
心象世界において「駅」の象徴するもの
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半世紀も過去の街に迷い込んだ降矢木の意識が最初に捉えたのは、欧風建築の駅のビジョンだった。『オルゴール』でも心象世界に現れる駅は、現実世界との結節点の象徴として描かれていた(ゲーム冒頭、降矢木は影藤智奈子の心象世界にある、うら寂れた小さな駅に降り立つ)。全てが終わった後、降矢木と蘭香芳は、この駅から列車に乗って現実に帰還したのかもしれない。ホームには駅員が一人、所在なさそうに佇んでいた。
「ただ今、路線事故のため、列車は不通となっております」
駅員をはじめ、心象世界の住人は「心の産物」であり、全て擬人化した心の断片である。路線事故のせいで、構内に列車の影は見えない。なのに突如、どこからともなく汽笛が鳴り渡り、線路の上に横たわる静寂を打ち破った。駅員が説明する。
「昔は、この駅にも列車が発着していました。その時の音が、この周囲に分散しています。その音たちが集まった時に、今のように汽笛として再現されるのです」
つまり「列車の不通」と「幻の汽笛」は、(翔子の心に投影された)彰太郎と香織の心が、現在との接点を失っていることを、過去に自閉していることを象徴的に表現しているのだろう。この駅はおそらく、現実世界と心象世界との結節点であると同時に、現在と過去とを繋ぐ時間の懸け橋でもあるのだ。