懐かしのアナログ設計        HP入り口へ

 最近、暗算ができなくなってきた

 そういえば、漢字も書けなくなってきた

パソコン、タブレット、スマフォ、2D-CAD、3D-CAD ・・・

半世紀前と比べ、様変わりした環境の中で忘れられていくアナログ手法

記憶の片隅に片付ける前に整理し、そこから見えてくる現在のデジタル文明の問題点を探った

1-1そろばん  1-2手回し計算機  1-3数表   1-4計算尺   

 1-5ノモグラフ  1-6昔の製図用具  1-7ドラフターの変遷  1-8便利さの陰で

 

1-1  そろばん       

 

 

図面を描くと、必ず寸法を入れるが、昔、その計算にそろばんを使っていた

そろばんは設計者にとって、必須アイテムで、計画図における寸法記入はとても大切な作業だった

作図が完成すると、寸法記入前に上司のチェックを受け、修正完了後寸法記入に取り掛かる

記入手順は次の通り

1) 基準となる寸法を記入し、重要な関連寸法を決める

この段階にミスが発生すると、取り返しがつかないので細心の注意が必要となる

2) 水平方向に一直線に寸法を入れていく

機能寸法を無視して、できるだけ細分化した寸法にし、特に部品相互の関係寸法は漏れなく記入する

3)  垂直方向も同様に寸法記入する

すでに水平方向寸法を記載しているため、見易さを心がけて数値サイズや配置を決める

計画図には、そうした寸法の帯がいくつも走り、元の図形のイメージが掴めないほどのこともあった

だからこそ線種の区別は大切だった

こうした寸法を記入するときは、頭と手はフル回転する

関連寸法や基準寸法をにらみながら、作図したときの意図を思い出しながら、

そして、そろばんをはじきながら記入していく

記入が終了して作図完了となると、今度はチェックに入る

コピーした図面をドラフターに貼り付け、基準寸法から順にそろばんをはじいて赤鉛筆でチェックを入れる

手書きの場合は寸法の記入方法、その正確さがすべてであり、そろばんがその大切なお目付け役だった

重要な図面になると、朱書きチェックした図面を、さらに上位設計者が今度は青鉛筆でチェックを入れる

こうして完成した計画図は、次の工程に引き継がれ、部品図の作図が始まる

少し優秀な設計者になると、暗算で相互寸法を記入していた

小数点がつけば別だが、整数の簡単な計算だから、そろばん☆級でなくても暗算でできる

寸法を全て記入してから、そろばんで重要なポイントに絞って検算をしていた

関連寸法など、複数の足し算をするときは、そろばんに計算結果を置いて分割計算した

ただ、ちょっと揺らすと玉が動いて分からなくなるので、慎重さが必要だった

つい手振れで誤和算になると、がっくりしてそろばんをカチャカチャ鳴らしたものだ

  そろばんは、電卓が普及してからも、しばらく並存していた

テレビでは、そろばん対電卓のスピードを競う番組が放映されるほど、そろばんの達者な人は多かった 

 

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1-2  手回し計算機  

 

 

そろばんで、加減算は誰でもできるが、掛け算や割り算になると、そろばん塾に通っていないと大変だった

概算は後で出てくる計算尺を使うが、ちゃんとした計算をする場合に使ったのがタイガー手回し計算機だった

 私がタイガー手回し計算機を始めて使ったのは、大学の4年ゼミの卒研

テーマは「センターレスグラインダーのビビリ振動」

条件を変えて丸材を研削し、そこに転写されるビビリマークを測定、その粗さ曲線からビビリ周波数を求めた

パソコンの無い時代の周波数の求め方

1) 測定紙に出てきたデーターをスケールで読み取り、データー用紙に写す

2) 二枚の帯にした紙にデーターを転記する

3) 二枚の紙をずらしながら、お互いを掛け算してその結果を別の用紙に書き込んでいく

こんな気の遠くなる作業を、夏休みを利用してタイガー計算機を使って処理した

周波数分析ができて、ビビリ周波数がわかった時は、うれしかったというより、ぐったりと疲れたのを覚えている

 会社に入ったら、同じ計算機があった

技術部で数台を所有していて、「ガチャガチャピーン」という、かなり高くて大きな計算機の音が部内に響いていた

そろばんと比べれば、この計算機は確実で早く、とても頼もしいやつだったが、たいていベテランが独占していた

電卓が登場すると、若手にも計算機を使えるチャンスが増えたが、やがて部内の片隅に置き去りにされていった

 

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1-3  数表       

 

 

  三角関数を計算するのに、数表は欠かせなかった

全員がポケッタブルな数表を持っていて、どれも使い込んでページをめくるあたりが黒ずんでいた

 今でこそ、パソコンで簡単に計算できるが、当時はパソコンも関数電卓も無く、数表は随分長くお世話になった

便利ではあったが、数表の間にある数値は、いちいち按分手計算をしなければならいため、かなり時間を費やした

短時間で計算するためには桁数を少なくすることが必要で、数字を丸める作業は教えられなくてもやっていた

関数電卓が出現してからも、一覧で数値を見られる数表は手放せず並存したが、PCソフトの進歩で役目を終えた

 

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1-4  計算尺       

 

 

 

  かつて、設計計算の主役は計算尺だった

数表と計算尺があれば必要な計算ができたし、それがすべてだった

 計算尺は、乗除算のみならず、三角関数、比例、対数・・・一通りの計算ができる優れものだった

安物は環境の変化で中尺の動きが重くなったり、カーソルにガタがきて正確に計算できなかったりした

定番はヘンミの計算尺だったが、誰かが高級な計算尺を持ってくると、皆よってたかって借りにくる

その使いやすさ、滑らかさ、カーソルの安定性、読みやすさが分かると、またたくまに伝染し同じ計算尺が広まった

 計算尺は、計算スピードを競うイベントもあったが、我々実務者には重要では無かった

目盛と目盛の間をどう読み取るか、バラツキがあるが、所詮数値を丸めて使うため、これも重要ではなかった

それより、小数点の位置までは教えてくれないことがネックになった

複数の計算を積み重ねていくと、答えは出ても桁が分からなくなるため、検算が必要なこともあった

あるいは、計算する数値を指数にして求めることも多用した

 計算尺の比例計算は重宝した

歯車比が決まれば、比(答え)を逆に設定し、カーソルで一致する整数を読めばそれが各々の歯数になる

一目瞭然である

 出張にでかけるとき、客先にそろばんやタイガーは持ち込めないため、必ずミニ計算尺を携帯した

使う頻度は少なかったが、いざというときには威力を発揮した

クレームで現場に出たときに、その場で強度計算をするときなど、もってこいのツールだった

 

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1-5  ノモグラフ    

 

 

   ノモグラムともいう、計算図表のことである

 若い頃は、これにとっぷりとはまった

かなり難解で面倒な計算が、この計算図表を使うことで答えが出てしまう

 使うのに飽き足らず、自分でせっせと計算図表を作成したこともある

 グラフになっていることで感覚的に分かりやすいし、おおよそを掴むには十分だ

 

 

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1-6  昔の製図用小道具

 

  ファイル:Bowpen.jpg      マルス自在曲線定規 目盛付 971-63-30の写真。   定規―自在勾配定規  製図・設計 テンプレート 多形    ゴム字消し     PLUS 電動消しゴム(電池式) 電動字消器NO.20 ER-020 48-103         ファイル:Leadholder(stationery)2.jpg     

 

  雑記用紙 

 計算、構想、いずれにも多量のメモ書きを必要としていた時代、雑記用紙は必須だった

 わら半紙を閉じて切り取りできるノートにしたものが安価で多用された

シャープで書くと破れてしまうが、鉛筆が主流の時代、しかもBや2Bをを使えば、問題なかった

 上質紙もあったが、使う量が半端じゃあないので、使い捨てにはもったいなくて手が出なかった

 筆記具の変遷 

 学生時代1968年頃、製図の実習で習ったのはカラス口だった

二つ割の間に墨を入れて先端の隙間を調整し、鉛筆で描いた線をトレースしていく

 よほど慎重に引かないと、ポタっとたれたら大変で、ナイフで削って修正するしかない

上から塗る修正液もあったが、汚くなるので辛かった

 

 会社で設計課に配属されて、芯研ぎ器を購入した

カラス口は使用しないとのことで、ほっとした

鉛筆に求められる線の太さは驚くほどの神経を使っていた

鉛筆の濃さも大切で、夏場と冬場では濃さを変えて描いた

濃さの程度は人によって違い、私はFが多かった

Hの方がきれいに描けるが、すぐ原紙を切ってしまい、ダメだった

 

 しばらくして、芯ホルダーが発売された

鉛筆削りに時間を割いていた設計者には、大変ありがたい道具で、皆購入した

先端を研ぐだけでよかったので、随分作業が楽になった

 

 最近では、作図にシャープペンが使用され、芯も0.7 0.5 0.3 と種類が揃っている

しかし、我々のころは、シャープペンは線がぼんやりしてシャープさが出ないため敬遠されがちだった

ぐらつきがあるので、線がまっすぐに引けない弱点もあった

シャープを回しながらシャープさを保つよう努めるが、ぼやけた線は、次第にかすれて原紙がダメになる

筆圧をかけて作図することは原紙の長期保存の絶対条件だった 

 リコピーとゼロックス 

1900年代は、リコピーとゼロックスがコピーの主力だった

 リコピーとは、いわゆる青焼きのことで、正式にはジアゾ式複写機のことをいう

リコピーだから、リコー社の製品だが、これが通称になっていた

遅いし、専用のコピー用紙が必要だし、長年保存しておくと変色して見えなくなる

いろいろ不満もあったが、価格が安くて大変便利だった

 これに対して、電子写真式のいわゆるコピー機をゼロックスと呼んでいた

ゼロックス社のコピー機で、こちらは、現在のコピーと同じで何の問題も無かったが、とにかく高かった

リースでカウンターがついていて、当時ゼロックスのコピー代金はリコピーの10倍ほどだった

 リコピーは、その転写方式から半透明の紙が必要のため、トレーシングペーパーを使用して作図した

ゼロックスは高価だが長持ちするし、写りも良いので、客先提出用に限って使うようになった

 それが逆転したのは、CADを使うようになってからだと記憶している

時々、昔の書類を出すと、当時の青焼き図面が出てくる

日光に当たらなければさほど変色していないから、それはそれでたいしたものだ

方眼紙式黒板   

かれこれ40年ほど前になろうか、設計課の部屋には、壁一面に黒板が貼り付けてあった

 学校で利用していた黒板は、横長だが、この黒板は上下左右とも文字通り壁一面の大きさだった

 そこに、白線が方眼紙のように100mm間隔で引いてあった

設計者は大きな機械でも現尺で 操作性、保守性など、臨場感を持って検討できるため好評だった

キルビーメーター 

自由曲線をなぞって、その寸法を測定する。配線、配管処理の検討などに役立っていた

 

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1-7  ドラフターの変遷

 

     

 

 

 

 

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1-8  便利さの陰で・・・

 

 

 

     

 

 

  こうして振り返ると、計算ツールは激変した

 必要な値を代入すると、欲しい結果が瞬時にグラフとともに表れ、その入出力の間はブラックボックスで構わない

便利に、スピーディーになった一方で、置き去りになってしまったものがある

 1) 暗算する能力  

   簡単に結果が出るため、暗算でできるものまでソフトを使ってしまい、脳は楽をし始めた

2) 概算で求める能力  

   小数点以下の不用な桁まで出してもそのまま結果として表し、おおよその値として捉える感覚が麻痺してきた

3) 基本的な理論の理解  

   基本式を入出力値にあわせて変換して使うため、その元の基本式や技術的な意味合いが忘れ去られていった

 

便利さが故にもたらされた脳の鈍化を防ぎ、便利な計算ツールに振り回されないようにしたいものだ  

 

 

 

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