芦生の森の精霊(七瀬中尾根〜櫃倉谷周回)


2007年GWの後半、かねてからやりたいという話が出ていた七瀬中尾根から芦生の核心部傘峠へ登ってみよう、という計画が現実に。 慎重に天候を測り5/3に決行となった。仲間3人と須後を後にする。


須後から七瀬まではトロッコ道を辿る。 いつもの道ながら今は新緑のシーズン、緑のトンネルを潜る行程は心が躍る。 ついつい周りの景色に目を奪われながらの前進になり須後から七瀬まで大方3時間を要することに。 足元にはイワカガミをはじめとする春の花がそこここに咲いているし、ブナの若葉も目にまぶしいし、気持ちのいい旅のプレリュードだ。

カズラ谷出会いを過ぎると、トロッコ道の行程の中でもいよいよ余り人が入らないエリアになる。それだけ障害物も多いのだが緑はそれまでよりさらに濃くなっていく。 線路が崩落しているところはこのように沢まで降りてクリアしていく場面もあり、これはこれで楽しい。 七瀬に到着し昼食となる。 七瀬は由良川本流の渡渉地点となるが、この日は水位が低く長靴なしでも何とかクリアできるほどであった。 せっかく長靴を用意したのだからということで使用。(最深部でも深さ15センチほどであった。ちなみに由良川田歌付近の水位情報はこの日の朝で25センチであり、この水位が75センチになると七瀬の渡渉が難しいとのことである)(写真はモグさん提供)

七瀬からは七瀬中尾根に取り付く。取り付きには赤テープの印があるがこれが本当の取り付きかどうかは怪しい。かなりの急斜面をアセビの枝につかまりながら急登する。 デイパックでも大変な登りだが今日は慣れない重いザックを持っている。皆それぞれ15キロ程のボッカだ。 バランスに気を使いながらの急登がひたすら1時間以上も続く。 結局標高差約400mを1時間半かけて尾根線へ這い上がる。 負荷が軽ければ4,50分で上がれるであろうがやはり荷物の重さがもろに体力を奪ってくれる。(写真はモグさん提供)

尾根の上はブナ、ミズナラ、ミズメのパラダイス。暫く休憩の後傘峠方面へと歩を進めるが、途中から雷の音が隣の山域から聞こえてくる。いやな感じを持ったが雲が出ているのは後ろ、前は青空だ。 と、ものの15分もしないうちに真上に黒雲が広がりだす。 いよいよ来るかな、と思う間もなく雷鳴が真上から響きだす。 これ以上尾根線に滞留するのは危険と谷間に避難し雷を避けようとした途端大粒の雨と雹が降ってくる。 急いでテントを出して地面に伏せる。 およそ15分間ただ伏せて雷と雹をやり過ごすことに。 雷雲が去った後は何事もなかったかのような青空。 あらためて山の天気の豹変ぶりに自然の力を感じる。 仲間の皆も自然の力を感じていたようだ。 なにか爽やかな、そして敬虔な心持になった瞬間だった。

体勢を立て直して、傘峠への道を辿る。この辺まで登るとブナも大木になり一種独特の精気のようなものを感じないわけにはいかない。 ここが芦生の中央山稜、「森の精」の住む場所だ。(写真はモグさん提供)

傘峠、八宙山を過ぎると芦生杉の大木がある「杉」といわれる尾根分岐に出る。 ここから長治谷までは指呼の間だ。 久しぶりに再会した大杉と挨拶を交わし長治谷へ。(写真はモグさん提供)

長治谷作業所の朝。太陽が山の上部から順に照らし出してくる。僕らのテントもまぶしい日を浴びて夜露を飛ばすのももうすぐだ。 それまでの間、朝の散歩に出かけてみよう。

(写真はモグさん提供)

ブナの若葉はとても明るいグリーン。生えている場所によりこんなにすっかりグリーンになったものとまだまだこれからのものとがいる。 ここでは老木と若木がいいバランスで交代し、健全な森林相を形成しているようだ。 いつまでもそうあってほしいものだ。(写真はモグさん提供)

帰りは上谷から杉尾峠を越え、二日目のハイライト、写真の櫃倉谷を下降。 芦生で最も美しいといわれている谷だ。 上谷よりも広く水量も多いという違いがあるものの、私はどちらの谷も甲乙つけがたい魅力を感じる。上谷から櫃倉谷の谷巡りは高低差もあまりないし、難所もほとんどないので一般コースとされているが、踏み跡を忠実に辿らないと荒れてしまうことが考えられ、そういう意味では上級コースかもしれない。(写真はモグさん提供)

今回の山歩きで特に感じたことは、自然の大きさ、力強さと、その力と裏腹な壊れやすさだ。 我々は精霊を畏怖すると同時にそれを守っていく責任もあるということを再認識させられた、そんな山歩きだった。

最後に今回は自分のカメラの電池が途中で切れたため、モグさんからたくさんの写真を提供いただきました。ありがとうございました。


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