愛 読 書

 官能小説に限って、私が影響を受けた愛読書を紹介します。今では手に入らないものが多いので、私の作品と実際に読み比べると言うのは難しいのですが……。

 なお、「義母」「伯母」2作は、私が官能小説を書くきっかけになった、原点とも言うべき本です。


●義母(My Mother Taught Me トー・クン著 フランス書院)

 初めてフランス書院の本に出会ったのが、この「義母」でした。

 書籍の表紙としては珍しい緑色の表紙と、官能的な題名に惹かれ、書店で手に取って驚きました。そこには、胸をあらわにした女性が、悩ましげな表情でこちらを見ていたのです。

 そこには、それまで読んでいた日本の官能小説とは、まったく違う世界が広がっていました。妖しく近親相姦めいて、それでいて、日本の告白ものようなどろどろしたいやらしさは微塵もなく、何とも高貴な雰囲気が流れています。舞台を、世間から隔絶したスウェーデン貴族の屋敷にしたせいでしょうか。

 後に、同じ作者の評判の高い「女教師」「姉」なども読みましたが、「義母」の独特の雰囲気のほうが圧倒的に好きです。おそらく、設定や、翻訳者と私の相性などもあるのでしょう。


●伯母(Naughty Aunt ノーマ・イーガン著 フランス書院)

 次に出会ったのが、ノーマ・イーガン「伯母」です。ノベルス版では、「ぼくの伯母」となっていると思います。性的な欲求不満に悩まされ続けている美しい伯母が、夏休みに会いに来たを誘惑するという物語です。

 水色の表紙に、黒髪の女性が官能的にほほ笑んでいるこの本は、私に、「義母」にも負けず劣らずの衝撃を与えてくれました。書店で立ち読みした後、家に帰ってから、熱病のように身体の火照りが収まらず、思い出しただけで興奮したのを覚えています。

 「伯母」は、官能描写に関しては、「義母」よりもセクシーでした。これは、「義母」がすべて男性1人称で語られるのに対し、「伯母」では女性快感ややるせなさが切々と語られており、より官能的な思いが読者に伝わるからでしょう。
 

 また、同じ著者の「義母の寝室」は、さらに女性の欲求不満の色合いが強まっています。モラルからどうしても脱し切れない彼女は、義理の息子に無理やり犯されることにより、初めて解放されます。



●継母(A Mother's Yearning ブラッド・アリスン著 フランス書院ノベルス)

 内容は「伯母」に似ていて、夫に構ってもらえない女性が、義理の息子に慰めを求める話です。「伯母」よりも、よりいっそう、主人公の女性の欲求不満の色合いが強まっており、求めかたもストレートです。

 この中では、毎回爆発するような快感の描写と、目の前に迫って来るような鮮烈な色合いに、見習うべきところがあると思っています。



●婦人科医(Sex Clinic ジョン・デヴィス フランス書院ノベルス)

 婦人科のハンサムな医師が、人妻たちからお金を取って彼女たちの性的欲求不満を解消してやるという、男にとってはまさにのような物語です。

 他の官能小説とは一線を画したその設定は、まさに他の追随を許さず、今に至るまで類書が殆んど現れていません。同じような設定にすると、どうしても盗作扱いを免れないからです。



●肉体の賭け(団鬼六著 桃園書房)

 料亭の借金のために、悪徳金融業者の前に身を投げ出した美貌のお女将が、監禁されていたぶられた挙げ句、騙されて料亭を乗っ取られるという救いのない内容です。

 団鬼六氏の著書に触れたのはこの本が初めてでしたが、迫力のある絶妙なレズシーンに、それまでのロウソクとか緊縛とかいうSMのイメージが、がらりと変わりました。

 特に、を陰湿にいたぶるというのは、それまで殆んど考えたこともなかったので、激しいショックを受けました。私の小説に、レズシーンが多いのは、この小説に影響を受けているせいもあるでしょう。完全版が、幻冬舎アウトロー文庫から出ています。



●快楽の生贄たち/背徳の仮面(作者不詳 富士見ロマン文庫)

 イギリスの、ビクトリア朝時代に書かれた古典ポルノで、4作シリーズの第2、第3作に当たります。

 第1作は、生意気な婚約者を監禁してこらしめる話。「快楽の生け贄たち」は、屈服させた婚約者を使って、彼女の女友だちを次々と監禁しては、性の虜にしていきます。

 「背徳の仮面」は、婚約者との結婚に反対する彼女の監禁し、一見、性に関心がないように思えたが実は情熱的な官能の持ち主であることをも暴いて、彼女を屈服させます。

 一見、凌辱もののように見えながら、情事が終わった後に女性たちはこの主人公と慣れ親しみ、それまでにない悦びを得たことを白状します。

 このような、やさしいSMというのは、私の作品にも数多く登場しますが、この本や、前出の「義母の寝室」に影響を与えられたものであることは、間違いありません。


 他にも、影響を受けた本は、いっぱいあります。勿論、フランス書院の他の先生方の作品には、大きな影響を受けており、「やられた」などと思うことも稀ではありません。