冬虫夏草の歴史考査■■■■
仙草が冬虫夏草でなくて他の薬草だったら、これらの史実が根本からくつがえります。信憑性を探るうえで参考にしたいのは、道教教典の十洲三島伝説より「そこには仙草仙芝が生え、宮閣楼台があり、仙童玉女がいて、諸々の仙真(仙人)が遊び休息する。名山大川にも風景秀麗な洞天福地があり、道教の仙真がそこで修練する」というフレーズです。同じく仙人が広めたとされる仙芝が仙草と並び称されていますが、この仙芝は、高山の絶壁の岩の割れ目から出ていて仙人が腰掛けたことが語源のサルノコシカケを指しています。
仙草が子嚢菌類バッカクキン科のキノコなら、サルノコシカケは霊芝(レイシ)という担子菌類サルノコシカケ科のキノコです。どちらも神農さんが起源となる最古の薬膳書・神農本草経に記され、同じく古代から方仙道、そして道教の司祭では飾り壺に入れて神前に供え、不老長生を願ったとされる薬膳キノコです。
仙草は時代が進むにつれて、昆虫から発していることが分かって虫草と言われる(現在も)ようになり、やがて、冬の間に昆虫に寄生して夏になると発芽してくるキノコと分かって、冬虫夏草と言われるようになりました。仙芝は七食の芝として道教教典にたびたび登場しますが、実際に自然界では紫・黒・赤・白・黄など多くの色の種類が見かけられ、まったく猿が腰掛けるような形の霊芝を見ることができます。どちらも神農本草経では上薬とされ、数千年を経た現在までもこの二つは漢方生薬の双璧として効能を明らかにしています。
こうして古代から現代にいたる5000年をたどってみると、絶賛され続けてきた生薬食材は他には存在していません。よって仙草が冬虫夏草であり、仙芝が霊芝を指していると確信するに至ったのです。
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