DC-DCコンバータの動作原理

ここでは、DC-DCコンバータの動作原理について簡単に解説したいと思います。DC-DCコンバータは
スイッチング電源の一種です。スイッチング電源と言っても種類が様々ですが、今回紹介したい
のはよく使われる以下の種類です。

1・非絶縁型昇圧チョークコンバータ
2・非絶縁型降圧チョークコンバータ
3・絶縁型フォワード型(降圧)
4・絶縁型フライバック(超高圧昇圧)
5・ハーフブリッジ型
6・フルブリッジ型

それでは、DC-DCコンバータとは何か簡単に説明しますね。
DC-DCコンバータは名前のとおり、直流電圧を自由自在に変えることができる回路です。
えっ!?ちょっと待って、交流は変圧器で電圧を変えることができても直流は無理じゃない?と
突っ込みたいですよね〜。
それが、工夫すると実現できる物なんです。と言っても半導体素子が進歩したお陰です。

で、その前にDC-DCコンバータはどんな所に使われるの?と聞かれたこともよくありましたので、
幾つか身の回りの電化製品から見てみましょう。
一番身近にあるものが携帯電話の充電器です。入力は交流100Vですが、内部で一旦直流に変換し、
その直流をDC-DCコンバータで5Vまで降圧します。回路方式は絶縁型フライバック式降圧タイプです。
もし、100Vの交流をそのまま降圧しようとすると大きい変圧器が必要になり、今の携帯充電器のように
コンパクトに作れません。

ノートパソコンなどに付属されるACアダプタもそうですね。実際は内部で100Vの交流を一旦
整流して141Vの直流に変換します。
(100Vの交流の最大値は√2倍の141Vです。100Vは実効値です。整流して平滑コンデンサに送ると
141V最大値の直流になります。)
141Vに変換された直流はDC-DCコンバータで降圧してノートパソコン(普通は16V)に送ります。
この場合、多くが絶縁型フォワード回路方式です。

これだけではありません。実際電化製品内部にもDC-DCコンバータが幾つか隠れています。
ノートパソコンの場合、16Vの電源を入れても内部のCPUやメモリは5V、3.3Vといった非常に
低い電圧で作動するため、16Vを内部でさらに電圧変換します。

ついでに参考に写真を載せました。
昔の古いパソコンの基盤が友人の家に余っていましたので、写真撮りました。
真ん中にコイルと黒の四角いトランジスタがありますよね。そいつがDC-DCコンバータです。



ここで直流電圧を降圧するなら抵抗二つで分圧すれば良いじゃないのと思われるかも知れませんが、
負荷が非常に軽い場合は全然問題ありません。ところが、負荷が数十ワットを超えるとそうはいきません。
抵抗がありますので、大きい電流が取り出せませんし、それに殆どの貴重な電気エネルギーを抵抗器で
熱で消費されてしまいます。また、抵抗だけでは降圧はできても、昇圧はできません。
それでは、今回紹介する1番目の非絶縁型チョークコンバータから見て見ましょう。

1・非絶縁型昇圧チョークコンバータ

名前のとおり、入力と出力側が絶縁されていません。
この回路は意外と使用例が多いです。例えば、車で16Vのノートパソコンが使いたい時、車の12V電源を
16Vに持ち上げたり、1.5Vの乾電池二本で5Vの携帯を充電したり、1.5Vの乾電池一本で3.6VのLEDを点灯させたり、
とにかくいろんな商品が存在します。
では、回路の構成と動作原理を解説します。



この回路の動作は意外とシンプルです。まず、電池の電圧を10Vとしましょう。トランジスタがONになった時、
電流は全てチョークコイル(以下コイル)に流れます。この時、コイルは所詮電磁石なので、コイルの鉄心が
磁化されて磁石になります。もちろんコイルが入力の電流を妨げようとする性質がありますので、電流は0Aから
徐々に上昇します。

ここでコイルの鉄心が磁気飽和する前にトランジスタをOFFにします。そうすると磁化された鉄心がいきなり
磁力が無くなりますので、コイルの両端には非常に高い電圧が発生します。ここでは50Vとしましょう。
この電圧は自己誘導と言って、コイルのインダクタンス(単位はヘンリ、記号はH)が大きいほど、また流れていた
電流が急激に変化するほど誘導電圧は高くなります。
この場合、電池の10Vと自己誘導の50Vが直列になっていますので、加算されて60Vが出力のコンデンサに溜まることに
なります。
出力側にあるダイオードはコンデンサに溜まった60Vの電圧が電池に逆流するのを防止するためです。
回路全体を一言で言えば、まず、コイルに磁気エネルギーを貯めて、その磁気エネルギーを再び電気エネルギーに
変えて放出することです。
コイルに溜まる磁気エネルギーは以下の公式で計算できます。

W = 0.5・HI^2
(Wはワットではありません。ジュールです。Hはインダクタンス、Iは電流、^2は二乗のことです。)

2・非絶縁型降圧チョークコンバータ

この回路は昇圧型とコイルとトランジスタの位置が逆になっています。
では、回路構成と動作原理を見てみましょう。



この回路はよく見ると、トランジスタがON時、電池の10V電圧がそのまま出力の5Vに行くように見えますが、
実はコイルが磁化される時も自己誘導によって入力の電流を妨げようとします。その向きは電源と逆になります
ので、入力側から来る電圧を打ち消します。コイルの自己誘導が5Vの場合、入力の10Vと打ち消し合って、出力は
その差分の5Vがコンデンサに溜まることになります。

磁化された鉄心の磁束が消える時は、コンデンサとダイオードで還流電流が流れますので、トランジスタがOFF時にも
コンデンサに暫く電気エネルギーを供給しますので、出力は安定した5V電圧が得られるようになります。

ここで実際は出力をコイルのインダクタンス値で調整したりはしません。これは昇圧型もそうですが、出力を
安定させるためにフィードバック制御を行っています。
フィードバックは出力の電圧を監視しています。出力が5V以上上昇した時、監視回路がトランジスタのON、OFF作業を
強制的に止めてくれます。
逆に出力電圧が5V以下に下がった場合はトランジスタのON、OFF作業を再開します。


3・絶縁型フォワードコンバータ

それでは、これから紹介する回路は全部絶縁型コンバータです。絶縁と言うことは入力側と出力側が絶縁された
状態です。そのため、これらの回路は変圧器を使います。変圧器と言っても高周波で動作するため、非常に
小さいです。
さて、絶縁型フォワードコンバータ(以下フォワード型と省略)ですが、主に入力電圧が高く、出力が電圧が低い
場合によく使われます。ノートパソコンのACアダプタやパソコンの電源などは殆どがこのタイプです。
では、回路の動作を見てくださいね。



変圧器の一次側に100Vの直流を入力すると仮定した回路です。(実際のACアダプタは一次が141Vです。)
出力は12Vとしましょう。
この回路の一番の特徴は変圧器の変圧比によって入出力電圧を決めることができます。通常の交流で使う変圧器と
同じです。電圧変動にあまり厳しくない負荷に対してはこのまま使っても問題ありませんが、精密機器などに使う
場合はフィードバック制御で電圧を安定させる必要があります。実際殆どのACアダプタはちゃんとフィードバック
制御を行っていますので、出力電圧変動はごく僅かな値です。
100V200V両方対応のACアダプタもありますよね。でも出力電圧は変わりません。それもフィードバックのお陰です。

この回路は変圧器を片方向のみ励磁しますので、トランジスタがOFFになる瞬間、変圧器のコイルがエネルギーを
貯めることになります。そのため、磁束をリセットさせる回路が左の一次側に付いています。
降圧タイプの場合、一次側の電流が少ないので、コイルに溜まるエネルギーもそんなに大きくありません。
ところが昇圧に使うと一次側の電流が大きくなります。コイルに溜まるエネルギーも電流の二乗になりますので、
リセット回路で浪費される電気エネルギーが大きくなります。
そのため、この回路は殆ど降圧に使われ、昇圧には使われません。

4・絶縁型フライバックコンバータ

絶縁型フライバックコンバータ(以下フライバック型と省略)はフォワード型と同じ変圧器を使って入力側と出力側を
絶縁していますが、フォワード型と回路が似ていても動作原理が全然違います。これはどの参考書を見ても一番しつこく
書かれている内容でしょう。
違いはフォワードは変圧器を本当の変圧器として相互誘導モードで使いますが、フライバックは変圧器をどちらかと言うと
コイルとして使います。変圧器になっている一つの理由は入力と出力を絶縁するためです。
もう一つの理由は同じ鉄心を持つコイルで入力と出力の自己誘導電圧を変えるためです。
そのため、入出力の電圧比は変圧器の変圧比になりません。
では、下の図で動作原理を見てみましょう。



この回路は入力10Vに対して、出力1000Vの高圧を取り出す回路です。普通なら1000V ÷ 10V = 100倍の変圧比を
持つ変圧器が必要ですが、この回路の場合、変圧比が僅か10倍程度です。
この回路は非絶縁型のチョークコンバータと原理が似ています。ていうかまったく同じです。チョークコンバータは
一次側でコイルに磁気エネルギーを貯めて、それを同じ一次側で取り出しますが、フライバックは二次側で取り出す
だけです。両方ともコイルの自己誘導を利用して昇圧していますので、出力電圧はどちらかというと入力で流れた
電流の大きさによって決まります。
出力電圧をもっと上げたければ、変圧比を変えるのも良いですが、入力側の電流を大きくしたほうが良いでしょう。

5・ハーフブリッジ型

ハーフブリッジ型はフォワード型と動作原理が似ていますが、変圧器を双方向で励磁しますので、変圧器の使用効率が
よくなります。当然双方向励磁になりますので、変圧器には本物の交流電気が流れます。といっても普通の交流ではなく、
数十KHzといった超音波周波数の高周波交流になりますので、変圧器のサイズも非常に小さいです。



この回路では、変圧器はフォワード型と同じ相互誘導モードで動作しますので、入力と出力の変圧比と電圧比が同じです。
只注意して欲しいのは、変圧器の一次側に入力される電圧は、電源電圧100Vと仮定した場合、その半分の50Vになります。
出力12Vを求める場合、100V対12Vではなく、50V対12Vの比率で変圧比を設計する必要があります。

6・フルブリッジ型

フルブリッジ型は二つのハーフブリッジで構成されている回路です。四つのトランジスタを交互のON、OFFさせ、入力の
直流を高周波の交流に変換して変圧器に送ります。ハーフブリッジ型は入力電圧が100Vと仮定した場合、その半分の50Vが
変圧器に送られる仕組みに対して、フルブリッジ型は入力電圧100Vをそのまま変圧器に送ることが出来ます。
そのため、沢山の電力を変換できますので、主に大電力変換装置によく使われます。



回路構成はご覧のとおり二つのハーフブリッジで出来ています。変圧器の出力はハーフブリッジと同様交流になりますので、
ダイオードブリッジ回路で整流して直流を得ることができます。只交流の周波数が非常に高いので、通常のシリコンダイオード
では応答速度が遅すぎて整流できません。高速のショットキーダイオードで整流しなければなりません。


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