大和型戦艦

第1章 大和型戦艦の機関部

1-1. 基本計画

計画
番号
水線長
(m)
水線幅
(m)
公試
排水量
(T)
46cm砲門数 速力
(kt)
軸馬力(shp) 航続力
(kt×浬
計画
時期
艦尾 艦首 タービン ディーゼル 合計
A-140 294 41.2 69,500 0 3+3+3 31.0 200,000 0 200,000 18×8,000 S10-3-10
-A 277 40.4 68,000 0 3+3+3 30.0 132,000 68,000 200,000 18×9,200 S10-4-1
-B2 247 62,000 2+2 2+2 27.5 0 140,000 140,000
-G 273 37.7 65,883 0 3+3+3 28.0 70,000 70,000 140,000 18×9,000 S10-5-25
-G1-A 244 38.9 61,600 0 3+3+3 26.0 70,000 45,000 115,000 16×6,600 S10-7-30
-I 268 65,050 2+3 3+2 28.0 73,000 70,000 143,000
-F 247 60,350 3 3+2 27.0 65,000 65,000 130,000 16×7,200 S10-8-14
-G0-A 268 65,450 0 3+3+3 28.0 75,000 70,000 145,000
-G2-A 262 63,450 0 3+3+3 28.0 73,000 70,000 143,000
-K 221 36.0 50,059 0 3+3+2 24.0 40,000 40,000 80,000 16×6,600
-F3 246 38.9 61,000 3 3+3 27.0 75,000 60,000 135,000 16×4,900 S10-10-5
-F4 248 62,545 3 3+3 16×7,200
-F5 253 65,200 3 3+3 S11-7-20
最終案 256 68,200 3 3+3 150,000 0 150,000 S12-3-E

典拠: 戦艦大和 その生涯の技術報告 松本喜太郎 再建社 S27 (一部割愛)

<解説>
本級の基本計画は、用兵側(軍令部)が当初は速力30kt以上を要求したものの、艦型過大(=建造費過大)のため、早い段階で27〜28kt、軸馬力140,000shp台に落ち着きました。主機は航続力増大のため、蒸気タービンとディーゼル機関の併用が考えられ、A-140-G1-A案を例に取ると、純タービン推進とした場合に比べ、機関重量で6%増、所要床面積で9%増となるものの、速力18ktでの燃費は32%減と見積もられました。基本計画が煮詰まったA-140-F5案では、蒸気タービンを内軸(内側軸)、ディーゼル機関を翼軸(外側軸)に配し、推進軸1軸に対して7,500shpのディーゼル機関4基をヴルカーン式流体継手で結合するという構成でした。おりしも潜水母艦大鯨に搭載予定のディーゼル主機(11号機械)は故障が続出し、計画出力の6割も発揮できず、発煙が多いなどの不具合が判明したため、主力艦への搭載は時期尚早と判断された結果、急遽基本計画を見直し、純タービン推進艦として建造されました。実際問題、異種主機の併用は製造・取扱・保守修繕のすべてにわたって二本立てとなるため、この判断は妥当であったと言えるでしょう。なお、一部でディーゼル併用、もしくは純ディーゼル推進としなかったため高速が出なかったなどという記述を目にしますが、まったくの誤解です。

※本件に関し、下記書籍に大和型戦艦の機関部についての記事を執筆しましたので、ご参照ください。

『決定版 大和型戦艦』 コラム「大和型戦艦の機関部について」
歴史群像シリーズ 太平洋戦史スペシャル1号 ISBN978-4-05-605698-3
発行所 滑w研


『大戦艦 大和 メカ読本』 ●各部メカニズム解説「機関」 NEW !
月刊誌「丸」2011年2月号 別冊付録
発行所 樺ェ書房


2-1. 主機

2-1-1. タービン本体

項目 軸馬力
(shp)
回転数
(rpm)
段落数 ピッチ円
直径

(mm)
ピッチ円
周速度
(m/s)
動翼

(mm)
タービン
初圧
(kg/cu)
蒸気
消費量
(kg/shp-h)
動翼
振動数
(Hz)
高圧タービン
(第1段落)
8,860 3,298 1 900 155 26
48
22 4.10
(改正前4.05)
12,500
2,770
高圧タービン
(第2〜第5段落)
4 1000
1000
1000
1000
173
173
173
173
44
50
62
78
3,540
2,847
1,953
1,300
低圧タービン 9,890 2,135 5 1740
1710
1680
1660
1640
195
191
188
186
183
65
100
145
206
260
2.8 1,875
1,094
640
387
202
低圧タービン
(改正前)
2,460 5 1530
1500
1460
1430
1400
197
193
188
184
180
72
112
190
250
320
1,484
862
339
270
179
後進タービン 5,500 1,420 3 1350
1350
1350
100
100
100
64
104
146
17 9.4 2,600
887
430
後進タービン
(改正前)
1,640 3 1200
1200
1200
103
103
103
72
112
164
2,080
710
387
前進1軸当り 37,500
後進1軸当り 11,000

典拠: 戦艦大和のすべて 原勝洋 インデックス・コミュニケーションズ H17

<解説>
本級の主機は、艦本式オール・インパルス(全衝動)・タービンで、推進軸1軸に高圧・低圧両タービン(各2基)を減速歯車装置を介して結合し、高圧タービンを減速歯車装置の艦尾側に、低圧タービンを艦首側に配置した、ツイン構成としていました。この構成は、八八艦隊の天城型巡洋戦艦で導入されたもので、1軸宛主機2基併結、推進軸4軸で、1艦宛主機8基となります。
タービン自体は、昭和6年度計画の駆逐艦初春型に搭載された、使用実績ある艦本式高低圧タービン(1軸当り21,000shp)を、長期信頼性向上のため約90%に減格(ディレーティングderating)し、1軸宛2組(18,750shp×2=37,500shp)の構成で、4軸合計150,000shpとしていました。高圧タービンの初圧は22kg/cuと、主缶使用圧25kg/cuからやや低く設定されていました。
第1号艦(大和)用のタービンは昭和12年4月に製造が訓令されましたが、同年12月に駆逐艦朝潮の中圧タービン動翼に亀裂が発生し、いわゆる臨機調事件に発展したため、低圧タービンと後進タービンの設計を改め、ピッチ円径を増大し、各タービンの動翼高を短縮し、動翼を増厚することで、円周方向二節振動共鳴点を安全側にずらしました。動翼植込部もエ字状に改正しています。この結果、重量は高圧タービンが0.1t、低圧タービン(後進タービン含む)が6.0t、減速歯車装置が1.0t増大し、1軸当り13.2t、4軸合計で52.8tの増大となりました。また、蒸気消費量が1.2%増大し、熱効率は1%低下すると判定されました。

2-1-2. 減速歯車装置

項目 モジュール・
圧力角
ヘリカル角 歯数 ピッチ円
直径

(mm)
減速比 回転数(rpm)
巡航
全力
巡航超過
全力
巡航併用減機
全力
巡航許容
全力
10/10
全力
巡航タービン
子歯車
3.5
20度
30度0分22秒 34 137.409 3.735 6,352 7,118 7,994 8,581 -
巡航タービン
親歯車
127 513.265 1,701 1,906 2,140 2,297 -
高圧タービン
子歯車
5
14.5度
44 254.034 14.659 1,701 1,906 2,140 2,297 3,298
推進軸
親歯車
645 3273.911 116 130 146 157 225
低圧タービン
子歯車
68 392.598 9.485 1,100 1,233 1,385 1,486 2,135
推進軸
親歯車
645 3273.911 116 130 146 157 225

典拠: 戦艦大和のすべて 原勝洋 インデックス・コミュニケーションズ H17

<解説>
本級の減速歯車装置は、親歯車(推進軸に直結)に対して高圧・低圧両タービン(1軸宛各2基)軸上の小歯車計4個がそれぞれ独立に噛み合う4ピニオン式で、歯のねじれ角30度の山歯歯車(ヘリンボーン・ギヤ)1段減速です。減速比が割り切れない値となるのは、同じ歯同士が当たる確率を極力下げるためです。
巡航タービンは、高圧タービンと専用の減速歯車装置でつながっており、推進軸までの総合減速比は54.756です。
表中、
「巡航全力」は巡航タービン作動時の計画全力時
「巡航超過全力」は巡航タービン作動時の超過(過負荷)全力時
「巡航併用減機全力」は巡航タービンと高圧タービン(1軸宛2基のうち1基のみ)の双方に給気する並列運転による全力時
「巡航許容全力」は巡航タービンの許容回転数まで高圧タービン(1軸宛2基)に直接給気したときの全力時
をそれぞれ示します。
なお、それ以上の出力に対しては、巡航タービンは嵌脱継手(ドグ・クラッチ)を外して解放し、高圧タービン(1軸宛2基)に直接給気して運転します。

2-1-3. 主機の重量

艦名/竣工年 型式 基数 軸馬力
(shp)
推進軸
回転数
(rpm)
減速
装置
重量
(t)
重量当り
出力
(shp/t)
推進軸
タービン 減速装置 合計
長門/T9 技本(艦本トリプルフロー)式高低圧 4 80,000 230 2ピニオン 203 216 419 191 4
赤城/S2 技本式高低圧 8 131,200 210 4ピニオン 311 272 583 224 4
扶桑(改装)/S8 艦本式高中低圧 4 80,000 280 3ピニオン 158 182 340 235 4
金剛(改装)/S12 艦本式高中低圧 4 136,000 320 3ピニオン 235 168 403 349 4
大和/S16 艦本式高低圧 8 150,000 225 4ピニオン 382 366 748 200 4
翔鶴/S16 艦本式高中低圧 4 160,000 300 3ピニオン 228 212 440 364 4

典拠: 昭和造船史 第1巻 日本造船学会編 原書房 S52

<解説>
本級の主機は、1軸宛主機2基のツイン構成とは言え、2世代前の天城型よりも重量当り出力が低下しているのは、いささか寂しいものがあります。なお、ディレーティング前の出力168,000shpでの重量当り出力は224shp/tと、天城型と同等でした。

2-2. 主缶

艦名/竣工年 型式
使用圧
(kg/cu)
蒸気温度
(℃)
噴燃器
力量

(kg/h)
燃室
容積

(m3)
蒸発
伝熱面積
(u)
過熱
伝熱面積
(u)
発生
力量
(shp)
重量
(t)
重量当り
発生力量
(shp/t)
長門/T9 ロ号艦本 19.3 264 (+55) 450×7 22.6 556 139 4,450 34.8 127
加賀/S3 ロ号艦本 19.3 209 (飽和) 550×11 41.9 1,002 - 9,875
伊勢(改装)/S12 ロ号艦本 20 211 (飽和) 750×9 40.1 894 - 10,000 38.2 262
蒼龍/S12
金剛(改装)/S12
ロ号艦本 22 300 (+84) 1,000×10 43.0 939 168 19,000 65.0 293
大和/S16 ロ号艦本 25 325 (+102) 800×9 35.0 895 165 12,500 77.0 162
翔鶴/S16 ロ号艦本 30 350 (+92) 1,000×10 43.3 903 182 20,000 67.5 296
島風/S18 ロ号艦本 40 400 (+151) 1,100×9 45.6 662 212 25,000 83.6 297

典拠: 昭和造船史 第1巻 日本造船学会編 原書房 S52

<解説>
艦本式水管缶は、ヤーロー缶から発達したもので、上部の汽胴1本と下部の水胴2本を三角形の各頂点に配し、中央の空間(燃焼室)を覆うように汽胴と水胴を多数の水管で結んだ、3胴式(スリー・ドラム)水管缶の一種です。本級用は水胴中心から汽胴中心までの高さ3100mm、水胴2本の中心間距離5000mm、水胴の長さ4800mmで、金剛(改装)用や最上用(前記3項目の寸法:3300mm, 5200mm, 5280mm)からは一回り小型でした。水管は片側19列とし、直径は燃焼室側から最初の2列が76mm(3in)、次の5列が51mm(3in)、残りの12列が45mm(1-3/4in)で、7列目と8列目は間隔を広げ、間に水平に過熱器をはさみ、水管列を通過する燃焼ガスの熱を吸収させていました。缶水の循環は、給水管→汽胴両側→外側12列の水管(下降)→水胴→内側7列の水管(上昇)→汽胴中央(蒸発)→過熱器で、以下主蒸気管→高圧タービン→低圧タービン→復水器→水タンク→給水ポンプ→給水加熱器→給水管となります。なお、主缶の重量当り発生力量(蒸発量)は、空母蒼龍や同翔鶴型の約55%にとどまっていますが、噴燃器(バーナー)力量では両級の72%であることより、主機同様長期信頼性を重視し、安全係数に充分余裕を持たせたものと考えられます。なお、主缶・主機・補機を合計した機関部総重量は、天城型の4,496tに対して本級は5,218tで、排水量(常備または公試)に占める比率はそれぞれ10.6%、7.7%でした。


2-3. 推進器

艦名/竣工年 型式 直径
(mm)
ピッチ
(mm)
ピッチ比 面積 面積比
全円 (u) 展開 (u) 斜影 (u) 展開/全円 斜影/全円
長門/T9 オージバル 4191 4407 1.052 13.795 8.454 7.432 0.613 0.539
伊勢(改装)/S12 オージバル 3800 3460 0.911 11.341 7.670 6.975 0.676 0.615
蒼龍/S12 オージバル 3800 4040 1.063 11.341 9.640 8.617 0.850 0.760
金剛(改装)/S13 オージバル 3900 3480 0.892 11.946 10.360 9.572 0.869 0.801
大和/S16 オージバル* 5000 4800 0.960 19.635 13.200 11.865 0.672 0.604

典拠: 軍艦機関計画一班 改訂増補三版 海軍機関学会 1919、マンガン青銅推進器鋳造法の研究 藤田忠男 日本学術振興会 1956
*:第1号艦予備用はエアロフォイル型

<解説>
本級用の推進器は、3枚翼オージバル型で、材質はマンガン青銅鋳物(MnBC52)、鋳込重量(湯口・湯道・押湯・仕上代含む)49.8tでした。仕上重量は不明ですが、鋳込重量のほぼ1/2前後と考えられます。推進軸回転数が225rpmと比較的低速のため、翼形状は比較的細長く、同330rpmの蒼龍や同320rpmの金剛型(改装後)と比べると、面積比が小さくなっていました。


2-4. 推進軸回転数・速力・軸馬力の関係

項目 巡航
全力
巡航超過
全力
巡航併用減機
全力
巡航許容
全力
10/10
全力
推進軸回転数 (rpm) 116 130 146 157 225
速力 (kt) 16.7 18.5 20.5 21.6 27.0
速力当り推進軸回転数 (rpm/kt) 6.94 7.02 7.12 7.26 8.33
1軸当り軸馬出力 (shp) 5,500 7,500 10,500 12,500 37,500
軸馬力 (shp) 22,000 30,000 42,000 50,000 150,000

典拠: 戦艦大和のすべて 原勝洋 インデックス・コミュニケーションズ H17

<解説>
一般的に艦船の速力は推進軸回転数にほぼ比例、所要出力は速力の3乗に比例するとされており、上表にもそれが現われています。



3-1. 公試(汽走試験)の要領

公試(汽走試験)の要領は、「機関実験参考書」によれば、
「汽走試験ノ一般目的ハ速力及力量決定ノ為或ハ定メラレタル距離又ハ時間内施行セラルルモノニシテ此等ノ試験ヨリ抵抗及推進器等ニ関スル事項ヲモ求ムルニアリ」
「速力試験ハ通例1浬乃至2浬ノ短距離ニテ数回往復施行セラルモノニシテ、試験区域標識ノ為海岸ニ標識ヲ特設ス、而シテ短距離航走ノ場合ニハ標柱間ノ前後ニ艦ノ旋回及旋回後標柱間ニ入ル迄ニ充分ナル場所ヲ要ス」
「標柱間汽走ニ関シテハ特ニ次ノ諸項ニ注意スルヲ要ス、
 1. 艦底ノ浄否ハ成績ニ影響スルコト大ナリ、故ニ艦出渠後ノ日数ハ必ズ成績中ニ記入シ置クヲ要ス、
 2. 吃水モ亦成績ニ影響ス、出入港時ノ吃水ニ比較シ其ノ時刻迄ノ使用炭量及水量等ニ帰因スル修正ヲ行フヲ要ス、
 3. 主機械加減弁ハ標柱間ニ入ル前予定シテ汽走中変更スベカラズ、
 4. 標柱間汽走中ハニ、三度以上ノ転舵ヲ避クルヲ要ス、
 5. 標柱間ノ潮流ハ汽走中方向モ速力モ共ニ一定ノモノニアラザルガ故ニ必ズ偶数回ノ試航ヲ行ヒ潮流風向等ノ影響ヲ除外スルヲ要ス、
通例試航ハニ回ノ往復ヲナシ、次ノ如ク連続平均ヲトルコトト定メラル、
 第一回往航速力 Va
 第一回復航速力 Vb
 第ニ回往航速力 Vc
 第ニ回復航速力 Vd
 第一平均 (Va + Vb)/2, (Vb + Vc)/2, (Vc + Vd)/2
 第ニ平均 (Va + 2Vb + Vc)/4, (Vb + 2Vc + Vd)/4
 第三平均 (Va + 3Vb + 3Vc + Vd)/8
公試運転及高速航続力運転等ニ於テハ最小力量ヨリ全力ニ至ル迄ノ航走試験ヲ行ヒ全力以下ノ力量回転数及速力ノ数値ヲ求ムルコトアリ、
汽走試験ニ於テ良結果ヲ得ンニハ尚次ノ諸項ニ留意スベシ、
 1. 缶ハ内外部共ニ充分清浄ナルコト、
 2. 燃料ハ良質ノモノヲ用フルコト、
 3. 機械ハ擦熱ヲ起サザル様各部ノ調整良態ニシテ且注油装置完備シ良好ナルコト、
 4. 推進器面は滑ラカニシテ翼及尖端等ニ損所ナク水中ニ充分没シオルコト」
となっていました。


3-2. 「大和」の公試運転成績 S16.10施行

項目 速力
(kt)
軸馬力
(shp)
推進軸回転数
(rpm)
有効馬力
(ehp)
推進効率
Pc
アドミラルティ係数
Ac
燃料消費量
(t/h)
10/10全力 27.46 153,553 225 76,700 49.95 228 57.0
8/10全力 26.6 120,655 61,172 50.70 264
6/10全力 25.6 90,080 48,508 53.85 319
4/10全力 23.2 61,430 33,233 54.10 344
基準速力 16.47 18,595 10,915 58.70 406 8.7

典拠: 戦艦大和 その生涯の技術報告 松本喜太郎 再建社 S27

<解説>
日時・場所は不明ですが、S16.10.18〜20に宿毛港外で行なわれた、予行運転の結果と思われ、排水量69,000〜69,500tでのデータです。福井静夫「海軍艦艇史」には、10/10予行で69,166t、153,550shp、27.46kt、10.5/10過負荷予行で69,097t、165,360shp、27.73ktと記載されています。本級の特徴の一つである球状艦首(バルバス・バウ)は、模型実験の結果、垂直艦首に比べて速力27ktで有効馬力5,535ehpの減少になると算定されています。その他、推進器の張出軸承形状の研究により同1,900ehp、湾曲部竜骨(キール)装備法の研究により同475ehp、合計7,910ehpの減少になり、推進効率Pcを50%とすると、軸馬力で15,820shpの節減となります。一般に戦艦の計画速力時の推進効率は44〜50%とされており、本級の推進効率は戦艦中ベストの部類でした。燃料6,000tでの航続力は単純計算で10/10全力時が2,890浬、基準速力時が11,350浬となります。 本級の公称航続力は16ktで7,200浬とされていましたが、実際にはその約1.5倍であったことになります。
なお、上記文献などで本級の過負荷全力を10.5/10と表現していますが、「機関計画内規」(S6.5.1制定、S16.7.15改正)では、戦艦の過負荷全力を計画全力の11/10(戦艦以外の艦種はすべて10.5/10)と規定していることより、以下11/10と記載します。本級の実際の過負荷全力時にも、計画全力150,000shpの1割増の165,000shp以上が記録されています。

項目 速力
(kt)
軸馬力
(shp)
推進軸
回転数
(rpm)
燃料
消費量

(t/h)
蒸気室圧力
(kg/cu)
蒸気室
温度
(℃)
復水器
上部真空
(mmHg)
巡航タービン 主タービン
過負荷全力 (11/10) 27.68 166,120 228.6 62.7 - 18.95 322 709
公試全力 (10/10) 27.30 151,707 223.2 57.5 - 19.36 319 712
巡航最大速力
(旧、巡航許容全力)
21.54 44,790 156.7 20.5 19.68 14.95 299/260 726
巡航全力
(旧、巡航超過全力)
19.23 30,739 138.8 14.0 19.83 - 298 735
基準速力
(旧、巡航全力)
15.91 17,432 115.4 7.7 16.05 - 257 738
後進全力 17.20 44,370 155.3 42.0 - 15.33 277 718

典拠: 昭和造船史 第1巻 日本造船学会編 原書房 S52

<解説>
日付はS16.10.26〜30、場所は宿毛港外、白崎〜櫛ヶ鼻間(標柱間距離1.1549浬、水深75〜318m)、11/10過負荷全力時の缶受熱燃焼度(主缶の全伝熱面積当り毎時燃量消費量)は62,700÷12÷(895+165)=4.93kg/u-h、燃料6,000tでの航続力は単純計算で2,649浬となります。 なお、福井静夫「海軍艦艇史」には、公試全力で69,304t、151,700shp、27.3kt、過負荷全力で69,200t、166,180shp、27.68ktと記載されています。


3-3. 「大和」の終末運転公試成績 S16.11.30施行

場所 水深
(m)
潮流 海上
模様
風速
(m)
風向 標柱間距離
(浬)
記録番号 速力
(kt)
推進軸回転数
(rpm)
軸馬力
(shp)
佐田岬 90 滑ラカ 5.5 右舷横 1.1009 1 27.97 219.8 151,070
5.5 左舷横 2 26.56 219.7 150,760
5.5 向い 3 28.33 220.4 151,790
第一平均@ (1+2)/2 27.265 219.75
第一平均A (2+3)/2 27.445 220.05
第二平均(第一平均@と第一平均Aの平均) (1+2+2+3)/4 27.355 219.9 151,207

典拠: 大和終末運転公試成績 国本康文 私家版 H19

<解説>

1番航走(潮流:順)と2番航走(潮流:逆)は、推進軸回転数がほぼ同一ですから、おむね同一速力(相対速力)を発揮していると考えられ、潮流の速度は両者の速力差の1/2の0.7ktと見積もられます。
2番航走(潮流:逆)と3番航走(潮流:順)では、後者の推進軸回転数が0.3%増であることより、出力は平均で1%前後増大していると考えられます。
肝心の速力の算定ですが、前記のように連続平均を採りますので、27.355ktとなります。
3番航走で28.33kt出たからと言って、これが最大速力とならないのは、長さ100mの動く歩道の上を9秒0で走ったところで、100m走の記録とは認められないのと同じことです。
惜しむらくは、運転を1往復半で打ち切ってしまったことで、2往復ないし3往復していれば、より信頼性の高い速力データが採取できたものと考えられます。
※軸馬力については、連続平均でなく単純平均を採っていますが、これで良いのか一抹の疑念が生じます。ちなみに、連続平均ですと151,095shpとなります。

3-4. 「武蔵」の公試運転成績 S17.6.施行

項目 速力
(kt)
軸馬力
(shp)
推進軸回転数
(rpm)
燃料消費量
(t/h)
軸馬力
燃料消費量
(kg/shp-h)
缶受熱
燃焼度
(kg/u-h)
噴燃器
使用数
過負荷全力 (11/10) 28.10 166,520 230.3 63.9 0.384 4.66
公試全力 (10/10) 27.50 150,180 223.6 53.6 0.357 4.36 7/9
巡航最大速力 21.26 44,545 156.6
巡航全力 19.18 31,018 140.2
基準速力 16.12 17,546 116.5

典拠: 戦艦武蔵建造記録 牧野茂/古賀繁一 アテネ書房 H13

<解説>
S17.6.22/25に佐多岬標柱間で行なわれた公試運転の結果で、排水量は不明ながら、公試排水量69,100t前後と思われます。10/10全力・11/10過負荷全力ともに、先述の「大和」を若干上回る速力を記録しています。噴燃器(バーナー)の使用数は、10/10全力で1缶当たり9基中7基ですから、主缶にはなお2割程度の力量余裕があったことになります。なお、本艦の燃料消費量は、上記文献記載の軸馬力燃料消費量に軸馬力を乗じて求めたものです。


3-5. 大和型の限界速力

項目 速力
(kt)
軸馬力
(shp)
推進軸
回転数
(rpm)
燃料
消費量
(t/h)
軸馬力
燃料消費量
(kg/shp-h)
排水量
(t)
実施日
11/10過負荷全力(大和) 27.68 166,120 228.6 62.7 0.377 69,200 S16-10-20
11/10過負荷全力(武蔵) 28.10 166,520 230.3 63.9 0.384 S17-6-22
11/10過負荷全力(平均) 27.89 166,320 229.4 -
10/10全力(大和) 27.30 151,707 223.2 57.5 0.379 69,304 S16-10-20
10/10全力(武蔵) 27.50 150,180 223.6 53.6 0.357 S17-6-22
10/10全力(平均) 27.40 150,943 223.4 -

前記の公試運転成績より本級の限界速力を推定すると、上表のようになります。公試排水量69,100tのとき、10/10全力で27.4kt、11/10過負荷全力で27.9ktが実力と言ったところでしょう。なお、本級の減格前の出力は先述のように168,000shpですから、11/10過負荷全力時をわずかに上回り、この場合の速力は28.0ktと推定されます。

一部識者は、本級の速力増大のため、翔鶴型の主機を流用すべきであったと主張していますが、空母を含む補助艦用の主機を主力艦(戦艦・巡洋戦艦)に流用する場合は、先述の初春型の主機と同様、90%に減格することが必要です。金剛型(第二次改装後)も、152,000shpの最上型の主機を90%に減格し、136,000shpとして使用しています。翔鶴型の主機を90%に減格すると144,000shpとなり、本級の所要出力150,000shpに対して6,000shpの不足を生じます。むしろ、短期間(数年間)で使いつぶす覚悟で、減格前の出力168,000shpで運用すれば、翔鶴型の主機を流用するよりも8,000shpの出力増大が可能で、主缶の力量余裕もこれに充分対応可能であったと考えられます。


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