
ここに載せるのは、私の物語である。
日記、といえば耳に好いが、それほど素敵なものでもない。
記録、といえば途端に形式的になるが、それほど冷たいものでもない。
物語。そう。私と、あの子と、そしてあの紅い娘との出会いの物語である。
それでは、1つ書かせてもらおう。
始まりは、私がある研究に行き詰まったところから…。
******************************
身体が強張るのが判る。
黒い影が視界を埋めていく。
それはまるで龍が咆哮しながら襲い掛かって来るかの様だ。
頭の奥で警鐘が鳴り響いた。
命を賭して戦え、と。
******************************
手にかざした魔道書から、水を得た大樹の幹が激しく幾重にも連なって伸びる。幹の先端は鋭く、腹は硬い。逃れる先を遮るように河からは水弾が飛翔する。
水と木を同時に操る魔法。もう息が継げない私にはこれが通じなければ何もできなくなるだろう。
「…っ、…っ。」
力を維持し続ける限り肺は働こうとしてくれないらしい。
時間すら、ない。
******************************
何かを言っている。顔を上げてくれた。今、助けますから。駆け寄る。剣を持った男に。
男が剣を振り下ろす前に。左手で何かをしている。構うものか。今、その手にもった剣を奪って。
「いやぁぁぁぁああああああぁぁっっっ。」
これは私の物語。日記よりも素敵で、記録よりも温かな私の物語だ。
第五回 東方紅楼夢発刊予定作品
『紅魔想起譚 紅』
新書判130P \500−
キャスト:パチュリー・ノーレッジ、小悪魔、紅美鈴、他
原作:上海アリス幻樂団 東方Project
著者:和紀 【鏡花風月】
表紙・挿絵:霧嶋 水季 【Gimmick Castle】
スペース<N−08ba>にて販売予定。
お手に取っていただければ幸いです。