1390876
Date: 06MAY88
Plt No. F1 Model M
TYPE 3197

それなりに歴史のある会社であれば,この手の鍵盤が倉庫に眠っていたりすることもあるかもしれません。本機についての詳細は不明ですが,Unicomp の122 Key Terminal もしくはEmulatorと呼ばれる鍵盤と同デザインであることからして,それらの元祖に当たる型と推測されます。ターミナルという名前からして,大型機の端末用途に作られたものでしょう。

1390876正面写真

コネクタは5pinですが,DIN 5pinやPS/2 mini-DINとは異なります。このプラグについての情報は今まで一般にほとんど知られていなかったのですが,2002年の春になってperegrine氏の調査により詳細が明らかになりました。ご本人の了承を得て下記に概要をご紹介いたします。

1390876のプラグの写真

Peregrine氏が調べたのは,本機と同型で,同系統のアーキテクチャを持つと思われるP/N 1390702のIBM鍵盤です。まず問題のプラグですが、1390702鍵盤のキーボードのコネクタの配線は下図のようになっていることがわかりました。sheildはコネクタのケースとケーブルのシールドに配線されているピンです。ケーブルの内部配線の色との対応は,図にも模式的に示したとおり,GND:は白,電源(5V)は黒,Dataは赤,Clockは黄,そしてSheildは網線です。これはPS/2およびATコネクタの構造と基本的に同じです。

この鍵盤の通信方式が,一般のPS/2キーボードと同じかそれとも本質的に異なるのか興味がもたれるところですが,キーボードコントローラーに接続して測定した結果、1390702においても,PC/AT同様2線(DataおよびClock)で通信しており,11ビット(スタートビット1,データ8,パリティー1,ストップ1)の送信波形を出していることがわかりました。ということは、コネクタの幾何学的形状こそ異なりますが、下図とこの図から対応する配線をつなげば、PC/AT互換機でも使える可能性があるということです(下記参照)。

1390702のプラグ(peregrine氏の研究による)
↑1390702のプラグ(peregrine氏の調査による)

しかしPS/2キーボードとの相違点も多々あります。Peregrine氏によれば下記のような違いが存在します。私の知識を越える世界ですので、Peregrine氏の文章をそのまま引用します。
1.スキャンコードセットは3(IBMの技術解説書SA18-7472-0にでている5576−001のスキャンコードセット3)相当のものになっています。キーの数が2つほど違うので完全には同じではありません。

2.キーはModifierキー以外はメークキー,ModifierキーはMake,Brakeに初期設定されています。

3.キーボードIDを要求するとBFBFと応答します。

4.BAT完了コードはAAで同じですが,その後IDのBFBFを送信してきます。

5.スキャンコードセット変更のコマンドは受け付けません。3のみのようです。

6.上記2つのどちらかあるいは両方が原因だと思われますが,私の職場のPC(AsusP3B-F)ではBIOSがKeyboard Errorを報告してきます。無視するように設定すると使えてしまいますが。

7.LEDはついていませんが,LED設定コマンド自体は受け付けるようです。状態を取るコマンドが定義されていないので,本当に受け取ったのかはよくわかりません。キーボードのエンコーダーの基盤にはLED用かと思われるコネクタを取り付けられそうな配線があるので,ファームウエアの実装自体はされているのかもしれません。

以上でperegrine氏のご報告の紹介を終わります。素人的感想を並べたに過ぎない私のサイトに、このような高水準の技術情報を掲載できたことをうれしく思います。世の中には、たとえばNTTの山崎憲一さんのように、キーボードエンコーダを自作してしまう人もいます。Peregrineさんも山崎さんも、私から見ればほとんど神の領域です。神々の声を聞けるようなサイトがどんどん増えることを願う次第です。

1390876の角ロゴ写真

さて,気を取り直して印象批評に戻りましょう。80年代に作られただけあって,全体に重厚なつくりです。特にこの角ロゴが素敵です。IBMの字が傾いたロゴよりも,この金属角ロゴの方がずうっとよいと思います。実はわざわざこのような重たくてPC用には使えるわけもない鍵盤を貰い受けた理由の大部分はこれです。もともとIBM PC鍵盤およびPC/AT鍵盤にはこのような角ロゴがついていました。enhanced 101系統になってこのロゴは駆逐されたわけですが,しかし一部にこの角ロゴは生き残りました。本機がそうですし,また,babo氏のコレクションには1986年製の1389983という型が挙げられています。これはフランス語版です。US英語版では1390131というモデルが角ロゴを持つことが確認されています。こっちのモデルは別項で紹介しましょう。

1390876のキー配列写真その1

IBMの大型機用の端末の常として,右CtrlがEnterとなっています。Field Exitという表記は,これまたサーバー用の鍵盤である3479-JA1を思い出せます。その形状はやはり逆L字型であり,1391401などとは形状が異なります。6450200(PC/AT用鍵盤)の項でも書きましたが,このような形状のキーは1980年代からしばしば見られるもので,決して日本語用鍵盤のリターンキー形状が邪道なわけではありません。上の写真には「¢」などのEBCDIC特有の記号が見えます。

下の写真のように,zキーとShiftが隣接しないのは,UNI04C6と同様の特徴です。その配列のルーツを探る上では注目されます。赤十字のようなマークのキーがかわいらしいです。

1390876のキー配列写真その2

2列のファンクションキーが,写真のようにかなりの傾斜がつけられた筐体に配置されていて,湾曲配置を際立たせています。筐体は私の知る限りIBM鍵盤の中で最大で,さすがに日本の住環境には向きませんが,例えばカウンターのようなところに向かい立って仕事をすることを想定すれば,その安定性が逆に使いやすいかもしれません。

1390876を側面から見た写真

スイッチの構造は,1391401と同様の,薄膜接点+座屈ばね方式です。キートップは着脱式です。端末用の鍵盤にありがちなことですが,私の手元にあるものは10キーにやや摩滅が目立ちますが,ばね機構には何ら変化が見られません。座屈ばね構造の,非常に高い耐久性を示す一つの例になると思います。
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