中秋の名月も過ぎ去り、気がつけば金木犀の季節。


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10月6日

「世界から見た日本コンテンツ、その強みとは?」参加レポート

※念のため、以下「アニメ」は基本的に日本産アニメーション、「マンガ」は日本産コミックのことを指します。

去る9月27日に、高田馬場にある「東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ(TCPL)」にて「世界から見た日本コンテンツ、その強みとは?」と題した公開プレ講座が開かれ、経済産業省の三原龍太郎さんと、「株式会社アニメ!アニメ!ジャパン」代表の数土直志さんによる講義が行われた。


1.経済産業省の三原龍太郎さん「北米におけるアニメ消費の実態」

三原さんは今年の春まで2年間アメリカに滞在し、日本のアニメが実際にどのように北米で受け入れられているのかを調査してきた。その実体験を元に、北米でアニメがどのように消費され(見られ、楽しまれ)ているのかを聴講者に語った。

まず三原さんは、コンテンツの制作から消費に至るまでの過程において「コンテンツは必ずしも制作者の意図した通りに消費されるとは限らない」という点を指摘した。日本国内においても制作者の提供した作品内の「仕掛け」が消費者の嗜好にそぐわないことが往々にしてある。ましてや日本とは全く異なる文化圏の人々に作品を売り込む際に、「日本で人気がある作品だから世界でも人気が出るはず」と考えるのは楽天的にすぎるどころか危険であるとさえ言えるかもしれない。

講義は次に、北米における「アニメ文化」がどう捉えられているかの解説に移った。一般にアメリカ人にとっての「アニメ」は、アメコミやハリウッド作品と比べてまだ影響力が弱いことを踏まえると「ポップカルチャー」とは言いにくく、「アジア系アメリカ人の文化」「ハリウッドなどへのアンチテーゼ」としての「サブカルチャー」「カウンターカルチャー」という側面が強いとされている。しかし潜在的にはむしろ「ethnic/exotic/oriental/colonial culture(民族/異国/東洋/植民地文化)」といったようなものして見られているのではないかというのが三原さんの見解だ。自国とは全く異なる文化の産物に対して(作品の良し悪しとは別の次元で)多かれ少なかれ「色モノ」的な見方をしてしまう心情はある程度理解できる。例えば、おそらく日本人でも欧米人でも、インド映画に対して抱く印象は概ね似通っているのではないだろうか。

また、日本と北米におけるアニメファンのアニメ観についても言及された。北米アニメ史では「攻殻機動隊がクラシック(古典)作品」「ガンダム=W(ウイング)以降」とみられていることや、北米におけるアニメタイトル数の絶対的な少なさやスポーツアニメの不人気といった実例を挙げ、北米で受け入れられるアニメには日本以上に偏りがあると語った。

最後に、北米アニメファンにとっての主な活動場所である「アニメコンベンション」と「大学のアニメクラブ」について、写真を交えながら紹介。大学のアニメクラブが主催するアニメ上映会は一般人も参加可能であり、クラブメンバーによる会議やオンライン投票によって上映作品が選定されるという具体的な実状を知ることができた。


2.「株式会社アニメ!アニメ!ジャパン」代表 数土直志さん

世界のマンガ・アニメ関連ニュースを中心として扱うウェブサイト「アニメ!アニメ!」を運営している数土さんは、海外のアニメ・マンガコンベンションを直接取材した経験も多く、海外のアニメ・マンガ事情について最も詳しい人物の一人といえるだろう。

最初に取り上げたテーマは、「アニメ・マンガは海外で人気があるのか」。昨今は北米版アニメDVD売上高の慢性的な低下が伝えられているが、それでも数土さんは「人気がある」と断言する。

数土さんは、北米アニメ市場を「巨大なニッチ市場」と称した。ニッチ(すきま産業)ではあるものの、北米におけるアニメ市場の中心はごく少数のマニアによって形成されているわけではない、という意味であるようだ。

例えば、北米版「崖の上のポニョ」の売上は約1500万ドルとされているが、北米の映画館の入場料を考えると、観客動員数は推定250万人程度になるらしい。これは、海外アニメーション映画「カンフーパンダ」の日本国内における観客動員数(これが昨年の最多記録)とほぼ同数とのこと。

また、2003年から2009年にかけて、日本のアニメDVD売上が700億円程度のほぼ横ばいであるのに対して、北米のアニメDVD売上は約500億円から(推定)300億円に減少しているが、現在の北米版アニメDVDの単価が日本版の約半分であることを踏まえると、日米間のアニメ消費者人口にそれほど大きな差はないと推測できる。

マンガについては、「北米市場は日本の25分の1だが、単行本市場だけなら日本の12分の1」だという。これはマンガ雑誌の商業規模に著しい差があることが要因であるとしている。いずれにせよ小さい市場である、と一見そう思える数値だが、実は日本のマンガは北米コミック市場の3割、フランスのコミック市場に至っては4割を占めている。これ以上「マンガ」のシェアを伸ばすことは商業的にも文化的にも難しく、下手をすると文化的侵略とみなされ海外からの批判の的になる可能性もある、と数土さんは注意を促した。

続いて「北米市場と他の海外市場との相違」や「米国マーケットの現状」が語られたが、そこで強調されたのは「米国で日本産コンテンツのビジネス展開をすることの難しさ」だった。

そもそもアメリカの市場には「コミックス(アメコミ)」「カートゥーン(アニメーション)」が存在し、なおかつエンタテインメント市場全般にハリウッド作品が強い影響を及ぼしている。それ以外の作品が入り込む余地はもともと少なかった。マンガ市場は約200億円で、アニメDVD市場は約300億円。テレビ放映による収入は放映作品数の激減によりほとんど期待できず、違法配信対策として始められたネット配信による収入も、今年本格化したばかりの事業とはいえ1億円程度と振るわない。

それでも、北米で大ヒットしたアニメ作品が存在することもまた事実だ。一時期大ブームを起こした「ポケットモンスター」は、いま再び盛り返している模様。同業他社が軒並み不振であるにもかかわらずアニメ販売会社のFunimationが業績の好調を保っていられるのは「ドラゴンボール(Z)」のおかげであるとされているし、「ナルト」の売上は世界各国で他のマンガ・アニメ作品のほとんどを圧倒的に突き放している。「アフロサムライ」「FFVII Advent Children」「エクスマキナ(アップルシードの続編)」など、日本よりも北米でヒットした(いずれも十万本単位の売上を記録)作品も無視できない。

以上の事実から数土さんは、現在「海外アニメ市場の崩壊」と呼ばれている現象は、実際には「マニア市場の崩壊」とみなすべきであると論じた。また講演の終盤で、市場崩壊の主な要因について「ニッチな分野にもかかわらず製品を安価で売ったのが失敗だった」とも語っている。

テレビ放映が減少し、違法配信の影響によるDVD市場の縮小が販売会社を危機に陥れている業界の現状を見ると、北米でアニメのシェアを伸ばすことはもはや不可能であるようにも思えてくる。数土さんは2009年をアニメの海外戦略にとって「ゼロからのスタートの年」と位置づけたが、海外アニメ黎明期である90年代よりもはるかに良い条件がそろっていると主張した。

今の北米では「アニメ」「マンガ」という言葉だけでなくそれらのスタイルまでもが浸透しつつあり、人気タイトルの売上やアニメ・コンベンションの参加者動員数はこの不況下にあっても安定しているという。また、作品のオリジナリティ・多様性・質・量・知名度なども加味すると、確かに成長の伸びしろはまだまだ残っていると考えることもできる。

字幕付き違法配信(ファンサブ)の影響を受けてアニメにお金を使おうとしない北米アニメマニアの扱い方や、海外の違法配信流通に対して実行力のある対策が全くとられていないという問題点は残っている。しかし、これから日本側が売り方を誤らず北米側にも売り方を誤らせなければアニメ・マンガ海外戦略成功の可能性は決してゼロではない、そのように思えた。


東京コンテンツプロデューサーズ・ラボ
経済産業省
アニメ!アニメ!








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