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樹の散歩道
    雌雄異株の悲劇



 「雌雄異株」「雌雄別株」とも呼んでいる。雌雄が株ごとに完全に分かれている植物,言い換えれば,雌花と雄花が同じ株に着生しない場合,これを雌雄異株と呼んでいるものである。
 草本類でも確認されているが,圧倒的に樹木に多い属性である。

 さて,雌雄異株の悲劇とは一体何か?

 
別に片方しかなかったらかわいそうという意味ではない。それは我が家の庭で見られた事件であった。かつて,うちのオヤジが知り合いからクロガネモチを譲ってもらって,かなりの年数経過したものの,一向に実を付ける気配がない。実を付けないクロガネモチとは何だとばかりに,ある日突然,ノコギリで切り倒されてしまったのである。よその家のクロガネモチの雌木が実を付けるためには貢献したはずであるが・・・・と思っていたところが、後日、実はそうではないらしいことがわかってきた。クロガネモチの雌株では、雄株の花粉がなくても勝手に結実するらしいのである。

 クロガネモチは雌雄異株の樹木であるが,通常は実を付ける雌木だけが生産されて流通していると聞く。したがって,クロガネモチは当然赤い実を付けるものということになっていて,たまにどういう訳か雄木があると,とんでもない奴だということになってしまうのである。
 
     クロガネモチの雄株の雄花 
 雄しべは4〜6個で、写真では5個の雄しべが花粉を放出している。雌しべは退化しているとされる。花弁は反り返るため見にくい。
     クロガネモチの雌株の雌花
雌雄とも花弁は4〜6個で、雌花では雄しべは退化しているとされ、花粉はできない。写真の花では花弁が5個と6個。
 
 ついでながら,クロガネモチは和風の庭木として広く利用されているが,その名前から縁起のよい木ともいわれている。その理由は,例によって語呂合わせであるが,3通りの講釈があって,

 @ 苦労がなく金持ちになれる

 A 苦労の後に金持ちになれる

 B 人は苦労してこそ金持ちになれる    

 というものである。
 
 @はなぜ苦労が「なし」で済むのか,ちょっと厳しいものがある。「かね」をダブらせて「苦労がねえ」と「かねもち」に分解するのか・・・その点で,Aは素直である。Bは教訓じみて,堅すぎる。単に,どれがいいかとなれば,誰でも@を選ぶことであろう。語呂合わせの出来ということなら,むしろ「センリョウ,マンリョウ,アリドオシ」のセットほうがリズム感があっていい。

 以下は,雌雄異株の樹木の例である。花の時期に両方並んでいてくれると都合がいいのであるが,なかなかそうはいかない。 
 
        クロガネモチはこうでなければならない。
 鮮やかな赤色で美しい。口に含んでみたが、甘みはなく苦くてまずい。しかし、ヒヨドリが群れている姿をしばしば見かける。好きで食べているというよりは、美味しいものを食べ尽くし、仕方なく食べているのかも知れない。
 
 
 雌雄異株の樹木の例(一部わかりにくいものを含む) 
 
アオキ 株を選んで雌雄を植えないと結実しない。果実は核果で赤熟。
アオダモ 雄花をつける株と両性花をつける株がある。
果実は翼果。        
アオツヅラフジ 果実は液果で黒熟。蔓は籠,土瓶のツル,土瓶敷などを編むのに利用する。
アオハダ 果実は核果で赤熟。
アカメガシワ 果実は刮ハでトゲ状の突起があり,秋に3裂して紫黒色の種子を3個出す。 
イイギリ 時に雌雄雑居性。果実は液果で房状となり赤熟。ヒヨドリが大好き。別名ナンテンギリ。
イスノキ 雌雄異株又は同株。ふつうは雌雄同株(花序は雌雄雑居)。4〜5月,葉腋に円錐花序を出し,上部に両性花,下部に雄花が付く。果実は刮ハで2裂し黒色の種子を出す。
イズセンリョウ 果実は液果で乳白色。 
イチイ まれに雌雄同株。果実は仮種皮が種子を包み,赤熟。
イチョウ 落ちた銀杏が臭いため,街路樹としては雌株より雄株の方が好まれる。果実は黄熟する臭い外種皮に包まれる。堅い内種皮に包まれた白果が食用となる。
イヌガシ 果実は液果で黒紫色に熟す。
イヌガヤ 果実の外種皮は粉白色から熟すと赤紫色となる。
イヌツゲ 果実は核果で若いものは赤く,その後黒熟。 
イヌマキ 赤紫色の花床の上に緑色の果実(套被に覆われた種子)が付く。
イブキ 球果は白く粉を吹いたような緑色で紫黒色に熟す。 
ウメモドキ 果実は核果で赤熟。雌株だけでも結実するが、近くに雄株があると更に結実がよいという。
ウリハダカエデ 果実は翼果。 
ウルシ 花は雑性または雌雄異株。果実は核果で黄褐色に熟す。
オオツヅラフジ ツヅラフジとも。果実は核果で黒熟。
(オニシバリ)  ナニワズと共に、従前は雌雄異株と信じられていたが,実は両性株と雌株で構成される。
★ このことについてはこちらを参照 
カゴノキ 果実は液果で赤熟。
カツラ 果実は円柱形で湾曲。 
カヤ まれに同株。果実の外種皮は緑色から紫黒色に熟す。
カラスザンショウ 果実は刮ハで開裂して秋に黒色の艶のある種子を出す。枝ごと落下する。
キウイ(フルーツ) 栽培種。液果。雄木と雌木の2本を植えなければ実がならない。
キハダ 果実は核果で緑色から黒色に熟す。 
キャラボク 果実はイチイと同様。 
キンモクセイ 従前から「中国原産で,雄木だけしか日本に導入されていないため,果実は見られない。」との説明が一般的。
最近は「日本でウスギモクセイから見いだされ,栽培化されたと考えられている。(朝日百科植物の世界)」との説明も見られる。
モクセイ属のある樹種の雄株から選抜されたものであれば、雄株しかなくて当然ということになり、本表にはなじまない存在となる。
★ キンモクセイの話についてはこちらを参照。
クロガネモチ 庭木としては赤実のなる雌木を植える。果実は核果で赤熟。
クロモジ 果実は液果で黒熟。 
ゲッケイジュ 地中海沿岸原産。日本ではほとんど雄木で,雌株は少ない。果実は液果で黒紫色に熟す。
コウモリカズラ 果実は核果で黒紫色に熟す。
サネカズラ 果実は集合果(液果)で赤熟。 
サルナシ 果実は液果で淡黄緑色に熟す。 
サンショウ 果実は2個の分果に分かれ,緑色から赤褐色に熟し,開裂して黒色の種子を出す。
シマトネリコ 果実は翼果。 
シロダモ 果実は液果で赤熟。 
(ジンチョウゲ) 「まれに赤い実を結ぶ雌木を見かけることがあるが、ほとんどの株は雄木である。」との説明が一般的となっているが、全くの思い込みのようである。
本当のところは、すべて両性花で、原因は不明ながら国内では結実するものが少ないということらしい。原産国中国の「中国植物誌」でも特に雌雄異株とはしておらず、両性花であることを前提として花の説明をしている。果実は赤熟。
ソテツ 種子は核果様で外皮朱赤色。 
ソヨゴ 果実は核果で橙色から赤色に熟す。 
タイミンタチバナ 雄花では雌しべは退化していおり、雌花では雄しべが小さく、花粉を出さない。
果実は核果で黒熟。 
タラヨウ 果実は核果で赤熟。
ダンコウバイ 果実は液果で赤〜紫黒色に熟す。
チドリノキ 果実は翼果。名前は翼のある果実を千鳥に見立てたもの(カエデ科)。
チャボガヤ カヤと同様
ツルウメモドキ 雌株単独でも結実し、雄株も並べて栽培すれば、若木や実止まりの悪い株でも結実しやすいとの説明を目にしたことがあるが、雌株の単独結実はあり得ないともいう。果実は刮ハで黄色の外皮がはじけると橙赤色の種子を見せる。
トキワガキ 果実は液果で黄色から暗褐色に熟す。
トネリコ属 雌花をつける株には,雌しべだけの種と仮雄しべがある種の両方がある。
翼果   
トベラ 果実は刮ハで熟すと裂けて,粘性のある赤い種子が出る。
ナギ 果実は核果状で白粉を付け,青緑が紫黒色に熟す。
ナギイカダ  地中海沿岸地域原産で,赤い果実をそこそこつけるが,不思議なことに雄株を見ない。
★ 雄株探索のレポートについてはこちらを参照 
ナナメノキ
(ナナミノキ)
果実は核果で赤熟。
ニガキ 果実は核果で緑藍色に熟す。
ネズ 球果は黒紫色に熟す。 
ハイイヌガヤ 果実は赤熟。外種皮は柔らかく,脂臭いが甘みがあり食べられる。 
ハイネズ 果実は液果状で黒紫色に熟す。
(ハクチョウゲ) 「雄木だけしか日本に導入されていない。したがって果実は見られない。」とする講釈を見かけたが,この見解は怪しい。国内では果実が確認されておらず,原産国の中国植物誌でも果実に関して全く触れておらず,雌雄異株ともしていない。不稔の品種かもしれない。
ハスノハカズラ 果実は核果で朱赤色に熟す。
ハナイカダ 果実は核果で黒熟。
ハナノキ 時に雌雄同株にものがみられるという。果実は翼果(カエデ科)。
パパイヤ 雌雄異株に加えて雌雄同株もある
ハマセンダン 果実は刮ハで赤褐色に熟す。 
ハマヒサカキ 果実は黒紫色に熟す。
ハマビワ 果実は液果で黒紫色に熟す。(クスノキ科)
バリバリノキ 果実は液果で黒熟。 
ヒイラギ 果実は核果で黒熟。 
ヒイラギモクセイ 「雌雄別株だが,雄株だけが知られており,雌株は知られていない。」とされる。
交雑種の雄株から選抜された品種である可能性がある。
ヒイラギモチ 雄株にも少し結実するという。果実は核果で赤熟。
ヒサカキ 果実は液果で黒熟。
ヒトツバタゴ 果実は翼果。 
ビナンカズラ ⇒ サネカズラ
ヒメユズリハ 果実は核果で紅色から黒熟。 
ポプラ類 果実は刮ハで裂開して綿毛に包まれた種子を出す。
マタタビ 果実は液果で黄緑色に熟す。 
マツブサ 雌雄異株,時に同株,まれに両性花をつけるという。果実は液果で青黒色に熟し,房状となる。
ミヤマシキミ 果実は核果で赤熟。 
モチノキ 果実は核果で赤熟。 
モッコク 果実は液果で暗赤色に熟した後に果皮が裂開し,鮮紅色の種子を3〜4個出す。
ヤチダモ  雄花をつける株と両性花をつける株があるが、両性花の雄しべは退化しているように見える。果実は翼果。 
ヤドリギ  果実は液果で淡黄色に熟す。果実が橙黄色のものはアカミヤドリギの名がある。 
ヤナギ類 ケショウヤナギ,アカメヤナギ,シダレヤナギ,ネコヤナギ・・
果実は刮ハ。シダレヤナギは中国原産で、国内では雌株は少ないが,例えば北海道庁の前庭にシダレヤナギの雌木が2本植栽されている。
ヤマグワ まれに雌雄同株。果実は集合果で赤色から黒紫色に熟す。
ヤマコウバシ 雌雄異株だが,国内では雌株しかなく,なぜか雄株なしで結実するという。果実は液果で黒熟。中国の図鑑では雌雄異株とした上で,雄花と雌花について淡々と説明している。
★ ヤマコウバシについての話はこちらを参照。
ヤマモモ 街路樹,公園木としては雄株が使用されているように見受ける。(多量の果実が歩道等を汚すのを嫌うためか?) 果実は赤熟。
ユズリハ 果実は核果で藍色に熟す。 
ラカンマキ 果実はイヌマキに同じ。 
(レンギョウ属)  国内の図鑑では雌雄異株としているが,これは誤りで,花は両性花である。 
   
注:  特定の種で,日本には雄株しかない,あるいは雌株しかないという説明をしばしば見かけるが,要注意である。