油が 漏れた〜  HP入り口へ

環境の問題が大きくクローズアップされ、機械から油が漏れるなど無くて当たり前の時代になった。

ここで紹介するのは、ISO14000が企業に浸透していく前後の失敗談。

製造現場といえば油と切りくずで3K職場が多かったが、時代の要請から急激に環境改善が進められ、メーカーもその対応に迫られていた。

設計者に求められるもの、それは性能最優先ではなく、環境と安全が並立したグレードの高さだ。

 

立型MCのフルカバー   複合加工システムの基礎    高圧クーラント    大型汎用NC旋盤   

  

 

           立型MCのフルカバー

 

 

非常に厳しいことで定評のある大手油空圧メーカーから機械を受注した

立形マシニングセンター

当時はまだテーブル回りはオープンで、側面にツイタテが付いている極めてシンプルな形態の機械だ

お客さんの要望で、「環境に配慮したいから、フルカバー仕様に」、とのことだった

元々、そんな想定をしていない機械だったが、物理的に不可能では無いと判断して受注

 

本体の一部を改造して「油漏れが無いカバー」を念頭にスプラッシュカバーを設計した

出来栄えも悪くなく、社内の評判はまずまず

試運転し、切削もやり、機械回りの油漏れも無く(そう思っていた)社内検査を終えて、立会いに臨んだ

立会い当日、いつものように機械回りを清掃し、机を並べ、お客様を迎えた

お客様は商社入れて4名、実機の外観、社内検査表のチェックを受け、和やかなうちに立会いは進んでいった
精度検査もクリヤーし、残すはテスト加工だけとなった
その時、担当者の方から要望を受けた

 

「すいませんが、新聞紙を多量に準備してくれませんか」

急いで社内の古新聞を集めて持参すると、お客さんたちが手分けをしてその新聞を機械の回りに敷いていく

機械の下も、周りかなり広くも敷き詰めると、「切削テストをお願いします。靴を脱いで機械操作してください」

 

立会い周辺の作業員も珍しげに注目する中、テスト加工そのものは無事終わり、切削性能も問題無かった

お客さんたちは、敷き詰めた新聞を丹念にチェックし、時々写真を撮る

ところどころに、ぽつっとした油が垂れた跡、少し離れたところにも濡れたところがある

普段なら、油まみれの製造現場では絶対に気が付かない程度の漏れだ

遠くに見られたのは多分切削油のミストになって飛んだものだろう

 

しかし、お客さんからは返ってきた言葉は想像以上に厳しかった

「これでは、だめです」

「漏れは完全になくし、ミストの飛散も、もっと抑えてください」 

営業はじめ、検査員も私も一様に戸惑いを隠せない

そんな無茶な、と誰もが感じたが、新聞に付いた油を漏れといわれて反論もできず、結局改造を承諾した

それからしばらくは大変だった

 

何とかしろとせっつく営業・商社、引き合い当初の判断の甘さを指摘する製造、四面楚歌の状態で改造設計に

新聞紙を新しくして、再度シミュレーションをして漏れの部位を丹念に見つけることから始めた

なんとか原因を突き止め、カバーの追加、コーティング、ミストコレクタ設置などの検討に入った

しかし、どうやっても漏れを完全シャットなんてとても困難と判断

 

結局、外回り一式を新規設計するということに・・・ 

それまで分割で作成していたカバーを一体化する方向で設計し、板金工場にも出向いて修正を加え、ようやく完成

営業は幾度も工場に足を運び、進捗をユーザーに報告、組立は慎重、念入りにカバーを合わせていく

立会い時と同じ手法で検査を実施し、何とか再立会いをクリヤーすることができた

それから数年間、次々とリピートが決まり、その時のことが懐かしく思えるようになった

後日、ユーザーを訪問したとき、いつもは見せてもらえない現場を特別に案内してもらった

工場内に、スリッパに履き替えて入ったとたん、「現場」のイメージが変わった

メーカーの常識はユーザーの非常識

油漏れに対する意識を変えてくれたユーザーに感謝している

 

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           複合加工システムの基礎

 

丁度、ISO14000が叫ばれ始めたころだった

高度なシステムを受注し、設置場所も決まり、設計も完了した

丸物ワークのローディング→旋削加工→軸方向に深穴加工→アンローディングという中型ワークの全自動システム

主要部品の出図が済んで手配が進んでいるころ、客先から「相談がある」との連絡が入った

出向くと、担当者の方がすまなさそうに

「社の方針で、ISO14000に挑戦することになって、今回の新規設備も急遽その対象となったので相談に乗ってほしい」

 

思いもかけない話に戸惑ったが、要は油漏れが絶対に不可とのこと

形態的には誰が見ても不可能な話で、だからこそお客さんも困り果てての相談だった
即答できる問題ではないし、名案も浮かばないので、ひとまず、持ち帰り検討することとした

 

主要部品の手配は進んでいて、大幅な設計変更は難しく、システム全体をカバーで覆うことも限界がある

自動ローディングをあきらめれば何とかなるかも知れないが、それでは設備の意味が無い

やがて、万策が尽きた

 

「こうなれば、基礎ごと機械と思ってもらうしかないだろう」

大型の機械の場合は、基礎回収が普通で、その考えが頭をかすめた

「しかし、この程度の中型システムでそんな話が通じるだろうか」

不本意ながら、案が浮かばないまま、検討経過報告ということで客先に出向いた 

「唯一、可能性があるとすれば、基礎ごと機械にしてしまう ぐらいです」
少し沈黙が流れ、お客さんが口を開いた「わかりました、それで検討してみましょう」

 

やがて、機械の基礎全体に新たに土手が設けられ、特殊な防油材料が施された

排油経路もあり、いかにも基礎から機械ですといった仕上がりになった

「これくらいのシステムなら、少しくらいの油漏れはやむをえない」

そんな今までの感覚が覆った出来事だった

 

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           高圧クーラント

 

汎用工作機械で多量生産をしている機種があった

良く削れることで評判がよく、カバー回りもしっかりしていてデザインも悪くなかった

無論、油漏れなど無縁の機械だった

あるとき、商談で客先を訪問した折、既納機に油漏れがあるらしいとの営業情報で、工場内に立ち寄った

そんなはずは無いだろうという思いはあった

高圧クーラントを採用しているので、カバー回りは特殊になっていて社内でも十分テストされたものだった

無論、立会いでお客さんにも確認をしてもらっている

「 実は、隣の作業員に切削油が飛散したことがあって、どうやらこの機械らしいのですが、その後再現しないんです」 

担当係員から説明を受け、早速切削油を出してテストをした

お客さんのプログラムを借用し、実際のワークを削るようにシミュレーションしてみたが、漏れない

カバーを開ければ自動停止して油も止まるし、クーラント圧を多少上げても漏れなかった

 

そこで、ツーリングを外し、通常の加工では、ありえない位置に刃物台を位置決めしてクーラントをONにしてみた

当然のことのように油が漏れ飛んだ

想定外の位置で想定外のことをすれば漏れる

 対策はそれほど難しくなかったが、メーカーとして恥ずかしいことだった

想定外は常にあり得ることが前提でなければ環境は守れない

 

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           大型汎用NC旋盤

 

上述の複合システムと似たトラブルが、汎用機にも発生した

大型旋盤で、水平ベッドタイプは、クーラントや油の基礎回収を前提としていた

無論、ほとんどは機内設置のコンベアにて回収するのだが、基礎に油溝が設けられていて、漏れた油を回収していた

機械のカバーリングは、背面は全面スプラッシュカバーで、操作側は作業員周りの移動カバーが一般的だった

操作側も全面カバーにしたいとの客先要望で、中型の旋盤と同じようなフルカバー仕様となった

カバーのお化けのようになってしまったが、これでワークの回転による油の飛散を防ぐことができる

工場内レイアウトの打ち合わせに出向き、周辺機器の配置、基礎の参考図について説明をした

図面を眺めていた担当者の方が、「うちは、こんなりっぱな基礎を掘ることは考えていませんが・・・」

「機械のレイアウトは時々変更したいし、第一、切りくず、油、クーラントは機内で回収できるんでしょう?」

基礎回収の説明をしたが理解してもらえず、さりとて、構造的にも完全に機内でシャットするのは不可能だった

その後、大事に発展していく

詳細はご紹介できないが、最終的にキャンセルになってしまった

「フルカバー」に対するユーザーの意図を汲めなかったこと

このタイプは漏れを完全にシャットできないものと決め付けていたこと

ここでもまた、思い込みからくるメーカーの非常識が大きな損失を招いてしまった

 

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           基礎回収の超大型機

 

 

 

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