プレイステーションの流通改革の破綻と違法にされた中古市場の話


スーパーファミコン時代のソフト価格(1万円程度)

から比べるとプレイステーションのゲームは安くなりました(6千円程度)

これは媒体がROMチップからCDになって製造原価が安くなったという理由もありますが、

流通の変化によるところも大きいようです。

しかし大きな変化はどこかに歪みを残します。

流通改革の歪みは、ここ最近の中古ゲーム市場をめぐる裁判の火種になりました。

<ソフトのロイヤリティについて>

SCE(ソニーコンピューターエンターテイメント)はソフトの製造委託料(ロイヤリティ)

として1枚900円、販売管理費(マージン)として希望小売価格の20%を徴収するそうです。

たとえばソフトの希望小売価格を5800円とすると

マージンは1160円、ロイヤリティと併せて2060円になり

小売り価格の35%がSCEに入る事になります。

これを従来の一次卸値(55%)で考えるとソフトメーカーに残された

パーセンテージは20%で1160円になります。

これでは率でいえば任天堂時代よりひどいくらいです。

(もっとも任天堂の場合はディスクシステムの時、ソフトの著作権の共有および製造時点でのロイヤリティ30%を要求したそうですが、、、)

 

しかし、販売管理費20%というのがミソでして、

SCEは自社が一次卸となって流通をコントロールすることによって、

小売店への卸価格(仕切値)を75%に設定しました。

これならソフト会社の取り分は40%となり、SCEの取り分を越えます。

プレイステーションが発売初期は伸び悩んで、セガサターン優勢と言われていたものの、

ナムコ、スクウェアを代表とする数々のソフトウェア会社を陣営に引き入れていった理由は、

このソフトウェア会社への利益増が大きかったものと思われます。

これでSCE及び、ソフト会社は満足かもしれませんが、

割りを食うのは小売店です。

<新たなる流通ビジネスモデルの提唱>

ここでSCEは小売店に対して「新品売り切りビジネス」を提唱しました。

任天堂はソフトの発注から小売店への到着が1ケ月、

しかも発注量の1/3を3ヶ月にわたって渡す分納なんてのがザラだったそうです。

(今でもN64ヨッシーストーリー等で同じ事が行われているそうです)

ロムチップ生産の限界とか、初心会流通の不透明さとか言われますが、

小売店に商品が届くまでの間に中古が出回っててしまい、新品が届くころには売れなくなる。

という販売機会損失が市場のソフト余りと価格の暴落を起こしているといわれました。

 

その対策としてSCEが提示したのが新品売り切りビジネスです

 1.初回販売数を売り切れる数にコントロールする

 2.中古販売を禁止する

 3.売り切れた場合は発注から2週間以内に発注数を小売り店に納める

 

以上の3点を実現することによって、売る切れる数だけが店頭にならび、

小売店のリスク(不良在庫)も軽減するという絵を描きました。

 

このようにして不透明な問屋を介さずに商品を即納する事によって、

流通の風通しは良くなったかに思えますが、

結果的には小売店に対するリスクは増加しました。

 

<理想モデルと現実の違い>

まず1.で提唱した初回販売量のコントロールがうまく機能しませんでした。

特にPS初期に初回プレス数の決定権を持つ流通元でもあると共に

ソフトメーカーでもあるSCEが発売した一連のクソゲー達

(アークザラッド、ビヨンドザビヨンド、等)

を100万枚も初回生産してしまい、市場であまらせまくった、という事件がありました。

ちにみに当時のカリスマであったワープの飯野なんたらという顔の恐い人が

上の事件を「自ら提唱した売り切りビジネスを否定する行為」として

プレイステーション陣営からセガサターン陣営に乗り換えたという話もありました。

これらのごたごたもあり、結局、初回生産量の決定権は各ソフト会社に任されたそうです。

当然、自社のソフトが正確に売れる数などメーカーに厳しく判断できるはずもなく、

(SCEのビヨンドザビヨンドがいい例です)

当然のごとく市場ではゲーム余りが起こります。

(足りなければ追加発注すればいいけど、余ったら返品はきかないのでメーカーは知らんぷりです。)

 

特に現在では年間600本(98/8〜99/8)ものプレイステーションソフトが発売されており、

平均しても2日に3本、年末商戦ともなれば日に10本以上のソフトが出ていることになります。

こんな状況の中で小売店の判断でソフトをチョイスし、

自分の店で売り切れる本数を判断するのは困難でしょう。

メーカーと小売店の間に問屋というクッションがなくなった事によって、小売店のリスクは増加しました。

(あまり健全ではありませんが、間に問屋があった時は、問屋に頼めばバッタ価格でどっかにさばいてくれたそうです、、、)

 

そこで小売店が手を出したくなるのが、禁止された中古販売です。

小売店の場合

従来の1万円商品なら仕入れ値65%で仕入れても1割引で売って2500円の儲けでしたが

5800円の商品を75%で仕入れたら1割引で売って870円の儲けにしかなりません

同じ手間をかけて従来の1/3の儲けしか手に入らない事になります。

また、ゲームという商品は返品がきかないため、売れ残りを小売店が抱え込んだら

新品特価という名前をつけて赤字商売をしなくてはなりません。

しかし中古ならば、仕入れ値を3割(1740円)とすれば

6割(3480円)で売ったとしても1740円の儲けになります。

この計算でいけば、新商品を5220円で2個売る(1740円の儲け)よりも

中古ゲームを3480円で1個売る(1740円の儲け)ほうが効率がいいことになります。

また、中古の買い取り価格も雑誌や市場の評価を元に自己裁量で設定できます。

新品を買う時はメーカーのセールストークで判断するしかなく、価格も一律75%では不安で面白く無いでしょう。

 

<そして裁判へ>

初回売り切りビジネスの基本である初回生産量のコントロールをSCEが放棄した時点で、

中古市場が生まれるのは当然の帰着だと思うのですが、

それ以降は

●禁止した中古販売に手を出した小売り業者に対してSCEが見せしめとして新品を卸さない。

 →SCEのこの行為に対する公正取引委員会による排除勧告

●SCEやソフトメーカーによる中古ソフト撲滅運動の展開(新聞に一面広告が出てました)

●東京地裁での中古合法判決、大阪地裁での中古違法判決(2001年3月)

と繋がっていきます。

訴訟では、

ゲームは映画と同じ著作物であるとか(大勢にみせる行為ではなく個人で楽しむ物だから本に近いと思うが、、)

デジタルコンテンツは劣化しないとか(内容の陳腐化は避けがたいと思うが、、)

中古の数と同じ数だけ新品が売れていたら、これだけの儲けがソフト会社に入っていたとか(安い中古だから売れたんだと思うが、、)

等が主張されたそうですが、

結局、1万円から6千円に小さくなったパイの取り分をソフト会社と小売店協会で奪い合ってるだけだと思います。

 

何にせよ、この争奪戦の外に置き去りにされているユーザーの立場から言えば、

5220円の新商品よりも多少流行から遅れていても、3480円の中古の方が魅力を感じます。

中古市場があったからこそゲーム市場はここまで大きくなったと思います。(これだけ中古ソフトを買ってる私もたまには新品を買いますしね)

本の様に委託販売で返品可とかできないんでしょうか?

そしたらメーカーも真剣に売れる本数を検討するだろうに、、、

<追記:最高裁の判断>

2002年4月25日 最高裁による判決が出ました。

中古ゲームソフトの販売は合法
――最高裁は25日,販売店側の主張を認める判決を言い渡した。
これにより,販売店は中古ゲームソフトを自由に取り扱えるようになった。(ZDNetより)

判決文の一部です。

ゲームソフトは「映画の著作物」だと認めたものの,ゲームソフトがその性質上,
「公衆に提示することを目的としない」ことから,映画の配給制度とは異なり,
「頒布権はいったん適法に譲渡されたことにより,その目的を達成したものとして消尽する。
譲渡するたびに著作権者の許諾が必要になれば,円滑な流通が疎外される」

というわけで、結局中古ソフト販売は合法となったんですが、

その判決を受けて、大手が手広く中古ゲーム販売を展開することもなく、

係争期間の2年の間にゲーム市場はすっかり冷えてしまいました。

Human、DECO、コンパイル(和議申請)、ハドソン(コナミに分割吸収)等の元有名ソフト会社が無くなり、

セガはゲーム本体から撤退して、ソフトメーカーになりました。

世間ではPS2、GC、Xboxと新しいゲーム機が発売されました。

私は1つも持ってないんですが、売れてるんでしょうか?

あれ?係争期間に冷えたのは、市場よりも私のゲームへの情熱かな?

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