袴各部名称・用語    どこにアイロンをかけるか?    アイロンのかけ方    必要な道具    襞落ちを防止する縫い方    腰板が割れたらどうする?


「今度の試合は、少しきれいな袴が履きたい(履かせたい)なあ」と思いたったとき、貴方は一体どうしますか。
  1. 新調する:    現在使っているものが穴だらけで、遠目からでもそれがわかる場合に。ただし在庫の有無にもよりますが、名入れと裾あげもいれれば、手元にくるのは最低1週間はかかると見て良いでしょう。お金と時間の余裕がかなりあるときに。
  2. クリーニングに出す:    使い慣れている袴をすごくきれいに仕上げるには、これが一番。やはりプロの仕事は違う。価格は1000〜3000円(着物屋さんには出さないように。武道用袴で普通のクリーニング屋さんに出しましょう)。クリーニング屋さんによっては取り扱っていないところもあり、またお店から別の工場へ集積される場合には、ものすごく時間がかかる場合があるので要確認。これもお金と時間の余裕があるときに。
  3. タライで押し洗いor振り洗いした後、できるだけ皺をのばして乾かすのみ:    昔はこれが当たり前だったそうです。そういえば「寝押し」って技もありました(敷布団の下に形を整えた衣類を敷、その上に寝る)。でも皺は残るし、時間もかかる。疲れます。
  4. 色落ち・腰板割れ覚悟で洗濯機で洗う:    やはり忙しい現代人はこれ。もちろん洗濯ネットに畳んで入れて、手洗いモードです。脱水はできるならしない方が良いです。でもまだ皺の問題は消えません。

    「履いた後は、襞(ひだ)をととのえて日陰に吊しておくか、きれいに畳んでおけば充分。 袴にアイロンなんかかけない」という方も多いし、「いたむから洗わない!」という話も聞きます。

時間も金もないけれど、しかし、塩を吹いた腰板やヨレヨレの紐をなんとかしたい。求む「形状記憶袴」&「光触媒脱臭コテ・面」の開発。

    これら夢の商品が”お求めやすい価格で”発売されるより、自分でアイロンをかけてしまった方が早いので、プロに効果的なアイロンのかけ方を聞いてみました。
    「前置きはいいから方法を早く教えろ」という方は、→こちらへ
    アイロンがけしやすいように、また襞落ち防止に襞を縫っておく方法を知りたい方は、→こちらへ
    ちなみに、腰板が割れてしまったときは、→こちらへ
    袴の各部名称は「新着物の作り方全書」文化出版局、「きもの用語大辞典」装道きもの学院、「服装大百科事典」文化出版局、「きもの百科第3集」マコー社から引用させていただいております。
    なお、これら襞の始末縫いやアイロンのかけ方等は、みどり区のみよちゃん(和裁歴五十年以上)からご教授・監修いただきました。ありがとうございます。

    まずはアイロンがけを説明する前に、袴の各部分の呼び方をおさらいします。


    「面倒くさい」と思われた方は、迷わず
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袴各部名称・用語
 用  語   よみがな  意     味
相引きあいびき「相引」とも書く。袴(はかま)の両脇の、前後の布を縫い合わせた所。脇あきの縫い止まりから裾までの部分。
相引き止まりあいびきどまり「相引(き)止まり」、「相引(き)留まり」とも書く。脇あきから前後の布を縫い合わせ(相引き)が始まる部分。「股立ち」ともいう。
板目紙いためがみ腰板の中に入れる芯。昔は10枚ぐらいの美濃紙を糊で貼り合わせたものを入れたらしい・・・(これは洗えない@@;)。今は樹脂製が大半。洗えるけど、劣化すると割れる。割れると背中に食い込んで非常に痛い(経験者談)らしい。
後腰幅うしろごしはば腰板の底辺の部分の長さをいう。単に「後幅」ということもある。
後襞うしろひだ袴の後側にある襞。男袴は、見かけ上後襞はひとつ。
後ひもうしろひも後紐。腰板に縫いつけてある紐。
切り上げきりあげ蹴回しの前の襞の部分。足さばきが良いように、1〜2cm裾を短くカットするが、最近はそのまままっすぐのことも多い。
蹴回しけまわし袴の裾の部分。
腰板こしいた袴の後腰に当たる台形の部分。後紐が縫いつけてある。前ひもを結んだ結び目の上に載せて背中に密着し、袴を安定させる役割を持つ。
笹襞ささひだ男袴では前布のひもつけ位置から相引きの上までのひだで、形が笹の葉に似ているところからこの名がある。
付菱つけびし腰板に後紐を縫いつける部分にある三角形のこと。
投げなげ後布の脇あき部分を内側に折り返した三角形のこと。女袴では、ここも笹襞になっている。
乗り間のりま右足と左足を入れる部分を仕切っているところ。ズボンの股ぐり・股下に当たる部分。畳むときは、履くときの方向で袴を持って良く振り、上から見て乗り間を右方向に寄せると、襞が比較的きれいにそろえられる。
袴止めはかまどめ腰板の底辺、内側についている堅いへら状のもの。前紐の結び目と背中との間に差し込み、腰板を安定させる。「袴のへら」とも呼ばれる。
ひだ左右とも外側から順に「一の襞」、「二の襞」といい、向かって右側(履いた人間には左側)のみ「三の襞」があり、計五本の襞がある。剣道では、それぞれ「仁義礼智信」を表す。これは不確かな情報だが、アイロンで二重線にしてしまったり、襞を新たに作ってしまうと、「恥(ち)」や「痴(ち)」が加わるらしい。
ひも下ひもした前ひもの縫いつけてある部分から裾までの長さ。できあいの袴では、普通この長さだけでサイズを決める。オーダーメードの場合、これに前腰幅、後腰幅、紐の長さを選ぶ。
前腰幅まえごしはば前腰(まえごし)とは前紐の腹に当たる部分。前布に縫いつけてある前ひもの部分の幅。「前幅」ということもある。
前ひもまえひも前紐。前布が縫いつけてある紐。後ひもより長い。
綿袴めんばかま綿でできた袴。上級者が好んで履く。履き心地は堅いが、汗を吸い取り足にまとわりつかない。湿気の多い夏には心地よい素材。藍染めの風合いは色落ちも含めてとても良い、が、何度洗っても色落ち(専用洗剤であれば色落ちが少ない)し、袴単独か、同色の道着としか洗えない。洗い上がりはシワシワ。アイロン必須。しかも高価。別名「主婦の敵」。
これに対してテトロン素材の袴はしなやかで、肌触りが柔らかい。皺になりにくいし洗濯機で洗っても比較的襞が落ちにくい。ポリエステル素材はテトロンより軽く、皺になりやすく襞が落ちやすい。夏は暑い。しかし最も安価。テトロン・ポリエステルのような化繊は、稽古の時に擦れると溶けて穴が開く。
脇あきわきあき脇明き、脇開きとも書く。相引きから前ひも・後ひもまでの部分。

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    クリーニングに出したように全部を全部、きれいにするのは不可能。では、どこに注意してアイロンをかければ良いか?

ピシッときれいに皺を伸ばしたいところ
  1. 後襞のネームの周り。
  2. 相引きの周り/裾から相引き止まりくらいまで。
  3. 右の第二と左の第三の襞の間/いわば右(右足が入っている方/向かって左)の第三のひだにあたる襞。もちろん表に出る襞山を二重線にしないでアイロンをきれいにかけること。
実は、他のところをきれいにしても、ここに皺があるときれいに見えない場合があります。

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アイロンがけに必要な道具・あったら便利な道具

    この時点で「面倒くさい」と思われた方は、迷わず
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 ここでは便宜上、画像のように上から見て凸状の折りを「山折り」、凹状の折を「谷折り」とします。
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アイロンをかけます
  1. アイロンのスイッチを入れましょう。アイロンの温度は、最高でも160℃(中温)です。湿った綿袴をモウモウと湯気を上げながら最高温でアイロンがけするのは爽快ですが、藍の色が褪せます。もちろん化繊は溶けます。温度設定は素材に合わせて。

  2. 袴を裏返します。

  3. 前と後ひもにアイロンをかけます。スプレー糊があるなら、後ひもに使うと、気持ちよく結べます。当て布を当てた方が、縫い目の角がテカりません。が、あまり表に出ないので、それほど気を遣う必要はありません。

  4. 裏側にして、山折りと見られる襞全てにアイロンをかける。裾の間際になるに従って丁寧に。前腰・後腰付近は無理しない。
  1. 袴を元通り表に返します。これからは、すべて当て布(ハンカチ・面タオルなど)を当ててかけないと、テカテカになります。制服のプリーツスカートを思い出しますね。

  2. 脇あきから左側(左足が入る部分)をアイロン台に被せて、相引き周辺の広い部分の皺を伸ばします(丈が長い場合は、裾の方から被せたり、写真のようにたぐって徐々に裾からかけていきます。たぐったところが皺にならないよう優しく扱いましょう)。ついでに届く範囲のところをきれいにしてしまいましょう。このとき裏返しの時にかけた折り目は避けましょう。

  3. アイロン台から左側の裾を引き抜いて、左裾の山折りの襞全てにアイロンをかけましょう。

  4. 右側(右足の入る方)の裾の方からアイロン台に被せて、第一、第二の襞を確認し、三番目の目立つ部分にアイロンをかけます。



  1. アイロン台に被せた布を回して、右側の相引き周辺の広い部分の皺を伸ばします。ついでに届く範囲のところをきれいにしてしまいましょう。今までかけたアイロンがくしゃくしゃにならないように丁寧に扱いましょう。

  2. アイロン台から右側の裾を引き抜いて、右裾の山折りの襞全てにアイロンをかけましょう。

  3. 後襞をととのえて、今度は腰板の方からアイロン台に被せましょう。アイロン台でなく万十や、畳んだバスタオルの方が扱いやすいです。腰板下の後襞とネーム周りをきれいにしましょう。このとき当て布を忘れると、ものすごく目立つテカり二本線がつきます。

  4. 出世畳みに袴を畳んで出来上がり。

    これを読んで気力が萎えたときには、やれるだけのことはやったとうそぶき、
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    袴各部名称・用語    どこにアイロンをかけるか?    必要な道具    襞落ちを防止する縫い方    腰板が割れたらどうする?



        ふと気がついたときには、襞がどこにあったかまったくわからない・・・なんてことは、綿袴・ポリエステル袴には良くあります。襞同士が平行になっていることに注意して襞を折り直すしかないのですが、その前に補助的に縫っておくと、この苦労は少なくなります。


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        不運にも洗濯機から取り出した袴の腰板が完膚無きまでヘナヘナだったとき。
「持ち主に見つかったら、何と言われるか・・・」なんて悩む必要はありません。貴方の責任では絶対無いのです。持ち主の汗に曝され、樹脂が劣化していたにすぎません。悪いのは汗!
「文句を言うなら自分で洗えばよい」と心を落ち着け(開き直り)、誰かに見つかってあれこれ不快な思いをする前に、それこそ「不動心」で直してしまいましょう。
腰板の内側底辺か、片方のサイドの縫い目をほどき、割れた樹脂(板目紙)を取り出す。
→厚紙の上にパズルの要領で台形に並べ直す。 →厚紙にマジックで上から並べた腰板の型を取る。 →バインダーの表紙など、厚さと柔軟性が樹脂に近いものを型紙通りに切り抜く。 →切り抜いたプラスチック板を先ほどほどいた所から腰板部分に入れ込む。 →元通りにかがり直せば、誰にも気づかれずに対処可能です。

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