ティラノサウルス・レックスとは?

トカゲの大王という意味の名前を与えられたティラノサウルスは、獣脚類という亜目に分類されます。獣脚類はその名のごとく、巨大な脚を持つ肉食恐竜のグループです。

皆さんは、ティラノサウルス・レックスという名前を耳にしたことがあるでしょうか。この「レックス」という単語はいったいどういう意味なのでしょう。

レックスは、ラテン語でkingを意味します。つまり、その堂々たる体躯から、敬意を持って、レックス(king)と名づけられています。

この大王は恐竜の代名詞であり、世界中で断トツの人気を誇っています。恐竜を知っていてティラノサウルスを知らない人はいないでしょう。

ティラノサウルスはいつどこに生きた?

大王は今よりはるか昔、現在の北米全域に生息していました(他のティラノサウルス科の恐竜は、もっと小さな範囲で生活していました)。

レックスの化石は、人類の祖先である類人猿が誕生するはるか昔の6800万年前から恐竜が大絶滅を迎える6500万年前の300万年間の地層からしか発見されません。

このことから、恐竜の大絶滅のその瞬間まで反映していた恐竜であることが分かります。この頃には、鳥類の特徴を持った恐竜が多く反映していましたが、ティラノサウルスは、非鳥類型の最後の恐竜でした。

ティラノサウルスの体格

他のティラノサウルス科の恐竜と同様、ティラノサウルスも巨大な頭部骨格と恐ろしいほど巨大で強靭な足腰を持っていました(その脚に比べて、腕は極端に小さい)。

一見すると貧弱な腕ですが、その力は相当なもので、戦いのなかで相手を押さえ込むには十分過ぎるほどのパワーがあったと考えられています。指は2本しかありませんでした(鳥類は3本)。

体格はティラノサウルス科の中で最大級で、最大で体長13m、腰までの高さが4mもありました(体重は7t)。現生最大の陸生動物の像をも凌ぎます(アフリカゾウの全長は最大で5m/体重5t)。

ティラノサウルスの全身骨格の研究

現在までに、全世界で30の化石標本が発見されています。その中の数点はほぼ完全な骨格標本です。一点だけですが、やわらかい有機組織やたんぱく質が発見されたという報告もあります。化石の研究から、体の特徴はもちろん、食習慣、性格、走る速さに至るまであらゆる特徴が分かってきました。ただし、いくつかはまだ論争中です。

その一つが分類です。ティラノサウルスと同じ属には、レックスしかいないことになっていましたが、最近の研究では、アジアンのティーックスの異名のあるタルボサウルス・バタールは2番目の種として候補に上がっています。2008年現在は違う「Genus:属」に属しています。

ティラノサウルス・レックスは、地球史を通じて、最大の陸生肉食動物の一つです。現在までに発見されている最も巨大な骨格標本は、体長12.8m、腰高4mで、体重は諸説ありませうが、最大で7tだったと見積もられています(最も軽い見積もりでは4.5t)。最近の研究では5.4-6.8tの間ではないかと考えられています。

ティラノサウルスより大きな肉食恐竜がいた?

ティラノサウルスは、ジュラ紀を代表する大型獣脚類であるアロサウルスよりもずっと巨大ですが、白亜紀のアフリカに生息した獣脚類のスピノサウルスやアルゼンチンのギガノトサウルス(白亜紀後期)よりはわずかに小さいと考えられています。

ティラノサウルスの首は他のティラノサウルス科の恐竜と同様、自然なS字を描いていますが、巨大な頭部を支える為、短く、非常にがっしりしていました。また、長く太い尾は、40以上の骨から成っていました。この巨大で柔軟な尾は大きな頭部のバランスをとる為に発達したものと考えられています。

ティラノサウルスの最大の特徴は下アゴ

そして見逃せないのが、巨大な下アゴです。他のティラノサウルス科の恐竜と比較しても、ティラノサウルスのかむ力は比較にならないほど強いものでした。まして、非ティラノサウルス科の獣脚類などと比較すると、雲泥の違いです。

ティラノサウルスの上アゴはUの字形をしています(一般に非ティラノサウルス科の恐竜はVの字形)。これにより、噛み砕くための筋肉をより充実させることができ、一度に噛む砕く量も増やすことが出来ました。

ティラノサウルスの巨大な歯

ただし、この強力な「噛み」を実現するためには、その圧力に耐えうる強靭な「歯」が必要でした。特に、最も圧力のかかる前歯は他のティラノサウルス科の恐竜と比較しても、さらに太く長い巨大なものでした。

ティラノサウルスの歯は場所によって様相を変えます。最も巨大な部分は上アゴの前歯で、頂点の断面がDの字をしており、横から見るとゆるやかに反り返っています。

他の部分の歯は上あごの前歯ほど長くありませんが、太く強靭で、切り裂くというよりは、噛み砕くために役立ちました。幅広く、鋭いセレーション(ギザギザ)が確認されます。

一般的な特徴として上あごの歯のほうが下あごの歯より長く強靭でした。

ティラノサウルスに仲間がいた?

ティラノサウルスは、分類上の、ティラノサウルス科に属します。これは、同じ分類には他のティラノサウルス科の恐竜が含まれることを意味します。

北米にいたティラノサウルス近縁のダスプレトサウルス
アジアのティラノサウルスことタルボサウルス

この2種は特にティラノサウルスの近縁種として知られています。実際にタルボサウルスはティラノサウルスと同種ではないかと、論争中です。

また、かつて、ティラノサウルスは、メガロサウルスやカルノサウルスなどの初期の巨大獣脚類の子孫ではないかと考えられていました(現在では否定されています)。

他のティラノサウルス科の恐竜としては、アウブリソドン、アルバートサウルス、メガグラシリスなどがあります。しかしながら、現在では、これらの恐竜は幼少期のティラノサウルスではないか、という論争があります。

ティラノサウルスの子供?それとも別の種?

また、モンタナから見つかった60cmの頭蓋骨がさらにこの議論を複雑にしています。この頭蓋骨は小さいながらも完全体であることから、1946年にゴルゴサウルスとして分類されましたが、現在では、新種ナノティラヌスとして知られています。ナノティラヌスはティラノサウルスの幼少期の姿ではないか、という主張は当然ながら残っており、これも未だ論争の最中にあります。

実際に多くの古生物学者はこの頭蓋骨はティラノサウルス・レックスの幼少期であると考えています。ティラノサウルスとナノティラヌスとされる頭蓋骨の違いは大きさを除けばわずかしかありません(歯の数はナノティラヌスとされる頭蓋骨のほうが多いetc)。

現在のところ、この論争に結論は得られておらず、新しい事実が発見されるまで、このまま2つの種を維持しようという状態にあります。

ティラノサウルスが発見されるまで

最初のティラノサウルス化石は、1892年にエドワード・ドリンカー・コープによって発見されました(その2つの部分的な脊椎骨のうち一つは行方不明)。

発見された当初、この大王に名づけられた名前は、

「マノスポインディルス・ギガス」

でした。

1917年に、オズボーンは、Mギガス、ティラノサウルスとの類似性をなんとなく気づき始めていましたが、結論を得るまでには至っていませんでした。

ティラノサウルスの本当の名前はM・ギガス!?

2000年6月、ブラックヒルスインスティチュートは、Mギガスが発見された場所で、たくさんのティラノサウルスの骨を発掘しました。これにより、1892年に発掘されていたM・ギガスはほぼ間違いなく、ティラノサウルスであったことが明らかになりました。

この発掘により、国際コード動物命名法 ( ICZN )の規則によれば、最初に発掘されていたM・ギガスの名前がティラノサウルス・レックスという名前より優先され、ティラノサウルスという名前がこの世から消滅するはずでしたが、ICZNが2000年に発表した新規則により一般に非常に良く通っている名称については、超法規的に優先される件が適応され、名前はティラノサウルスのままで維持されることになりました。

ティラノサウルスの一生

複数の幼少期や成体のティラノサウルスの研究から、寿命やどのくらいの速度で成長したのか等、ティラノサウルスの一生を知ることが可能です。

研究の対象となった最小の個体は30kg程度で最大の個体は6tの成体(かの有名なスー)です。最小の個体はおおよそ2歳で死に、スーは28歳で死んだことが骨の研究から分かっています。

このように各個体の年齢を横軸に体のサイズを縦軸にしてグラフにプロットすると、その成長曲線はS字を描くことが分かりました。

つまり、14歳までは2tしかなく、18歳になるまでの4年間に爆発的に巨大化することが分かりました。その4年間は毎年600kgの速度で体重が増えます。20歳を超えると、成長の速度が低下します。

ティラノサウルスは子供のころは弱い?

この傾向は他のティラノサウルス科と比べてより顕著です。10歳までは他のティラノサウルス科とそれほど体格が変わらないのですが、12-3歳を過ぎる頃から、爆発的に、その差を拡大していきます。もしかすると、10歳までは他の肉食獣などに生存競争で負けてしまうことが多かったのかもしれません。実際に、30歳間近の超巨大な個体は全個体のほんの数%に過ぎなかったという報告もあります。

ティラノサウルスは間違った立ち姿

ティラノサウルスの立ち姿については、長い間間違った姿で描かれてきました。つまり、上に体をもたげ、尾を地面に付けた姿(ゴジラのような姿、あるいはカンガルーのような姿)が一般的でした。

事実、アメリカ自然史博物館の館長であったヘンリー・フェアフィールド・オズボーンはティラノサウルスはまっすぐに立つと考えていました。1915年に世間にお披露目されて以来、100年近く、”まっすぐ”立ったティラノサウルスは常識とされてきました(1992年に正式に訂正されています)。

1970年代に、科学者はティラノサウルスはまっすぐに立たないことを知っていました。現生の動物との比較や関節の強度の問題、そして頭部と尾のバランスの問題などから、まっすぐに立つことは不可能でした。

映画ジュラシックパークでは、ティラノサウルスは本来の頭部と尾を水平に保ったポーズで登場しています。最近の映画、絵画、アートでは、どれも”水平型”のティラノサウルスで描かれるようになってきました。

ティラノサウルスもダイエットした?

巨体に反して、全身を通じて、骨が一部空洞化しており、筋力を落とすことなく、軽量化が図られていました。

これまで発見された最大の頭蓋骨は1.5mにも及びます。この巨大なティラノサウルスの頭蓋骨は、非ティラノサウルス科の獣脚類と決定的に異なっている点があります。それは、後ろ側が異様に幅が広いのにもかかわらず、鼻が小さいことです。頭蓋骨の幅が広いので、かなり左右の視野が広かったのではないかと推測されています。