《アレルギー/免疫》 (最終改訂:2004.6.6.)
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 ここでは、アレルギーと免疫について書きます。
アレルギーをよく理解するためには免疫について充分な知識を得ることが必要だと思います。

(1)免疫とは
(2)抗原を認識する
(3)抗体:体液性免疫
(4)T細胞:細胞性免疫
(5)アレルギー
(6)アトピー性皮膚炎
(7)金属アレルギー
(8)花粉症

参考資料は次の書籍です。
*"Molecular Biology of THE CELL"3rd ed.,Garland,1994
*『歯科と金属アレルギー』デンタルダイヤモンド、1993年
*『内科学書、改訂第5版』中山書店、1999年
*『分子細胞生物学』第3版(原著1995年)、東京化学同人、1997年



(1)〈免疫とは〉
 もともと「免疫」とは、疫病を(=「疫」)まぬがれる(=「免」)ということです。
伝染病のような疫病から体を守るためにある大切な働きです。
 ところが免疫は単に疫病から体を守るだけではなく、私達の周りに無数にある病原体や
様々な有害物質から体を守ることが分かってきました。私達の体を作っている皮膚や内蔵、
骨などその全てを自分本来のもの、すなわち「自己」と認め、自分以外の物質を「非自己」
として区別するという「自己認識機構」が免疫の本質です。

 私達の周りには無数の病原体や様々な物質が存在します。これら病原体や物質は常に人
体に入ってくる可能性を持っています。これら病原体や物質は人間の体にとって自分では
ないもの=「非自己」です。免疫は「非自己」を認識し排除する事によって生体の恒常性
を保つ機構です。このように生体の恒常性の維持の為に極めて重要な働きをしている免疫
機能が過剰に働いたり機能の破綻をきたす場合があります。このような時、アレルギー疾
患や自己免疫疾患が起こります。

 免疫機構には大きく分けて2つの反応系があります。自然免疫系と獲得免疫系です。

・自然免疫系は無脊椎動物から人間を含む脊椎動物まで全ての動物に備わっている原始的な
免疫系です。私達の体を外敵から守る為に最初に働き「非自己」を排除して体を防御する
ものです。ここで働くのは大食細胞(マクロファージ)や樹状細胞と呼ばれている細胞で
す。これらの細胞は私達の体(=「自己」)以外のものは全て異物(=「非自己」)とし
て認識し排除しようとします。いわば外敵を食べてしまって体に害を及ぼさないようにす
る細胞と言えます。

・獲得免疫系は脊椎動物にだけ存在する高等な免疫系です。獲得免疫系で働くのはリンパ
球という細胞です。このリンパ球が外敵とみなすのは自然免疫系の場合と異なり私達の体
以外の物質そのものではなく体の中で処理され抗原と呼ばれる物質になったものです。


(2)〈抗原を認識する〉
 獲得免疫系では抗原を外敵として認識すると上の項で書きました。このことについて
もう少し詳しく見ていきましょう。
 リンパ球は白血球の仲間です。このリンパ球には2種類あります。B細胞とT細胞です。

―B細胞―
 B細胞は血液中を流れていますが、その状態では休止状態で積極的に活動していません。
ところが抗原に出会うと成熟(=分化)したB細胞になります。このような状態のB細胞は
形質細胞と呼ばれます。形質細胞になると抗体を大量に作り出す事が出来ます。
 B細胞が抗原に出会ったときに次のようなことが起こります。B細胞の表面には免疫グロ
ブリンレセプターという受容体がありますが、この受容体と抗原が結合します。受容体と
抗原が結合することが抗原を認識するということです。抗原を認識したB細胞は分化して形
質細胞になり充分な量の抗体が作り出され、この抗体がさらにB細胞に結合していない抗原
と結合して体に害を及ぼさないように働きます。

 これらの反応において、B細胞は一つの抗原しか認識できず、形質細胞が作る抗体も一つ
の抗原にしか対応できません。人体には2兆個のリンパ球があるといわれていますが、抗原
となりうるものは多種多様で細菌、寄生虫、花粉、化学物質、薬剤、食品など膨大な数に上
ります。B細胞は一つの抗原しか認識できないということは総数で2兆個という数があって
も抗原の数を上回っているとは言えません。ところが細胞の表面にある受容体には多様性と
いう性質があります(変幻自在といえるでしょう)。このことによって、いかなる外来抗原
に対しても対応する事ができる受容体を作る事ができ、ひいてはそれに対応した抗体も作る
ことができます。

―T細胞―
 抗原を認識するもう一つのリンパ球がT細胞です。T細胞の表面にもB細胞と同じように
受容体(T細胞抗原レセプター)があります。この受容体により抗原を認識しますがB細胞
の場合と大きく異なる点があります。B細胞は遊離した(血液、正確には血清に溶けた)抗
原を「非自己」として認識する事ができるほか細胞膜に結合した抗原も認識します。それに
対しT細胞では処理を受けた抗原(抗原提示細胞という細胞の膜の上にある抗原)しか認識
できません。また、B細胞は形質細胞に分化し抗体を産生しますがT細胞は抗体を作らずに
T細胞が直接免疫反応に関与します。

* B細胞による免疫反応は血流中の抗体が抗原を認識し抗原と結合(特定の抗原とそれに
対応する抗体という特異性反応)することにより起こる免疫反応なので「体液性免疫」と呼
ばれています。一方T細胞はT細胞が直接関与する免疫反応なので「細胞性免疫」と呼ばれ
ています。しかし、これら両反応は全く別の反応ではなく相互に密接に関連している反応で
あることが分かってきました。


この図はB細胞、T細胞が関係する免疫反応の模式図です。

上から2つ目のピンク色の細胞がB細胞です。Y字型の青い
ものはB細胞の表面にある免疫グロブリンレセプターという
受容体です。(このB細胞は休止状態にあります。)

細菌などの異物が抗原として侵入するとその抗原に対応し
た受容体のあるB細胞が増えます。図では上から3番目のピ
ンク色の細胞が2つ並んでいるものです。

特定の抗原に対応した受容体を持つB細胞だけが(=抗原
特異性B細胞)分裂して増えていき、休止状態にあったB細
胞は活動するB細胞になります。このようなB細胞を形質細
胞と言います。図では最下段のピンク色の細胞です。形質細
胞は抗原に対応した抗体を産生し、抗原と反応します。


図の一番上には青い細胞(マクロファージ)とオレンジ色の
細胞(ヘルパーT細胞)が描かれています。
先にT細胞はB細胞と同じように抗原を認識できる受容体が
あると書きました。図ではオレンジ色の細胞についているピ
ンク色で表示してあります。この受容体は抗原をそのままで
は認識できず、マクロファージ(大食細胞)のような細胞が
一旦、抗原を処理しT細胞が抗原として認識できるようにす
る前処理が必要です。このように抗原処理をするマクロ
ファージに代表される細胞を抗原提示細胞と言います。

図ではヘルパーT細胞という数種類あるT細胞の一つを示し
てあります。ヘルパーT細胞は抗原を認識して活性化される
と図に書いてあるようにサイトカインという化学物質を出し
B細胞に影響を与えます。これは先に書いたように相互に密
接に関係しているということです。
ちなみにT細胞にはヘルパーT細胞の他に、エフェクターT細胞、キラーT細胞、サプレッサーT細胞、
ナチュラル・キラー細胞もあります。これらについては後で書きます。

(この図は、梅本俊夫:内毒素、免疫応答を調節する菌体成分、歯界展望88:633-642から一部改変
して引用しました。)

(3)〈抗体:体液性免疫〉
 抗体には2つの型があります。B細胞の表面(細胞膜)に結合している「膜結合型」と
B細胞が分化成熟して形質細胞になり血液中に放出された「血中遊離型」です。
「膜結合型」の抗体は上の〈抗原を認識する〉の項で記述したB細胞表面にある受容体そ
のものです。
「血中遊離型」の抗体が免疫グロブリンです。免疫(Immuno)、グロブリン(gulobulin)
で略してIgと書きます。免疫グロブリンは5つのクラスに分ける事ができ、IgG、IgA、
IgM、IgE、IgDという名前がついています。

IgG
 血液中の主要な免疫グロブリンです。
IgMは感染初期に産生されますが、引き続きIgGが産生されてきます。また細菌などの抗
原が再び侵入した時には感染当初から大量の抗体が作られますが、その時の主要部分をな
しています(二次抗体)。
 血液中の基準濃度は8-12mg/mlです。

IgM
 この免疫グロブリンは感染初期に産生される抗体の主要なものです。
 血液中の基準濃度は0.5ー2mg/mlです。

IgA
 IgAは血液中にも存在しますが唾液、乳汁、性器分泌液、気管支分泌液などの分泌液中
に存在します。このグロブリンは体の局所の免疫機構の中心になっています。
 血液中の基準濃度は1.5ー4mg/mlです。

IgD
 IgDは血液中に微量しか存在しません。未だにIgDの機能についてはよく分かっていませ
ん。
 血液中の基準濃度は0.003ー0.4mg/mlです。

IgE
 IgDよりもさらに微量しか血液中に存在しません。ダニや寄生虫から体を守っていると
考えられています。
 血液中の基準濃度は0.0001ー0.007mg/mlです。
 喘息、鼻炎、アナフィラキシ―・ショック、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎などアレルギー性
疾患の多くに関係する免疫グロブリンです。
(このことについては5のアレルギーの項目で書きます。)

抗体の生物活性
 抗体の主な働きには
   *中和作用:毒素を中和します
   *オプソニン効果:抗原と結合する事により、食細胞に食べられやすくする
   *溶菌現象:細菌に結合して溶かす
   *凝集作用
などがあります。これらの抗体の働きは5つのクラス全てがもっているわけではありません。


(4)〈T細胞:細胞性免疫〉
 体液性免疫では抗原を認識し生体から排除する機能はB細胞(正確には分化した形質細胞)
が産生する免疫グロブリンという抗体がにないますが、細胞性免疫ではT細胞自体が直接働
きます。

ヘルパーT細胞
 マクロファージに代表される抗原提示細胞により抗原提示を受けて、抗原認識をしたT細
胞は活性化されます。このT細胞はヘルパーT細胞です。ヘルパーT細胞はB細胞に働きか
けB細胞の活性化を増強します。
ヘルパーT細胞はサイトカインと呼ばれる物質を産生し免疫機構に寄与します。免疫機構
においてヘルパー(=介助)するT細胞です。

エフェクターT細胞
 リンフォカインという名前の物質を作って放出します。リンフォカインは大食細胞(マク
ロファージ)のもっている食作用(異物を食べる)を促進する物質です。


キラーT細胞
 細胞傷害性T細胞とも呼ばれるT細胞の一種です。ウイルス抗原などの細胞表面の抗原を
認識し、その細胞=標的細胞を破壊します。
標的になった細胞からみるとまさに「キラー」(=殺し屋)ですが、私達の体を守る上から
は「キラー」という名前とはうらはらに頼りになる細胞です。

サプレッサーT細胞
 抑制性T細胞とも呼ばれます。抗原刺激によって活性化されたT細胞やB細胞の種々の反
応を抑制します。免疫機構が過度にならないようにするいわば「火消し役」のT細胞です。

ナチュラル・キラー細胞
 この細胞は常に血液のなかを流れています。上に書いたキラーT細胞ができるまでには
時間がかかるため、それまでの間、感染を受けた細胞を見つけるとその細胞を破壊します。
体の中を常にパトロールして、外敵から守る役目をしている細胞といえます。
   *この細胞は正常な細胞が癌化して異常細胞になった場合にも働きます。
 


(5)〈アレルギー〉
 ここまで見てきたように免疫反応は生体にとって有害な病原体などの非自己を排除する為
に大切な反応です。しかし、この反応が過度に起こってしまうと生体にとって有害なものだ
けではなく正常な組織の傷害を引き起こす事があります。これがアレルギーです。免疫機構
からこのアレルギー反応は5つに分類されます。I型〜V型です。これについて順に書いて
いきます。

I型アレルギー:アナフィラキシー型(即時型)アレルギー

 即時型のアレルギーの一種で、抗原と接触後、短時間でおこる反応です。通常抗原に接触
した後15−20分で症状は最高になり、1時間程度で症状は消えます。

 この反応では抗原(花粉やハウスダストなど)が侵入後その抗原に対応したIgE(抗原特
異的IgE)がつくられます。次にこのIgEが好塩基球や肥満細胞と反応します。
 好塩基球は白血球の一種で血液中にあります。肥満細胞(肥満といっても太っている細胞
という意味ではありません)は組織中にあります。これら2種類の細胞表面にある受容体に
IgEが結合し、さらに細胞に結合したIgEに再び抗原が結合して反応することにより、好塩
基球や肥満細胞から化学伝達物質が放出されます。
ヒスタミンやロイコトリエンなどですが、この化学伝達物質は血管拡張、血管透過性亢進、
粘液分泌亢進、平滑筋収縮などを引き起こします。
・血管拡張により血液の流れが多くなり赤くみえます。
・血管透過性は血管のなかを流れる血液の成分が血管の外に出てきやすくなることで、むくみ
(浮腫)がおこります。
・平滑筋収縮は平滑筋(人間の体にある筋肉の一種で自分の意志では動かす事が出来ません)
が縮むことですが、気管で起こると喘息発作が出ます。


 I型アレルギーが関わる疾患にはアトピー性疾患があります。
もともと「アトピー」とは「不思議」という意味のギリシャ語からきた言葉で、多くの人
には何も影響のない物質が、一部の人にのみレアギンという物質(現在ではこれがIgEと分
かっています)を作り出すという現象のことです。このような体質の事を「アトピー体質」
と呼びます。
 アトピー性疾患には
    *アトピー性気管支喘息
    *通年性鼻アレルギー(アレルギー性鼻炎)
    *花粉症
    *アナフィラキシー
    *一部の食事型アレルギー
    *一部の蕁麻疹
    *アトピー性皮膚炎
などが含まれます。
このなかで純粋にI型アレルギーといえるのはアナフィラキシー、一部の食事型アレルギー、
一部の蕁麻疹だけで、ほかの疾患では抗原に接触後短時間で現れる症状(鼻水、クシャミ
など)はI型アレルギーによるものですが、それに続く長引く症状は他の型のアレルギーの
関わりが大きいものです。

 *アトピー性皮膚炎ではIgEが高くなっています。またアトピー性気管支喘息や鼻アレルギー
を合併する事が多いのですが、I型アレルギーだけでは説明できない慢性炎症です。

II型アレルギー:細胞毒性型(細胞融解型)アレルギー

 自分自身の細胞の表面=細胞膜にたいする抗体が出来てしまい、これに血液中に存在する
補体というたんぱく質も結合します。その為に細胞が壊される(融解)というアレルギーの
型です。

 赤血球、白血球、血小板などの血液細胞や組織細胞の対してIgGやIgM抗体が作られます。
これらの細胞は自分自身の細胞なので本来は抗体は作られません。それが免疫機構の異常に
より抗体を作ってしまうことで病気が起こります。
 代表的な病気に貧血の一種である自己免疫性溶血性貧血があります。この貧血は自分の赤
血球にたいして抗体が出来てしまい、さらに補体も作用し赤血球が溶けます。
血小板にたいして抗体ができることにより起こる病気が血小板減少性紫斑病です。


III型アレルギー:免疫複合型アレルギー

 体の中で可溶性抗原にIgG、IgM抗体が結合して大きな塊をつくります。これを免疫
複合体と呼びます。免疫複合体の量が少なければ大食細胞により処理され問題は起こり
ませんが、多くなりすぎると処理しきれずに腎臓や血管、関節に沈着して、組織傷害を
起こします。このようなアレルギーがIII型アレルギーです。

 代表的な病気に腎炎(糸球体腎炎)、血清病のときの腎炎・関節炎があります。

IV型アレルギー:遅延型(細胞媒介性)アレルギー

 このアレルギーは抗原とT細胞が反応しすることによりT細胞から様々な化学物質
(リンホカインと言います)が出され、炎症反応が起こります。
このとき
単球という白血球の一種や大食細胞(マクロファージ)が反応に関わります。

 代表的なものにツベルクリン反応があります。また臓器移植のときに起こる拒絶反応の
大部分もIV型アレルギーです。

V型アレルギー:抗レセプター型アレルギー

 このタイプのアレルギーは以前はII型アレルギーに分類されていましたが、独立した
タイプとして分けられました。
 自己の細胞に対する抗体が作られ、細胞(組織)の機能が異常に進んだり(異常亢進)
異常に悪くなったり(異常低下)するタイプのアレルギーです。

 異常亢進するものはバセドウ病という甲状腺の働きが進みすぎる病気があります。
甲状腺機能亢進症という病態です。甲状腺ホルモンを出す為の指令は下垂体が出していま
す(甲状腺刺激ホルモン)。正常では甲状腺刺激ホルモンを甲状腺にある受容体が感知し
て甲状腺ホルモンが分泌されます。この受容体に対する抗体が出来てしまい、受容体に結
合するので下垂体から指令が無くても常に甲状腺からホルモンを分泌させます。

 異常低下するものに重症筋無力症があります。この病気では神経が筋肉を収縮させよう
と指令を出すのですが(アセチルコリンという物質を放出することにより)、筋肉はこの
指令を感知する事が出来ないため筋肉収縮が起こりません。筋肉にある指令を感知する部
分(アセチルコリン受容体と言います)に対する抗体が出来てしまい、この受容体を破壊
するためです。


(6)〈アトピー性皮膚炎〉
〈アトピー性皮膚炎の概念〉
 アトピー性皮膚炎は増悪・寛解(病状が悪くなったり良くなったりすること)を繰り返す
かゆみのある湿疹を主な病変とする疾患です。
 多くの場合、アトピー素因を持っています。
   *アトピー素因:
    ・気管支喘息、アレルギー性鼻炎/結膜炎、アトピー性皮膚炎のうち
      いずれかまたは複数の病気が家族にみられたり、自分自身が過去
      にかかったことがある。
    ・IgE抗体を作りやすい。

 アトピー性皮膚炎が発症したり、悪化する場合
   ・アレルギーではない(非アレルギー的)皮膚の要因
      乾燥肌、かゆみを感じるレベル(閾値)の低下、感染を起こしやすい
   ・アレルギー的要因
      ダニやハウスダストなどの環境因子や食物に対しIgE抗体が作られる
   ・症状を悪化させる憎悪要因
      汗をかく、気候の変化、精神的ストレス
が、お互いに関与しあっています。

 アトピー性皮膚炎の最も重要な症状はかゆみです。このかゆみは発作的に激烈になるため
かきむしってしまいます。かきむしる為に皮疹はさらに悪化します。するとかゆみは増し、
またかきむしるという悪循環が繰り返されます。
 皮疹はおおむね左右対側性にでることが特徴です。
   (*左右対側性:発疹が大体左右の同じような場所にできることです。)

〈アトピー性皮膚炎の病態〉
 バリアとしての皮膚の機能異常を中心とした非アレルギー要因と皮膚におけるアレルギー
要因による炎症反応という2つの側面を持ちます。

・非アレルギー要因:皮膚バリア機能異常
  皮膚の角質層にある脂質のセラミドが少なくなっています。そのため皮膚に小さな
  傷が出来やすく、その為に外界から様々な抗原物質が傷を通って入りやすくなります。

・アレルギー要因:アレルギー炎症
  アトピー性皮膚炎の皮疹形成には、初期においては抗原が侵入して抗原特異的ヘル
  パーT細胞が引き寄せられ化学物質(インターロイキン4、5)がつくられます。
  初期の反応ののち、この化学物質により好酸球や大食細胞が引き寄せられ別の化学物質
  (インターロイキン12)がつくられます。これがさらにリンパ球(ヘルパーT細胞)
  を引寄せます。このリンパ球が化学物質(インターフェロンーガンマ)をつくりだし、
  皮膚に慢性湿疹を作ります。

(*これは寺尾、古江:アトピー性皮膚炎、内科、87(3):439-442,2001を参考にしました。)

*********************************************************************************************  

(これは宮地:「アトピー性皮膚炎制御へのアプローチ」、先端医学社、1994年からの引用です)

アトピー性皮膚炎の免疫状態を模式的に表した図です。
*ランゲルハンス細胞は皮膚(表皮)にある抗原提示細胞
*Th1、Th2はヘルパーT細胞の一種です。
 アトピー性皮膚炎の病態にはT細胞を中心とした免疫異常と皮膚の角質層の機能異常
が関係すると言われています。
T細胞は産生する化学物質(サイトカイン)によってTh1細胞とTh2細胞に分けられます。
Th1細胞はインターフェロンーガンマ(IFN-γ)を産生します。
Th2細胞はインターロイキン4(IL-4)を産生します。
Th1細胞とTh2細胞のバランスの異常がアトピー性皮膚炎の病態に重要と考えられて
います。
 アトピー性皮膚炎の急性病変部のT細胞はIL-4、IL-5を中心に産生します。このイン
ターロイキンは好酸球を増やす事、IgEを高めることから急性病変部ではTh2細胞が優位
と考えられています。慢性期にはTh1細胞が関係することも報告されています。
 さらに皮膚機能に関しては、アトピー性皮膚炎の皮膚では角質層内の皮脂成分が減少し、
角質のセラミドが低下しています。このことによって皮膚は乾燥し、皮膚から抗原が入って
来やすくなっています。
*********************************************************************************************  
〈アトピー性皮膚炎の治療〉
 アトピー性皮膚炎の治療方針は「アトピー性皮膚炎治療ガイドライン1999」にまとめ
られています。基本となるのは次のような治療です。

*皮膚炎に対する治療:ステロイド外用薬を中心とした外用療法
*皮膚のかゆみに対する治療:内服薬療法
*皮膚の乾燥に対する治療:スキンケア
*環境にたいする治療:日常生活上における原因、悪化因子の除去対策

これらを組み合わせた治療を行いますが、大切な事は患者に対して治療に関する情報を
充分に伝え医者と患者の間に良好なパートナーシップを築くこととされています。

(1)ステロイド外用薬による外用療法
 ステロイド外用薬は細胞のサイトカイン産生の抑制、線維芽細胞の種々の免疫反応の抑制
という働きを持っています。ステロイド外用薬は働きの強さによって5段階のランクに分け
られています。
  ・I群:ストロンゲスト
      クロベタゾール・プロピオネイトなど
  ・II群:ベリーストロング
      ベタメタゾン・ジプロピオネイトなど
  ・III群:ストロング
      デキサメタゾン・バレレイトなど
  ・IV群:マイルド
      トリアムシノロン・アセトネイドなど
  ・V群:ウィーク
      プレドニゾロンなど

 重症度評価を行い、その上で適切な治療薬を選択する事が必要です。

(2)抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬
 アトピー性皮膚炎では強いかゆみを生じ、それをかきむしることで皮膚の症状が悪化する
という悪循環がおこることが多いと言われています。必要に応じ抗ヒスタミン薬、抗アレル
ギー薬を飲みます。
抗ヒスタミン薬はヒスタミンの受容体に結合する薬でヒスタミンが結合する事を妨げます。
抗アレルギー薬はアレルギー反応で産生する化学物質の産生を抑制する働きがあります。

(3)スキンケア
 アトピー性皮膚炎では皮膚の水分蒸散量が増える、角質層の水分保持能力がへるなど
皮膚のバリア機能が低下します。
皮膚を清潔にする、皮膚の保湿をはかるということを目的にスキンケアが有効です。
保湿薬としては角質タンパクの水結合を増強する尿素含有軟膏、水分吸収を促進する
へパリン類似物質などが用いられます。
スキンケアとしては入浴、シャワーにより皮膚の汚れをおとす、室内を清潔にし、適温・
適湿を保つ、界面活性剤を含まない洗剤を使う、などがあります。

(4)原因・悪化因子への対策
 アトピー性皮膚炎の誘発・増悪因子として
   ・ダニ抗原、細菌・真菌、食物抗原などの外来抗原
   ・環境因子
   ・生体因子:遺伝子因子、皮膚機能異常、ストレス、発汗
などがあります。
これらの因子を除去することが有効です。

(中村、玉置:アトピー性皮膚炎、内科、87:502-506,2001を参考にしました)


(7)〈金属アレルギー〉
 分子量の小さい(1000以下)化学物質が皮膚の表皮や粘膜の上皮にあるたんぱく質と結合して、
体には本来ない表皮構造のたんぱく質ができるとこれを「非自己」と認識し、IV型アレルギーを生
じることがあります。
このようにそれ自体では抗原にはならないものの他の物質と結合する事により抗原となる化学物質
をハプテンと呼びます。
金属アレルギーでは金属がハプテンになりアレルギー反応を引き起こす事があります。

 金属は電子を失っていない(=イオン化していない)場合にはハプテンになりません。ところが
イオン化した金属はハプテンになる事が出来ます。全ての金属がハプテンになるわけではなく、
従って全ての金属が金属アレルギーを引き起こすわけではありません。

<ハプテンにならない金属>
 電子を1個、または3個というように奇数個失ってイオン化する金属は通常はハプテンにはなりま
せん。これに該当する金属は、
ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、銀イオン(Ag+)、アルミニウムイオン(Al+++)、
鉄イオン(Fe+++)、金イオン(Au+++)などです。

<ハプテンになる金属>
 電子を2個、4個、6個というように偶数個失ってイオン化した金属はハプテンになります。
金属ごとにハプテンになりやすいものなりずらいものがあります。
・ハプテンになりやすい金属
  ニッケルイオン(Ni++)、水銀イオン(Hg++)、パラジウムイオン(Pd++)、クロムイオン(Cr++++++)、
  コバルトイオン(Co++)

・ハプテンになりずらいもの
  銅イオン(Cu++)、亜鉛イオン(Zn++)、マンガンイオン(Mn++)、スズイオン(Sn++++)、
  カドミウムイオン(Cd++)

 イオン化した金属がたんぱく質(キャリアーたんぱく)と結合して抗原になります。イオン化
していない金属は「キャリアーたんぱく」と結合できません。

 金属アレルギーの症状は
  *接触性皮膚炎
  *全身性接触性皮膚炎
  *特殊な病態として扁平苔癬、しょうせきのうほう症
などがあります。
原因となる金属は上で「ハプテンになりやすいもの」としてあげたニッケル(Ni)、クロム(Cr)、
コバルト(Co)、水銀(Hg)の頻度が高いのですが、銅(Cu)、スズ(Zn)による金属アレルギーもみられます。

*金(Au)による金属アレルギーについて
 金(Au)は電子を3個失って金イオン(Au+++)になりハプテンにならないと書きました。実際には
稀ですが金による金属アレルギーが起こります。この説明として、金は水素(H)と結合して4個
の電子を失った状態のイオン(HAu++++)としてハプテンになるということが指摘されています。

〈必須元素とアレルギー〉
 生体に必要な微量元素として金属元素があります。銅(Cu)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、コバルト(Co)、
モリブデン(Mo)、クロム(Cr)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)などです。
これら必須金属元素は金属アレルギーの原因となりますが、必須なのは極微量ですので、食品から摂取
する分には問題ありません。アレルギーを引き起こす為にはある程度の金属量が必要で、必須性の
5−10倍(ないし100倍)と言われています。

〈金属アレルギーの治療法〉
 原因となる金属が分かった場合にはその金属との接触を避ける事が肝心です。その金属を含む
装飾品、調理器具、医療器具を取り除く事で治る事が多いのですが、必要に応じ特定の金属を含ま
ない食事療法を行う事もあります。またアレルギー症状を緩和する為に薬物療法を併用する事もあ
ります。
これらの治療は専門医、栄養士などの指導のもと行う必要があり、自己流は行うべきではありません。


(8)〈花粉症〉

 日本アレルギー学会は1993年にアレルギー疾患の治療ガイドラインを編集しました。この治療ガイドラインは成人喘息、小児気管支喘息、鼻アレルギー(花粉症を含む)、アトピー性皮膚炎を一冊にまとめて発行したものです。この書籍の巻頭言に『この冊子は第一線の診療医師の参考として提示されるもの』と臨床医の参考のために編集したものであることを記述しています。また『一つの図式のもとで画一的におこなわれべきではない』と臨床医に注意を喚起しています。
 このガイドラインはその後改訂され、改訂第2版では『学会認定医、鼻アレルギーを専門としない実地医家までを広く対象とする』と記述され、ガイドラインを広く臨床医に設定しています。
 改訂第3版は1999年に、最新版は2002年9月に「アレルギー性鼻炎診療ガイドライン2002年版」として出版されています。
(アレルギー性鼻炎診療ガイドライン委員会:アレルギー性鼻炎診療ガイドライン:通年性鼻炎と花粉症、ライフサイエンス・メディカ、東京、2002)

 以下に、花粉症について発症機序、診断、症状、治療について書きます。

A.はじめに
B.発症機序
C.診断
D.症状
E.治療


〈参考文献〉
特集:増え続ける花粉症への対応、内科、91巻2号、2003.2.
今野、他:花粉症の発症機序と診断、内科、91巻2号、p205-214、2003.2.
吉田:花粉症の症状-鼻症状、内科、91巻2号、p255-260、2003.2.
森山:鼻・副鼻腔外来(耳鼻咽喉科外来シリーズ1)、メジカルビュー社、1999
A.はじめに
 花粉症は花粉を抗原とするアレルギー性鼻炎です。通常、花粉によるアレルギー性結膜炎を伴っています。

 鼻は空気の通り道である気道の最先端に位置します。私たちが呼吸する場合、鼻から空気を吸い込み、のど(咽頭)、喉頭、気管、肺と空気は入っていきます。これが吸気の通り道です。逆に呼気では肺から気管と逆方向に空気は流れます。 
 *呼吸は鼻を使ってするもので、口で呼吸する事は通常は良くない習癖(口呼吸習癖)とされます。

 空気中には様々な物質(異物や刺激物)があるため、気道の最前線にある鼻にはそれらの物質から生体を守る為に様々な防御機構が備わっています。

(1)鼻の中(鼻腔内)に吸入された刺激物は鼻の粘膜(鼻粘膜)を刺激してくしゃみを引き起こします。また反射的に鼻水が出てきます(鼻汁分泌)。これらによって刺激物を吹き飛ばしたり洗い流したりします。

(2)鼻粘膜にある血管が反射的に広がり(血管拡張)、さらに血管の壁が血液中の成分を通過させやくし(血管透過性亢進)、鼻粘膜は腫脹します。このことにより鼻の中の空気の通り道は狭くなり、異物が鼻からのどの方に(ひいては気管や肺に)入りづらくします。

(3)上でみたような鼻の防御機構が効率的に働く為に、鼻粘膜には神経、血管が発達しています。
  *知覚神経系の発達、鼻腺、海綿静脈洞の発達、密な自律神経支配


 花粉症では鼻粘膜に花粉が吸入され、鼻粘膜に付着します。鼻粘膜を通過した花粉抗原は肥満細胞と呼ばれる細胞上でIgEという抗体と結合します。花粉抗原とIgE抗体が反応する事で、肥満細胞から多くの種類の化学的伝達物質(ヒスタミン、ペプチドロイコトリエンなど)が放出されます。
これらの化学的伝達物質が神経や鼻腺、血管に働き、くしゃみや鼻水(水のようにさらっとした)、鼻粘膜腫脹が起こります。

 次に花粉症の起こる機構をもう少し詳しくみていきます。
B.発症機序  花粉症を含むアレルギー性鼻炎の発症機序は次のようになっています。

1)感作の成立:IgE抗体の産生と肥満細胞への固着
 花粉やダニなどの吸入性抗原に対し、生体はIgE抗体を過剰に産生します。このIgE抗体が鼻の粘膜に存在する肥満細胞や好塩基球の細胞表面にあるIgEレセプターに固着します。このようにして感作が成立します。
 この状態では花粉症は発症していません。

2)再度の抗原の吸入―抗原抗体反応
 感作された状態で花粉などの抗原が鼻の中(鼻腔)に吸入されて鼻の粘膜に沈着すると、1)でみたIgE抗体の固着した肥満細胞・好塩基球のIgEと結合します。
 この場合、感作された抗原と同じ抗原が再度吸入される必要があります。抗原ごとにできるIgE抗体は異なっているからです。つまり、1)で出来たIgE抗体は吸入した抗原に特異的な抗体(抗原特異的IgE抗体)です。

3)脱顆粒:肥満細胞から化学的伝達物質の放出
 感作された状態で同じ抗原が再度吸入されると2)で見たように抗原抗体反応が起こり、その結果肥満細胞の中にある顆粒が細胞外に放出されます(脱顆粒)。この顆粒の中には多数の化学的伝達物質(ケミカル・メディエータ)が放出されます。この化学的伝達物質が鼻の粘膜や神経、血管、分泌腺に作用して花粉症の症状であるくしゃみ、鼻水、鼻詰まりが起こります。

4)化学的伝達物質(ケミカル・メディエータ)

 肥満細胞から放出される化学的伝達物質(ケミカル・メディエータ)には次のような物質があります。
・ヒスタミン(histamine)
・ロイコトリエン(LTs:leukotriens-LTB4,LTC4,LTD4)
・プロスタグランジン(PG:prostaglandin-PGD2)
・トロンボキサン(TX:thromboxane-TXA2)
・血小板活性化因子(PAF:platelet activating factor)

・ヒスタミンは鼻の粘膜に分布する知覚神経(三叉神経)を刺激してくしゃみ中枢を介した反射反応であるくしゃみを引き起こします。この知覚神経への刺激は分泌中枢にも作用し、鼻の粘膜にある分泌腺の分泌を亢進し水のような鼻水が出ます。
・ロイコトリエン(LTs)はヒスタミンと共に鼻の粘膜下にある血管に作用し、血管透過性を亢進させたり、うっ血を起こしたりします。このため鼻詰まりが起こります。
 これらの反応は抗原(花粉)に接触して早期に起こる反応(即時相反応)ですが、肥満細胞から化学的伝達物質が放出される事で炎症に関わる様々な細胞(好酸球、好中球、好塩基球、リンパ球)を呼び寄せる働きを持ち、鼻の粘膜に炎症細胞が集まってきます(炎症細胞浸潤)。
集まってきた炎症細胞から炎症を引き起こす物質(起炎性物質)が放出され鼻の粘膜は炎症性の腫脹を起こし、これも鼻詰まりになります。この反応は少し遅れて起こるため遅発相反応と呼ばれています。

 アレルギー性鼻炎はこのようにして起こりますが、これを繰り返すうちに、特定の抗原(花粉)に対してのみアレルギー発作が起こるのではなく不特定の物質に対してアレルギー反応を起こす「非特異的過敏症」や、鼻の粘膜の肥厚が元に戻らない(不可逆的粘膜肥厚)を起こすことがあります。
C.診断
 花粉症の診断は大切なことです。
くしゃみ、水様性鼻汁、鼻づまりの症状がある場合、診察(検査を含めて)行い正しい診断を導き出します。
・アレルギー性鼻炎、花粉症なのか、それとも他の疾患なのか
・アレルギー性鼻炎、花粉症であれば、原因となっている物質(原因抗原)は何か、感作の程度はどれくらいか
・鼻の中(鼻腔)に接する副鼻腔に病変(副鼻腔病変)を合併していないか
・アレルギー性鼻炎、花粉症の重症度はどれくらいか
ということを確認していきます。

〈診察の流れ〉
・問診:自覚症状の正確な把握が重要です。現病歴、既往歴、家族歴、生活環境、趣味・スポーツ、生活習慣。
・視診:
・画像検査:
・アレルギー検査:鼻汁スメア(好酸球検査)、皮膚テスト、鼻粘膜抗原誘発テスト
・血液検査:総IgE値、血中好酸球数、抗原特異的IgE抗体定量

〈鑑別診断〉
・花粉症(アレルギー性鼻炎)
・血管運動性鼻炎:
・好酸球増多性鼻炎:
・かぜ症候群にともなう鼻炎:

D.症状
(1)鼻症状
(2)眼症状
(3)咽喉頭症状
(4)皮膚症状
(5)喘息
(6)Oral Allergy Syndrome
E.治療
(1)薬物療法
(2)免疫療法
(3)外科療法
(4)民間療法