2日間で独立を否定されても、独自外交を貫く「小さなバイキング国 家」

フェロー諸島共和国

首都:トーシャベン 人口3万1781人(1950年)


現在のフェロー諸島自治政府の旗も同じ

1946年9月18日 デンマークから独立を宣言
1946年9月20日 デンマークが独立は無効と宣言

1948年3月30日 デンマークの自治領になる


 
フェロー諸島の空中写真 google

「デンマークってヨーロッパの小国なのに、なぜあんな大きなグリーンランドを領土にしてるの?」と私は子供の時から疑問に思っていたが、調べてみると19 世紀まではなかなかの大国で、ノルウェーを併合し、北海のアイスランドやグ リーンランド、フェロー諸島を植民地にしていたほか、東インド会社を作ってインド(ト ランスケバルとセランブール、アンダマン諸島、ニコバル諸島)やアフリカ(黄金海岸)に植民地を持ち、西インド会社も作ってカリブ海(現アメリカ 領バージン諸島)にも植民地を持っていた。

北海の3植民地は、もともとノルウェーのバイキングが入植していた土地だ が、1536年にノルウェーがデンマークに併合されたのでデンマーク領になったもの。ノル ウェーは1814年にデンマークから独立(ただし翌年スウェーデンが併合)するが、植民地はデンマークに「置き土産」として残されたままになった。

このうちアイスランドは1944年に独立国になったが、独立を宣言しながらデンマークが認めなかったのがフェロー諸島だ。

フェロー諸島はイギリスとアイスランド、ノルウェーの中間にあり、「フェロー」とは羊の意味。7世紀頃からアイルランド人の修道士が修 行の場として利用していたが、本格的な定住は9世紀にノルウェーのバイキングが移住してから。フェロー諸島は寒すぎて農業には向かず、羊などの牧畜や漁業 が盛んになった。こういった経緯から、住民が話すフェロー語はアイスランド語に近く、住民たちのアイデンティティも、デンマーク人よりアイスランド人に親 近感を持っている。

第二次世界大戦が始まり、1940年4月にドイツがデンマーク本土を占領すると、イギリスは先手を打ってフェロー諸島を占領した。イギリス占領下のフェ ロー諸島は、デンマーク本土との行き来が遮断され、イギリスは占領したのはあくまで軍事目的で内政には介入しないと、住民による完全な自治を認めた。

同じくイギリスに占領されたアイスランドが、1944年にデンマークから独立すると、フェロー諸島の住民の間では「俺たちも独立させろ!」という声が湧き起こった。ドイツの降伏で45 年6月にイギリス軍が撤退すると、デンマークへの復帰に対する住民の不満はますます高まり、46年9月14日に独立の是非を問う住民投票を実施した。

その結果、独立賛成が5660票(48・7%)で、反対の5499票(47・2%)を上回った(481票は白票)。そこでフェロー諸島 は独立を宣言したが、デンマーク政府は「賛成票が3分の2 に達していない」ので独立は認めないと発表。フェロー諸島の独立はたった2日間で終わってしまった。

その後の協議の結果、48年からフェロー諸島では高度な自治制度が導入され、内政ではほぼ独立国並みの権限が与えられた。例えば通貨や 郵便切手はデンマーク本土とは別々で、学校教育もフェロー語で行われ、デンマーク語はあくまで第二言語だ。

自治というと「外交と防衛を除く権限を持つ」というケースが多いが、フェロー諸島の場合は外交も一部は独自の権限を持っていて、デンマークは73年からEC (EUの前身)に加盟している のに、フェロー諸島は漁業や捕鯨問題で対立しているので加盟していない(※)。

※1979年に自治政府が発足したグリーンランドは、85年に ECを脱退した。フェロー諸島やグリーンランドの住民はEU旅券は取得できるが〈デンマーク国籍を持っているから)、EUの選挙にはデンマーク本土へ移住 しない限り参加できない。

フェロー諸島は1980年代まで北洋漁業で潤っていたが、90年代になると不漁が続き、、自治政府はデンマーク本土からの補助金で支え られるようになった。失業率も20%近くになり、デンマーク本土に移住する住民が相次いだ。

しかし近年では経済も立ち直り、98年の総選挙ではデンマーク残留派のユニオン党が議席を失い、独立派の共和党が勝利。首相に就任した カルスベアは「2012年までに完全独立する」と宣言したが、2000年から始まっったデンマーク政府との協議では、「独立するなら4年以内に補助金を打ち切る」と言われて、交渉は中断し ている(※)。

※フェロー諸島自治政府の支出は、18%を デンマークからの補助金に頼っている。

フェロー諸島の周辺海域には石油が埋蔵されていることがわかっているが、油田の開発はなかなか進まず、フェロー諸島の独立は「石油が出 るまでお預け」といったところか。

参考資料
吉田一郎 『国マニア』 (筑摩書房 2010)
デンマーク大使館 http: //www.ambtokyo.um.dk/ja/menu/InfoAboutDenmark/FAQ/TheFaroeIslands/
外務省 各国情勢 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/europe.html
wikipedia http://en.wikipedia.org/

 

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