辻講釈のすすめ

 今私は鎌倉、川越と浅草のお寺の境内で辻講釈をやっている。講談が道路コウダンに間違えられ、琴梅がバイキンに呼ばれるくやしさを晴らすためと、本人の勉強のために。
 寄席のお客様は、木戸銭、足代を使って好きで来るのであるから、とにかく講談が聴ければ(下手でも何でも)、余は満足じゃとお帰り下さる。ところが辻講釈は、参拝、散策が目的で、たまたま境内でのパフォーマンスに遭遇したひとたちであるから、まず聴こうとしない、いや、立ち止まろうともしないのだ。
 多少の関心があっても、寺の境内だから雑音が入り、熱中できないということもある。寄席と違って辻講釈は、話にならないほど悪条件なのだ。しかし、この悪条件が修業になり、話し方上達の近道になるのだ。

 江戸の昔、先輩たちは往来の辻に立ち、辻講釈をやった。零全(れいぜん)という辻講釈師は、浅草寺奥山で日々三百人の聴衆を集め、深井志道軒は、手にあやしき形をしたものを持ち、机をたたき、厳粛に、あるいは痛烈に、また卑猥の言を弄し、聴衆をその場から去らしめなかったという。
 一体どんな話術であったか、資料がなく、参考に出来ないので、私は見様見真似、試行錯誤で辻講釈に挑戦したのである。

 まず興味、関心のない人の足を如何に止めるか、子供のころ遊んだ観音様境内で、香具師が物を売るとき、「清水の舞台から飛び降りた気持ちで、はい半値の◯◯円だ!」欲心を足止めの戦法に使った。
 そこで私も色紙を書いて「キンバイの色紙ですから、持っているとお金が倍になります。いや、いまは差し上げません。最後まで辻講釈を聴いた方に……」
 次に立ち止まったお客様を散らさない話術。これも香具師の口上を利用「お客さん、注意をして下さい。この中にスリがおりますから、おっと、動いちゃ駄目だ、動いた人がスリだから」これでは帰れないので、仕方なく最後までつきあってくれる。

 講談は、1.俗談平和に語り 2.座興の笑いを結ぶ 3.猛勇の知弁をふるう、というから難解な話を分かり易く、面白楽しく、そして最後に一番自分の言いたいことを言えば良いのだが、いざ聴衆の前に立つと思うように語れない。しかし高座百遍(同じ話を繰り返せと、場数を踏めという意味)。めげず、へこまず、あきずにやり続けることだ。

 辻講釈で大事なことは大声を出すこと。野外は声の返りがないので、普通に話しては風呂の屁でなにを言っているのか聴き取れない。腹から声が出ると、抜く声、つまり高低、強弱、また間の取り方などが自然身に付いてくる。迫力のある声は、訴える力となり、共鳴共感、感動を引き起こす話術になる。大声によって内蔵を鍛えれば、健康の元になる。
 話術の勉強、ストレス解消、歴史の勉強、健康増進などなど良いことずくめの辻講釈。興味と関心のある方は、どうぞおみ足を運んで下さいませ。先ずは辻講釈のすすめ。

宝井琴梅  


 辻講釈はこちらでお聞きになれます

● 川越・蓮馨寺(れんけいじ)境内  毎月8日の午後1時より 

  出演 宝井琴梅 ほか

川越市連雀町 7-1  電話 0492-22-0043
東上線「川越市」駅下車 徒歩7〜8分
西武線「本川越」駅下車 徒歩5〜6分

● 千束・長国寺境内

 1月17日(日) 2月7日(日) 3月6日(日)午後1時より

  出演 宝井琴梅 ほか

☆ どちらも聴講無料 但し投銭大歓迎


お問い合わせは宝井宅まで 電話・FAX03-3806-1648