソウは民間薬に使われることがありますが、セイヨウオ
    トギリソウとは全く別の植物です。
    セイヨウオトギリソウには抗うつ作用、抗ウイルス作用、抗炎症作用があり、ドイツを
    はじめとするヨーロッパでは医薬品として承認されています。
    アメリカ合衆国では栄養補助食品、日本では食品(いわゆるハーブ類)です。
    (セイヨウオトギリソウの有効成分の濃度は当然ですがヨーロッパの医薬品、アメリカ
     合衆国の栄養補助食品、日本の食品では異なっています。)



〈ハーブ〉
*セントジョーンズワート
 これは上に書いたように、1998年の規制緩和により日本でも食品(いわゆるハーブ類)として
流通するようになりました。ヨーロッパでは医薬品として承認されているように薬効があります。
使用上の注意点も含めてセントジョーンズワートについてもう少し詳しく書きます。

***セントジョーンズワート(St. John's Wort)***


(1)名前について
   ・学名:Hypericum perforatum
      学名は世界共通語です。このようにラテン語により命名法に
          基づいて名付けられます。必ずイタリック字体(イタリック
          字体に出来ないときはアンダーラインをつけて)表記します。
          読み方は現在ラテン語は使っている人達はいませんのでそれ
          ぞれの言語の発音によります。(日本語では「ハイぺリクム・
          ペルフォラータム」)

   ・標準和名:セイヨウオトギリソウ
   ・英名:St. John's Wart(セントジョーンズワート)
           キリスト教では6月4日は聖ヨハネ祭日です。この頃になると
         鮮やかな黄色の花をつけ、聖ヨハネ祭日前夜には悪を防ぐため
         に花を集めた習わしがあります。このために聖ヨハネの草(聖
         ヨハネ=St.Johnの草=Wart)と呼ばれます。

 
(2)含有成分について
  セイヨウオトギリソウの葉や花、蕾など植物体地上部には次のような成分が含まれます。
   ・ハイパーシン(Hypercin)
   ・シュードハイパーシン(Pseudohypercin)
   ・ハイパーフォリン(Hyperforin)

(3)ハーブ(薬草)としての歴史
  ・中世のギリシャ・ローマ時代には既にハーブ(薬草)としてつかわれていました。開花期に収穫
  した植物体地上部の油性抽出物は抗炎症、及び癒しのハーブとして評判が高いものでした。

  ・近年ドイツを中心とするヨーロッパやアメリカでは、アルコール/水系の抽出物を乾燥させ、
  錠剤などの剤型にした製品が、不安・うつ状態・睡眠障害の改善目的で飲まれています。

(4)薬効について
  ・セントジョーンズワートの抽出物には抗うつ作用があるといわれています。1996年にイギリスの
    British Medical Journalに報告された研究(Lindeらによる臨床試験のメタ分析)では、セン
  トジョーンズワートは軽症から中程度のうつ病の症状改善に効果があり、しかも今まで用いられて
  いた抗うつ剤よりも副作用が少ないことが示されました。

  ・セントジョーンズワートが軽症から中程度のうつ病に有効であるという科学的根拠は集まりつつ
  ありますが、有効成分や作用機序はまだよく分かっていません。

  ・有効成分の候補は以前はハイパーシン(Hypercin)でしたが、最近はハイパーフォリン
    (Hyperforin)が注目されています。

(5)セントジョーンズワート使用時の注意点
  ・ドイツをはじめとするヨーロッパでは医薬品として承認されているため(Jarsin300など)、
  品質管理は他の医薬品と同じです。日本では「いわゆるハーブ類」(食品)として流通していま
  す。
  ドイツの医薬品Jarsin300と日本で流通しているセントジョーンズワート含有食品の成分を比較す
  ると、日本の製品(7品目:商品名は公表せず)に含まれる成分(1日摂取量)はJarsin300の数
  %から40%以下(ハイパーフォーリンの比較)と全体に少なく、また製品ごとのばらつきが多い
  と報告されています。


  ・セイヨウオトギリソウと名前が似ていて紛らわしいオトギリソウも
   「健康食品」として販売されていますが、ハイパーフォーリンは含ま
    れていません。オトギリソウは右の草です。




  ・セイヨウオトギリソウを大量に食べた家畜が日光に当たって皮膚症状
    を起こしたり、死亡することがまれに起こります。オーストラリアでは
    セイヨウオトギリソウ(セントジョーンズワート)は有害植物とみなさ
    れています。

  ・セイヨウオトギリソウ抽出物を摂取して皮膚症状を起こした症例や神
    経障害を起こした症例が報告されています。


 *これまで見てきたようにセントジョンズワートには抗うつ作用が見られますが、そのほかにも抗炎
 症作用、抗ウイルス作用、血行改善効果があるといわれています。日本においては食品のためこれら
 の効果についての充分な根拠が示されにくい状況にあるといえます。
 欧米人とは遺伝的特性や食生活、生活習慣が異なる日本人にセントジョンズワートが有効か、安全か、
 といったことについて科学的根拠を集めていく事が今後望まれます。

(この項は志村:「セントジョーンズワートと抗うつ作用」、薬局、52巻2号、1083−1091、2001
  を参考にしました。)


〈注意:病気で治療を受けている人がセントジョーンズワートを服用するとき〉
  現在病気のため薬物療法を受けている人がセントジョーンズワートを含む食品を取る場合、
 医師または薬剤師に相談すべきです。
 ・抗HIV薬
 ・抗血液凝固薬:ワーファリン錠など
 ・免疫抑制薬:サンディミュンカプセルなど
 ・経口避妊薬
 ・強心薬:ジゴシン錠など
 ・気管支拡張薬:テオドール錠など
 ・抗てんかん薬:アレビアチン細粒など
 ・抗不整脈薬:リスモダンなど
 これらの医薬品とセントジョーンズワート含有食品の併用は医薬品の働きが悪くなる(本来の効
き目が期待できない)事が報告されています。治療している病気の悪化の可能性もあり、十分な注
意が必要です。