依田宣夫の一言コラム

                       

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第270回 家庭生活と家庭簿記(15)

 

3)家庭と会社の決算書

 

  _板蹐侶荵蚕

   家庭で家庭簿記(家庭用複式簿記)を利用して作られる会計情報を、家庭決算書と

  いい、財産対照表と消費損益計算書という2つの報告書からできています。

  財産対照表は家庭の財産の状況を明らかにし、消費損益計算書は家庭の消費損益を

  明らかにします。

 

家庭の決算書

 

  会社の決算書

   会社で商業簿記(商業用複式簿記)や工業簿記(工業用複式簿記)を利用して

  作られる報告書を財務諸表といい、貸借対照表と損益計算書などから構成されて

  います。

   貸借対照表は会社の財産の状況を明らかにし、損益計算書は会社の1年間の

  経営成績を明らかにします。

 

会社の決算書 

 

  2板蹐伐饉劼琉磴

    会計主体としての家庭と会社は、複式簿記を利用して決算書を作成しますが、

   報告書、目的など次のような相違点があります。

  ・会社の目的は最大利益を追求することです。

   家庭は利益を追求する組織ではありません。家庭経営の目的は、健全な家庭を維持し、

   家族一人ひとりの消費満足を最大にするような家庭を築くことです。

  ・会社などで使われている複式簿記は商業簿記(商業用複式簿記)や工業簿記

   (工業用複式簿記)といい、家庭で使われている複式簿記は家庭簿記(家庭用

    複式簿記)といいます。

  ・商業簿記・工業簿記の仕訳には、借方(かりかた)、貸方(かしかた)という

   用語を使いますが、家庭簿記の仕訳には、左方(ひだりかた)、右方(みぎかた)

   という用語を使います。

  ・商業簿記・工業簿記で作られる報告書を財務諸表といい、貸借対照表と損益計算書

   などから構成されています。

    家庭簿記で作られる報告書を家庭決算書と言い、財産対照表と消費損益計算書から

    構成されています。

  ・商業簿記・工業簿記の対象は株式会社などの会社ですが、家庭簿記の対象は、

   給与所得者です。

   また、この関係は、次のように表されます。

 

 

 

会 社

家 庭

目 的

利 益

消費満足

複式簿記

商業簿記

工業簿記

家庭簿記

(家庭用複式簿記)

仕訳の用語

借方(かりかた)

貸方(かしかた)

左方(ひだりかた)

右方(みぎかた)

報告書

(決算書)

財務諸表

(貸借対照表・損益計算書など)

家庭決算書

(財産対照表・消費損益計算書)

会 計

企業会計

給与会計

対 象

株式会社・合資会社

合名会社・合同会社

給与所得者

 

 

(参考)500年以上の歴史のある複式簿記

 

  複式簿記を取り扱った最初の印刷本は、コロンブスのアメリカ発見後2年の

 1494年にイタリアのフランシスコ派の僧侶で数学者で、レオナルド・ダ・

 ヴィンチの友人でもあった、ルカ・パチョーリが、数学書「算術、幾何、比及び

 比例総覧」を著わし、その一部に「計算及び記録要論」と題して、当時ヴェニスで

 用いられていた簿記法をそのまま解説したものと言われています。

  この複式簿記については、18世紀の初めにイギリスのダニエル・デフォーが

 書いた「ロビンソン・クルーソー漂流記」の主人公ロビンソン・クルーソーが、

 複式簿記の知識を活用し、一人孤島で生き残った物語があります。彼にとって

 一番大切に思われたものは、金儲けなどではなくて、人間らしい生活をしていく

 ために複式簿記を利用した会計情報を作り、必要な財貨を出来るだけ効率よく

 生産することでした。

  彼は難破船から、食料品、大工道具、弾薬、武器、資材などを探し出し、それらを

 いかだに乗せて島に運び込み、小高い丘の中腹に岩に面した平地があるのを見つけ、

 そこに住居を定めると、周りにはくいを打ち、柵をめぐらせ、外敵が容易に侵入

 できないように要塞を作りました。島内を探検しながら、野生のヤギや野鳥を

 見つけては銃で撃ち、食料に加えました。さらには、人間らしい生活をしていく

 うえで必要な財貨を出来るだけ効率よく生産するため、大麦や稲を地面にまいて

 小さな畑を作り、ヤギを捕まえて家畜として飼うようになり、ヤギの皮から服を作り、

 粘土をこねて土器を焼きかまどもこしらえ、着々と孤島の生活を豊かに整えて

 いきました。

  この彼の孤島での行動は極めて計画的で、労働の結果(例えば、大麦の種子を

 まいた量と収穫した量)をきちんと日記に記録し、孤島に漂着して満一年目に、

 一年間の生活が自分自身にとってどういうプラスとマイナスをもたらしたか貸借

 対照表(バランスシート)を作り、さらに、損益計算を行ってプラスがどれくらい

 あったかを計算していました。そして、財産の状況と損益の状況を整理し、それに

 基づいて将来への指針を打ちたてようとしていました。また、毎年、収穫した穀物や

 家畜の数量を正確に記録した彼の日記が、帳簿の役割を果たしていました。

   すなわち、彼は、自分の孤島における生活を、大麦などの成長の事実を日記につけ

 (事実を記録する)、どれだけ大麦が増えたのか(財産の把握)という報告書と、

  大麦の収穫した量と蒔いた量との差額(損益の把握)の報告書を一年ごとに簿記の

  形で作っていたのです。

  この点について、経済学者大塚久雄氏は、「社会科学における人間」(岩波新書)

 の中で次のように書いています。「たいへんおもしろいのは、ロビンソンがその

 孤島に漂着して満1年目という時に、こういうことをやっていることです。

 彼はまず神に感謝しますが、そのあと、孤島に到着して以来1年間の生活は自分自身に

 よってどういうプラスとマイナスをもたらしたか、そのバランスシート、貸借対照表を

 作ります。いや、それどころか、損益計算をやりまして、そしてプラスの方が多かった、

 これだけもうけがあったとして、彼は神に感謝しているのです。同じく神に感謝する

 といっても、形式合理的な基礎づけを行なったうえで神に感謝する。そういうやり方を

 しているのです。」

  このロビンソン・クルーソーの1年間の取引を記録し、分類・集計し、報告書を

 作成する行為が、複式簿記そのものなのです。

  また、ドイツの文豪ゲーテも、名作『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』の中で、

 「複式簿記が商人に与えてくれる利益は計り知れないほどだ。人間の精神が生んだ

 最高の発明のひとつだね。立派な経営者は誰でも、経営に複式簿記を取り入れる

 べきなんだ」(山崎章甫訳 上P54 岩波書店)とその有用性を述べた場面はよく

 知られています。

 

 

 

 

 

第269回 家庭生活と家庭簿記(14)

 

 第4章 家庭簿記と決算書

 

 1、家庭の消費活動と2つの報告書

 (1)家庭の消費活動と2つの報告書

   家庭の財産は、現在の財産(財産1)を正しく認識することからスタートし、

  労働に対する対価として収入を得、それを消費するという消費活動を経て、新しい

  財産(財産2)へと変化していきます。このプロセスは、毎年、毎年、継続して

  繰り返され、財産は、(財産1)から(財産2)、(財産3)・・・へ変化して

  いきます。

   消費活動の結果、財産が変化していくプロセスを、1年間で区切り、家庭簿記を

  使って財産の報告書として財産対照表、消費活動の報告書として消費損益計算書を

  作成します。

    家庭の消費活動と2つの報告書

     (消費活動)       (消費活動) 

     財産1? 収入―消費 ?財産2? 収入―消費? 財産3?

    財産対照表1     財産対照表2       財産対照表3

      消費損益計算書     消費損益計算書   

 

  (2)家庭の財産増減の把握方法

      2つの財産対照表を比較する方法

      財産対照表1と財産対照表2を比較し、その差額で財産の増減を把握する方法

      例えば、財産対照表1の財産が100で財産対照表2の財産が150だった

      場合には財産が50増加した事が分かります。

 

     ◆(式簿記を利用し財産対照表と消費損益計算書で把握する方法

      ,諒法では財産が50増加した原因が不明で、消費活動の改善などが

      出来ません。

      複式簿記を利用すると、財産対照表1の財産100が、消費活動の結果、

      消費損益計算書で50(収入−消費=50)利益が生じ、財産対照表2の

      財産が150になったことが分かります。

 

 

 

 

 

第268回 家庭生活と家庭簿記(13)

 

 3、会計主体と監査

 

(1)企業の監査

  「会計のあるところ常に監査あり」と言われるように、監査は会計のゴールであり

 終着駅です。すべての会計記録や会計報告は、第三者の公正な監査を経て、初めて

 その記載内容の真実、適正なことを主張し得るのであって、他人に対してその適正性を

 立証し得ないような会計では、信頼性に乏しく、真の会計と言うことは出来ません。

(『監査基準逐条詳解』日下部與一著)。

  会計は事実によって始まり、その事実に基づいて作成された記録や報告書が、独立

 した第三者の監査によって事実内容の適正性が証明されます。特に利害関係者に

 対する社会的責任の重要性から、ヾ覿箸公表する財務諸表の監査、企業が金融

 機関から融資を受ける為に作成する財務諸表に対する監査、4覿箸取引先と契約を

 締結するに当り取引先に提出する財務諸表に対する監査、っ羮企業が「中小企業の

 会計に関する指針」や中小企業の会計に関する基本要領」に基づいて作成する財務

 諸表に対する監査、ヂ濕畋仂班修里漾損益計算書のみ、資金収支計算書のみに対

 する監査など特別目的の財務諸表に対する監査などに対しては、公認会計士が職業

 専門家として公正不偏の態度を保持し、独立の立場から実施する監査によって、その

 信頼性の確保が図られています。

  すなわち、(1)財務諸表の監査の目的は、経営者の作成した財務諸表が、一般に

 公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して、企業の財政状態、経営成績及び

 キャッシュ・フローの状況をすべての重要な点において適正に表示しているかどうか

 について、監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて判断した結果を意見として表明

 する事にある。財務諸表の表示が適正である旨の監査人の意見は、財務諸表には、

 全体として重要な虚偽の表示が無いということについて、合理的な保証を得たとの

 監査人の判断を含んでいる。(2)財務諸表が特別の利用目的に適合した会計の基準

 により作成される場合等には、当該財務諸表が会計の基準に準拠して作成されている

 かどうかについて、意見として表明する事がある(監査基準、第一監査の目的)、

 としています。このように、社会的責任の大きい経済主体の監査は、重要性もまた

 大きいといえます。

 

    (参考) 会計学と簿記学との関係についての3つの考え方

   1、会計学と簿記学は内容的に同一のものであり、単に程度の差に過ぎない。

     つまり、初級会計学が簿記学であり、上級の簿記学が会計学である。

   2、簿記学と会計学はともに企業の計算を対象とするものであるが、前者は

     その技術面を取り扱い、後者はその理論面を取り扱う。

   3、会計学は評価を主目的とするのに対し、簿記学は評価を取り扱わない。

    (簿記の考え方・学び方:中村忠著:税務経理協会P.191

   会計担当者は、簿記の記録から財務諸表及び報告書を作成する。したがって財務

  諸表が、そのもとになっている簿記の記録よりも正確とか詳しいということはあり

  得ない。

  会計担当者は、その企業自体と簿記の記録の両方についての理解なしには、財務諸表

  や報告書を適正に作成したり解釈することはできない。(同、p.194) 

 

 (2)家庭の監査

  家庭においても、事実に基づいて作成された記録や報告書の記載内容の真実性、

 適正性について、外部監査によって証明されることが望ましいことは、もちろんです。

 しかし、家庭において作られる報告書すなわち家庭決算書は、家庭の内部情報で、

 利害関係者に対する社会的責任はないので、独立した第三者の監査を受ける必要は

 ありません。家庭においては、家庭決算書を家族に公開することによって、決算に

 不正がないことが保証され、監査の役割が果たされることになります。

  監査の目的は、報告書が真実の報告書であると言う証明をするためですから、

 自分自身が真実の報告書だと主張できれば、それが証明になります。このように

 して作られた家庭決算書は、金融機関からの借り入れの際信用を獲得するための

 情報として、また、税務署への申告書類の作成に役立ちます。

 

 (3)国の検査

  国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の

 年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならないとされて

 います。(憲法第90条第1項)

  また、会計検査院は、内閣に対し独立の地位を有し(会計検査院法第1条)、

 三人の検査官を以って構成する検査官会議と事務総局を以って組織され(同第2条)、

 国の収入支出の決算の検査を行う外、法律に定める会計の検査を行い、常時会計

 検査を行い、会計経理を監督し、その適正を期し、且つ、是正を図り、正確性、

 合規性、経済性、効率性及び有効性の観点その他会計検査上必要な観点から検査を

 行うものとする(同第20条)とされています。

 

 

 

 

第267回 家庭生活と家庭簿記(12)

 

(3)複式簿記

  複式簿記は、会社、個人商店や家庭の経営に必要な会計情報(決算書)を作る

 ためのツール(技術)です。この会計情報は、情報を必要とする主体の意思や要求に

 よって、その目的、内容が決まり、時代と環境の変化によって常に変わるものとされ

 ています。

 日本における複式簿記の考え方は、福沢諭吉の「帳合之法」1873年(明治6年)

が最初で、複式簿記を利用した企業会計をベースにして著しい発展をしてきました。

  一方、家計簿という考え方は、近代初期に、(女黌必讀)女訓 / 高田義甫述 ;

 伊藤桂洲書 「女大学集」東洋文庫1874年(明治7年)の家政書に、女性の日常の

 心がけを説いた女訓書として、はじめて登場したとされています。

  その後、明治以降の日本が取り入れた複式簿記法を、家計にも当てはめようとし

 家計簿記書や家計簿記の教科書に取り入れられたが、その繁雑さが問題視され、当時の

 社会情勢等に合わなかったため、次第に簡便さを強調する単式の家計簿へと変化して

 きました。

 

   家計簿

  家計簿は明治37年に羽仁もと子さんによって考案されたもので100年の歴史が

 あります。家計簿の特徴は、一貫して家計を守る急所は予算生活であるということに

 あります。

  羽仁もと子さんは、家計簿の創案者の言葉として、次のように述べています。

 「家庭経済の第一歩は、清らかな収入の道をはかり、良い費目わけの予算を作り、

 各費目の予算に照らし合わせて、日々の支出を記帳してゆくことです。・・・予算の

 立て方も記帳の仕方も、私の新家庭時代に出来るだけの工夫と実験に照らして、だん

 だんに考案し組織してきたものです。私はこの予算の立て方この記帳の仕方こそ、

 家庭の経済を健全にするために、真にたしかなものであることを深く信じるように

 なりました。・・・」

 このように、家計簿は生活費の予算を立て家庭の財政を健全にすることを目指した

もので、これまで大きな役割を果たしてきたことは誰もが認めるところです。

  家計簿は、収支のつど月日、摘要、収入、支出、残高の各欄に記入する現金

 出納帳形式のものが使われてきましたが、現在使われている家計簿にはさまざまな

 種類のものがあり、費目別の分類や集計のできる多桁式の現金出納帳とか伝票式の

 もの、また、費目別に封筒を作り、その中に予算金額を入れておき、支払のつど、

 そこから金銭を引き出すとともに、その上に日付と内容と金額を書いておく方式の

 ものなどいろいろな工夫が行われています。

 家計簿をつけることによって、収入と支出に予算を立てその予算を守り、ムダを

発見し、節約倹約をすることが可能となり、貯蓄を増やすことにもつながります。

例えば、全財産が、現金1,000円だけで、食料代に500円使ったとすると、

全財産は、500円になります。

 これを家計簿では、次のように表示します。

 

月  日

摘 要

収 入

支 出

残 高

XXX

 

 

 

,000円

XXX

食料代

 

500円

500円

 

交通費

 

210円

290円

 

 

 

 

 

 

 一方、経済社会構造の変化により消費構造も大きく変化し、ローン、クレジット

カード、パソコンによる取引などが大きなウェイトを占めるようになると、従来の

ような現金収支型の家計簿では、これらの取引の総体を適切に表現することはでき

ません。家庭全体の把握・管理のためには、どうしてもシステムとして全容を明確に

示すものが必要となります。

 また、家計簿は、単なる現金出納帳で、複式簿記の補助記入帳のひとつで主要簿で

はありません。また、単式簿記をベースに作られているので、単年度ごとの予算管理

で完結してしまうために、継続性を持った分析には対応できません。例えば、この

3年間、5年間に家計はどのように変化したのかということを継続的に比較したり、

分析したりすることはできません。

 これからの家庭生活を健全で安心なものにしてゆくには、その基盤をしっかりした

ものにすることが大切です。そのためには、なんと言ってもいまの時代の変化に対応

して、家庭全体の損益の状況や資産・負債の変動をシステマチックに把握することが

必要です。

 

(参考)単式簿記について

  現在、簿記といえば複式簿記を意味するといわれていますが、家計簿は単式簿記を

 ベースに作られています。

 単式簿記は、(a)一定の簿記原理を有しない。記帳対象は現金取引と信用取引だけ。

 記帳方法は単式記入。自己検証能力を有しない。財産計算は実地調査によって資産

 負債表を作成できるだけ。損益計算は期首期末の資本差額によって損益の総額が

 分かるだけ。不完全簿記。

 (青木茂男、西澤脩共著 「簿記論」 税務経理協会 昭和40年P.11)

  (b)欠点・当期消費損益の発生原因を明らかにすることが出来ない・仕訳が無いので

 試算表が作れないので記帳の正否を自ら検出する方法が無い

 (井上達雄著「例会会計簿記精義」白桃書房昭和46年P. 550)

  (c)今日、簿記といえば複式簿記を意味するのが普通である。単式簿記は一面的に

 しか記録しない。そのため経営活動が拡大して記録が増えると、その正確性を確かめる

 ことがむずかしい。(中村忠著 「現代簿記」 白桃書房 昭和62年P.3)

 といわれています。

 

 家庭簿記

 従来、お金やものの出入りを記録するための方法として、お小遣い帳や家計簿が

利用されてきました。しかし、経済が発達し、現金だけでなくカードによる取引とか

インターネットによる取引など取引が複雑になった現在、いままでのような、

お小遣い帳や家計簿では対応が難しくなってしまいました。

そこで、この変化に対応したお金やものの出入りを記録するための方法として

「家庭簿記」を考えました。

 「家庭簿記」とは「家庭用複式簿記」のことで、会社が行っている複式簿記を、

家庭でも有効に行えるようにしたものです。

 例えば、スーパーへ行って、今日のおかずにお肉と野菜を買って、その代金として

現金1,000円を支払いました。このとき、お小遣い帳や家計簿だとお肉と野菜の

食料費に現金1,000円を使ったので、現金が1,000円減ったと記帳ます。

しかし、この買い物は、お肉と野菜を入手したという一面と、現金が減少したという

一面に分けて考えることができます。

 すなわち、

  1.肉と野菜が1,000円増加した

  2.現金が、1,000円減少した

 という2つの面から考えるのです。

そして、つぎに、この2つの面を、複式簿記の約束ごとに従って、次のように表します。

 

  左方(ひだりかた)         右方(みぎかた)

  肉と野菜(食料費)1,000円 / 現金 1,000円

 

  次に、この消費があなたの財産にとってどんな影響があるのかを考えます。

 昨日のあなたの全財産が、現金だけで5,000円だったとします。このうち、今日、

 お肉と野菜に1,000円使ったので、全財産は、4,000円になりました。

 

  これを家計簿では、次のように表示します。

     現 金(昨日の残高) 5,000円

     現金支出(食料費) −1,000円

     現 金(今日の残高) 4,000円

 

  一方、これを家庭簿記では、次のように表示します。

       

昨日の財産対照表

左方(ひだりかた)

右方(みぎかた)

(現 金)5,000円

負 債     0円

正味財産  ,000円

合 計  5,000円

合 計  5,000円

 

今日の財産対照表

左方(ひだりかた)

右方(みぎかた)

資 産

(現 金)4,000円

負 債       0円

正味財産  4,000円

(留保財産5,000円)

(当期消費損益―1,000円)

合 計 4,000円

合 計     4,000円

 

今日の消費損益計算書

左方(ひだりかた)

右方(みぎかた)

消費

(食糧費)1,000円

当期消費損益

―1,000円

収入     0円

合 計     0円

合 計     0円

 

 これは、収入が無いのに、食料費に1,000円消費したので、財産が

,000円減少したことを表しています。

 

 また、お肉と野菜の代金を、現金ではなくクレジットカードで支払った場合には、

次のように表されます。

 

 昨日の財産対照表

左方(ひだりかた)

右方(みぎかた)

(現 金)5,000円

負 債     0円

正味財産  ,000円

合 計  5,000円

合 計  5,000円

 

 これは、現金で支払った場合と同じです。

しかし、今日の財産対照表は、現金で支払った場合と異なり、次のように表します。

 

       今日の財産対照表

 

左方(ひだりかた)

右方(みぎかた)

資産

(現 金)5,000円

負 債

(カード未払金)1,000円

正味財産    4,000円

(留保財産  5,000円)

(当期消費損益―1,000円)

合 計 5,000円

合 計     5,000円

    

  

 今日の消費損益計算書

 

左方(ひだりかた)

右方(みぎかた)

消費

(食糧費)1,000円

当期消費損益

―1,000円

収入     0円

合 計     0円

合 計     0円

 

  今日の消費損益計算書は、現金で支払った場合と同じです。

 経済事情、取引の複雑化など家庭を取り巻く環境は大きく変化し、家庭生活も

 いままでどおりでなく、あらゆる面で生活スタイルそのものを見直さなければ

 ならなくなりました。会計の目的、内容は、時代と環境の変化によって常に

 変わり、経済主体を構成する人たちの意思や要求によって決まるものです。

  現代の家庭を取り巻く環境の変化に、家計簿では十分な対応をすることは

 難しくなりました。現在の複雑な経済社会で、生活の満足を得ながら、夢や

 目標の実現を図るための新しい暮らしのベースが必要な時代になったのです。

 その新しい暮らしのベースというのは、家庭でも法人と同様の複式簿記を利用

 した会計情報を持つことで、この会計情報を作るためのツールが、家庭簿記

(家庭用複式簿記)なのです。

 

 

 

 

 

第266回 家庭生活と家庭簿記(11)

 

 2、経済主体と会計主体

 

 (1)経済主体の構成要素

    国、法人、個人という各経済主体は、それぞれ次のような構成要素に

   分類されます。経済主体としての国は、政府と地方自治体より構成されて

   います。

    法人は、法律上認められた人格(法人格)を持ち、その法律の下に行動し、

   その成立目的により、営利法人と非営利法人に分けられます。

    個人は通常自然人を言い、赤ん坊から老人まですべてを含んでいますが、

   この場合の個人は、社会人として主体的、独立的行動をとれる個人(これを

   生活主体という)を意味し、その構成要素としては、個人事業者、給与所得者、

   その他に区分されます。

    個人事業者は、自らの意思を持って、継続的に営業している人で、給与

   所得者は、国や法人などに勤務している人です。

    これら以外のその他の人とは、年金や配当などで生活している人たちを

   いいます。

    会計とは、特定の経済主体の構成員が営む経済活動およびこれに関連する

   経済的事象を、主として貨幣額で測定しかつ伝達する行為です。会計の目的、

   内容は、経済主体を構成する人たちの意思や要求によって決まるものであり、

   この意思や要求は、時代と環境の変化によって常に変わるものとされています。

    また、経済主体を構成する要素ごとに必要とする会計情報は異なりますが、

   この会計情報を必要とする主体を会計主体といいます。

    このような観点から経済主体の構成要素別に会計を分類してみると、次の

   ようになります。国の場合は、\府―政府会計(官庁会計)、地方自治体―

   地方自治体会計(官庁会計)、法人の場合は、 ̄塚法人―営利法人会計(企業会計)

   非営利法人―非営利法人会計、個人の場合は、仝朕融業者―個人事業会計

   (準企業会計)、給与所得者―給与会計、その他―その他個人会計というように、

   各経済主体の構成要素に応じてそれぞれの会計に分けられます。

    [国の場合]

      ()政府会計(官庁会計)

       政府会計は、毎年、年度ごとに予算を立て、予算どおり収入と支出が正しく

    実行されたことを報告するのを主たる目的としている会計で、単年度予算収支

   会計といえます。

     ()地方自治体会計(官庁会計)

      地方自治体会計は、政府会計と同様に毎年、年度ごとに予算を立て、予算どおり

   収入と支出が正しく実行されたことを報告するのを主たる目的とする会計で、

   単年度予算収支会計といえます。

   [法人の場合]

     ()営利法人会計

      営利法人は、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社により構成されます。

   これらの法人は、営利(利益)を目的として行動していて、通常その会計は企業

  会計と言われます。

      ()非営利法人会計

      非営利法人は、社団法人、財団法人、学校法人、宗教法人、社会福祉法人などで

   構成されています。主として営利を目的とせずに公益を目的として行動しており、

   通常その会計は公益法人会計と言われます。個々の法人ごとに、例えば学校法人会計、

   宗教法人会計などに区分されます。法人格を持たず、営利を目的としないで活動を

   する団体や組合もあり、例えば労働組合会計などそれぞれの会計があります。

   [個人の場合]

  ()個人事業会計

   個人事業者とは、個人商店、個人メーカーなど、個人の自由意志を持って、

  自己の計算と危険において独立し、利益を得ることを目的として継続反復して

  事業をする人です。その会計は、企業会計とほぼ同じで準企業会計といえます。

  ()給与会計

   給与所得者とは、国や法人などに勤務して給与所得を得ている人で、この給与

  所得者に必要な会計を給与会計といいます。

  ()その他個人会計

   その他の個人とは、主に年金や配当などで生活している人を言い、その生活は

  給与所得者と同様であり、会計は給与会計と同様です。

 

(2)会計主体と複式簿記

  経済主体を構成する要素ごとに必要とする会計情報は異なり、この会計情報を

 必要とする主体を会計主体と言いますが、現在この会計情報を作成する方法として

 複式簿記が考えられています。

 

 経済主体と会計主体と複式簿記の関係は次のようになります。

 

    経済主体と会計主体と複式簿記の関係 

 

経済主体

会計主体

会 計

簿 記

  国

政府

官庁会計

官庁簿記(注)

地方公共団体

官庁会計

官庁簿記(注)

 

法 人

営利法人(株式会社など)

営利法人会計

(企業会計)

商業簿記

工業簿記

非営利法人(社団など)

非営利法人会計

社団簿記他(注)

 

 

個 人

個人事業者(企業または商店)

個人事業会計

(準企業会計)

商業簿記

工業簿記

給与所得者

給与会計

家庭簿記

その他個人

(年金など)

給与会計

家庭簿記

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(注)青木茂男、西澤脩共著 「簿記論」 P.10参照。また、一部の地方公共団体や公益法人では企業会計の考え方を導入し、バランスシートやキャッシュフロー計算書などが作られています。

 

 

 

 

第265回 家庭生活と家庭簿記(10)

 

3章 家庭経済と会計主体

 

. 経済主体

  供給の主体である生産者と需要の主体である消費者を経済主体といいます。

 経済主体は、一般的に大きく消費者(家計)と生産者(企業)のグループに

 区分されますが、ここではこれを、国と法人と個人の三者に区分します。

 この三者は、それぞれが、あるときは生産主体(供給主体)として、あるとき

 は消費主体(需要主体)として、市場を通じて売買(取引)を行っています。

 国、法人と個人という3つの経済主体が、それぞれの役割を分担して生産したり

 交換したり消費したりすることによって国民経済は成り立っています。

 

 

 

  個々の生産者なり消費者なりは、個々の生産物や用役を売って得た貨幣で

 自己の必要とする財・用役を他の生産者から買い入れます。生産者は自分が

 つくった生産物を、より高い価格で購入してくれる消費者に販売し、消費者は

 自分が必要と思うものを、より安い価格で購入できる相手(生産者)から購入

 します。生産者と消費者は、売り手と買い手として、前者は利潤の極大を目的と

 して生産物を供給し、後者は満足の極大化を目的としてそれを需要するために、

 市場で貨幣を通じて売買(取引)を行います。

 

 

 

  国、法人、個人という各経済主体は、それぞれ生産者としては極大利潤、

 消費者としては極大満足を目的として経済行動をします。また、各経済主体は

 人間によって成り立っていて、この経済行動は、人間生活の日常的な業務として、

 社会的なつながりを持って一つのまとまりのある活動を形作り、経済秩序を作り

 上げます。人間が生活を維持、向上させるために必要な財や用役を獲得する行為は、

 一般的に経済行為といい、人間を害するような行為をしてはいけないし、同時に、

 人間と自然を調和させる相互依存の関係を保つように行動することが第一義と

 されます。

  また、経済主体としての国は、法人や個人と異なり、単に生産者として極大利潤を

 求めたり、消費者として極大満足を求めたりしているのではなく、私的利益と

 社会的利益との乖離に対して、国全体のバランス、公平、平等な富の再配分、

 取引の公平などを勘案して行動します。国の経済行為としては、例えば、司法、

 治安、国防、外交や教育、社会福祉、医療、年金、雇用、公共事業、先端技術の

 研究などがあります。

 

 

 

 

 

第264回 2016年8月1日の財産対照表と7月分の消費損益計算書を作りましょう!

  

 (1) 2016年8月1日現在の財産対照表を作りましょう!

 

                財産対照表

 

  (2016年8月1日現在)

                           (単位:円)

左方(ひだりかた)

   金 額

右方(みぎかた)

   金 額

資産の部

 

負債  負債の部

 

現 金

 

住宅ローン

 

普通預金

 

その他借入金

 

定期性預金

 

カード未払金

 

その他預金

 

未払金

 

土 地

 

後払い電子マネー

 

建 物

 

その他負債

 

マンション

 

負債合計

 

有価証券

正味財産の部

保険積立金

 

 家族財産

 

車 両

 

 留保財産

 

売却可能な高額品

 

当期消費損益

      

電子マネー

 

正味財産合計

 

その他資産

 

 

現金過不足

 

 

 

資 産 合 計

 

負債・正味財産合計

 

 

(注)2016年8月1日と2016年1月1日の財産対照表の

正味財産の差額が当期消費損益になります。

当期消費損益=8月1日の正味財産ー1月1日の正味財産

 

(1)  正味財産の計算

正味財産=資産合計―負債合計

 

(2)留保財産(あなたが今まで働いて自力で築き上げた財産の金額)の計算

 留保財産=正味財産―家族財産

 

 (2) 7月度(7月1日から7月31日)の消費損益計算書を作りましょう!

 

   当月度(7月1日から7月31日)の収入科目と消費科目の合計金額を

   科目ごとに記帳します。

   累計は1月から7月までの合計金額になります。累計の当期消費損益は、

   8月1日の財産対照表の当期消費損益に一致します。

 

     

  月度消費損益計算書

                             (7月1日から7月31日)

                               (単位 円)

 

 

  科 目

 当 月

 累 計

  科 目

 当 月

  累 計

 収入の部 

金 額

金 額

特別収入の部

 金 額

  金 額

給 料

 

 

受取利息

 

 

賞 与

 

 

受取配当金

 

 

家族収入

 

 

受贈給付金

 

 

年金・その他

 

 

資産評価益

 

 

収入合計

 

 

有価証券売却益

 

 

消費の部

 

 

その他  

 

 

税金等

 

 

特別収入合計

 

 

(所得税)

 

 

特別消費の部

 

 

(住民税)

 

 

住宅ローン支払利息

 

 

(社会保険料)

   

 

その他支払利息

 

 

(その他税金)

 

 

資産評価損

 

 

日常生活費

 

 

有価証券売却損

 

 

(食料費)

 

 

  その

 

 

(通信費)

 

 

特別消費合計

 

 

(交通費)

 

 

当期消費損益

 

 

(水道光熱費)

 

 

 

 

 

(新聞図書費)

 

 

 

 

 

(消耗品費)

 

 

 

 

 

その他生活費

 

 

 

 

 

(外食費)

 

 

 

 

 

(交際費)

 

 

 

 

 

(医療費)

 

 

 

 

 

(旅行費)

 

 

 

 

 

(教育費)

 

 

 

 

 

(衣料費)

 

 

 

 

 

消費合計

 

 

 

 

 

通常消費損益

 

 

 

 

 

 

        通常消費損益=収入合計−消費合計

     当期消費損益=収入合計−消費合計+特別収入合計−特別消費合計

   (注) 開始月の場合は、当月金額と累計金額が同じ金額になっています。

 

 

 

 

 

第263回 家庭生活と家庭簿記(9)

 

 3 家庭の会計情報

 

 (1)2つの情報

    人生の成功、失敗は、経済的土台をいかに築くかにかかっていると言われて

   います。

    新しい情報社会においては、家庭経営に必要な会計情報を的確に入手し、自分

   たちの人生設計に活用できるようにすることが必要です。この基本的な会計情報の

   存在に気づくことが、健全な家庭生活を築くための第一歩となります。

    家庭生活では、計画を立て、意思決定をして実行、その結果と反省をし、次の

   計画を立てます。このとき、お金を使うという意思決定に必要な情報が、他者から

   与えられる「外部情報」と自分たちで作った「内部情報」という二つの情報です。

    自己責任の時代になり、意思決定の結果に対する責任は、自分自身が負わ

   なければなりません。この二つの情報を持つことによって、意思決定がより正確な

   ものとなり、結果に対する危険をより小さくすることが可能となります。

    お金を使うという意思決定は、家庭の財産に影響を与え、将来に大きな影響を

   与えます。この意思決定による財産の変化を予測できれば結果に対する危険を

   避けることも出来ます。

    各自のライフスタイルや消費行動における最適な情報はそれぞれ異なりますが、

   家庭の経営者にとって必要なのは、家族のため、外部情報と内部情報を持ち、

   さまざまな意思決定を行い、その意思決定についての説明を正しく行うことです。

 

 (2)外部情報

   「外部情報」とは、テレビ、新聞、雑誌などのメディアや個人のネットワーク、

  友人などから得る情報のことです。これまで常識だと思われていた参考となる

  情報は、マスコミをはじめとする他者から与えられる外部情報が大部分でした。

  しかし、この外部情報は、必ずしも自分に当てはまるとは限らないし、むしろ

  当てはまらない部分のほうが多かったと言ってよいでしょう。

   マスコミや友人など、外部からの情報だけで、車やテレビなどを独断的な

  判断で購入し、そのことを家族に自分自身の抽象論や精神論で説明をしても、

  同意を得ることが出来ず、後からこんなはずではなかったと後悔したりする

  家庭の経営者が多く見られたのです。

 

 (3)内部情報 

   「家庭の内部情報」とは、家庭独自の情報で、先祖からの伝統やしきたり

  などがありますが、お金に関する家庭の内部情報としては、従来の家計簿と

  家庭簿記を利用して作った家庭決算書があります。

    お金に関する情報で、万人にとって正解と言えるようなものは、ありません。

   したがって、家庭で何にお金を使うべきかを正しく意思決定するためには、

   お金に関する自分たちの内部情報がどうしても必要になってきます。資産運用の

   リスクひとつとってみても、収入が多いか少ないか、借金が多いか少ないか、

   何歳まで働けるか、子供は何人いるか、どんなライフイベントを計画しているか

   といった各家庭の個性によって、資産運用のリスクの許容範囲は異なります。

    自分たちにとって最も重要な情報は、自分たちについての、自分たちによる、

   自分たちのための生活を客観的に示すデータです。

    家庭の経営者は、利用価値が高い真実の情報、自分たちだけに役立つオリジナル

   な内部情報を持つことによって、家族のための最適な意思決定が可能です。

   毎月、何にどれくらいの消費をしているのか、家庭の財産はどれくらいの金額に

   なっているのかなどについての正しい情報を持つことによって、こどもの進学、

   家の購入、株の投資、生命保険の加入、自動車の購入、旅行など、さまざまな

   ライフイベントの意思決定ができます。

    現在の家庭生活では、外部情報だけでなく、家庭の消費行動を「数字」で

   把握できる「家庭決算書」のような家庭の内部情報が必要となっています。

 

 

 

 

第262回 家庭生活と家庭簿記(8)

 

2 家庭の経営者の仕事

 

  食,衣,住など生活の大部分が貨幣を通じて行われる時代、個人個人が、

 自己責任で家庭の財産を管理することが求められます。家庭管理の本質は、

「意思決定」にあり、家庭管理の基本的目標は「個人の成長と発展の実現」

(自己実現)にあり、その管理活動の動機づけとすぐ後に続く管理過程―計画・

 統制・評価―は、意思決定によって成り立ち、家庭管理は能率的な家事技術や

 作業の行動を重んじるだけではない知的活動である、としています。

(家庭管理論新版:宮崎礼子・伊藤セツ編:有斐閣新書1989p263

  つぎに、お金の管理、家庭全体の消費満足、家庭の健全化などの点から、

 家庭経営者の仕事について考えていきます。

 

 (1)家庭生活の事実を数字で知る

   家庭経営者の最初の仕事は、自分たちの家庭生活の事実を「数字」で知ることです。

  家庭生活の情報を数字で把握することができれば、家庭の問題点の把握や改善計画を

  立てることも可能となります。家庭の財産の実態を数字で把握し、事実をしっかりと

  見据えることによって正しい判断ができます。これが家庭をコントロールする

  第一歩です。

 

 (2)結果とその原因を把握する

  家庭の財産の増加・減少の結果を数字で把握し、原因を正しく分析してこそ、それ

 ぞれの問題に対処することができます。

  家庭の財産は、毎日、毎月、毎年と、お金を使うことによって変化していきます。

  財産の増加・減少の結果と原因を把握できれば、自分たちの努力によって、財産の

  減少を食い止めることができる問題なのか、個人の力では財産の減少を食い止める

  ことができない問題なのかを判断することが可能になります。

 

 (3)調和(バランス)の取れた資源配分

   家庭生活では、生活や人生をデザインする重要な要素である資源配分のバランスを

  保ち、家庭生活を安定させることが大切です。調和(バランス)の取れた資源配分をし、

  消費による家族の満足度の最大化をいかに達成するかということが、家庭経営者の

  仕事です。

 

 (4)消費満足の最大化

  家庭は利益を追求する組織ではなく、その中心は消費です。家庭の消費活動を

 通して、いかに消費満足を高めるかということを、家庭という組織は追求すべき

 ものだと考えます。何事も、家庭経営者の独断的な判断で決めてしまうということは、

 決して家族全員の消費満足に合致するものとはなりません。そうではなくて、家族

 全員が納得し消費満足を得られるようにすることが、家庭経営者の仕事です。

 

 (5)自己責任と意思決定

  家庭経営の時代というのは、自分たちの行動に責任を持つとはどういうことかを

 考える時代です。

  自分たちの生活に責任を持った行動をするということは、自分たちにとって何が

  最適かを選び、その選択した結果に対して責任を取るということです。

  ものを買うときには、それを手に入れて何をするのか、何のためにそれが必要なの

  かをよく考え、自分たちの財産の状態を把握し、自分たちにとって、最適なものを

  選択し、自分たちの個性を見極めた上で情報を選択し、自己責任において意思決定を

  することが家庭経営者の仕事です。

 

 (6)自分たちのオリジナル情報を持つ

   家庭生活における正しい会計情報とは、自分たちの過去の事実を積み上げた情報で

  あり、家族に公開して家族全員の共通認識にしておくべき情報です。これまでは

  家庭生活を見直したり、将来の資産形成を考えたりする場合、参考材料となるのは、

  マスコミをはじめとする他者から与えられる情報が大部分でした。しかしその情報は、

  必ずしも自分に当てはまるとは限らないし、むしろ当てはまらない部分のほうが多い

  と言ってよいでしょう。

  自分たちにとって最も重要な情報は、自分たちの生活を客観的に示すデータです。

  各自のライフスタイルや消費行動における最適な情報はそれぞれ異なりますが、

  利用価値が高い情報とは、真実の情報である自分たちのオリジナルな情報です。

  手元に正しい家庭の会計情報がなければ、正しい判断をすることはできません。

  自分たちのオリジナルな情報を持つことによって、はじめて家庭経営者は家族の

  ための正しい意思決定が可能となります。

 

 (7)継続的情報の必要性について

   健全な家庭経営を行うには、1年間の家庭生活が自分たちにとってどういう

  プラスとマイナスをもたらしたかを判断し、それを翌年へ結びつけていくことが

  大切です。そのためには日々の記録をつけ、そのデータを蓄積し管理することが

  必要です。そして、このデータは、1年間で終わってしまうのでなく、翌年へ

  つながっていく情報とすることによって、いろいろな判断が可能となります。

  家庭生活も、1年でなく3年間、5年間で見ると、生活がどのように変化したのかと

  いう損益の状況や資産、負債の変動を把握したり分析したりすることで、自分たちが

  気づかなかった発見が必ずあります。また、継続的な自分の過去の情報から、

  自分の行為がどういう結果をもたらすのかを予測することも可能です。

  日々記録したデータは、1年間で終わらせるのではなく、継続した情報として

  利用することによって、大きな価値が生まれるのです。

 

 (8)比較の大切さを知る

   家庭における財産は、資産が増加したり減少したり、負債が増加したり減少したり

  して、毎年、毎年、変化していきます。財産が、増加したり減少したりした変化は、

  数字を比較することによって事実が明らかとなり、原因分析も可能です。

  財産については、昨年の残高と比較することによって、消費については、予算を立て、

  実績と比較することによって原因分析ができます。

  また、データを蓄積することにより、家庭生活の中でどんな消費の比重が高いのかが

  把握できるだけでなく、消費構造の変化や傾向もつかめてきます。それらが今後の

  予測の材料にもなり、これからのライフイベントに必要な資金を確保したり、

  生活改善を進めたりする上での貴重な参考資料になります。

  毎年、毎年の財産や消費の比較とか、予算と実績の比較などによって、家庭生活の

  異常値の発見や傾向分析、そして将来の予測などが可能です。

 

(9)投資とリスク

   お金を使うことのひとつに、将来の消費に備えてお金を運用することがあります。

  これが投資です。

  投資には、定期預金や国債などのように安定した利息収入をもたらすものと、

  株式や投資信託などハイリスク、ハイリターンのものがあります。

  投資するに当たっては、リスクを負うということを、十分認識して行わなければ

  なりません。

  リスクを犯して投資するということは、儲かったらもっとつぎ込む、損をしたら

  取り戻そうとさらにつぎ込む、ということではありません。リスクのある投資には、

  最悪ゼロになっても大丈夫な資金を当てるというのが鉄則です。

  どのような投資をするかの選択は自分でコントロールできても、株価や利率などに

  よるリスクの結果は自分でコントロールできません。したがって、自分の負える

  リスクの範囲を冷静に判断し、投資できる資金がどのくらいあるかを確認し、

  それに合った金融商品を選び出すことが重要です。

 

(10)資金の管理

   資金の管理は、長期的な計画と短期的な計画を考えた資金の管理をしなければ

  なりません。長期的には、家の購入などの大きな出費が想定される場合、その資金を

  人生のどの段階でどう確保するか、短期的には、いざというときに備えて、必要な

  資金をどう準備するかという資金計画が必要です。資産については、現金化できる

  時間、借り入れ能力、支払い能力の安定度、時価評価の対象となるもの、ならない

  ものなどといった、資産の個性を考えた資金の管理をすることが、家庭経営者の

  仕事です。

   

(11)社会還元

   家庭生活を安定させ、幸せな生活を送れるということは、自分たちだけの力で

  できるわけではありません。自分たちの生活が安定したら、個々の家庭から今度は

  社会に目を転じ、社会のために寄付行為やボランティア活動など、社会の一員として

  他の人びとと協力し役に立つということも、家庭経営者の仕事です。

 

 

 

 

 

第261回 家庭生活と家庭簿記(7)

 

  第2章 家庭の経営者と会計情報

  

 1.家庭の経営者

  (1)家庭の経営者

     家庭の経営者が、自分の仕事と同様、健全な家庭や家族の幸福を考えることは

    大切なことです。そのためには家庭において生じているさまざまな問題にどう対応

    するか、現状の把握や分析をし、自分が家庭の経営者として何をすべきかを考え

    なければいけません。働くための力、エネルギーの源は、家庭にあるはずですから、

    家庭の財産がどのようになっているのか、家庭の消費損益がどのようになっている

    のかを見て、家庭全体の見地から家庭を管理し、いかに健全なものにしていくかを

    判断し実行していく事が要求されます。たとえば、毎月の収入でどれくらいの消費を

    しているのか、税金や社会保険料をいくら支払っているのか、また家庭の資産は

    現在どれくらいの金額になっているのかなどについて知っていることが必要です。

    食,衣,住など生活の大部分が貨幣を通じて行われている現在、その管理は、

    家庭生活にとって非常に重要なものとなっています。

     私たちを取り巻く家庭環境が激しく変化している時代、家庭の経営者として家庭全体の

    見地からお金をコントロールし、バランスの取れた生活を築くことを、考えるべきです。

    お金の管理を自分で行う時代、すなわち個人個人が、自己責任に基づく管理をすることが

    求められる時代に、家族が自分達の生活目標を達成させるためには、家族の各人の目標と

    家族全体の目標を調整することが大事で、家庭の経営者の役割が重要になってきたのです。

 

 (2)お金は使うためにある 

    お金・お金・・と卑しく聞こえるかもしれませんが、資本主義経済社会において、

   お金のことを考えないで生活をしている人はいないと思います。お金の管理はあくまでも

   生活の目標を達成させるための手段であって、お金以外の重要な生活価値があることは

   言うまでもありません。その中で、人生において日々お金と無縁で過ごすことは不可能だ

   という認識を持つことが重要です。しかし、家庭の経営者として、お金は使うためにある

   ということを知って生活をしている人と、知らないで生活をしている人がいます。

     お金は使うためにあるということを知っている家庭の経営者は、「お金を使っている人」

    で、知らない人は「お金に使われている人」だと言えます。

    お金を使っている人は、欲しいものを手に入れて、何をするのか、何のためにそれが

    必要なのかということを、よく考えてお金を使います。そのために、

    ‐霾鵑鮟犬瓩襦ΑΕ泪好瓮妊アや人脈、自分の金銭的情報(決算書)などから、

     つねに情報を得ている

    ⊆分の使える金額をわきまえている・・時間とお金を使った結果がどのようになるのか、

     現実を客観的に判断する方法を理解している

    M想や夢と現実とのギャップを理解し、何が何でも、今、やらなければいけないのか、

     今、手に入れなければいけないのかの判断をしている

    ぜ分の趣味としての時間を過ごすためのコストの掛け方が上手

    など、自分にとって何が必要なのかということを、常に意識して行動しています。 

     一方、「お金に使われている人」は、

    ー分に必要な情報を集めず、持たない

    ⊆分の使える金額をわきまえずに、時間とお金を掛ける。

    お金を使った結果、どのようになるのかも考えず、また自分の現実を客観的に

     判断せずに行動する

    ね想や夢と現実とのギャップを理解せず、何が何でも、今、やらなければいけない、

     今、手に入れなければいけないと思い込み、ローンを組んだり、借り入れをしたり

     してまで行動を起こしてしまい、無駄な金利を支払い、その返済に追われることが多い

    ゼ分の行動が主体的でないため、お金を意識はしているが、お金を使うことによる

     満足は得られないことが多いなど「お金に使われている人」は、自分が主体的に

    行動していないため、気が付かないうちに、お金に使われています。そして、お金を

    使った結果、満足ではなく、不満を持ったり、失敗したりしたという思いをするのです。

     お金は使うためにあるということを知っている人は、自分が主体的に行動をして

    いるので、お金を使うことによって十分な満足を得ることができます。 

    収入が多い少ないにかかわらず、お金は使うためにあるということを知っていることで、

   お金を使って満足を得ることができるのです。

 

 (3)経営者の役割

     家庭の経営者は、家の中心にある大黒柱と同様、家を支える柱として重要な役割を

    果たしています。この大黒柱の語源は、恵比寿大黒、すなわち大黒様から来ている

    といわれ、一家を支えると言う意味から、家の中心的な人物を言うとされています。

     家庭の経営者として、大黒柱として、30代、40代そして50代では、特に

    自分を含めた家族に対して、家庭を守るという重要な役割を果たさなければいけない時です。

     30代では、結婚、出産、育児、教育、マイホームの購入というような新しい家族の

    かたちが作られていきます。このようなことを通して、どんな家庭を作っていくのか、

    家庭の経営者が家族の期待と夢に応えていく役割は大きいものがあります。

     40代では、住宅ローン、教育費、食費や衣料費など人生で最もお金が掛かる時期を

    迎えます。ここをどう乗り切るか、家族は家庭の経営者の手腕に大きな期待を寄せています。

     50代になると、子供も独り立ちし、定年後の第2の人生を考える時期が近づいてきます。

    老後にゆとりのある生活設計をどのようにしたら良いかなど、家庭の経営者として考え

    なければいけなくなります。

     特に気をつけてほしいのは、仕事人間と言われている人です。若いときから一生懸命

    働いて収入を得るなど、お金を増やすという役割を十分に果たしてきながら、お金を

    使って家族の満足度や幸福感を最大にするという意識が低く、老後を迎えて、やっと

    家族のために何かしてあげようと思っても、家庭の経営者として期待されることが、

    なにも無くなってしまっているという人が案外多いのです。

     家庭の経営者として健全で幸せな家庭を維持するためには、できるだけ早く我が家の

    家庭状況を判断し、問題点に気づき、原因を探し、解決策を練って、自分たちにとって

    本当の消費満足は何かを見つけ出すことが大切なのです。