
お腹が満たされれば、早々に活動を再開しなければならない。
と言ったところで、鋸岳の攻略法などあるはずもないのだが。
つまり、行けるところまで攻め込むのが攻略法と言う、安易な作戦しか持ち合わせていないのが実情だ。
小ピークを幾つか越えながら、鞍部へ向けて除々に降下していく。
進行方向に、御殿場市(北東方向)を見渡せる場所を通過した。
左右の稜線付け根付近が、取り付きの山神社付近だと思われた。
こちらは、反対側のV字に切れ込んだ南側方向。
長い年月を経てきた侵食で、深い渓谷を形成しているようだ。

割石峠までは、昼食地点より僅か10分ほどしか要しなかった。
GPSが表示する標高値は、1253m。
これより左方向へと下れば、大沢を経由して起点の須山山神社へ戻れる下降点でもある。
もしもの場合には、これよりエスケープするつもりでいたルート分岐だ。

で、反対側のぱっくり割れた切れ目こそが、割石峠の由来ともなったV字峡谷。
「割石峠」と言うくらいだから、かつてはこの方向へも下れたのであろうか?
絶対に無理っぽく思えるが・・・
峠には、一人の若者がザックを降ろし休憩していた。
話を聞いてみると、我々と同様に越前岳からやってきて、鋸岳の様子を偵察してきたばかりだと言う。
「 そうですか! 通過できそうですか? 」 と、もちろん尋ねてみる。
「 笹薮が濃くて・・・ 」 彼は首を傾げるばかりで、どうにも要領を得ない。
内心では「やめた方が良いですよ」と、言いたかったのかもしれないな。
「 うーん 」困った。 現地での状況を聴取できぬまま突入するしか手はなさそうだ。

峠から先は、高低差20mほどの直登から始まった。
登りつめた地点に、「 天狗の畑 」と書かれた右方向への案内板が立っていたので、M氏には待っていて頂き、ワタシだけ寄り道してみることにした。

そこには何があるのだろう?
期待してみたが・・・・
あらら
僅かに下ると、10m四方の平地があるだけ。
それなら、寄らなきゃ良かったか。
縦走路脇の笹藪をかき分けながら、
地元山岳会の方達が、定期的に実施するブナの定点ポイントを通過して、
我々は、蓬莱山の頂に達した。
蓬莱山の頂は、長方形の平地だった。
ルート標識には、蓬莱山と書かれてあった。

目に付いたのが、西側の隅に佇む石仏。
笹竹がうっそうと茂る蓬莱山の頂きには、何故かしらお地蔵さまがいらしゃった。
もしかして、遭難者を供養するために安置されたもの?
そうでないこと、祈りましょうぞ。
導入編で説明したとおり、蓬莱岳は愛鷹連峰の主峰から除外されているようだ。
不思議に思いマップを調べてみたら、蓬莱山(1296m)を鋸岳と誤表記してあるものが多いことに気がついた。
したがって鋸岳の一部と考えられなくもないが、下記の小川原図では鋸岳と蓬莱岳は区別されている。

これは、某サイトからパクった画像に処理を加えたもの。
つまり鋸岳とは、五歯からなる山の総称を言うのではないだろうか?
結論がなくてスミマセン。
マウスポインタを画像に→
裏画像も雑誌からパクったものだ。
袴腰岳から北を望むと、このように見えるらしい。
マップ(カシミール)だと、歯先の凹凸は、まったく判然としない。
しかし実際には、とんでもない凹凸が、この区間に存在するのですよ。

そして、蓬莱山からの侵入を阻むがごとく、南の端に警告板が建てられてあった。
「 立入りはご遠慮ください 」
文言のどこにも「禁止」とは書かれていないし、ロープ等での立入阻止もされてはいない。
つまり、図々しい我々が遠慮などするはずはないってこと。
さあこんな警告は「 スルー 」して、いよいよ本日のクライマックス区間へ突入開始だ。

そして、これが警告版の先から見えた鋸岳の全容。愛鷹連山で最も風化・崩落が顕著な区間を通過しなけばならない。さらに越前岳へ続く尾根筋もはっきり確認できた。
久々に、ワクワクさせてくれるじゃないか!
では最初に、辿るべき巻き道ルートをお見せしておこう。
← マウスポインタを画像へ
位牌岳までの直線距離は、約1km。
赤線が、見えている部分。青点線が裏側に回り込むため、隠れて見えない部分を表している。(想像で描いたので違っているかも)
下方からS字を描きながら中央でルンゼを越え、巻いて行くわけだ。
昔は、鋸岳の五つ歯を正確に乗り越えていくルートもあったようだが、流石にそちらはクライミング技術と装備を持たぬ我々ごときでは、到底太刀打などできっこない。

先ずは蓬莱山からいったん降下し、チェーンを使用して小ピークへ登り上がった。
ここで案の定、高所恐怖症のM氏が早くもビビリ始めた。「 危険過ぎるから、引き返そう 」、「 若しくは沢を下って大きく巻いていこう 」と。
「 ここまで来たのですもの、参りましょうよ 」 「 ルートを正確に辿って行くことに意味があるのですから 」 「 ここで断念したら、絶対に笑いものですよ 」
「 では、先頭を代わってくれ 」 「 了解です 」 首から提げていたFZ18をザックにしまい、ここからの撮影はZ700へ変更しなくてはならない。
小ピークの狭いスペースで、ワタシとの先頭チェンジも行われた。
これは、M氏撮影による画像。
前を行くワタシの姿を、ご確認いただけるかな。
チェーンを頼りに、慎重に南面を巻いていく。
足を踏み外せば、死ぬことはなくとも這いずりあがるのは至難の業かもしれない。
こうなれば後戻りはなし、もはや前進あるのみでしょう。
「 大丈夫行けますよ〜 Mさん いらっしゃいまし〜 」

縦走路上だと示す案内板も掲げられてあったし。
思いのほか、チェーンフィックスもしっかりしているようにも思えたし。
振り返ってM氏を撮影。
ほらね
大した斜面じゃないでしょう。

うわ〜 危なっかしいですな。
そして、難なくルンゼ越えのスラブ壁面までやってきた。
チェーンに捕まり、50度ほどの斜面を登攀する地点。
EX−Z700の故障に気付いたのが、ちょうどこのとき。
何度撮影しても、露出オーバーでしか写らないのだもの。
画像処理をしたものの、明→暗の補整には限界がある。

それにして遅いなぁ〜 Mさんたら。
振り返ってみたら、まだあんな窪地にいらっしゃるし。
どんどん先に行っちゃいますよ。
これが、ルンゼを登り上がった鞍部から下方を撮影したもの。
アスレチックみたいで、結構楽しいぞ。

そして、またしてもルートを示す案内板がそこにあった。
ここがS字を描く、ちょうど中間地点となる。
さて、こちら反対側につけられた、先へ進む巻き道ルートの全景。(たぶん)
画像だとよくわからないが、いずれにせよ上部まで辿らねばならないわけだ。
ここは、一歩目の踏み出しがコワイ。
ロープに掴まって水平に進み、僅かの下り込みから始まる。

これもM氏の撮影画像。
ワタシは気付かなかったが、脆い岩質のためフィックスが外れた箇所もあるので注意せねばならない。
ほーら、スゴイでしょう。
これが、何本目の歯なのかは、ワタシにはわからない。
次回来ることがあったなら、良く観察してみましょうか。
そして、見晴らしの良い場所までやってきた。
辿ってきた方向を振り返って、撮影してみた。
ここで、M氏を待つことにしましょうか。

反対側から先ほどの蓬莱岳を方向を望むと、鋸歯が一直線に並んでいないことがわかるでしょう。
つまり、ここを縫うように辿ってきたわけ。
それだもの、現地ですらどう辿ったのかまでは、はっきりしなかったのだ。
しばし待っていると、2分後にM氏はやってきた。

「 ダメですよ〜尾根を行っちゃ 」
「 思いっきり腰が引けてますよ〜 」
「 向こう側は断崖絶壁ですから、こちら側を巻いて下さい」
「 ・・・・・・ 」
もっとも、こちら側も断崖絶壁ですが・・・
この先で二人の男性とすれ違った。
彼らに尋ねると、「 大丈夫 行けますよ 位牌岳までなら、あと一箇所だけ鎖でトラバースするだけですから 」
我々は既に難所は通過していたようだった。

そして上記掲載マップA地点の観測ブナその2を通過した。
ここは、ルートを間違いやすい地点。
直進してはならない。左上へとスイッチバックする地点だよ。
さらにその先のB地点でも、下降する踏み後を辿って間違えたし。
「 ラック
ラック 」
しかも、人の頭ほどもある石がワタシの脇をすり抜けて・・・・

そして、ようやく北沢下降点へと辿り着いた。
僅か600mの区間にも係わらず、鋸岳通過に要した時間は1時間と7分。
少々かかりすぎましたかな。
カシミールマップ
