熊野古道・中辺路(牛馬童子口〜小広峠)
会員の坂田です。

11月28日、第3回目となる「中辺路御幸」に参加し、小春日和のなか、いとやんごとなき女御達と熊野古道歩きを楽しんできました。

今回の参加者は、森本さんを加えて19名。カランクルンからは、森本、田島、南埜、辻井、小生の5名で、南埜さんと辻井さんは初参加です。何と男性は、辻井さんと小生のみ。”両手に華”の恵まれた境遇でたいへん幸せな一日を送れるぞと意気込んだのですが、所詮、老残の身には「光源氏」はいかにも虫のよすぎる祈請でして、”一炊の夢”ならず、残念ながら何のご利益もありませんでした。

さて、今日のコースは、「牛馬童子口バス停」から「小広峠バス停」までの、約8キロの行程です。中辺路古道歩きもいよいよ佳境に入り、牛馬童子像を始め有名な王子社・跡、説話や歴史のロマンに彩られたポイントが数多く点在しています。この部分は、前後の険しい峠道を越えて出会う人里で、昔、「道中」とよばれていた区間だけに、今なお多くの旅籠跡が残っており、往時の熊野詣での賑わいを忍ばせてくれます。今も生活区域ですから、道路は舗装されています。しかし、峠道の脇にはススキの産毛立った白い穂先が逆光のなかに幽かに揺れており、道端の家の軒先には干し柿や、真っ赤な唐辛子が、白い障子を背景に初冬の柔らかい日差しをうけながらぶら下がっているといった佇まいは、中世と現代が何の違和感もなく渾然と溶け合っている趣を感じさせてくれました。特に、南方 熊楠の尽力により辛うじて伐採を免れたという野中の一方杉の巨木には、歴史の重みを感じざるを得ませんでした。この大樹こそ、千古の昔から人々の営みを見つめ続けてきたのですから。

熊野古道歩きの「先達」であり「語り部」でもある森本さんの弁舌の冴えはいよいよ際立ち、一同を笑いの渦に巻き込みます。今回の熊野古道歩きの楽しみの締めくくりは、本宮町にある「わたらせ温泉」入浴でしたが、この温泉は、これまでの鄙びた風情の温泉ではなく、広い露天風呂が特徴のようです。今回も”学者肌”の森本さんから、入浴に先立って、大衆浴場入浴時の日本人と西洋人の「作法」の対比について東西文化比較論の観点からの講釈がありました。あまりの高説に、ここで披露できないのが残念です。さすがに露天風呂は大規模でした。6っあるうち5槽までが露天風呂でして、全部クリアーするうちに現世の垢離(ごり)をすっかり掻きおとすことができました。

和歌山県出身で、特攻隊生き残りの作家神坂 次郎は、中世の貴族や大衆が一様に浄土と見立てた熊野の森の恵みに浸ることを、「日光浴」や「森林浴」という言葉に倣って、「時空浴」と呼んでいます。大自然と歴史の異界に身を浸すことにより、ひとは心を洗い、心を癒し、心を豊かにすることができるということでしょうか。確かに熊野古道を歩くたびに心が安らかになっていくのを実感します。

次回は12月12日、いよいよ中辺路古道の核心部のようです。森本さんによれば、ここはいかにも熊野古道らしいコースであり、この箇所を歩かずして熊野古道を語る勿れと、”脅迫”まがいの熱弁を揮っていました。回数を重ねるごとに顔なじみも増え、おしゃべりの輪も広がってきます。なんとか全コースを完歩し、「卒業証書」をゲットしたいと意気込んでいる次第です。森本さんはじめ、ご参加の皆さん、今回もいろいろお世話になり、ありがとうございました。

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